スーパー戦隊このすばメガフォース VS 仮面ライダー剣 サンドリオンウォーリアーズ the end of Cendrillon Warriors   作:伊勢村誠三

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彼は安らかに眠れない。


現実/幻想

1

「破壊者よ!悪魔よ!

虚無より進化のための敵であれと定められたバトルファイトのマスターよ!

今ここに俺は!最後のアンデッドとなったぞ!

俺の願いを叶えよ!」

 

愉快、心の底から愉快と言わんばかりの嘲笑が世界そのものから響き渡る。

赤い捻れたオブジェクトがジョーカーの前に降り立った。

 

「俺は万能の力を放棄する。

その代わりにこの世界で生み出されていない全てと!

俺以外の仮面ライダーであった全てを追い出せ!」

 

やめろ。やめてくれ!

叫ぶ。叫び続けるがその声は届かない。

まるで通信機能のない画面越しに呼びかける様に。

 

「ブレイド!お前は、人間の中で生き続けろ。

俺たちは二度と会うこともない。

触れ合うこともない。それでいいんだ…。」

 

何も良くない!

そう叫ぶ自分の声で目が覚める。

見慣れない天井。

合わない枕に趣味じゃない寝巻き。

全部が全部坂井直人と、多くの人から『騎士くん』と慕われたかつて居た誰かからの借り物。

 

時計を見ればまだようやく2時になったぐらい。

結局なかなか寝付けなかったのも有って3時間も寝れてない。

ここ半年間ずっとそうだ。

 

「なんでだよ…ハジメ、なんでなんだ!」

 

思わず壁を殴りつける。

どうせ角部屋だし上にも横にも人は居ない。

居たとしても関係ないが。

 

「なんで俺も連れて行ってくれなかったんだ!」

 

慟哭は誰にも聞こえない。

彼の、坂井直人の身体に収まったブレイドの、

現実世界では極めて無力なかつて仮面ライダー(最強の勇者)だった男はだらだらと消えることも出来ず日々を過ごしていた。

 

 

 

2

(bgm オルフェノク出現)

 

そこにだけ光が吸い込まれた様な満月が浮かぶ夜。

森の中を1人の少女が走っていた。

薄い緑色のパジャマ一枚で靴などは履いていない。

まるで寝ていた所をそのまま放り出された様な格好のまま彼女は奴から逃げていた。

 

「はっ!はっ!はっ!はっ!」

 

「はぁ!」

 

その奴はジャンプで寝巻きの少女の前に出た。

光る黄色い血管の様なラインが走るスーツと肩の尖った鎧にどこかバッタを思わせる紫色の目の仮面の異形の戦士。

 

「か、仮面、ライダー?」

 

少女の呼びかけを無視して異形の戦士は少女の首を掴み上げた。

思い切り力を込め、少女の首をへし折る。

 

「お疲れ様。」

 

異形の戦士に馴れ馴れしく話しかけながら1人の若い男が出て来た。

黒いズボンに黒いシャツ。

その上に白い上着を羽織った茶髪(どうやら染色している)の男。

手には奇妙なかカードリーダーのついた銃を持っており、その中に今まさに少女を殺害した戦士の、仮面ライダーカイザの紋章の書かれたカードが収まっていた。

 

「さて、後3人か。

取り敢えず次からは椿ヶ丘周辺に固まってる筈だから探すのは楽かな?

人の来ない森とはいえ、死体の処理は任せたよ。」

 

若い男はカイザにそう告げると銀色のカーテンの様な幕状のエネルギーを展開してその中を潜って去って行った。

 

 

 

3

1度目が覚めると簡単には寝付けないブレイドは朝の6時まで坂井直人のゲームやDVDを見て時間を潰した。

そして6時になると顔を洗って野菜を切ってベーコンと卵とチーズを乗せた食パンを焼いて黙々とそれを食べると歯を磨いて制服に着替え家を出た。

鋼の建物が立ち並び排気ガスの混じった空気にただただ不快感を感じながら極めて億劫に家を出た。

 

学校までは徒歩で行ける。

それこそ雨でも雪でもよっぽど寝坊しないぐらい近い距離だが極めてゆっくりと行く。

遅刻ギリギリで着くためだ。

早く着いて誰かに話しかけられる事さえ彼にとっては苦痛だ。

 

「直人くん!」

 

そして坂井直人や騎士くんと呼ばれる事はもっと苦痛だ。

 

「………。」

 

振り向くとそこに居たのは明るい短い茶髪の少女だ。

その声や姿はブレイドにも見覚えがある。

トゥインクルウィッシュのヒヨリだ。

 

「何の用だ?」

 

「!? やっぱり直人くんなんだよね?」

 

皆そう呼ぶ。

ユイもレイもサレンもなかよし部やリトルリリカルや模索路晶やノウェムやオクトーも皆そう呼ぶ。

もう誰もブレイドとは呼んでくれない。

その事実が心を黒い物で覆っていた。

泥の様なそれはポタポタとゆっくり、だが確かに溜まっていっている。

 

「悪いけど今急いでるんだ。」

 

嘘をついた。

けどそうしてでも、1秒でも彼女と居たくない。

 

「ま、待ってよ!」

 

腕を掴まれた。

アストルムの時に誰かに触れられた時と変わらない感触。

けど今のブレイドには確かにそこに隔たりがある様に思えた。

 

「図書館で不良に絡まれて8対1のケンカでボコボコに返り討ちにしたって本当?

ナイフ持って襲いかかってきたストーカーを警察病棟送りにしたって本当?」

 

随分噂に尾鰭が付いてる。

確かに絡んで来たのは8人だがうち5人はビビって途中で逃げたから骨折させてやったのは3人だけだしエリコは鍵開けこそしたが武器までは持ってなかった。

 

「直人くん本当に大丈夫なの!?」

 

「噂を信じすぎだ。」

 

ここにいるぐらいならと思って学校に急ぐことにした。

 

「ちゃんと目を見て答えてよ!

皆直人くんのこと心配してるんだよ!」

 

「お前らが心配してるのは僕じゃないだろ!」

 

気が付いたらヒヨリを振り払って殴っていた。

鼻血を出した彼女が信じられない物を見る目をしている。

 

「坂井直人なんてカスみたいなカケラしか残ってねぇよ!

僕はブレイドだ!確かに坂井直人がベースだけど間違いなく俺には覇瞳皇帝に皆と戦った坂井直人とは別の物語がある!

ハジメを犠牲にしてのうのうと生きてる情け無い物語が!

なのにお前らは直人直人直人直人!

僕を裁いてすらくれないのかよ!

僕を救えなかった英雄と蔑むどころか一度はアストルムを救った英雄坂井直人のレッテルを貼るのかよ!

ふざけんな!僕は自分が1番嫌いなのに!

僕が1番なりたかった者を僕に見せるな!」

 

何を喚き散らしてるんだ。

ヒヨリに当たり散らして何になるんだ。

頭では分かっていても止められなかった。

一通り吐き散らすと俺はその場を去った。

もう学校にも行きたくない。

いつもの様にユイが絡んで来るはずだ。

 

(今日はもうサボろう。何もやりたくない。)

 

財布の中身が昼飯食えるぐらいには有るのを確認してブレイドは街に繰り出した。




用語解説
坂井直人
・プリンセスコネクト!の主人公
・本作ではブレイドのベースとなった人物。
・坂井直人を復元しようとして失敗した結果出来上がったのがブレイドである。
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