【完結】機動戦士ガンダム外伝 ノエル中尉奮戦記   作:B.I.G

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MISSION 12 「タイム・リミット」

『ひるむなぁっ!少しでも多くの部隊を宇宙(ソラ)へ上げるんだ!ジ、ジーク・ジオン!』

 

『往生際が悪いんだよ!宇宙人どもを一匹残らず始末しろ!……くそっ!こんなに敵が強いなんて、聞いてないぞ……うわぁっ!』

 

 キャルフォルニア・ベースに連邦軍の本隊が到着し、オデッサ作戦以上に激烈な戦闘が繰り広げられる。

 もはや後が無いジオン兵が戦う原動力は、一人でも多くの仲間を宇宙へ。そして祖国(サイド3)へ返すという想い。その強い想いこそが、追い詰められたジオン兵に限りない力を与えていたのだ。

 

──しかし、それだけで戦況が覆る程戦争は甘く無い。

 数で劣るジオン軍がなんとか持ち堪えられているのは、連邦軍MS隊の戦い方が稚拙だったからだ。

 まとめて戦力を投入すれば良いものの、逐次兵力投入しかしていない。杓子定規に三機一隊を投入し、ジオンのベテランパイロットが操縦する最新鋭機と対峙。

 応援を送ったのは良いものの、到着する頃には部隊は全滅……結果として、戦力の逐次投入になる、という悪循環が起こっていた。

 

 詰まるところ、ジオン軍と同じくらいに連邦軍も多くの混乱を抱えながらの戦闘となっていたのだ。

 

 

 

 

 『デルタ・ツー、スリー!マスドライバーと発進前のザンジバルを発見したわ。ルート上の敵機を排除しつつ、目標に接近!』

 

『デルタ・ツー了解。上の連中め、これのどこがキャルフォルニア・ベースの戦力が枯渇してるって言うんだ。これだけの抵抗は予想してなかったぞ』

 

『デルタ・スリー了解!デルタ・ツー、あまり文句ばかり言ってると碌でも無い事がおきますよ?』

 

 最も重武装かつ重装甲なFA・ガンダムFSDを先頭にして、デルタ・チームは基地の中心部に座する巨大な打ち上げ施設であるマスドライバーに接近する。

 各機に目立った損傷こそ無いものの、これだけ両軍のMSが乱戦を繰り広げる戦場は経験豊富なデルタ・チームと言えども初めてだ。流れ弾に当たって二階級特進など、笑い話にもならない。

 

 侵攻する連邦軍に抵抗するジオン兵の士気は高く、ジャブローで大量に生産されて作戦に投入されたジムも至る所で撃墜されている。ザクIIを上回る性能のジムではあるが、キャルフォルニア・ベース防衛戦には高性能なグフやドムに加えて、強力なメガ粒子砲を備えたズゴックやハイゴッグといった水陸両用機も多数出撃していた。

 

 いくらアムロの戦闘データをコピーしたジムとはいえ、搭乗しているパイロットの質はジオンに比べて劣る者が多い。一対一で戦えば、撃破されてもおかしな事では無い。

 

『──おい、デルタ・スリー。碌でも無い事ってのは、4本脚でビーム垂れ流すデカブツが出てくるって事か?』

 

『まさか。こっちだってあんなのが出てくるなんて、思っても見ませんでしたよ……っとぉ!どうします、デルタ・リーダー!』

 

『無駄口を叩かない!固まっていれば狙い撃ちにされるわ!各機散開!デルタ・スリー、後ろに!』

 

 追い縋るザクの小隊を退けたデルタ・チームだったが、彼女達の前に現れたのは4本脚に巨大な鉤爪を持った異形の機体だ。こちらを確認したかと思えば、肩部に装備されたメガ粒子砲で攻撃を仕掛けてくる。

 

