【完結】機動戦士ガンダム外伝 ノエル中尉奮戦記   作:B.I.G

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MISSION 6 「凶鳥の鳴く時」

「なあ、お前地球に降りてから、黒い鳥を見た事あるか?」

 

「ああ、何度もあるよ。嘴から羽の先まで真っ黒で気味の悪い鳥だろ?」

 

 二人のジオン兵は、ジャブローへ空爆へ向かうガウ攻撃空母の中で言葉を交わしていた。

 コロニーには人工的に作られた自然があるが、当然ながら野生動物は基本的にいない為、地球に降りた彼らは様々な環境の変化や動物を目にする機会が多かった。

 可愛らしい動物もいれば、摩訶不思議な色形をした虫などその種類は多岐に渡るが、彼は何度も目にしていた黒い鳥の事が気にかかっていた。

 

「そうさ。夕暮れ時になるとたまに部隊の野営地に来て、こっちを見ながら不気味な声で鳴きやがる。──あの鳥が鳴いた後に出撃すると、絶対誰かが死んでるんだ」

 

 帽子を深く被り直した彼の声は、少し震えている──怯えていると言っても良い。

 キャルフォルニアベースから出発する際に、彼は無数の黒い鳥がガウの翼部に留まっているのを見たからだ。

 まるで鳥達がむざむざ死にに行く連中の姿を見に来たかのようだ、と男は思った。

 

「……考えすぎだ。第一、連邦の例のMSは白いヤツだって言うだろ?俺達は戦争してるんだ、人が死ぬのだって日常茶飯事さ」

 

 黒い鳥と白いヤツ、色が真反対じゃないかと少し茶化したように返事を返すが、自分で思っていたよりもその声は暗かった。

 

 

 

 

 ノエルの嫌な予感は的中した。

 ジオンはジャブローの正確な位置を特定する事に成功したのか、はたまたオデッサが陥落した事で尻に火が付いたのか──真相はわからないが、彼等はガウ攻撃空母を利用した大規模空挺作戦を決行したのである。

 

 地上に設置されたトーチカからの情報では、複数のガウから相当数のMSが降下している事が確認されていた。

 まさに奇襲を受けた連邦軍本部ジャブローの基地内には警報が響き渡り、MSパイロット達が自分の機体へと駆けていく中で、ノエル達第三小隊(デルタ・チーム)は自機が格納されているハンガーへと急ぐ。

 

「私のガンダムは!?……まだ駄目ね?出せる機体はある!?」

 

 ハンガーへ走り込んだ三人だが、ノエル機であるガンダムFSDの修理はまだ完了しておらず、すぐには出撃出来ない。

 なにせまだ右腕と左脚が付いておらず、あと一日ジオンが攻めてくるのが遅ければ、とノエルは唇を噛む。

 

 ラリーとアニッシュは即座に新型機であるジム・スナイパーllとジム・スナイパーカスタムに乗り込むと、パネルに目を走らせながら機体を機動させていく。

 実機での訓練無しでのぶっつけ本番だが、泣き言を言っている暇は無かった。

 

「アンダーソン中尉!こちらです!中尉が乗れる機体をコーウェン准将がご用意してます!」

 

「ミルスティーン中尉!わかりました、すぐに向かいます!デルタ・ツー、デルタ・スリーはMSの起動後、4番のエレベーターで待機!」

 

 量産型ジムでもやむを得ない、と搭乗出来る機体を探すノエルに声をかけたのは、コーウェン准将の補佐役兼補給部隊指揮官であるレーチェル・ミルスティーン中尉。

 普段はおっとりしている彼女だが、有事の際の対応の的確さと素早さには定評があり、第三小隊の補給任務も任されている。

 数少ない同性の同僚とあって、ノエルとはプライベートでも仲が良く気の置けない人物だ。

 

「これも……ガンダム?」

 

「RAG-79-G1 水中型ガンダム──通称ガンダイバー。この状況下なら、最適な機体です」

 

 慌てふためく非戦闘員をかき分けながら、やっとの事で数ブロックを走り抜けた二人の目の前に現れたのは、かつて彼女が陽動作戦の際に搭乗したアクア・ジムの再設計機──水中型ガンダム。

 アクア・ジムより鮮やかな青色で染められたその機体は、ノエルの愛機であるガンダムFSDにどこか似ていた。

 

「武装は…… 偏向ビーム・ライフルにハンド・アンカー、魚雷にビーム・ピック。何とか行けそう!」

 

 ノーマルスーツに着替える余裕も無く、水中型ガンダムのコクピットに乗り込むノエル。

 チェックパネルに目を通して機体の武装や各部機構のチェックを手早く行うが、大まかな部分は以前のアクア・ジムとは変わっていない事に安堵する。

 

 水中型ガンダムはアクア・ジムを再設計し、エースパイロット向けにチューンナップした機体だが、その過程でガンダムFSDの原型機である局地型ガンダムの設計データを盛り込まれている。

