【完結】機動戦士ガンダム外伝 ノエル中尉奮戦記   作:B.I.G

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本格的な宇宙編の開始です。
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MISSION 14 「宇宙の墓場」

 戦略物資と新型MSを積載したコロンブス級輸送艦を伴い、トロイホース隊がルナツーから出港して二日。

 道中で地球から打ち上げられたシャトルを回収しつつ、一行はL5近傍軌道上に到達していた。

 

 かつてサイド1"ザーン"とサイド4"ムーア"というスペースコロニー郡が存在していた場所だが、今やジオン軍の攻撃によって破壊されたコロニーや撃沈された戦艦の残骸が無数に漂う暗礁宙域と化している。

 無数のデブリ同士がぶつかり合い、航行するには危険が伴う宙域だ。

 

 だからこそジオンのパトロール艦隊と遭遇する可能性も低いと考え、チェンバロ作戦の指揮を執るティアンム中将はあえてこのルートでの戦略物資輸送を指示したのである。だが──

 

 

 

 

 ノエル達デルタ・チームは全速力で格納庫を目指していた。暗礁宙域に突入し、まもなく抜けようかという場面。艦内に第一種警戒警報が出ていた。MSパイロットは搭乗機のコクピットで待機し、いつでも出撃出来るようにしなければならない。

 

「無重力ってのはどうにも慣れませんね!走れればもっと早く格納庫まで行けるのに」

 

 艦内は当然の事ながら無重力の為に、走るという動作は出来ない。平時であれば壁に取り付けられたリフトグリップを握って宙を滑るように移動するのだが、今はそんな悠長な事をしている暇は無かった。

 アニッシュのぼやきを聞き流しながら通路の壁を勢い良く蹴り、宙を飛びながら先を急ぐ。

 

「各員、MSに搭乗して起動後、出撃命令が出るまで待機よ!空間戦闘は初めてなんだから、気を引き締めて!」

 

 幾度かの角を曲がったところで、彼女達はMSが格納されている第一デッキへ到着した。

 第一種警戒警報が出ている事で、メカニックマン達も声を張り上げながらMSの出撃準備を行なっていた。

 

 メカニックマン達の声に負けないようにラリーとアニッシュに指示を飛ばして、ノエルはハンガーにその背を預けている自らの愛機である高機動型ガンダムのコクピットへ向かう。

 開戦以来地上で戦い続けてきたデルタ・チームにとって、空間戦闘は初めてだ。勿論ルナツーでの待機時やトロイホースの艦内でシミュレーターで訓練は行なっているが、やはり実戦とシミュレーションは違う。

 

 何度出撃しても感じる緊張を飲み込みながら、コクピットに乗り込んだノエルはシートベルトを締め、コクピットハッチを閉じると同時にガンダムを起動させる。

 コクピット内部の機器が光を放つと同時に、モニターに格納庫の映像が映し出される。

 メイン・モニターの片隅にウィンドウが開くと、艦長であるヘンケン少佐の顔が現れた。──ブリーフィングだ。

 

 

【BRIEFING】

 

 デルタ・チーム各機、スタンバイはできたか?よし、それではブリーフィングを始める!

 現在我々はL5暗礁宙域を航行中だ。

 敵に見つからない為の航路だったが、運の悪い事に敵のパトロール艦隊を発見した。本来であれば隠密に輸送任務をこなしたいところだったが、そうもいかない状況だ。

 

 現在、ザンジバル級機動巡洋艦1隻、ムサイ級軽巡洋艦3隻が確認されているが、敵艦隊がこちらに気付いた様子は見受けられない。

 そこで我々はコロンブスのMS隊と協力して敵パトロール艦隊に奇襲をかけ、これを殲滅する!

 

 ただし、この暗礁宙域では無数のデブリが浮遊している他、高濃度のミノフスキー粒子が滞留している為にコンパスやレーダーも機能しにくい危険な宙域だ。

 

 敵艦隊やMSだけで無く、周囲のデブリにも十分に気を付けて任務に当たってくれ。幸運を祈る!

