【完結】機動戦士ガンダム外伝 ノエル中尉奮戦記   作:B.I.G

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風邪を引いて投稿が遅れてしまった……感想お待ちしてます!


Intermission 1 「流星と凶鳥」

 

 アムロが援軍として現れた後、程なくして戦闘は終わりを告げた。

 赤い彗星や青い巨星を退けた悪名高い《連邦の白いヤツ》に加えて、同型機に見える《黒いヤツ》を同時に相手をするのは歩が悪いと見たのか、一個小隊のMS、そしてドップ隊が撃墜されるという大損害を被ったジオン軍は慌てて撤退。

 

 激しい戦闘から一刻の後、応急処置を終えたミデア輸送隊は離陸し、無事にホワイトベースに荷を送り届ける事が出来たのだった。

 

 ひとまずミデアの危機は去ったと判断したノエル達第三小隊は、アムロと共にMSに乗ったままホワイトベースへ向かう。

 これからホワイトベースは補給作業を行うのと同時に、度重なる戦闘でダメージを負ったエンジン部の修理も行わなければならなかったからだ。

 

『デルタ・リーダー。センサーの設置完了しました』

 

『こちらデルタ・スリー。こちらもセンサー設置完了です。ジオンの奴ら、まだ来ますかね』

 

 いつ再びジオンが襲撃を仕掛けてくるかもわからない状況である為、ノエル達はホワイトベースに向かう間にセンサーを広範囲に設置していた。

 補給、修理作業中に奇襲を受けてはいかにホワイトベースと言えどもひとたまりも無いし、ホバートラック《ハウンド》のアンダーグラウンド・ソナーでもカバーする範囲に限界がある。

 

『このままこっちを見逃すとは思えない。補給、整備を終えた後はローテーションで周囲の警戒に当たりましょう』

 

 先の戦闘には勝利したが、オデッサは敵の支配地域である事を第三小隊(ノエル達)は忘れてはいなかった。

 

 

 

 

 無事にセンサーを設置し終え、ホワイトベースと合流したMS隊。

 艦長代理であるミライ・ヤシマや無事にホワイトベースへ辿り着く事が出来たミデア輸送隊の隊長であるマチルダ・アジャン中尉と会話した後、ノエルは食堂で休息を取っていた。

 MSパイロットはラリーとカイ、アニッシュとハヤト、そしてノエルとアムロが二機一組となって定期的に哨戒を行なっており、今はラリーとカイが出ている状況だ。

 

「アムロ君はMSデッキかぁ……飲み物で良いかな?」

 

 軽い食事を終えて手持ち無沙汰だったノエルはアムロの姿を探したが、周囲に彼の姿は無い。

 ちょうど食堂に入ってきたホワイトベースのクルーから話を聞いた所、恐らくMSデッキだろうと当たりを付ける。

 戦闘の後だから何か補給物資の中から差し入れを持って行こう、と考えながら、彼女は食堂を後にしたのだった。

 

 

─ホワイトベース MSデッキ─

 

 

「黒いガンダム、か……」

 

 ホワイトベースのMSデッキで届けられた物資を利用して整備されるガンダムを見るアムロ。

 

 度重なる戦いですっかり傷の増えた自身の機体の横に格納されているのは、先程の戦いで共に戦ったもう一機のガンダムだ。

 機体の大まかな形状は同じだが、右手に装備されたガトリング・ガンや真紅のクリアバイザーに覆われたツインアイ、なによりホワイトベースのガンダムとは対照的な黒い機体色が特徴的な機体に、アムロは興味を持っていた。

 

「ガンダムFSD、全規模開発(Full-Scale Development)……量産型ガンダムって事なのか?ジムはGundam type Mass-production model……?ガンダムの正式な量産型がジムになるのか」

 

 元々が機械オタクなアムロの事である。

 手に持ったタブレット端末でガンダムFSDとジムの機体スペックを調べながら、この機体がガンダムを部隊単位で運用する事を目指した機体である事を理解する。

 

 便宜上アムロの乗るRX-78-2 ガンダムは試作機という名目ではあるが、その実態は連邦軍の開発できる最高級のパーツと技術を惜しげもなく注ぎ込んで開発された、いわば特注品、ハンドメイドモデルだ。

 