 連邦軍のようなビーム兵器の小型化こそ遅れているジオン軍だが、ゴッグやズゴックのように機体に内蔵されたビーム兵器を持つMSは多い。(その殆どが水陸両用機なのは、メガ粒子砲の使用に耐えうる核融合炉を積載するためには、水冷が不可欠だったからだ)

 

 実弾兵器に対しては圧倒的な防御力を誇るルナ・チタニウム合金と言えども、ビーム兵器の前ではさほど意味を成さない。

 ノエルの号令を聞くや否や、ラリー機とアニッシュ機が散開してゾックを包囲する。見るからに鈍重な機体である。強力なビーム兵器を有していても、当たらなければ意味が無い。

 

『これだけのデカブツだ!その遅い動きでこっちについてこられるかよ!……何っ!』

 

 ノエルの意図を瞬時に把握したアニッシュは、スナイパー・カスタムの高い機動性を発揮させてゾックの背後へ回る。スナイパー・カスタムもビーム・ガンを装備しているから、いかに重装甲といえどもポイントさえ間違わなければ撃破は可能だ。

 

──普通のMSやMAが相手だったなら、の場合だが。

 

『デルタ・リーダー!こいつは()()()()()()()()()()!』

 

『つくづく妙な機体ばかり造る!ジオン技術者の頭の中は一体どうなってるの!』

 

 背後に回ったアニッシュが見たのは、全面から見た敵機と全く同じ姿。同じように装備された四門の砲塔から放たれたメガ粒子砲を、すんでのところで回避したスナイパー・カスタム。

 メガ粒子砲が掠めたシールドがグズグズに融解し、アニッシュは慌ててシールドを切り離して体勢を整える。

 

──どんな考え方をしていれば、こんな意味のわからないMSを造れるのか。理不尽な怒りを感じながら、ノエルはFA・ガンダムFSDの二連装ビーム・ライフルの銃口を敵機へ向けた。

 

『デルタ・ツー、スリー!()()を狙って!』

 

 ノエルの命令を聞いて、ラリーとアニッシュは敵機の足元に向けてビームを連射する。目的は敵機を直接破壊する事では無く、地面を破壊する事で敵機のバランスを崩し、動きを阻害する事だった。

 ゾックのメガ粒子砲は前後の肩部に計8門、頭頂部に1門存在しているが、その欠点はゴッグと同様に射角が制限される点だ。まして動きが鈍重なゾックで有れば、その欠点はより致命的と言える。

 

『いくら装甲が厚くたってっ!』

 

 足元のコンクリートが破壊され、各坐したゾックの無防備な側面に回ったノエルはトリガーを引いた。

 数発連続して発射された光弾がゾックを貫く。致命傷を負いながらも、断末魔のように数発ビームを放った後に巨大な異形はその動きを止めた。

 

『時間が無い!急いで戦線を突破するわ!』

 

 

 

 

──連邦軍のMSは強い。

 MS特務遊撃隊──通称外人部隊の隊長であるケン・ビーダーシュタット少尉は、次々と現れる連邦軍のMSをそう評価していた。

 

 ケン・ビーダーシュタットは元々コロニー公社の人間だったが、開戦前に軍事機密を見てしまった事で軍に拘束。妻と娘を人質に取られ、ジオン公国の国民権を得る為にやむなく戦争に参加する事になった男だ。

 戦術的な思考のみでなく、戦略的な広く戦局を見渡す才能も持ち合わせており、高い操縦技術を持つ事も相まって、的確な行動を取る事が出来る人物である。

 

 ケン達外人部隊にとって幸運だったのは、彼等が搭乗しているMSがドムだったという事だ。

 

 今打ち上げ待ちしているザンジバルがキャルフォルニア・ベースから宇宙へ上がる最後の一隻となっていた。

 キャルフォルニア・ベースにいたジオン軍人達はあらゆる手段を駆使して脱出を試みようとしたし、それを拒む人間もいなかった。(あれこれと文句を付ける上級士官殿は、我先にと逃げ出した後なのだから当然だ)

 