 

 

MS1 ノエル・アンダーソン中尉《デルタ・リーダー》

RX-78-01[FSD-HM]高機動型ガンダムFSD 二連装ビーム・ライフル

 

MS2 ラリー・ラドリー少尉《デルタ・ツー》

RGM-79SP ジム・スナイパーll R-4ビーム・ライフル

 

MS3 アニッシュ・ロフマン曹長《デルタ・スリー》

RGM-79SC ジム・スナイパーカスタム ビーム・ライフル

 

 

作戦成功条件:敵艦隊の殲滅

作戦失敗条件:部隊の全滅、コロンブス級輸送艦の撃沈

 

 

─ MISSION START ─

 

 

『MS各機、出撃態勢!デルタ・リーダーから順にカタパルトへ移動せよ』

 

 オペレーターの声に合わせてMSハンガーが稼働し、ノエルの高機動型ガンダムから順番にMSが格納庫の中心へ運ばれていく。

 デッキのハッチが中央から割れ、外へ向かってゆっくりと開き始めると、その隙間から覗くのは宇宙という無限に拡がる漆黒の世界だ。

 

 デブリの無い宙域であれば星の散らばる美しい光景だろうが、暗礁宙域は巨大なコロニーや戦艦の死骸が漂い続ける宇宙空間の墓場。

──その一つにならないように、ノエル達は戦わなくてはならない。

 

『高機動型ガンダム、ノエル・アンダーソン、出撃します!』

 

 デッキに取り付けられているランプが点灯し、ノエルが感じたのは圧倒的な正面からのGだ。

 カタパルトから猛烈な勢いでMSが射出され、シートに押し付けられそうになるのを渾身の力で堪える。下手に口を開けば舌を噛む。コクピットの中にノエルの微かな呻き声が響いた後、高機動型ガンダムは漆黒の宇宙(ソラ)へ放り出された。

 

(怖い場所。踏みしめる大地が無いという事に、これほど恐怖を感じるのね)

 

 空間戦闘用のシミュレーター・マシンで何度も擬似的な宇宙空間を体験したし、ルナツーでの待機時には実機での訓練も数時間は行なっているが、未だにこの上下の概念の無い広大な宇宙空間に放り出される感覚に慣れない。

 無重力化での姿勢制御や真空状態の特性は理解している筈だったが、本能的な恐怖をノエルは感じる。

 

『デルタ・ツー、スリー。機体コンディションに問題は無い?』

 

『デルタ・ツー、問題無し』

 

『デルタ・スリー、こちらも異常無し。いつでも行けます』

 

 順番に射出されたラリーのジム・スナイパーllとアニッシュのジム・スナイパーカスタムがノエルの高機動型ガンダムに追従する。

 サイドモニターの片隅に映るトロイホースの姿はあっという間に遠ざかり、その特徴的な外観の全容を見る事が出来た。宇宙空間では当然の事ながら酸素が無い。

 

 地上戦ではMSを破壊されても脱出する事が出来るが、ここではそうはいかない。少しの間はノーマルスーツに備え付けられた酸素発生器で耐えられるだろうが、それも一時間も持たない。

 そういう意味でも、トロイホースはデルタ・チームの帰るべき家なのだ。地上での戦い以上に、母艦を守る事も念頭において戦わなくてはならない。

 

『コロンブスからMS隊の出撃を確認。アフリカ戦線で名を売ったらしいですよ、あの黒いスナイパーllのパイロット。同じスナイパーとして負けてられませんね、デルタ・ツー』

 

『全くだ、しかも元戦闘機乗りだって言うしな。だが、俺達はチームだぜ、デルタ・スリー。個人の戦果に拘る程子どもじゃあない』

 

 トロイホースの後方につけているコロンブスからも、MS隊の出撃を確認する。無数の青白いバーニアの光がまるで流星のように煌めく光景には、美しさすら感じる。

 彼等は主にアフリカ戦線で活躍したエース・パイロット達なのだが、その中でも有名なのが先頭を飛ぶ黒いジム・スナイパーllのパイロット、リド・ウォルフ中尉だ。

 

 ジオン軍には"赤い彗星"や"白狼"と呼ばれるエース・パイロットが存在するが、彼等はその異名通りのパーソナル・カラーを持っていて、自らの愛機を染め上げる権利を持っていると言う。

 敵を畏怖させ、味方を鼓舞する効果があるのだろうが、連邦軍にパイロットにパーソナル・カラーを持たせるという考え方は存在しない。

 にもかかわらず、知る限りでは唯一パーソナル・カラーを与えられた彼の腕前には、ノエルも興味があった。

 

『デルタ・チーム各機、攻撃目標ポイントに接近。二十秒後にトロイホースから援護射撃を行います。コロンブス隊の各パイロットも含め、射線上から退避されたし』

 