 (型式からわかる通り、頭部こそガンダムタイプだが実際はジムのバリエーション機に当たる機体だ)

 慣れない機体での出撃は実験部隊(モルモット)としては慣れっこだが、命を預ける機体は信用出来る物が良い、と言うのは彼女ならずとも思う事だ。

 

『ノエル・アンダーソン中尉です。水中型ガンダム、出撃します!』

 

 整備兵達が退避したのを確認して、ノエルは機体を起動させる。

 デルタ・ツー、デルタ・スリーは既に地上へ向かうエレベーターで待機している為、彼女は急いで機体を走らせた。

 

 

 

 

【BRIEFING】

 

 こちらはレーチェル・ミルスティーン中尉です。

 現在ジオンはガウ攻撃空母から相当数のMSを降下させている他、水陸両用機と思われる機体が既に基地内部に侵入したとの情報も入っています。

 

 ジオンは明らかにこれまでに無い規模の大部隊を今回の空挺作戦に投入している模様です。

 敵の詳細な攻撃目標は未だ不明ですが、情報部からは宇宙港の破壊が目的ではないかと連絡が来ています。

 基地内部に侵入した敵部隊にはホワイトベース隊の他、ブランリヴァル隊のガンダム6号機、サラブレッド隊のガンキャノン隊が中心となって応戦しています。

 

 今回のミッション内容は敵MSの降下阻止、また既に降下した敵MSの排除が目的となりますが、基地内部への敵MSの侵入は必ず阻止して下さい。

 くれぐれも気を引き締めて、ミッションに当たって下さいね。

 

 

MS1 ノエル・アンダーソン中尉《デルタ・リーダー》

RAG-79-G1 水中型ガンダム 偏光ビーム・ライフル

 

MS2 ラリー・ラドリー少尉《デルタ・ツー》

RGM-79SP ジム・スナイパーll ロングレンジ・ビーム・ライフル

 

MS3 アニッシュ・ロフマン曹長《デルタ・スリー》

RGM-79SC ジム・スナイパーカスタム 二連装ビーム・ガン

 

 

作戦成功条件:敵降下部隊の全滅

作戦失敗条件:部隊の全滅、ジャブロー地下基地への敵機侵入

 

 

─ MISSION START ─

 

 

『──おいおい、なんて数だよ。ジオンの奴ら、どこにこんな戦力を』

 

 エレベーターに乗り込み、僅かな時間でブリーフィングを済ませた第三小隊だったが、地上に出た瞬間に予想以上の光景に思わずラリーが言葉を漏らす。

 無数の各種対空火器が一斉に対空射撃を行い、離陸した迎撃戦闘機から放たれた機銃の火線がガウから降下する敵MSを襲う。

 地上に降り立つ事も出来ずに空中で爆散する敵MSも数多く見られるが、それでもジオンが投入した戦力はかなりのものだ。

 

『確認出来るガウの数はおよそ十八機、MSが三機ずつと考えても五十機は下らない。デルタ・ツーはロングレンジ・ライフルでガウを狙撃!スナイパーの腕の見せ所よ、頼りにしてるわ。デルタ・スリーは狙撃中のデルタ・ツーを護衛しながら、敵機の撃破ね!』

 

『デルタ・ツー了解。残らず撃ち落としてみせます』

 

『デルタ・スリー了解!隊長、危なくなったら助けて下さいよ?』

 

 ラリーとアニッシュに指示を出すノエルだが、慌ただしい状況下でも普段通りに応えてくれる部下に感謝しながらも気を引き締め直す。

 地上に降りた敵MSの排除を速やかに行わなければ、宇宙港への侵入を許してしまう恐れもある為、いかに早く動けるかが肝心だ。

 態勢を立て直したジャブローの防衛部隊もすぐに出てくるだろうが、実戦経験の乏しい彼等をむざむざやらせるわけにはいかない。

 

『私は河川を利用して、敵MSに奇襲をかけて各個撃破するわ!──行きます!』

 

 ノエルはアクセルペダルを踏み込み、水中型ガンダムの青い巨体をアマゾンの広大な河川の水中へと踊らせた。

 

 

 

 

『なあアニッシュ、俺思うんだが……ジオンに兵無しっての、ありゃ嘘だな』

 

『ラリー少尉、レビル将軍の悪口は不味いですって!──まあ、俺も同意見ですけどね!』

 

 冗談交じりにレビル将軍の名言として知られる『ジオンに兵無し』を揶揄しながら、ラリーはジム・スナイパーllに狙撃態勢を取らせた。

 

ジム・スナイパーllは精密射撃用センサーと高倍率カメラ(精密射撃用レーザーと光学複合センサー)を備えた開閉式バイザーを持ち、頭部バイザーを下ろして頭部全体を冷却することで超長距離の狙撃を可能としている。

