沖田さんと暮らす/ぐだぐだアナザーデイズ   作:マフ30

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またやっちゃったぜ(理性蒸発)
今度はちゃんとぐだ沖に挑みましたとも。
キャラ崩壊有ります、解釈違いあります。
それでも沖田さんへの愛だけは誰にも負けないんだから。

こんな私の駄文ですが、お付き合いいただけると幸いです。



愛しき君の手を取りて

 燃えるような夕焼け空に少しずつ深い濃紺の夜が混じり始めたそんな一日の終わり。

 とある地方都市・冬木の新都にあるイタリア料理の達人が店主をしている喫茶店から一人の青年が仕事を終えて店の裏口から外に出てきた。

 名を藤丸立夏というこの青年がかつて、二度に渡って訪れた世界の危機を救うために尽力した善き人々の一人であり、人類最後のマスターと呼ばれていたことを知る者は余りいない。

 

「マスター! 今日もお勤め、お疲れ様でした」

 

 大きく伸びをしながら我が家へ向かって歩き始めた彼の姿を確認して、ずっと物陰で様子を窺っていたその小柄な人影は小粋な着物を木枯らしに揺らして歩み寄った。両手にはタイムセールを狙って方々から買い漁った食材や日用品が詰まった買い物袋が握られている。

 

「沖田さん? 迎えに来てくれたの!?」

「陽が落ちるのも早くなってきたことですし、不逞の輩がマスターの帰りの道中に現れては一大事と、沖田さん参上しちゃいました」

 

 大和撫子を絵に描いたような可憐な少女はハイカラな桜色の和装姿を卒に着こなし、軽い足取りで彼の元まで行くと春の日向のような笑顔を見せた。

 

 彼女の名は沖田総司。

 激動の幕末を誠の旗のもとに鮮烈に生きた日本最後にして最大最強の剣各集団・新撰組。

 その一番隊隊長を担った薄命の天才剣士と謳われたその人である。

  (セイバー)英霊(サーヴァント)として、藤丸立夏の人理修復の旅を最初期から支え続けた誰よりも心強い半身のような存在でもあったことを知る者は平和になったこの世界では余りいない。

 

 これは相思相愛になった二人がカルデアを旅立ち、数奇な縁で居を構えることになった冬木で繰り広げる、ささやかな日常の物語。

 

 

 

 

「ちょっと早いけど、ただいま沖田さん。わざわざ迎えに来てくれてありがとう」

 

 普段なら家で留守を預かる私のまさかの出迎えにマスターは目を丸くして驚き、すぐに嬉しさで顔を緩めた。まるで私を見ただけで仕事の疲れなんて吹き飛んでしまうと彼の顔に書いてあるようで思わず自分の体温が上がっていくのを感じる。

 この火照りが生前の忌まわしき由来で英霊としても纏わりついてくる病弱のスキルに依るものではない、全く別の意味があるのだと知ったこの身にはそれが少しこそばゆい。

 沖田さんとしても彼の顔を見るだけで手練の主婦の方々を相手取り、特売品を手に入れた苦労などは一瞬で霧散してしまいますとも。

 

「えっと……いえ、嘘はいけませんね。本当のことを言うと私の方が辛抱たまらずマスターの顔を見たくなってしまったもので」

「もしかして、俺の仕事が終わるまでずっと待っててくれたの? 店の中に入ってくれれば良かったのに……」

「ご安心ください。買い物帰りにふと時間を確認したら丁度頃合いの時間だったもので、それに……」

 

 すっかり冷たくなった十月の風を共に浴びながら、私を心配していま一歩近くへと寄るマスターのあどけなさを残しつつ、少し精悍になったお顔に鼓動が早まっていくのを自覚する。

 ああ、私は本当にこの青年を好いているのだなと。

 カルデアにいた頃からどんな出自や功罪を積み重ねた英霊が相手でも分け隔てなく接していた彼が自分だけを案じてくれることが身に余る幸せだと分かっているから、隠し事は極力したくない。例えそれがどんなに気恥ずかしいことだったとしても。

 

「それにマスターの職場に厚かましくお邪魔してはお仕事の邪魔でしょうし、何より貴方が働いている姿を見物するのが癖になって入り浸ってしまうかもですし」

「ははは。確かにそれはちょっと不味いかもね。沖田さんには二人の我が家を守ってもらわなくちゃいけないから」

「はい! それはもちろん! 折角、親切なご隠居殿からお借りした素敵なおうちです。賊の一匹とてこの天才無敵の沖田さんが許しませんとも!」

「心強いよ、沖田さん。流石幕末の天才剣士だ」

「ふふーん♪ 美少女を付けるのを忘れてもらっては困りますとも! 以前誓ったようにマスターの旅路は冥府の果てまで万事沖田さんにお任せです!!」

 

 言葉に出すと恥ずかしさのあまりに思わず吐血してしまいそうになってくる惚気の応酬になりかけて、ありがたく彼の方から助け船を出してもらいました。

 きっと、顔は茹で蛸のように真っ赤になっているでしょうけど、新撰組お得意の気合と意気込みでどうにか話題を逸らすことが出来ました。

 ええ。勿論ですとも、マスター。

 貴方を守る一切合切の事柄ならば、いまの沖田さんは誰が相手だろうと胸を張って得意気に答えることが出来る。

 かつての私では至ることの出来なかった心の境地に、貴方が導いてくれたのですよ?