 オペレーターの声に合わせて、サブモニターに表示されたカウント・ダウンの数字が減っていく。

 デルタ・チームは敵艦隊に対してY座標を大きくプラスに取り、逆にコロンブス隊は大きくマイナスに取る。

 即ち、デルタ・チームは敵艦隊の上部から。コロンブス隊は下部から接近し、挟み撃ちにする構えだ。

 

『援護射撃開始!MS隊は戦闘を開始しろ!速やかに仕留めろよ!』

 

 ヘンケン艦長の号令に合わせて、トロイホースから放たれたメガ粒子砲の白い輝きが宇宙の漆黒の闇を切り裂いた。大小無数のデブリを消し飛ばしながら、敵艦隊へと襲いかかる。

 

『見えた!中央は火線が集中するわ!デルタ・ツー、スリーは左から!私は右から行きます!』

 

『了解!ジオンめ、対応が早いぞ!』

 

『奇襲にも慌てていない!気を引き締めていきますよ!』

 

 トロイホースの援護射撃で敵艦隊の周囲にあったデブリが破壊され、艦隊の姿が映し出された。

 それを確認して艦隊の上部から接近しようとするデルタ・チームだが、敵艦隊の動きは素早い。

 不意打ちだったにも関わらず、ザンジバル、ムサイ共にすぐさま主砲のメガ粒子砲を放って反撃を行なってくる。

 

 MS運用と一体となって設計されたジオン軍の戦艦は、基本的には艦体正面、もしくは上部にしか砲台が付いておらず、正面以外への攻撃能力は低い。

 特に下部からの攻撃には無力と言ってもいい極端な構造をしており、これはMSが有れば艦隊が接近戦に巻き込まれる事は無く、それに対応する為の武装は不必要だという考え方に起因していた。

 

 事実、まだ連邦軍がMSを持っていなかったルウム戦役時には、そういった思想で設計されたジオン軍の戦艦は極めて強力な戦力であり、連邦軍は多大な損害を被る事となった。──しかし、今は状況が違う。

 

 敵艦の対空砲火を掻い潜り、ノエルはアクセルペダルを踏み込んだ。敵艦隊からはMSが次々と発進しており、その対応の素早さは宇宙がジオン軍のホームグラウンドである事を実感させられる。

 

『こちらデルタ・リーダー!敵艦隊からMSの出撃を確認、数は十六。これより交戦します!』

 

 高機動型ガンダムのメイン・カメラが捉えたのは、こちらに向かってくる二機のMSの姿。

 機体のコンピューターがメイン・カメラから得られたデータを解析して、コクピットモニターに対応する機種が表示される筈だ。──しかしおかしい。

 

『Unknown!?こんな所に敵の新型が二機……!』

 

 モニターに表示されたのは、機種不明を示すUnknownの文字。一瞬故障かと疑ったが、ラリー達に相対している機体"ザクII"の機種名はハッキリと示されている事から故障では無いとノエルは判断する。

 パトロール艦隊とすれば、殆どの艦載機がザクII、もしくは空間戦闘用に改修されたというリック・ドムだと考えていたのだが、まさか新型機が二機も現れるとは思っても見ない事だった。

 

 出撃した敵MSの半数以上は、下部から艦隊に接近するコロンブス隊の迎撃に向かっているのが見てとれた。

 無防備な下面を襲われてはたまらないと考えるのは当然だが、それにしては戦力配分が極端に思える。

 まるでこちらは()()()()()()()()()()()と言わんばかりなのが気にかかるが、敵Unknownの姿はまだ肉眼では見えない。──刹那。

 

(ビーム兵器!!どうして!)

 

 ぞくり、と背筋が粟立つような、妙な不快感を感じたノエルは反射的に操縦桿を手前に引き、高機動型ガンダムの軌道を咄嗟にずらす。

 瞬間、コンマ数秒前にガンダムがいた空間を()()()()()()()()()()()()()()光弾が貫いたと同時に、敵機がその姿を表した。

 

 ノエルの眼前に現れたのは()()()()()()()機体。

 "赤"をパーソナル・カラーに持つエース・パイロットはもう一人いるが、この淡い赤色が象徴するパイロットは一人しかいない。

 ノエルの父が乗るサラミスを沈め、幾度となくホワイトベース隊を追い詰めたジオン屈指のエース・パイロット。

 

『──赤い彗星……!!』

 

 

 

 




この辺りか独自展開が多くなるかなぁと思っています。
それはそうと、動くガンダムは素晴らしいですね!
是非自分も見に行きたいと思いますが、早くコロナが終息してほしいですね……
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