 ガンダムFSDは同じガンダムタイプのMSではあるが、その性能にはある程度の隔たりがあるのは事実であった。

 

 更に詳細なスペックを調べようとするアムロだったが、ふと背後に気配を感じて振り向くと、そこにいたのはガンダムFSDのパイロットであるノエルだ。

 両手には冷えて汗をかいているパック飲料を二つ持っており、どうやら差し入れを持ってきてくれたようだった。

 

「アムロ君、さっきは助けに来てくれて本当にありがとう。凄く助かっちゃった」

 

「いえ、そんな……ぼ、僕の方こそ、ミデアを護衛して頂いて……おかげでホワイトベースも助かりました。えぇと……アンダーソン中尉!」

  

 はい、と手渡されたパック飲料を受け取りながら、アムロはノエルに感謝の言葉を伝えるが、微笑みながら「ノエルで良いよ」と返され、どぎまぎするアムロ。

 

 サイド7を出航した後、否応無しにガンダムのパイロットとして重責を感じながら戦ってきたアムロにとって、ノエルはホワイトベースのクルー以外で初めてMSパイロットとして共に戦った相手だ。(勿論ラリーやアニッシュもそうだが)

 

(ノエルさん、なんて言うか……あまり軍に入る人には見えないや)

 

 それにしても、と飲み物を口にしながら隣に座るノエルをチラチラと見つつ考えるアムロ。

 元々異性の知り合いは幼馴染みのフラウ・ボゥくらいなもので、ホワイトベースに乗ってからはセイラ・マスとも戦いを共にしていたが、ノエルはセイラとはタイプが違うとアムロは感じる。

 

 マチルダさんやセイラさんは凛としていて素敵な人だけど、ノエルさんは普通にユニバーシティに通っている方が似合っている、などと言うことを内心では思っていた。

 (ノエルからしてみれば、アムロこそまだ10代の少年であり、ハイスクールに通っていて然るべき年齢なのだが)

 

 正規軍とは言え前線の特殊部隊だからなのか、彼女自身の性格なのか……以前ホワイトベースに一時乗艦したリード中尉とは態度もまるで違い、フレンドリーな態度だった事もアムロやクルー達からすれば好感触だった。

 

 彼女自身の容姿も相まって、ホワイトベースクルーの中に彼女のファンクラブが早くも出来たのは、アムロからしても肯ける話だ。

 (カイやジョブ・ジョン達からは、中尉と写真を撮れるようにお願いしといてくれよ!と念押しされているくらいだ)

 

「それにしても凄いのね!さっきの戦い方、私感動しちゃった。アムロ君にMS戦の事を教えてもらいたいくらい」

 

「そ、そんな事……ノエル中尉達第三小隊の方々も凄いと思います」

 

 ずいっとアムロに近づいてくるノエルの匂いと、腕に当たった彼女の身体の柔らかい感触に、思わず赤くなって俯きながらやっとの事で言葉を返すアムロ。

 

 ノエルはガンダムFSDに合わせたようなダークグレーのノーマルスーツを着用しているが、非戦闘時と言う事もあって大きくスーツを開けており、豊満な胸元とそれを包む薄いインナーが見えている。

 元々軍隊では男女の垣根が極めて薄いし、ノエル自身普段は男所帯の独立部隊で任務をこなしている事もある。

 特に意識した行動では無かったが、民間人であり健康な青少年であるアムロにはいささか刺激が強い事も事実だった。

 

(俯いちゃって、嫌な事言っちゃったのかな?)

 

 俯いてしどろもどろになるアムロを見て、小首を傾げるノエル。

 彼のMS戦の技術や戦い方に圧倒されたのは事実だし、教えを請いたいと思ったのも本当なのだが……と彼女も少し悩む。

 部下であるラリーやアニッシュ、部隊の整備班等まで含めても彼女よりも年下の人間はおらず、身内に弟がいる訳でも無く……年下の少年の相手は慣れていないのも、無理からぬ事だ。

 目の前の年下の少年がこちらの仕草がきっかけで、悶々としながら苦しんでいる事になっているとは、流石に彼女も気付く事が出来なかった。

 

 

 

 

─オデッサ地区 黒海森林地帯 ジオン軍野営地─

 

 

「コイツか、噂の連邦の白いヤツは。オマケに新型の黒いヤツとは……連邦もMSの実戦投入を急いでいると見える」

 

