「曜、次は何乗る?」
「ジェットコースターがいいな!」
「ほんと好きだね。昼食べてそんなに時間経ってないし、次で3回目なのに」
「遊園地といえば、やっぱりジェットコースターじゃない?」
「いや、他にも色々あるでしょ」
恋仲になった優と曜はいま、遊園地へとデートに来ていた。
本日は春休み最終日であり、明日から学校が始まるということもあってか、いつもより曜のテンションが高いように優は感じている。
2人が思っていたより人は少なく、並んでも30分なため短いスパンでアトラクションに乗れていた。
「普段なかなか来ないし、来ても人が多いからそんなに乗れないし……つまり今日はそういう日なんだよ!」
「千歌みたいなこと言うね」
「……デート中に他の女の子の名前出すのは良くないよっ」
よく一緒に居た、けれど今ここには居ない幼馴染の名前が出た時に。
曜は一瞬だけ
「ごめんごめん。今日は少し暑いし、アイス奢るからさ」
「全く、私は安い女じゃないんだよ! こんな事で許すと──あ、みかん味だって! 千歌ちゃんも…………っ」
「あはは、曜も人のこと言えな痛っ、ちょっ、曜、それは理不尽ではっ」
安い女じゃないと言いつつ、貰えるのならと店に目を向ければ。
あまり見ないみかん味のソフトにテンションが上がり、先ほど自分で言ったことをすぐさま破る曜に優が堪らず笑えば。
自分で言った手前、何か言い返すこともできず。
かといってやられっぱなしは癪だと、無言のまま優へパンチを繰り出していく。
ひとしきりパンチを繰り出して満足した曜と理不尽な暴力にさらされた優はジェットコースターをひとまず置いておき。
アイスを買い、イスに座ってノンビリとした時間を過ごしていた。
「…………ね、優くん」
「ん?」
他愛もない会話がふと途切れ、互いに黙ってアイスを食べる時間が少しだけ続き。
次に曜が口を開いたときは先ほどまでとは違い。
迷い、そして後悔のようなものが混ざっていた。
「どうして私と付き合ってくれたの?」
「気になる?」
「…………うん。教えてほしい」
優は少しおどけた調子で返したが、教えて欲しいと言葉にした曜から告白をされたとき以上の覚悟を感じた気がして。
アイスの残りを口に放り、遊園地で遊ぶ家族連れの姿などを見てから口を開く。
「気付いてもらうには、これが一番手っ取り早かったから、かな?」
「…………気付く?」
どこかしら自身の好きなところをあげてくれるものと思っていた曜だが、これまで聞いたことのない返しに優が何を言っているのか理解できずにいた。
「曜は今日のデート、楽しい?」
「え、うん。楽しいよ」
「本当に? どこか物足りないんじゃない?」
「それは……まだ、お化け屋敷とか行ってないから、じゃない?」
けれど優からの質問に、曜は何を言いたいのかすぐに察し。
とっさのことに誤魔化してしまうが、今まで目を逸らしていたものを突きつけられ。
「…………あれ」
気が付けば、曜は目から涙を流していた。
「僕は今日のデート、楽しくなかった……と言えば嘘になる。でも、今まで曜と2人で出かけたどの時よりも一番つまらなかったよ」
あの日から思っていた事。
「意識していなかったのかもしれないけど」
だけどもう叶わないと思っていた事。
「曜は今日ずっと、千歌のことを考えてた。行動の、言葉の端々にそれを感じたよ」
それらを心の奥底にしまい込み、鍵をかけたはずなのに。
「これから先もずっと、このままでいいのかな」
「よくない!」
結局、それはただ自分を誤魔化していただけで。
やっぱり1兎だけじゃなく、2兎欲しいのだ。
「帰るよ、優くん! 今度は3人で遊びに来るんだから!」
お久しぶりです。
完結させたくない病にかかり、長らく放置してしまいましたが、なんとか振り絞って書きました。
次の話にて完結予定です。
出来るだけ早くかきあげられたらと思います。