【完結】機動戦士ガンダム外伝 ノエル中尉奮戦記   作:B.I.G

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MISSION 9 「歴戦のサイクロプス」

出来損ない(グリナス・ヘッド)が起動しただと!?俺とした事が……間抜けだな』

 

『隊長、ご無事で!まさか動けるとは……』

 

 オーガスタ基地を襲撃した特殊部隊"サイクロプス隊"

 隊長であるベテランパイロット、ハーディ・シュタイナー大尉は、アレックスから放たれた弾丸をすんでのところで回避する。

 

 本来であれば搬入時の隙を突いて基地を強襲し、電撃的に新型ガンダムを破壊もしくは奪取する作戦だったが、目標が起動した今では奪取する事は極めて困難だ。

 今は数的有利の状況だが、時間をかければ混乱した基地機能も回復し、ジリ貧になる事は明白だった。

 

『だが、戦場では経験がモノをいう!そのような拙い動きで我々に挑んでくるとは……!アンディ、ガルシア、援護しろ!出来損ないを破壊する!』

 

 シュタイナーの乗る機体はMSM-07E ズゴックE。

 統合整備計画の一環で開発された機体で、ズゴックの性能を引き継ぎつつも、同機体の地上運用後に見つかった問題点をクリアするため開発された試験機だ。

 キャリフォルニアベースで製造された機体で、水陸両用機のカテゴリでありながら陸戦用MSとしても高い性能を誇る傑作機である。

 

『へへっ!了解です、隊長!』

 

『逃がしはしないぜ!攻撃を開始します!』

 

 "サイクロプス隊"の古参メンバーであるガブリエル・ラミレス・ガルシア軍曹とアンディ・ストロース少尉がシュタイナーに応える。

 

 彼らが乗るのは、水色の流線型ボディが特徴的なMS、MSM-03C ハイゴッグ。

 ズゴックEと同じく統合整備計画においてゴッグを再設計した機体であり、主に機動性や運動性、攻撃力の向上などが図られているが、代わりに防御力が低下している。

 オプション装備として背部ジェット・パックやハンド・ミサイル・ユニットを装着可能で、強襲用MSとしても高い性能を誇る機体だ。

 

『我々も遊びで来ているわけではないのでな!早々にケリをつける!』

 

 格納庫から出てきたアレックスの動き方を見て、シュタイナーはパイロットが機体を操りきれていない事を瞬時に看過する。どことなくぎこちない動きで、慎重に操作しているように彼からは見受けられた。

 

 勿論、それを見逃すサイクロプス隊のメンバーでは無い。両腕部に内臓されたメガ粒子砲をズゴックEとハイゴッグがアレックス目掛けて乱射するが、予想以上に機敏な動きでそれを回避するアレックス。だが──

 

『避けてばかりでは勝つ事は出来んぞ!』

 

 水陸両用機とは思えぬ俊敏な動きで、アレックスに向けてバイス・クローを突き出すズゴックE。

 機体性能では劣っていても、幾度となく修羅場を潜り抜けてきた特殊部隊の実力は伊達では無い。

 

 

 

 

『マッケンジー中尉、何をやっている!アレックスは完全では無いんだぞ!それに君では……!』

 

『このままむざむざとアレックスが破壊されるのを見ているワケにはいかなかったんです!やらせて下さい!』

 

 懸命にアレックスを操縦し、ズゴックEとハイゴッグの猛攻を凌ぐクリス。スチュアートから通信が入るが、この状況で何もせずに逃げる事など彼女には耐えられる事では無かったし、G-4部隊としてもアレックスを失うワケにはいかない。

 

 一瞬逡巡したスチュアートだが、アレックスをそのままクリスに任せて敵を撃破させる決断を下す。

 アレックスが破壊されれば自身の責任追求は免れないだろうが、この状況ではアレックスだけ逃す事など出来ようも無い。彼は腹を括った。

 

『──すぐにデルタ・チームのMSが合流する!あと40秒凌いで、協力して敵を撃破せよ!……頼むぞ、マッケンジー中尉!責任は私が取る!』

 

『了解……!G-4部隊の名にかけて、凌いでみせる!』

 

 アレックスの装備は予備パーツと共に先にトロイホースへ搬入されていた為、丸腰の状態だ。

 両腕部に90mmガトリング砲が内臓されているが、手持ち武装と比べれば圧倒的に弾数が少ない。

 考えなしに乱射してしまえば一瞬で弾切れになり、残る武装はビーム・サーベルのみとなってしまう。

 

(敏感な機体だからって……耐えるくらいなら、私でも!)

 

 それでもあと数十秒凌げれば良い。

 90mmガトリング砲を牽制に使いながら、アレックスの圧倒的な機動性を出来うる限り使って、クリスは敵の攻撃を躱しきる。

 

 

──"凶鳥"が降り立つまでの時間を、彼女は耐え抜いた。

 

 

『──クリスとアレックスはやらせない』

 

 アレックスに迫るズゴックEの前に、赤い目を光らせたフルアーマー・ガンダムFSDが降り立った。

 

 

 

 

『連邦のヒヨッコどもが……さぁ来い!戦い方を教えてやる!』

 

 コクピットで酒の入ったスキットルを呷りながら、ミハイル・カミンスキー中尉は遠巻きにこちらを包囲するジム・コマンドを威嚇する。

 既に何体ものジムが彼の駆るMS、MS-18E ケンプファーによって撃破され屍の山を築いていた。

 

