【完結】機動戦士ガンダム外伝 ノエル中尉奮戦記   作:B.I.G

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MISSION 17 「ソロモン攻略戦」

「スナイパーカスタムの右腕マニュピレーターの交換は間に合わない!予備機のジム・コマンドの出撃準備を急ぐよ!」

 

「ビーム兵器を使えるようになるのは、防衛ラインを突破してからだぞ!実弾兵装の用意をするんだよ!」

 

 MS隊が帰投したトロイホースのMSデッキの中に怒号がこだまする。先の戦闘で損傷したアニッシュのジム・スナイパーカスタムの修理が間に合わないと見るや、予備機として配備されていたジム・コマンドの調整作業が進む。

 

 精密機器の塊であるMSの調整作業に関して、パイロットが関われる分野は多くない。餅は餅屋と言うが、デルタ・チームの面々は部隊の整備チームに全幅の信頼を置いていた。彼らがいなければ、自分達は出撃する事すら叶わない。

 

「しっかし、この土壇場で乗り慣れた機体から乗り換える度胸は凄いですよ。俺ならいくら高性能のMSでも躊躇しますね」

 

「使えるものは何でも使う。ホワイトベースの連中はそうやって生き残ってきたのさ。ま、あのピーキー過ぎるMSをまともに操縦出来るのはアムロくらいのもんだろう」

 

「……そりゃそうだ。普通のパイロットはMSでシャドーボクシングなんて出来やしませんからね」

 

 ラリーとアニッシュがMSデッキを見ながら補給食を口にして、軽く言葉を交わす。

 

 デッキにはデルタ・チームの機体とアレックスに加えて、アムロのガンダム2号機も格納されていた。チェンバロ作戦の決行に向けて、アムロ・レイにガンダムNT-1 アレックスが渡される事が決定したからだ。

 

 アレックスのコクピットにはアムロとクリス、そしてノエルも乗り込み、急ピッチでソフトウェアの調整と機器の説明が行われていた。──その筈だが、二人の目の前でアレックスはまるでボクサーのような滑らかな動きでシャドーボクシングを繰り返していた。

 

「す、凄い……全天周囲モニターとリニアシート!機体の反応速度もガンダムとはまるで違う……!凄いですよ、ノエル中尉、マッケンジー中尉!」

 

「ア、アムロ君?感動するのは良いけど、MSデッキでシャドーはちょっと……ね?」

 

 まるで人間のような滑らかな動きを見せるアレックスとそれを難なく操縦するアムロを間近で見て、クリスは口をあんぐりと開けて驚愕する。

 

 ノエルのこめかみには青筋が立っており、口調は柔らかだがやんわりと嗜める。(あくまでアムロがMSデッキでアレックスを動かした事を咎めているだけで、ようやく再会出来たにも関わらず、挨拶もそこそこにMSに夢中になっている事に嫉妬している訳ではないのだ)

 

 アレックスの操縦システムとコクピットの構造は、他の機体とは一線を画する新技術が惜しげも無く投入されている。コクピットはガンダム2号機のコア・ブロック・システムでは無く、脱出機能を有する球形の物を採用した事に加えて、初の全天周囲モニターを採用。

 

 パイロットの視認性の向上に加えて、閉所に長時間閉じ込められる事によって生じるストレスの軽減効果も確認されていた。(実際には水平・垂直360度が網羅されておらず、死角が存在する。もっとも、通常のコクピット・モニターとは比べ物にならない視認性を誇る)

 

 操縦システムにおいてもナビゲートシステムはプロセッサを3基搭載し、NTの人並外れた反応速度に対応出来るように新規開発されたソフトウェアを採用。

 

 それに加えて、ガンダム2号機のそれよりも更に高性能・高速・大容量の教育型コンピューターを搭載する事で、機体各部のシステムをより効率的に統括出来る様になり、結果的にパイロットと機体間の反応速度も極めて向上している。

 

(まさかここまで簡単にアレックスを動かせるなんて……)

 

 確かにアレックスにはガンダム2号機の教育型コンピューターから抽出したデータを移植し、彼の操縦データから得られた数値を参考にしてソフトウェアも一から組み上げ直した。そうして出来上がった機体が"化け物しかまともに操縦出来ない代物"となった事は理解しているが、それをここまであっさりと……。

 

