あなたの隣に居たくて   作:不思議ちゃん

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にわめ

「で、曜が付いていながらこの有様と?」

「面目無い……」

「昨日はたまたま調子が悪かったんだよ!」

 

 翌日、ほとんど真っ白な宿題を前に優はミカンを食べていた。

 対面には正座をしている千歌と曜がおり、苦笑いを浮かべている。

 

 曜はそのまま千歌の家に泊まり込みであったのだが。

 当然、夜も寝転びながらお喋りをし、そのまま寝落ちて翌朝を迎えている。

 

「千歌、今日の調子はどんな感じ?」

「へっ? んー、そこそこ?」

「なら昨日よりも進むね」

「うぇっ!? …………お、お手柔らかに頼みます」

 

 自身の返答が失敗だったことに気がつき、少しでも優しくしてくれるよう頭を下げる千歌だが。

 それは見事にスルーされ、優は曜へと向いていた。

 

「千歌ならまだしも、曜もだなんて珍しいね」

「いやー、昨日はなんだか気が乗らなくて」

「そんな日もあるよね」

「優くん! 私と曜ちゃんの差が酷くない!?」

「日頃の行い」

「それを言われるとちょっと弱いけど……」

 

 お遊びはここまでとした優も持ってきた荷物の中から宿題を取り出し、テーブルの上に広げる。

 それは千歌や曜とほとんど変わらない量であるのにも関わらず、すでに半分ほど終えられていた。

 

「……優くんも同じ学校だったら写せたのに」

「1ページ100円ね」

「お金取るの!?」

 

 当たり前だと言いながら千歌へとデコピンした優は、宿題を進めるように促す。

 そこでようやくシャーペンを手に取った千歌だが、5分と持たずに視線をあっちこっちへと向けたり、隅に落書きを始める。

 

 当然、その様子は優と曜の二人にも見えており。

 優はため息をつき、曜はあははと苦笑いを浮かべる。

 

「教えるからもう少し頑張れ」

「う、うん」

 

 

 

 途中に昼食を挟んだり、曜の分からないところを教えたりしながら優が頑張ること数時間。

 日も傾きかけた頃、半分に届きそうなほど宿題を進めることが出来ていた。

 

「こんなに早く宿題が進むなんて初めてだよ!」

「殆ど僕が解いたようなもんじゃん」

「そ、それはそうだけどさ!」

 

 いい時間になり、優と曜は帰り支度を始める。

 途中、千歌が泊まっていかないかと提案するが、優は泊まる準備がなく、曜は明日、水泳の部活があるため、また今度ということに。

 

「明日、遊びに行くんだから寝坊するなよ」

「しないよ!」

「遅刻したら明日も宿題進めるから」

 

 そんなと声を上げる千歌を残し、優と曜は部屋を後にする。

 綺麗な夕焼け空の下、家の方向が同じため並んで歩きながら帰っているが、二人の間に会話は無い。

 

 だからといって気まずいわけではなく。

 普段から話題があれば話し、そうでなければ別に無理して話そうとしないのがいつの間にか二人の間に出来ていた。

 

 けれど今回、優は気づいていないが、曜は何か話そうとして躊躇うことを何度か繰り返している。

 

 日もほとんど沈み、夜空の割合が大きくなってきた頃。

 ようやく決心がついたのか、一度深呼吸を挟んだのちに曜は口を開く。

 

「ねえ、優く──」

「曜、自転車来てる」

 

 痛く無い程度に曜の手を引っ張り、自身の方へと寄せた優はなんでもない風にしているが。

 された側の曜はそういう訳にもいかず。

 

「顔赤いけど、大丈夫?」

「うん、平気平気。大丈夫」

「それとさっき、何か言いかけて無かった?」

「あー、何話そうとしてたか忘れちゃった」

「よくある」

 

 手を振って誤魔化し、せっかくの決心もどこかへ行ってしまったため、作った笑みを浮かべて忘れたと口にする。

 

 残念ながら曜にもう一度決心がつくことはなく、分かれ道へときてしまう。

 

「暗くなってきたし家まで送っていくよ」

「や、すぐそこだから大丈夫。優くんも気をつけて帰りなよ」

「そう? それじゃ、また」

「うん、またね」

 

 手を振って分かれた曜は少しの間だけ優の後ろ姿を見やり。

 先ほど引かれた手の感触を思い返すかのように手をギュッと握るのであった。




ストックあったら出していきたいから貯められない
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