「昨日遊びに出かけたんだから、その分やる約束だろう。サボらない」
「ううう……この間の優しい教え方がいい……」
「午前そうしてたらやる気無くしてったの千歌だろ?」
「そうだけどー!」
今日の部活は午前だけであったため、昼から合流した曜が見たのはハリセンで頭を叩く優と、叩かれている千歌であった。
会話から何となく流れを察した曜は苦笑いを浮かべながらカバンを置き、自身の宿題をテーブルへと出していく。
「曜ちゃん、制服だと嫌じゃない? 服貸そうか?」
「制服好きだからこのままでも大丈夫だよ」
「そうだったね──痛いっ!?」
会話をした流れから休憩に持っていこうとした千歌はテーブルに置かれているミカンへと手を伸ばすが、目の前で行われようとしているのを優が見逃すわけもなく、ハリセンで手を叩かれていた。
それを見た曜は苦笑しながらミカンを手に取り、皮を剥いて食べ始める。
「優くん! アレは怒らないの! 千歌と同じように手をパーンって! ハリセンで!」
「そんなもん、曜は千歌と違ってしっかりしているから、部活があってもキチンと自分で進めてるに決まってるじゃん。──ねえ、曜?」
「ふぇ?」
扱いの差に納得のいかない千歌はシャーペンをテーブルに放り抗議の声を上げ、納得するまでもう宿題をやらないといった態度をとる。
その様子を冷めた目で見ていた優は理由を説明し、曜へと振るが。
ミカンを4分の1ほど口に含んだ曜は変な声を出し、ピタリと動きを止めて視線を合わせようとしない。
「…………曜?」
まさか違うよね、と確認を込めて優はもう1度名前を呼ぶが。
曜は視線を明後日の方へ向け、ミカンを含んだ口をキュッと結んでいる。
「んっ!?」
このままじゃ何も進まないため、優はテーブルの上に出されている曜の宿題を手に取り、パラパラと中を見ていく。
「…………」
「んっ!」
「……ほら、これでいいだろ」
「良くないっ!」
一通り中を確認した優はハリセンを手に持ち、ペシンと曜の頭を叩く。
どこか嬉しそうにしている曜を不思議に思いながらも触れることはなく、優はさっさと宿題を始めるよう千歌を促すが。
「音が違くない?! 千歌はパシーンで曜ちゃんはペシンだよっ!」
などと訳の分からない事を千歌は口にし、このまま今日は終わりの流れへ持っていこうとしていたが。
「日頃の行い」
「それを言われたら弱い……」
一言で切り捨てられ、大人しくシャーペンを手に持つのであった。
「そう言えばさ」
「ペナ1ね」
「ちょっとした雑談くらい見逃してよ……」
「雑談しながら解けるほど器用じゃないでしょ」
「そうだけど……あ、そろそろ休憩とかいいんじゃない?」
「…………分かったよ」
ペナルティが5貯まるごとに千歌のお小遣いの一部が優へと渡ることになり、しばらくは真面目にやっていたのだが。
それでも限界があり、集中が切れた千歌は休憩の提案を口にする。
初めはもう少しやらせようとしていた優だが、視界の端で曜がミカンへと手を伸ばしているのが見えたため、ため息とともに休憩を認めるのであった。
そう言えばこの話、『近未来ハッピーエンド』と『夏の終わりの雨音が』を聞いてイメージ固まったんですよね