 ケンプファーは大推力のスラスター及び姿勢制御用バーニアを全身に装備した強襲用MSで、ショットガンやバズーカなどの実体弾系統の武装を全身にジョイントパーツで保持する事が可能となっている。

 ジオンのMSとしては珍しく近接武装としてビーム・サーベルを装備しており、その性能はガンダムタイプにも匹敵する高性能機だ。

 

『調子に乗りやがって!これでも食らいな!』

 

『おっと!シロウトばかりの連邦でも、少しはマシな奴もいるらしいなぁ!?』

 

 随伴機のザクIIこそノエルに続いて撃墜していたアニッシュだが、それ以降は相手のペースに乗せられている。

 

──早くガンダム二機の援護に向かわなくてはならない。

 焦るアニッシュだが、目の前の相手はそれを簡単に許してくれる程優しい相手では無い事は痛い程分かっていた。

 

 膠着状態に焦れたアニッシュのジム・スナイパーカスタムが単機でケンプファーに突貫する。

 足元に転がっていたジムのシールドをケンプファーに向けて放り投げると、避ける隙を狙って二丁装備のビーム・ガンで射撃戦を仕掛けた。

 

『ちぃっ!こうも速いかよ!スカーレット隊、援護してくれ!』

 

『りょ、了解!……う、うわぁっ!』

 

 大出力スラスターを吹かして強引に光弾を回避するケンプファーのスピードは、強化されているスナイパーカスタムのソレを遥かに上回っていた。

 

 ビーム・ガンを連射するが、あっという間に有効射程外へ逃れるケンプファーに舌打ちをするアニッシュ。

 スカーレット隊のジム・コマンドが100mmマシンガンで援護するが、回避しながらケンプファーが放ったショットガンで機体を穴だらけにされて沈黙する。 

 

 ケンプファー一機に手を焼いている状況だが、敵はそれだけでは無い。二機のドムがまた一機、基地守備隊のジムにヒート・サーベルを突き刺して撃破しているのが見て取れる。

 

『こちらデルタ・スリー!少々まずい事になってる。デルタ・ツー、援護は出来るか?』

 

 

 

 

『──こちらデルタ・ツー、任せておけ。まずはスカート付きを仕留める』

 

 一旦はノエルのフルアーマー・ガンダムFSDに追従して引き返したラリーだったが、戦況を鑑みて独自の判断で行動を変更。

 長射程狙撃に優れたスナイパーIIと75mmスナイパー・ライフルの性能を最大限に活かせる場所──トロイホースの()()()にラリーは自機を移動させていた。

 

『………………』

 

 アニッシュからの通信に返答を返した後、ラリーは無言で射撃用スコープに表示されるレティクルにドムを捉え、狙撃するタイミングを図る。

 ターゲットはホバーで縦横無尽に移動する相手だ。狙撃する相手としては非常に難度が高い。

 

 ジャブロー防衛戦で使用したロングレンジ・ビーム・ライフルは貫通力と直進性に優れた武器だった上に、ターゲットは複雑な回避行動を取らないガウ攻撃空母だった。

 それに引き換え、今回装備している75mmスナイパー・ライフルは実体弾を使用する狙撃銃で、ビームとは違い実弾は風速、気温、距離、湿度等の影響を受ける。

 

 勿論、精密射撃用センサーとスナイパーIIのコンピューターが細かい計算を行うが、トリガーを引くのはパイロット自身だ。コンピューターの指示通りに撃って百発百中ならこれほど楽なものは無いが、最後に狙撃手(スナイパー)が頼るのは自分の経験則に他ならない。

 

『────っ!』

 

 狙い澄ました一撃は、寸分の狙いの狂いも無くドムの腹部に直撃する。重装甲を誇るドムと言えど、高初速で発射される狙撃銃の一撃を耐える事は難しい。

 

 一機目を仕留めても、ラリーは表情を緩めない。

 

 僚機が狙撃でやられた事に気付いたもう一機のドムが、基地防衛隊のジムを無視してこちらに向かってくるのが見える。

 不規則な機動でこちらに狙いを付けさせない腕前は大したものだ、とラリーは思うが、あくまで冷静にトリガーを押し込むと、ジム・スナイパーIIの手がボルトハンドルを回転させながら後方へ引かれる。

 巨大な薬莢が排莢され、続いてハンドルを前に押し出して回転させる事で弾薬が装填された。

 

 モーゼル・ボルトアクションライフル"Kar98k"をベースに開発された75mmスナイパー・ライフルは、原型の銃と同様に回転式ボルトアクション方式を採用している。

 

 信頼性の高い構造だが、連射が効かない。

 ドムの機動性なら、次の一発を仮に外せば一気に距離を詰められる。──ラリーは外した後の可能性を頭の中から排除する。

 

 ドムがジャイアント・バズを発射してくるが、ラリーはレティクルから目を離さない。射程外の攻撃だ、恐るな。

 そう自分に言い聞かせる。通信でヘンケン艦長が懸命に指示を出しているのが微かに聞こえる。

 

 

──トリガーを引く。

 

 

 ドムが続いて射撃しようと構えた瞬間に、ラリーは引き金を引いた。

──刹那、放たれた弾丸はドムの右脚部に着弾し、膝から下を吹き飛ばす。

 最高速度時速381km/hものスピードで移動するMSが、突然片足を失ってどうなるかはいうまでも無い。

 

『艦長、こちらデルタ・ツー。スカート付きを二機撃破。引き続きデルタ・スリーの援護に向かう』

 

 

二極化した戦いは、まだ終わらない。

 

 

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