 開発チームとしては、ようやく手塩にかけた機体の本領が発揮される事に対する喜びを。テストパイロットとしては嫉妬すら感じられない程の、どこか清々しい敗北感を同時に味わって、クリスは笑った。

 

 

 

 

 シャア・アズナブル率いるジオンのパトロール艦隊を退け、ホワイトベース隊と合流したトロイホース隊はワッケイン少将率いる第三艦隊に編入された。

 

 ソーラ・システムでソロモンの誇る鉄壁の防衛ラインに大きな穴を開け、そこから一気に全軍を突入させる作戦を立てたティアンム提督だが、ソーラ・システムのパネルを組み立てる時間を稼ぐ必要があった。

 

 そこでティアンム提督は第三艦隊にMS隊を集中的に配備させ、彼らを陽動部隊とする事を決定する。第三艦隊が敵の注意を引きつけている間に、本隊が素早くソーラ・パネルを組み立て、照射準備を終える算段だ。

 

「パブリク突撃艇部隊の損耗大。しかしビーム撹乱幕の敷設に成功したとの連絡です」

 

「よし、艦隊から実弾兵装にて防衛ラインに向けて艦砲射撃後、全MS隊を全面に押し出せ!防衛ラインに突入させ、ソーラーパネル展開までの時間を稼ぐ!ホワイトベース隊からの連絡はどうか?」

 

「アムロ・レイ少尉はトロイホースにてガンダムNT-1の調整を終えたとの報告がありました。少将の命令が有れば、いつでも出撃可能です」

 

「そうか……MS部隊はガンダムを中心として展開させろ。必ず三機一体の体制を厳命して、敵MSと対峙させるように再度通達!……艦砲射撃、てぇっ!」

 

 ワッケイン少将が初めに出撃させたのは、ビーム拡散用大型ミサイルを二基搭載したパブリク突撃艇部隊だ。ソロモンの防衛ラインに配備されている浮き砲台の長距離ビーム攻撃をビーム撹乱幕で無効化し、それを確認してからMS部隊を突入させる。

 

 実戦経験の少ないパイロットが大半を占める中で、ワッケイン少将が厳命したのは必ず三機一体で行動する指針だ。未熟なパイロットとはいえ、三機でかかれば実戦経験豊富なジオンのベテランパイロットにも対抗出来る。

 

 ソロモンが陥落すれば戦争が終わるわけでは無い。次に続くア・バオア・クー攻略の為にも、貴重な戦力であるMSをむざむざと使い潰す訳にはいかないのだ。

 

 

【BRIEFING】

 

 トロイホース隊の諸君、第三艦隊司令のワッケイン少将だ。コロンブスの護衛任務ご苦労だった。

 

 貴官らは我が第三艦隊所属のMS隊の主力として、ホワイトベース隊と共にソロモンの防衛ラインへ先行して突入して欲しい。パブリク突撃艇のおかげでビーム撹乱幕の展開に成功している為、防衛ラインに配備された砲台からの攻撃は無力化出来ている。

 

 おそらくソロモン要塞司令官ドズル・ザビもモビルスーツ部隊を出して迎撃に来るだろうが、我々の作戦目的は本隊がソーラ・システムを展開し、照射するまでの時間稼ぎとなる。──最低でも十五分、我々は敵迎撃部隊を食い止めなければならない。

 

 ホワイトベース隊のガンダムNT-1と協力して、出来るだけ多くの敵を引きつけて欲しい。頼んだぞ。

 

 

MS1 ノエル・アンダーソン中尉《デルタ・リーダー》

RX-78-01[FSD-HM]高機動型ガンダムFSD ハイパー・バズーカ

 

MS2 ラリー・ラドリー少尉《デルタ・ツー》

RGM-79SP ジム・スナイパーll R-4 ビーム・ライフル

 

MS3 アニッシュ・ロフマン曹長《デルタ・スリー》

RGM-79G ジム・コマンド ブルパップ・マシンガン

 

 

作戦成功条件:十五分以上の敵軍拘束

作戦失敗条件:部隊の全滅

 

 

─ MISSION START ─

 

 

『ビーム撹乱幕の範囲から出るまではビーム兵器は使えないわ!デルタ・ツーを殿にして、ブイ・フォーメーションを維持したままで防衛ラインに侵入!進路上にある衛星ミサイルは私とデルタ・スリーで落とすのよ!』

 

『デルタ・ツー了解。撹乱幕から出るまでは世話になる』

 

