部活を終えた曜は千歌と話をするため、十千万へと向かうが。
目的地そばのバス停に着く直前、なんとなく視線を向けた海辺に見知った顔が2人、向かい合うようにして立っているのが見えた。
「…………ぇ」
夕暮れに染まる空、海へと沈みゆく太陽のため顔は見えないでいるが──あの雰囲気はダメだと曜の中の何かが警鐘を鳴らす。
何かしようと、何かしているのだとしたら。
バスが止まり、荷物を手に降りる曜は部活終わりに友人から言われたことを思い出していた。
『そうそう、1つ大事なことを言い忘れてたんだけど』
『うん?』
『曜みたいに全部を大事にしたいと思っている人もいるけれど、他の何を捨ててでも誰かの1番になりたいって人もいるってこと。──忘れないでね?』
まさか、そんなはずは、と否定しようとしていた曜だが。
果たして本当にそうだろうかと、心のどこかで思っていた疑問は今、目の前にある光景を見て確信へと変わる。
「優くーん! 千歌ちゃーん!」
「よ、曜ちゃんっ」
まだ距離はあるものの、曜は声を大にして2人に呼びかけ、大きく手を振りながら駆け寄っていく。
先ほどよりも近づいたことで表情が見えるようになり。
1人はホッとし、もう1人は曜がここにいる驚きとどこか後ろめたさを漂わせていた。
「部活は終わったの?」
「うん。千歌ちゃんに用があって。優くんも宿題の手伝い?」
「そうそう。ほとんど終わったし、帰る前に気分転換で空気を吸いに」
「そしたら後は私の手伝いだけだね」
手に持っている荷物を軽く掲げる優にまだ終わってないよと、曜は自分を指差してニッコリと笑みを浮かべる。
「曜は自分でもできるじゃん」
「千歌ちゃんだけ贔屓はずるいと思うよ?」
「そしたら僕の面倒は誰が見てくれるのさ」
「優くんは保護者なんだから、仕方ないんだよ」
優自身も薄々分かっていたのか、苦笑しながら頷く。
「それじゃこれから僕、駅に用があるからまた今度ね」
「うん、またね」
「ま、またね」
手を振って優はこの場を後にし、残ったのはどこか変な空気と千歌、曜であった。
話をしても聞こえないであろう距離まで優が離れたのを見て、曜は千歌へと向き直るが。
千歌は悪いことをして叱られる直前の子供みたいであり、視線を合わせようとせず砂浜ばかりを見ていた。
「ね、千歌ちゃん」
「…………うん」
名前を呼ばれ、ビクッと肩を震わせた千歌は恐る恐る曜へと顔を向ける。
怒っているのか、悲しんでいるのか。
もしかしたら絶交と言われるかもしれない不安を千歌を襲うが。
仕方ないと納得している部分もあった。
先に抜け駆けをしようとしたのは自分であるのだから。
「…………ぇ」
だからこそ顔を上げて曜を見た時、何故そのような表情をしているのか分からず、千歌は困惑した。
照れと覚悟、そしてどこか寂しさのようなものを感じさせる表情にまた違った不安を抱き。
何か言わなければと、纏まっていない思考ながら口を開くよりも曜が早かった。
「千歌ちゃん。私ね、好きな人がいるの」
それを聞いて、千歌は全て分かったような気がした。
「私、優くんのことが好き」
「…………ぁ、で、でも」
曜がここに来た理由に考えが至り、そしてそれを千歌自身が台無しにしてしまった事を。
外れてほしい事であったが、曜が、場所が、そして今の自分が間違っていない事を証明していた。
「前に千歌ちゃん、言ってくれたよね。私に好きな人ができたら応援してくれるって」
「う、うん……」
今からでもどうにかできないかと言い訳しようにも、非が全部千歌自身にあるため、うまく言葉にならず。
「私と優くんが上手くいくよう、応援してね!」
「…………うん」
今にも泣きそうなのを千歌はグッと堪え。
無理やり笑みを浮かべ、頷くのであった。
やっぱり自分に予約投稿は合わないみたいなので
これを最後に書けたら載せるに切り替えます
証拠隠滅兼ねて前の後書きは消しておきます
ミスって予約投稿しないで載せたのでこのままにします