 ノエル達が休息を取っているのと同時刻、テントの中で先程の戦闘映像を確認しているのは、黒いノーマルスーツに身を包んだ髭面の男。

 

 ルウム戦役で艦隊の総司令であった当時のレビル中将の座乗する旗艦アナンケを撃沈し、脱出を図ろうとするレビルを捕虜にした功績からその名を轟かせた《黒い三連星》のリーダーであるミゲル・ガイア大尉その人だ。

 自ら先駆けて敵機の技量や能力を分析し、瞬時に有効な手段を判断する男で、部下からの信頼も厚い。

 

「オレ達黒い三連星を差し置いて、黒いMSに乗るとは生意気な野郎もいたもんだ。このマッシュ様が叩きのめしてやりますぜ」

 

 ザクを撃破するガンダムFSDの映像を見て、血気盛んな様子で獰猛そうな笑みを浮かべるのは、隻眼のパイロットであるマッシュ中尉。

 中距離戦闘を得意とするパイロットで、《黒い三連星》のコンビネーションの要とも言える存在だ。

 彼らのMSに黒を基調としたパーソナルカラーを提案したのが彼であり、どうやら同じ黒い機体であるガンダムFSDが気に触るようだった。

 

「へっ!オレ達黒い三連星のジェットストリームアタックは無敵の戦法!白だろうが黒だろうが、まとめてオレ達の獲物よ!」

 

 《黒い三連星》最後の一人が一番の巨漢であるオルテガ中尉。

 ジェットストリームアタックのトドメ役を担うパイロットで、その豪胆な見た目とは裏腹に正確な射撃を得意としていた。

 見た目通り、部隊の中では最も短気かつ直情的な男だが、MSの操縦技術は他の二人に勝るとも劣らないベテランパイロットである。

 

 

────

 

 

『敵は《青い巨星》を倒す程のパイロットだ。マ曰く、ニュータイプかもしれんとの話だからな……油断はするなよ。機体は入念にチェックしておけ』

 

 MSのコクピットの中で調整を行いながら、ガイアはマッシュ、オルテガに通信を入れる。

 《青い巨星》ことランバ・ラルとは旧知の中であったガイアとしては、彼を倒した白いヤツは否が応でも最大限に警戒しなくてはならなかった。

 上官であるマ大佐がキシリア少将にわざわざ手を回してまで、新型MSであるMS-09 ドムをこちらに寄越してきたのも、ニュータイプと噂される白いヤツを警戒しての事だろうとガイアは見ていた。

 

 事実、マ大佐はジオン本国に貴重な資源をもたらしていた鉱山基地を白いヤツのせいで失ったと聞いている。(それも督励に訪れていたキシリア少将の前でだ)

 嫌味ばかり言う陰険な男だと思ってはいるが、白いヤツが危険な相手である事は疑う余地が無かったのだ。

 

『ケッ、あの嫌味な野郎の忠告なんざ聞きたかないですがね……』

 

『連邦のMS如きオレ達の敵じゃあ無いが、隊長が言うなら仕方ありませんな』

 

 悪態をつくマッシュとオルテガだが、彼らとて戦場を良く知るベテランパイロットである。

 整備班とチェック項目を確認しながら、手際良くドムのシステムを立ち上げていく様は流石と言った所で、数分のうちに出撃準備完了の報告が上がる。

 

『隊長ー!ドム三機の出撃準備完了です!御武運を!』

 

 三機のドムのモノアイが光り、下を見れば整備兵達が手を振って《黒い三連星》を鼓舞するように大声を上げているのが見える。

 マッシュとオルテガのドムは手に持ったジャイアント・バズを掲げてその声に応え、ガイアはスピーカーをオンにすると、部隊に向けて出撃の音頭をとる。

 

『まぁ我々にまかせろ。そこらのパイロットとはわけが違うて……黒い三連星、行くぞ!』

 

 整備兵達が退避した事を確認すると、三機のドムは脚部の熱核ジェットホバーを起動させ、一路ホワイトベースへ向けて出撃する。

 ノエル達と《黒い三連星》の戦いが目前に迫っていたのだった。

 

 




ノエルの異名は前回ラストの《黒狼》がいまいちしっくりきてなかったので、《凶鳥》に変更しています。
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