語彙力なくなるぐらいとても良かったです。(本当はギルキスライブの後に載せる予定でした)
10月のCYaRon2ndも初日に現地参戦しますのでよろしくお願いします。
『千歌ちゃんと話がしたい』
千歌のスマホへ来た、曜からの簡単な連絡。
既読がついた事は曜も分かっているはずだが、それ以降何か送られてくる事はない。
旅館目の前の海岸にいると場所も書かれていたが、千歌は返信する事なく何度も読み返していた。
連絡が来てからすでに1時間ほど経っているが、ぬいぐるみを抱きしめてベッドに横たわったまま動く気配はない。
「……流石にもう、帰ったのかな」
ちらりと千歌が時計に目を向ければ、時間的に太陽は海へと沈み、冷たい海風が吹き始める頃である。
少し暖かくなってきたとはいえ、まだ4月の初め。
長い間風に当たっていたら風邪をひくのは誰でも容易に想像できる事であった。
「……帰ったのか、ただ確認しに行くだけだから」
誰かに言い訳でもしているかのように自分しかいない部屋でそう口にし、少し厚手のパーカーを羽織る。
「…………」
部屋を出る直前、ピタリと動きを止めた千歌。
『念のため』と小さく呟き、毛布を手にして部屋を後にする。
階段を降り、一応外に行くことを志満へ伝えるため顔を出せば。
「志満姉、ちょっと──優くん、なんで……」
「や、千歌」
そこではお茶を飲みながら志満と楽しげに話している優の姿があった。
何となく、優と顔を合わせるのが気不味い千歌は先ほど反射的に名前を呼んでしまったものの、その後に何を話せば良いのか分からず。
「ちょっと外に行ってくる!」
「もう暗いから気を付けるのよ」
「うん」
志満に要件だけ伝え、その場を後にした。
「ほら。千歌ちゃん、曜ちゃんのところへ行ったわ」
「俺も同じ方に賭けてるから、そもそも賭けが成立して無いですよね」
「あら、そうだったかしら」
「そうですよ。……まったく、1時間過ぎてから毛布持って行くぐらいなら、初めから行けば良いのに」
「それは優くんが女心をきちんと理解してないからそう思うのよ。……それとも、今のはただの照れ隠しかしら?」
未だ帰ることなく待っている曜の元へ千歌が行くのを見送った2人。
夕食のことも考え、みかんを仲良く半分に分けて食べながら駄弁っていた。
「今回の件、上手く収まるだろうからあまり言わないけれど……私、優くんに少し怒っているのよ?」
「言わんとしてることは分かりますけど、雨降って地固まると言うじゃないですか」
「それは当事者である優くんが言うことじゃないかな」
「……まあ、そうですよね」
「優くんならもう少し上手く出来たんじゃないかって思うのだけど」
「個人的にもう少しの間、変わらない関係のままでいたかったんですけど、世の中そう上手くはいかないみたいで。行き当たりばったりみたいな感じになりましたね。……結果論ですけど、後々変に拗れるよりは良かったのかなって」
「確かに、結果論ね」
そこで志満は1度区切り、今頃2人が話しているであろう方へ目を向け──。
「もう、優くんが千歌ちゃんと曜ちゃんの2人とくっつけば良いと思うのだけれど」
「…………ここ、日本ですよ?」
「本人たちがいいのなら、良いんじゃないかしら? それに倫理観を除いてみたら1番良い案じゃない?」
「…………選択肢の1つとして入れておきます」
優の返事を聞いた志満は満足げに頷き、徐に立ち上がる。
「あ、何か手伝いますよ」
「優くんは私よりも、ね?」
どうしたのだろうと不思議に思っていた優だが、夕食の準備を始めるのだと察し、手伝うべく立ち上がったが。
「「優くん!!!」」
ドタドタと足音を響かせ、少女が2人駆け込んでくる。
その姿は砂で汚れ、髪はボサボサ、顔には涙の跡があったりと酷いものであるが。
2人の浮かべる表情はとても素敵な笑顔であった。
何か話したいことでもあるのか、千歌と曜は互いに顔を見合わせて頷き、口を開いたが。
そんな2人を優は手で制し、ニッコリと笑みを浮かべ。
「え、えっ、ちょっ」
「優くん、私たち話が」
「さっさと風呂入ってこいアホ2人」
半ば蹴飛ばすように2人を風呂へと押し込み、砂で汚れた床を掃除するのであった。
「おはよ、千歌ちゃん」
「おはよ、曜ちゃん」
いつもと変わらない朝。
いつもと変わらない挨拶。
「ね、ね、曜ちゃん。聞いて聞いて」
「千歌ちゃん、すごく嬉しそうだけど何かあったの?」
いつもと変わらない毎日……ではなく。
それはちょっとずつ、だが時には大きな変化が起こっている。
「志満姉から聞いたんだけど、優くんが私たち2人とも貰ってくれるって」
「ほんとっ!? や、そんな事……でも、志満さんからの情報だし……」
「これはもう、優くんを呼んで問い詰めるしかないよね」
「そうだね。優くんもきっと始業式だけで午前終わりだろうし」
学校へ向かうバスの中、あれこれ楽しそうに話している2人のことを朝の光が優しく包み込んでいた。
☆☆☆
日も傾き、空がオレンジに変わる時間。
内浦に1人の少女が降り立った。
長い時間電車に揺られて硬くなった身体を解し、見慣れぬ景色の新鮮な刺激に辺りをキョロキョロと見回している。
「そういえば、彼が住んでいるのもこの辺りだったわよね」
それは事前に親から聞いており、すでに知っていたことであったが。
白々しく、さも今思い出したかのような口ぶりで言葉にし、誰が見ているわけでもないのに照れ隠しをしている少女。
それは良くも悪くも目立っていた。
そのことに気が付いた少女は顔を赤くさせて誤魔化すようにコホンと1つ咳払いをし、そそくさとその場を後にする。
「でも、久しぶりだなぁ。…………会えると、いいな」
言葉ではそう口にしつつも、会いたくないという思いも抱いていた。
それは少女がここへ来た理由と関係があり、今の情けない自分を見られたくないが故に。
──少女と少女たち、そして彼が相見える日はそう遠くない。
To Be Continued...?
これにて「あなたの隣に居たくて」は完結となります。
正確には「あとがき」が残っていますが。
最後の方は間が開いたりとする中、最後まで読んでくださった皆さんに感謝を。
ありがとうございます。
あとがきに色々と書き連ねたいと思います。
(この話の1分後に予約投稿できてたら良いな(願望))
→18時01分にあとがき、予約投稿いたしました。