 

「暗くなるともっと冷え込むから、そろそろ帰ろうか?」

「クス、そうですね。マスターのお腹も早く満たしてあげないといけませんし」

「沖田さんの作るご飯が待ち遠しいよ」

 

 そう言って、屈託のない笑顔を見せて差し出された彼の手を握って、私たちは家路につく。少し、立ち話に熱が入ってしまったせいか空には一番星が瞬き始めていた。

 男性らしい、少し強張ったマスターの手がとてもあたたかくて、心地がいい。

 

「今度の休みはちょっと頑張って離れの道場の修理をしようかなって思ってるんだ」

「おや、それはまた突然。鍛錬でもするおつもりですか、マスター?」

 

 大きな橋を渡って、生前の記憶を懐かしむような風情あふれる昔ながらの邸宅が数多く建ち並ぶ深山町の人気が少なくなった夜道を二人で歩く。

 この町のちょうど北寄りにある年季のある和屋敷がいまの私たちの住まいだ。

 この手の見識には疎い私でも分かる立派なお屋敷なのですが冬木に来て早々に偶然に知り合った風格のあるご隠居殿から屋敷の保護管理を条件に格安でお借りすることが出来たのはきっと、マスターのこれまで重ねた苦労が報われた賜物だと思いたい。

 

「俺も身体鍛えられるからそれもあるんだけど、沖田さんと一緒に居て道場を無碍にしたままなのはやっぱりなんだかなーって思ってさ」

「私は別に、マスターさえ一緒に居てくれればどこでも大満足なのですがそういうものなのですか?」

「うん。もう戦ってもらう必要はないと思いたいけど、それとは別に沖田さんの剣捌きはまた見てみたいというか。沖田さんの剣はすごく綺麗で恰好良いからね」

「そ、そうでしょうか……私なんて、そんな」

 

 そういって、私の手を握るマスターの手に少し力が入る。親愛と憧憬が混じった温かな彼の熱がじんわりと伝わってくるのが分かって、無意識に口元が緩んでしまう。

 彼は私の手を好きだとよく言ってくれる。

 剣しか取り柄のない人斬りの私の、無数の血が染みついた無骨な手をだ。

 肌の白さには多少自信はありますがそれでも私の手は幼い頃からの稽古で出来た竹刀ダコだらけの可愛げのない手です。

 だけど、マスターはそんな私の手だからこそ好きだと言ってくれます。

 未熟者の自分をずっと命の危機から助けてくれた沖田さんの手だから、何より安心できるんだと、初めて私に打ち明けてくれた時の照れ臭そうな顔をいまでも鮮明に思い出せる。

 

「ほら、また私なんてってネガティブなこと言って……そんなことないよ。ずっと沖田さんに助けられてきた俺が言うんだ。保証する」

 

 少しだけ私が血雨を浴び戦っていた日々を回想して、申し訳なさそうに顔を暗くさせ、それでもキラキラと瞳を輝かせて力説する彼になんだか私まで気恥ずかしくなってしまいます。

 主義も思想も持たずに誠の旗の下、近藤さんや土方さん――身内の兄貴分と慕って、いつしか上司と部下という間柄になっていた彼らに命じられるがまま幾人もの敵を斬り捨ててきた。当時、誰も彼もが始末の悪い人斬りだと恐れ蔑んだ私の剣をマスターはいつもこんな風に言ってくれる。

 誰かのために思う存分剣を振るい、誰かのお役に立てることにこんなにも喜びを見出せることになるなんて、江戸の片隅で布団の上で独り恨めしく蒼穹を仰いだあの日には考えられないことです。

 

「もちろん。沖田さんが嫌ならやめるけど、どうだろう?」

「……マスターの心の向くままにおやりになって下さい」

 

 チラリとこちらを覗き込む眼差しに彼の優しい気遣いを感じて、私は出来るだけ淑やか声で答えた。

 マスター。貴方は無欲で、優しくて、血生臭い時代を生きた我々英霊からすれば呆れてしまうほどお人好しで――もっと、思うがままに生きて良いのですよ。

 私の前でだけならば、もっと我儘を言って、好き放題に欲を出してしまってよいのです。受け止める覚悟はええ、きっと……その、ご要望によっては気持ちの準備がいるものもあるかもですが、ちゃんと出来ていますので!この沖田さんにお任せを!!

