あなたの隣に居たくて   作:不思議ちゃん

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はちわめ

『千歌たち、大人になっても、おじいちゃんおばあちゃんになっても、ずっと、ずーっと一緒に居ようね!』

 

 それは純粋な子どもだからこそ口にしてできる約束事。

 

 まだ男女の違いなど意識する事はなく、いま一緒に遊んでいることが1番楽しいのだとすぐに答えることができる頃。

 

 けれど年を重ねるにつれて否が応でも成長し、世の中の事柄を知っていき。

 

 いつからだろうか。

 

 純粋ではいられなくなってしまうのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「…………はぁ」

「あれ? この前スッキリさせてあげたのに、また溜まってる?」

「誤解を招くような言い方はやめてよ。間違っていないのが微妙に腹立つ」

「ごめんごめん」

 

 朝、部活へ向かう途中の曜が昨日のことを思い返してため息をつけば。

 たまたま途中で会った変態が下ネタを意識するような言葉で返してくる。

 

 内容もそれほど外れているわけでもなく、少し不機嫌であった曜はイラッときており。

 それを察してか軽い謝罪を口にする。

 

「悩み事なら私に相談してごらんよ。今ならひと揉み……いや、ふた揉みで引き受けるよ?」

「それじゃ遠慮しておこうかな」

「言葉と行動が合ってないよ。もしかしてこれがツンデレ? …………いたたたたっ。冗談冗談。ジュースでも奢ってくれれば良し」

 

 遠慮すると口にしておきながら曜は変態の二の腕を掴んでおり、少しづつ力を込めていく。

 そこでまた軽口を叩いたため、ギュッと握り締めれば変態の口から再提案され。

 手を打つという意味を込めて曜は手を離す。

 

「んで、今回はどうしたの?」

「うーん……何から説明したらいいか」

 

 少し考えたのち、曜は口を開き。

 

 好きな人がそこそこモテること。

 1度告白して振られた子と会い、宣戦布告をされたこと。

 大切な友達が同じ人を好きなこと。

 

 それらを簡潔に説明していけば。

 

「なるほどなるほど。つまり曜と千歌っち、幼馴染くんで浸かっていたぬるま湯に溶岩ぶち込まれたわけね」

「別に最初から隠し通せるのは思ってなかったけどさ」

 

 なんか腹立つと口にし、曜は変態の脇腹を突いていく。

 

「やめっ、微妙にくすぐったいんだからっ」

「で、どうしたらいいと思う?」

「曜はどうしたいの?」

 

 思わぬ返しに曜の足が止まる。

 そこから2歩ほど進んだ変態は振り返り、とても楽しそうな笑みを浮かべて口を開く。

 

「前もそうだけど、私はアドバイスしかできないよ。こうしろああしろって私が決めちゃうとそれはもう、曜の恋じゃなくなっちゃうから」

「…………とても楽しそうだね」

「そりゃ、人の恋ほど楽しいものはないですから。馬に蹴られない程度だったらいいじゃん?」

 

 悩んでいる身としては少し思うところがある曜であるが、嫌なら頼まなければいい話であり。

 

「それじゃ、アドバイスとやらをお願いするよ。変態さん」

「うん、まっかせな──えっ、ちょっと私の呼び方に引っかかるところが」

「そもそも、いま何が出来るのかな」

「あれっ、スルー? ……まあ、それほど悪くないから別にいっか」

 

 曜は内心、いいんだと思わなくもなかったが。

 アドバイスを優先し、口にすることはなかった。

 

「まず1つ目としては、2人とも諦めるのが千歌っちと疎遠にならない方法」

「でも、それじゃ他の人に取られない?」

「確かに誰かに取られるだろうけど、少なくとも高校の間は大丈夫だと思うよ。幼馴染くんに付き合う気はないだろうし」

「どうしてそう言い切れるの?」

「幼馴染くんが、曜と千歌っちのことを大切にしてるから」

 

 真っ直ぐはっきりとそう告げられ、曜は照れてし顔を赤くし、そっぽを向く。

 

「おや、おやおやおや。新鮮な反応ですね」

「う、うるさいっ」

「それは理不尽というやつさ」

「次っ、他はっ!」

 

 相談している立場であるため、強く出れないことを分かっている曜は照れ隠しも込めて話を進めるように促す。

 それを変態も分かっているため、ニヤニヤとしながら次を口にする。

 

「2つ目が千歌っちとの仲よりも幼馴染くんを取る。3つ目が千歌っちと幼馴染くんをくっつけて自分は身を引く」

「…………やっぱり、そうなるよね」

「曜を見ているとさ」

 

 急にトーンの変わった話し方に曜は変態へと顔を向ければ。

 いつになく真面目な表情をした友人がそこに立っていた。

 

「なんだか幼馴染くんの隣にいることを強く望んでいるように感じるんだけど、私の気のせい?」

「…………本当に、優秀な変態だね」

「それほどでも。あ、別に理由は話さなくてもいいよ。ただ、その気持ちは大切にしていかないといけないってだけ」

 

 そう口にすると変態は前を向き、歩き始める。

 少し小走りで曜は追いかけて隣へと並び、先ほどの会話を思い返していた。

 

「…………優くんも、千歌ちゃんも欲しいってのは欲張りなのかな」

「ことわざに『二兎を追う者は一兎をも得ず』ってあるけど、そもそも1兎しか追わないものは1兎しか得られないし、やろうとしなければ何も得られないんだよ」

「試してみる価値はあるってこと?」

「曜の気持ちに従って動けばいいんじゃない?」

 

 アドバイスに徹する友人に曜はモヤっとしながらも、そうした方がいいと言われたら後で後悔することも分かっているため。

 

「ありがとね」

「やっぱり私へのデレ期に入ったんじゃ──いたっ」

「せっかく上がった株をすぐ下げるのどうにかしたら?」

「えっ、私の株ってもしかして低い?」

「どーだろうね」

「聞きたい気もするけれど……ここはやっぱりシュレディンガーの株ってことにしておこう」

「ふふっ、なにそれ」

 

 学校も近づき、曜は普段の調子に戻った友人へ苦笑しながら脇腹を突くのであった。




進藤はあくまで着火なので今後出る予定は無いです
変態さんも2回目あるとは思いませんでした
ちなみに名前は『揉丘 桃』(もみおか もも)です
名前に意図しかありませんが本編とは無関係
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