【完結】機動戦士ガンダム外伝 ノエル中尉奮戦記 作:B.I.G
─ホワイトベース ブリッジ─
『艦長!ガンダム以下、MSの補給と修理は完了しました。ホワイトベースのエンジン修理ですが、セキ技術大佐からあと3時間はかかる見通しだと』
MSデッキで作業していたクルーからの報告を受け、ブリッジのキャプテンシートに腰を下ろしていたブライト・ノア中尉は頷いた。
僚友で心の支えだったリュウ・ホセイが戦死してしまい、その動揺から心労で体調を崩していた彼だったが、マチルダが命懸けで届けた補給物資や、ノエル達第三小隊の護衛といった連邦軍からの援護に応える形で復帰を果たしていた。
「よし、ジオンがいつまた襲ってくるかわからん。セキ技術大佐にはよろしく頼むと伝えてくれ。コア・ブースターの状況はどうか?」
常に孤独な戦いを強いられ続けていたブライトにとっても、連邦軍の正規部隊がホワイトベースを見捨てずにいてくれている事は大きな希望だったのだ。
特に精密機器の修理ともなると、寄せ集めのクルー達では手が付けられない部分も多岐に渡り(ブライト自身も勿論お手上げだった)今回マチルダと共にやってきたセキ技術大佐の存在も、傷付いたホワイトベースにとっては非常にありがたいものだった。
ミデアからもたらされた補給物資は多岐に渡ったが、不足していたガンダム等MSの修理パーツに加えて、ジャブローで開発された新型戦闘機、FF-X7-Bst コア・ブースター1機が納入されていた。
『ブライト、コア・ブースターの調整はもう少しかかりそうだけど、とても良い機体よ。エンジンの修理が終わるまでには飛べるようにするわ』
コア・ブースターのコクピットに座り、セイラは機体のチェックパネルに視線を走らせながらブライトに通信を返した。
コア・ブースターはガンダム等の機体に採用されているコア・ブロック・システムの根幹を成すコア・ファイターにメガ粒子砲等の武装を装備したブースターユニットを装備した機体で、操作系統やインパネのレイアウトには変わりが無い。
技術スタッフから説明を受けるセイラだが、ふと視線を上げると、MSデッキで整備が終わったガンダムを見ながら話し込んでいるアムロとノエルの姿が見える。
「アムロもアンダーソン中尉と随分と打ち解けたようだけど、やっぱりパイロット同士って……違うものね」
セイラもオペレーターとしてアムロやカイ、ハヤトと共に戦っていたつもりだが、やはり実際にMSに乗って背中を預けた相手というのは違うものか、と少しセイラは考える。
(以前ガンダムに無断搭乗して出撃した時には散々な目にあったし、ガンキャノンに乗ったアムロとは一緒に戦ったというよりも一方的に助けられたと言う方が正しい)
コクピットの中からでは二人がどんな会話をしているのかわからないし、盗み聞きするつもりは毛頭無かったが、一抹の寂しさをセイラは覚えた。
─ホワイトベース MSデッキ─
「えぇと……ノエル中尉!後で落ち着いてからでは良いんですが……クルーの皆と一緒に、記念写真を撮ってもらえませんか?勿論、第三小隊の方々も一緒に……」
MS談義も一息付いた所で、意を決した様に記念写真を撮ってもらえないかと切り出したアムロに、くすりと笑いながら首を縦に振るノエル。
マチルダ中尉とホワイトベースのクルー達が記念写真を撮っているのは見ていたが、まさか自分にもその機会が巡ってくるとはノエルも思わなかった。
考えてみれば、アムロ達は正式な軍属ではないにも関わらず、連邦軍の最高機密であるV作戦のMSやペガサス級の戦艦に乗り込んだばかりに、過酷な戦いを強いられる事になったのだ。
以前の戦闘では、頼りにしていた人物も戦死してしまったと聞いていたし、これくらいの協力で彼等の心が少しでも軽くなるのなら、喜んで写真くらいとってあげるつもりだった。
「それじゃ、皆で撮る前に内緒で1枚撮っちゃいましょ!……はい!」
「ち、中尉!」
悪戯心を出したノエルは、手にしていた小型端末のカメラ機能を使って不意打ち気味にアムロとのツーショット写真を撮影する。
はじめこそ慌てたアムロだったが、内心嬉しかったのかはにかんだ笑みを浮かべながら写真を何枚か撮影し、自身の端末にデータを送信してもらう事に成功。