 

「ご安心ください。天才無敵の沖田さんは剣でも包丁でもマスターのご期待通りに振るって御覧に見せますとも! なんたって、幕末の天才剣士ですので」

「大事な美少女が抜けてるよ、沖田さん?」

「ふぇ? あ、はい……や、それはズルイですよぉマスター」

 

 悪戯っ子のような笑みを浮かべて、そんなことを指摘してくる彼の言葉が不意打ちに胸に響いて私の心はいとも簡単にボヤ騒ぎです。

 耳まで紅に染め上げられた顔に嬉し恥ずかしでダラダラと汗を垂らしてむくれてみせる。本当はカルデアでよく遊んであげていた子ども組サーヴァントたちを真似て、左片手だけですがポカポカと彼の胸元でも軽く叩いてじゃれついてみようかとも思いましたが生憎と大事な戦利品が詰まった買い物袋で塞がっていますので、今回は自重しておきます。

 

「ごめんね。機嫌直してよ? 明日の帰りにお団子でもお土産に買ってくるからさ」

「むぅ……甘味で釣ろうとしてもダメですよ。沖田さんはそんなので流される安い女じゃありませんですし」

 

 そういって、ちょっと芝居掛った物言いでそれっぽく口を尖らせてみせる。

 困ったように笑って、どうしたものかとあれこれ思案している彼を横目で眺めるとにやにやとほくそ笑んでいる自分を自覚した。

 欲深な女かもしれないが、こんな風にすることで彼が私に構ってくれることがまるで彼のことを独り占め出来ている様な気になれて密かに楽しい。

 無論、彼の方も私のコレが本気の不平不満では無くて男女の色恋成分を少し増したやり取りをして戯れたいための口実だと理解している。

 つまりはその――沖田さんはマスターといつでもどこでも可能ならばイチャイチャしたいのですよ。

 

「では、優しい沖田さんは大切なマスターのために交換条件を出すことで妥協してあげましょう」

「ふふ……手厚い温情に感謝するよ、沖田さん。それで俺はどうすればいいの?」

「ま、まずはですね……この手をこ、こうします」

 

 そう言ってから、私は彼と繋いでいた手を一度離してから握り直した。お互いの指と指を絡め組ませたような握り方。確か、鈴鹿さんが教えてくれた呼び名は恋人つなぎ――はわぁぁ……なんだか呼び名を思い出すとこっちのほうが緊張してしまいます。

 

「こ、今度から手を繋ぐ時はこの形でお願いします」

「分かった。が、がんばるよ」

 

 彼も恥ずかしいのだろうか?

 どこかぎこちない強張った表情で笑っています。

 ははーん、これは沖田さんが一本取ってしまいましたね。

 いやいや、それにしてもマスターのこの顔もまた可愛らしくて乙なものと言うやつですかね。近頃は出会った当初と比べると優しい顔立ちのままに男前さも上がっているような気もして、伴侶である沖田さんも鼻がたか――。

 

「ひゃん!? ま、ますたぁ……不意打ちとは卑怯ですよぉ」

 

 勝ち誇っていた私の、彼と繋げたままの右手を襲った甘い刺激。

 こみ上げてくる胸の高鳴りを抑えながらどうにか脹れっ面で彼を睨んでみるとそこにはしてやったりと静かに口角を吊り上げながら、私の手を優しく包むようににぎにぎと愛撫するかのように握ってくる彼がいました。

 

「いやぁ……沖田さんが可愛くてつい、ね」

「ほ、褒めてもダメですよ。反省していないマスターにはキツイお仕置きが必要とお見受けしました」

「ごめんごめん。今度はちゃんと反省するから大目に見てくれない?」

「だーめーでーす! ごめんで済んだら新撰組は要らないんですからね」

「たはは……これは土方さん仕込みのキツい拷問の刑かな?」

「いやー、私も多少心得はありますがあそこまでの天職というわけでは……と言うか、マスターは受ける側に興味がお有りで!?」

「滅相もございません!」

 