『デルタ・スリー了解!スナイパーカスタムとはちょっと勝手が違いますが、やってみせますよ!』

 

 ソロモンの防衛ラインは三段階に分かれており、第一ラインが浮き砲台による長距離ビーム攻撃。第二ラインが衛星ミサイル(小惑星にロケット推進装置を取り付け、質量兵器としたもの)

 そして第三ラインがドズル・ザビ率いるジオン宇宙攻撃軍MS隊による直接迎撃である。

 

 浮き砲台による長距離ビーム攻撃をビーム撹乱幕によって無力化する事に成功した今、次の脅威は衛星ミサイルによる迎撃だ。MSにとってはさほどの脅威になり得ない衛星ミサイルであるが、戦艦にとっては十分な脅威となる。下手に直撃すれば、それだけで轟沈は免れない。

 

 宇宙要塞"ソロモン"がこの時点で用意できた戦力は戦艦3、巡洋艦48、空母1、突撃艇88、MS約3400、戦闘機約580、他に輸送艦や少数のMA。

 それに対する連邦軍の戦力は戦艦24、巡洋艦121、輸送艦(改装空母含む)580、突撃艇280、MS5200、戦闘機880、他にミサイル艦や砲艦などで構成されていた。

 

 通常であれば負けることの無い戦力差だが、攻城の原理から言えばこの数字はさほど楽観視出来る程大きな差では無い。城を攻めるには籠城軍の三倍の兵力が必要だということになっているのだが、両軍のMSの性能差を考慮しても三倍とまではいかないだろう。

 

 いかに優れた戦闘力を持つ人物がいたとしても、一人で城は落とすとまではいかない。

 ──()()()()()()M()S()()()()()()()()()()()

 

『艦隊に近付けるわけにはいかない!……墜ちろっ!』

 

 先行して第二防衛ラインを突破したアレックスとアムロに襲いかかったジオンMS部隊のザクIIだったが、正確無比なビーム・ライフルによる狙撃でコクピットを撃ち抜かれ、一発の弾丸を放つ間もなく火球へと変わる。

 

 宇宙へ戻って覚醒したアムロのNT能力と彼専用にチューンされたアレックスのマッチングは、ノエルやクリスが考えていた以上のものだった。

 敵が攻撃の意思を見せた瞬間に反応しているような異次元の反応速度で、次々にMSを撃墜していく。

 

 敵MSの爆発の光に照らされる白と黒のツートンカラーで染められたアレックスは、"白い悪魔"とジオンから呼ばれるに相応しい活躍だ。

 

(凄い……まるで次元が違うみたい。アレックスが開けた穴目掛けて艦隊が突入すれば、敵軍に大打撃を与えられる!──警報!)

 

 アムロとアレックスの活躍をみて息を呑むノエルだが、突如鳴り響いた警報を聞いて反射的に操縦桿を引いた。そのまま進んでいれば、高機動型ガンダムがいたであろう空間を太いビームの閃光が貫く。

 

(敵機直上!──違う、急降下して回り込んでくる!)

 

 ビームが放たれたであろう場所を見上げたノエルだが、既にそこには敵機の姿が無い。攻撃すると同時に機体を機動させ、三次元的な動きで既にこちらの横まで敵MSは回り込んでいた。

 

 空間戦闘を熟知した動きで()()()()()()()()リック・ドムがヒート・サーベルを閃かせて襲いかかってくる。手にしたハイパー・バズーカでは近接戦闘には対応出来ない。ノエルは一切逡巡する事無く、バズーカを敵機に向けて投げるとそのままガトリング・ガンを放った。

 

『デルタ・ツー、スリー!そのまま進んで敵迎撃部隊を攻撃しなさい!こいつは私が引き受けます!』

 

 ガトリング・ガンの弾丸が着弾して誘爆したバズーカに巻き込まれて、損傷を負っていればと思ったノエルだが、爆炎を切り裂いて現れたリック・ドムに問題は見られない。──間違いなくエースだ。

 

『スペースノイドの真の解放の為……地球からの悪しき呪縛を、我が正義の剣によって断つ!忌まわしきガンダムめ……覚悟!』

 

 

 




いつも見ていただき、ありがとうございます!
ソロモン攻略戦の始まりの回でした。今年はあと一回更新出来るかな……?
感想、評価切にお待ちしております!
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