(カイさんやハヤト達には絶対に隠し通さなきゃ……何を言われるかわからないぞ)
心の中でガッツポーズをしながらノエルとの写真を宝物にすると誓うと同時に、仲間達に見つからないように隠し通さなければと決心するアムロだったが……直後にけたたましい警報とブライトの声がMSデッキに響き渡った。
『総員戦闘配置だ!多数の敵MSの反応をセンサーが感知している!MS発進用意!パイロットはスタンバっておけよ!』
■
『むぅ、センサーか。流石に連邦の連中も追撃を警戒しているな?』
『なぁに、こっちが来る事がわかっていようが、どうせ木馬は動けないんです。このドムなら、連邦の白いヤツだろうが黒いヤツだろうが!』
『マッシュの言う通りでさぁ。ドムの機動性はザクやグフとは比べ物になりませんぜ!』
地面に設置されたセンサーを確認し、木馬にこちらの動きを気取られている事を察知するガイア。
別働隊のMS隊はドダイYSを利用して、空中から木馬に接近する手筈になっている為、今し方発見した対地センサーには反応しない筈だと考える。
それにしても、マッシュやオルテガの言う通り、彼等が乗る新型MS ドムの機動性は他のMSのそれを大きく凌駕していた。
ドムの特に特徴的な所は、大型の脚部に熱核ジェットエンジンを採用することによって、最高時速381km/hのホバー走行能力を手に入れた点だ。
別働隊は空中を移動しているにも関わらず、進行速度は陸上を移動しているこちらとさほど変わらないし、この機動性は戦闘行動中であれば更に有効である事は明らかだった。
『よぉし、木馬に攻撃を仕掛ける!行くぞ!』
熱核ジェットエンジンの出力を全開にして、三機のドムが森林地帯を疾走する。
通常のMSであれば、移動に多大な制限のかかるであろう生い茂った木々を物ともしない。
あっという間にホワイトベースが設定していた警戒ラインを通り過ぎるトリプルドムが、ブリッジからも肉眼で確認出来る距離まで接近していた。
■
【BRIEFING】
こちらは艦長のブライト・ノアだ。
緊急事態だ。現在ホワイトベースにジオンが追撃を仕掛けてきている。
対地センサーとアンダーグラウンド・ソナーで解析しているが、今までのジオンのMSとは全く異なる速度で接近する機影が三機、恐らく新型機がいるようだ。
また、反対方向からは空中から接近する機影を、哨戒に出ていたラドリー少尉とカイが発見している。
アンダーソン中尉はアムロと共に、ホワイトベースの正面から進行してくる新型MSを迎撃して欲しい。
ロフマン曹長はラドリー少尉達と合流後に敵別働隊に対処し、ハヤトのガンタンクはホワイトベースの直衛に当たる為、ガンダム二機でのミッションになる。
ホワイトベースのエンジンはまだ未調整の為移動する事は出来ないが、修理の完了している武装を用いてMS隊の援護を行う。
オデッサ作戦に参加する為にも、何としてもホワイトベースを守り切らなければならない。
厳しい戦いになるとおもうが、よろしく頼む。
MS1 ノエル・アンダーソン中尉《デルタ・リーダー》
RX-78-01[FSD]ガンダムFSD MS用100mmマシンガン
MS2 アムロ・レイ少尉
RX-78-02 ガンダム ビーム・ライフル
作戦成功条件:敵部隊の全滅
作戦失敗条件:護衛対象の破壊、部隊の全滅
─ MISSION START ─
『アムロ、ガンダム行きまーす!』
『こちらガンダムFSD、出撃します!』
警報を聞いて機体のコクピットでスタンバイしていたアムロとノエルは、急いでそれぞれのガンダムを出撃させる。
ガンダムに続いてアニッシュの陸戦型ジム、ハヤトのガンタンクが出撃するが、アニッシュは哨戒中に敵を発見したラリーとカイの援護。
足の遅いガンタンクに搭乗しているハヤトは動けないホワイトベースの直衛に回り、状況に応じて援護射撃を行う指示が出ていた。
『こちらデルタ・スリー、デルタ・ツーとガンキャノンの援護に向かう!坊主達、ウチの隊長になんかあったら承知しねぇからな、しっかり頼むぜ!』
『デルタ・スリー!良いから早くデルタ・ツーとカイ君の援護に行きなさい!』