 はは、駄目ですね。

 しゅんと沈んだ彼の声も、険しい声で窘める私の声にも、いま二人の平和で他愛のない時間を分かち合える喜びが隠せていない。

 我ながら、かつての自分がいまの私を見たら何を思うのかと自問自答したくなるぐらいにこの騒がしくもどこかまだぎこちない彼との蜜月に酔っているのだろう。

 叶う物なら、この蜜月が少しでも長く続いてもらいたいものです。

 ほら、こんな風に賑やかにお喋りを続けていたらあっという間に我が家が見えてきました。おふざけはこれぐらいにして、そろそろ我がマスターを許してあげるとしましょうか。  

 でも、その前に慣れぬ色恋に酔っている間にもう一つほど羽目を外してみても罰は当たらないでしょう。二人で屋敷の正門を通って玄関に入ったところで私は彼に切り出すことにした。

 

「マスター、期間限定クエストの発生です。これを達成したら先程の狼藉は全部水に流して差し上げましょう。立ち向かう勇気はありますか?」

「もちろん! 望むところだよ、沖田さん」

 

 両手で握り拳を作って頷くマスター。

 良いですね。意気地のある男子は沖田さんも見ていて気持ちがいいですよ。

 さて、これから本当に勇気と意気地が必要になって来るのは私ですので負けていられません。

 

「では――クエスト、開始……です」

 

 期待感といくらかの恥じらいで少し上擦ってしまった声でそう言って私は買い物袋を降ろして両手がガラ空きになった彼の胸へと飛び込んだ。

 一歩、音超え――と斬り合いの様に思い切り良く踏み込めれば良いものを残念ながら今はまだ二、三歩ほど躊躇い、足踏みしながら。

 きっと、衆目がある往来なんかでは絶対に出来ない。二人きりの我が家で、相当に覚悟か自棄になっていないと出来ないこの世で一番大切な彼に向けた求愛行動。

 

「お、沖田さん……!?」

「マスターの思うままに、いまの沖田さんの心情を汲んで満足させてみて下さい」

「う、うん……いくよ」

 

 彼の男性らしい胸板に顔を埋めて、熱い吐息を漏らしながら消えそうな声で呟いた。早鐘を打つ彼の心臓の鼓動がなんだか心を落ち着かせる。

 ここにきて初めて動揺して、余裕のなさそうにあたふたする彼の声を聞くと、マスターもまだまだ初心なところがあるとちょっと安心する。

 土方さんもそうですがカルデアには恋多き殿方たちも沢山いましたから、あれこれとそういった悪知恵を無駄に多く授けられていてはこちらが苦戦するばかりで大変だったことでしょう。

 こうして、深く密着したことで彼が私の思い切った行動にうろたえて、悶々と小刻みに震えているのも分かってしまう。この様子なら、私とマスターの色恋沙汰の経験値や実力はおそらく互角といったところでしょうか?

 そんなことを惚気出した頭で考えていると腹を括ったであろう彼の両腕がそっと私を抱きしめた。

 まるでガラス細工に触れるように繊細で優しい手つきで、けれど絶対に手放すものかという決意のような気持ちを感じさせる力加減で私の華奢な身体を抱きしめてくれている。

 それから、さっき私を散々からかってくれた右手で頭を撫でてくれた。何度も何度も、愛しげに私のことをしっかりと感じるように大事そうに撫でてくれる。

 

「どう、かな……沖田さんを満足させられた?」

「はい。素敵なマスターには花丸をつけてあげましょう」

 

 彼の想いを全身で堪能して、何度気を張ろうとしてもだらしなく頬が緩んでしまいます。

 結局、このあとお互いのお腹が空腹に耐えかねて大きな音を鳴らすまでずっとマスターの抱擁を心ゆくまで楽しんでいました。

 こんな日がこれからも毎日続くと思うと生前やカルデアで過ごしていた日々には感じることのなかった新しい胸の高鳴りが止りません。

 マスター。いえ、藤丸立夏(大切なあなた)

 こんな不束な私ですがこれからもどうかよろしくお願いしますとも。

 

 

 

 

 私の真名は沖田総司。

 かつて、人類最後のマスターの力の一端として一振りの(つるぎ)として在った剣の英霊の影法師は既に非ず。いまは天下太平の当代を心より慕う一人の青年の傍らにて共に歩む者。

 されど、人斬りが不要になったこの平和な世界であろうと剣に生きた我が身は決して(なまくら)には非ず。

 ただ只管に私は愛しき人(マスター)を守り続ける護り刀として……いつまでも、どこまでもお傍に居ようと彼と共に取り戻した極み知れぬこの蒼穹に誓おう。

 

 改めまして、沖田さん大勝利です!!

 

 

 





こんな感じでついに手を出してしまったぐだ沖SS
今回は主に沖田さん視点でしたが地の分はころころと変わると思います。
兎に角、我が妄想と愛が枯渇するまでは不定期にこのような混沌を投稿するかと思います。

ご意見、ご感想を頂けるとこの愚作者は尻尾を振って喜び、投稿ペースが縮地みたいに早くなる可能性もあるかもです(リアル仕事事情応相談)
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