 そうして人間の打ち上げを優先した結果として、MS等の重量級資材は残されていく事になったのである。

 その結果、基地内にはパイロットのいないMSが溢れていた。大半はザクだったが、ドムやズゴックといったMSもそれなりの数が残されている。

 (つまり、ノエル達デルタ・チームの任務であるザンジバルの発射を阻止したとしても、得られるのは大量の捕虜だけという事だ)

 

 残されるMSが宇宙では運用出来ない陸上専用機、または水陸両用機とはいえ、今もアフリカ戦線や地球各地で戦っているジオン地上軍からしてみれば、喉から手が出る程に欲しい貴重な戦力だ。

 しかし、無謀なジャブロー降下作戦でガウの殆どを失ったジオン軍に各地の戦線へMSを輸送する余裕がある筈もなく、皮肉な事に貴重な機体を自らの手で爆破する羽目になっていたのだ。

 

 外人部隊がドムに搭乗していたのも、爆破するよりかは外人部隊に渡してザンジバルを守らせた方がマシと判断されたからで、それによってケン達は命拾いしていた。

 (外人部隊は主にジオン国籍を持たない者で構成されており、ジオン上層部からは半ば捨て駒として扱われ、他部隊の兵士からも「金目当ての傭兵部隊」と冷めた目で見られ、冷遇されていた)

 

『ザンジバルの打ち上げまであと五分です、レッド・リーダー!』

 

『了解、レッド・ゼロ!』

 

 外人部隊の任務はザンジバルの打ち上げ支援だ。各機のコクピットにタイマーが表示され、打ち上げ予定時間が残り五分に迫る。搭乗しているMSがドムとはいえ、連邦軍の物量は圧倒的だ。

 それでもレッド・チームが僅か三機でこの防衛ラインを維持できているのは、外人部隊の腕前の賜物だった。

 

『全く、連邦軍の攻め方ってのは素人丸出しだねぇ。一気に戦力を投入すればいいってのに。なぁレッド・スリー』

 

『けっ、ノロマな連中が多いんだよ。味方がやられてからおっとり刀で戦場に出てくるもんだから、ろくな抵抗も出来ずにやられんだぜ。そうだろ?レッド・ツー』

 

 撃破したジムの残骸を前にしてそう軽口を叩くのは、レッド・ツーことガースキー・ジノビエフ曹長と、レッド・スリーことジェイク・ガンス軍曹だ。

 ガースキーとジェイクは開戦直後からコンビを組んで戦ってきた間柄で、戦場では抜群のコンビネーションを誇るベテランパイロットだ。口は悪いが腕は良い。

 

 事実、レッド・チームは既に四つの部隊を撃破して、防衛ラインを維持する事に成功していた。連邦軍のまずい攻め方があるにせよ、そうそう出来る事では無い。

 

『レッド・ゼロからレッド・チーム各機へ!十二時の方向から敵機接近!一個小隊と思われますが……速い!あれは──ジャブローの、凶鳥……!』

 

 レッド・チームのオペレーターであるレッド・ゼロ、ユウキ・ナカサト伍長から入った通信を聞いて、ケンは思わず息を呑んだ。彼女の言う通り、敵小隊の接近するスピードはこれまでの小隊のそれとは明らかに違う。()()()だ。

 

 "ジャブローの凶鳥"はジャブロー降下作戦に参加したパイロットから伝えられた、連邦軍のエースパイロットの異名だ。黒い機体色に赤い眼のガンダムタイプを駆り、無慈悲に獲物に襲いかかる"凶鳥"。

 

『ここに来てガンダムが相手とは……!レッド・ツー、レッド・スリー!あと四分、この防衛ラインを守り切る!』

 

 ケンはこれまでとは違う相手を前にして、思わずレバーを握る力を強める。必ずザンジバルを守り、レッド・チーム全員で生還する。

──愛する家族の為、彼はこんな所で死ぬ訳にはいかないのだから。

 

 

 

 

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