偶然にも対空性能に比較的優れた武装を持つジム・キャノンとガンキャノンのコンビなら優位に立ち回れるだろうが、数的不利の状況では早急に増援が必要だ。
アムロとハヤトへ向けてノエルの事を頼むと言い残して、アニッシュは陸戦型ジムのスラスターを吹かせてラリー機とカイ機の援護に向かう。
『ハヤト、後方支援は任せた!僕は前に出る!』
アニッシュの発破にアムロとハヤトが応え、ガンタンクはブライトの命令通りにホワイトベースの直衛に入る。
アムロからの後方支援の要請に了承の意を返すハヤトだが、アムロだけに頼ってばかりはいられないとスコープを覗き、高速移動するドムを射程内に捉えた。
『これ以上ホワイトベースに近付けさせるものか!コイツ、当たれぇ!』
脚部がキャタピラ故に機動性に劣るガンタンクだが、圧倒的超射程を誇る120mm低反動キャノン砲の威力は絶大だ。
両肩の砲塔が火を吹き、発射された120mm弾がホワイトベースに迫り来る敵を撃ち貫くかと思われたが、まるでスピードを落とさないままに鮮やかな動きで回避行動を取る三機。
『は、早い……今までの敵とは違うぞ!』
連続して発射される120mm弾を難なく回避する三機のドム。
その一糸乱れぬ滑らかな動きに、並の敵では無いと察したアムロの額から一筋の汗が垂れる。
『アムロ君!来るわよ!』
ビームサーベルをガンダムFSDに握らせたノエルの声は、緊張で震えていた。
■
『正確な狙いだが、それ故に読みやすい!』
ガンタンクの砲撃を避け切ったドムのコクピットの中で、ニヤリと笑みを浮かべるガイア。
キャタピラ付きの攻撃は確かに驚異だが、当たらなければどうと言う事は無いし、あの鈍重さならこのドムの敵では無いと判断する。
あくまで白いヤツを落とせば後はどうとでもなる、が……
『マッシュ、オルテガ!まずは黒いヤツをやる!MSにジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!』
ガンタンクの攻撃を回避した後、ガイアがターゲットに選んだのはアムロでは無くノエルのガンダムFSDだ。
事前に敵MSの動きをチェックしていたが、同型機に見えるが明らかに黒いヤツの方が動きが鈍い事をガイアは見抜いていた。
恐らくはパイロットの腕の差だと考えたガイアは《黒い三連星》必殺のフォーメーションであるジェットストリームアタックをガンダムFSDに向けて仕掛ける。
『さあ、オレ達のジェットストリームアタックを味わってみるが良い!』
サーベルを構えて迎え撃つ態勢に入った黒いヤツを見て、ガイアは獰猛な笑みを浮かべた。
『く、来るっ……!ひぅっ!』
恐ろしい速度でこちらに接近してくる敵MSが背中に装備していたサーベルを引き抜き、こちらへ向けて振り向いた瞬間、ノエルは反射的にトリガーを引いた。
モニターには不気味に光るモノアイが映り、ぞくり、と本能的な恐怖で彼女は背筋を震わせる。
ノエルの恐怖とは関係無く、マシーンのガンダムFSDはビームサーベルを振り被るが、その光刃はドムを捉える事は無かった。
『ははは!遅いわ!!仕留めろマッシュ!』
ガンダムFSDがサーベルを振り下ろすよりも早く、勢いよく振り抜かれたドムのヒートサーベルは、ガンダムの右肘関節を寸分の狂いも無く溶断していた。
『ノエル中尉っ!逃げて下さいっ!……こ、このぉっ!ノエルさぁん!』
焦るアムロが必死の形相でビームライフルを撃とうとするが、ノエル機に攻撃を仕掛けた勢いそのままに突っ込んできたガイアのドムに阻まれる。
咄嗟にシールドでドムの体当たりこそ防いだが、大きく態勢を崩されてしまったアムロはノエルを援護する事が出来ない。
アムロの目には、今まさに二機目のドムに狙いを付けられたノエルのガンダムの姿が映っていた。
『ア、アムロ君……っ!』
アムロの耳に聞こえたのは目前に迫った死の恐怖に震えるノエルの声。
そしてそれをかき消す、ドムのジャイアント・バズが彼女にむけて発射される轟音が響いた──
特殊部隊の隊長であるノエルですが、ジオンのエースと戦闘するのは今回が初めてです。
今の彼女には、まだジオンのエースと戦って一人で勝てる能力はありません……