 装備したロングレンジ・ビーム・ライフルも通常のビーム・ライフルよりも遥かに長射程かつ高威力を誇るが、長い銃身とそれに伴う重量の増加で取り回しは悪い。

 

『本当に届くのか……?当たれよっ!』

 

 精密射撃用センサーと高倍率カメラの性能も相まって、射撃用スコープに映し出される敵機の機影は鮮明だ。

 MSの通常火器では到底届かない高度を飛行しているガウに狙いを付け、半信半疑ながらロングレンジ・ビーム・ライフルで狙撃を試みる。

 

『ガウ一機撃破!お見事、デルタ・ツー!」

 

『ああ……だがこのライフルじゃ地上の敵を相手に使うには威力がありすぎる。味方を巻き込む可能性があるぞ、迎撃は頼む!』

 

『了解!俺はやりますよ。やりますとも!』

 

 放たれたビームは狙ったガウの翼を撃ち貫き、特徴的な機影は瞬く間に黒煙を上げて墜落していく。

 予想以上の威力だ、とラリーは思うがこの威力、射程のライフルを地上で使うのは難しい。友軍機を巻き込んでは目も当てられないからだ。

 近づいて来た敵MSの迎撃はアニッシュのジム・スナイパーカスタムに一任して、ロングレンジ・ビーム・ライフルの冷却に入るラリー。

 

『言ってるそばから……!近付けるさせるかぁ!』

 

 鬱蒼と茂った木々を隠蓑にしてジム・スナイパーllに接近しようと試みたのは、両手にヒート・サーベルを装備したグフだ。

 いち早く敵機に気がついたアニッシュがラリー機を守るように立ちはだかると、二丁装備の二連装ビーム・ガンを乱射。

 近接戦闘を挑もうとしていたグフは反応出来ず、暴力的な光の束に機体を蜂の巣にされてその機能を停止させる。

 

 戦争初期から最前線で戦ってきたベテランパイロットの二人は、自分達の能力を遺憾無く発揮出来る機体(相棒)を得て、次々とガウとMSを撃破していった。

 

 

 

 

『はぁ、はぁ、はぁ……誰か、誰かいないのか!』

 

マシンガンを装備したザクIIに乗るパイロット、ジョイス少尉は錯乱したように大声を張り上げるが、その通信に応える者はいない。

 命からがら連邦軍の対空砲火を潜り抜け、地上に降り立つまでは良かった。

 ジャブローを制圧し宇宙港を破壊せよ、との命令を聞いていたが、実際に出撃してみれば情報部は肝心の宇宙港の正確な場所すら把握していなかったのだ。

 

 トーチカや高射砲を破壊しながら地下基地への侵入路を探していたジョイス達だったが、ふと目を離した隙にソラン伍長のザクIIが消えた。

 普段から血気盛んな若者だったから、もしかしたら敵を見て突貫したのかもしれないとも思ったが、それにしては様子がおかしい。

 

 一旦他の部隊と合流した方が良い──そう隊長であるタカハシ中尉に進言するが返答は無い。

 不審に思ったジョイス少尉は立ち尽くすタカハシ中尉のグフへ近付くが、その有様を見てひっ、と悲鳴を漏らす。

──グフのコクピットは何かで貫かれたのか、高熱でグズグズに溶解していた。

 

(作戦は失敗だ!いや、むしろこれが作戦だと言えるのか!?あれだけかき集めたMSが簡単に撃ち落とされて……俺達は捨て駒だとでも言うのか!)

 

 ジョイスが思った通り、ジオンのジャブロー降下作戦に投入された部隊は文字通りの()()()に他ならなかった。

 オデッサが陥落したのを皮切りとしてジオンは各所で敗退を重ねており、もはや地上軍は風前の灯。

 

 そのような状況で発動されたジャブロー降下作戦だが、その真の目的はジャブローの制圧では無く、宇宙港を破壊して()()()()をする事にあった。

 ジャブロー攻撃に参加した公国軍部隊の編成を見てみると、彼らは支援の航空機や潜水艦を除けばMSだけで編成されている。

 これは取りも直さず彼らが”制圧部隊”を引き連れていない事を意味していた──つまり、彼らは初めからジャブローを制圧する能力など()()()()()()()()

 

『……っ!!』

 

 背後から聞こえた()()が着地したような金属音を聞いて、ジョイスの額から汗が滴り落ちた。

 隊長やソラン伍長はきっとコイツにやられたのだと思いながら、乾き切った唇を舐める。

 敵わないまでもせめて一太刀──ザクに握らせたヒート・ホークを発熱させてタイミングを図る。

 

 彼が振り向こうと決意した瞬間、偏光ビーム・ライフルから放たれた細く収束した光がランドセルを貫通し、ザクIIのコクピットを跡形もなく焼き尽くす。

 

 

──痛みは無かった。ジョイスは最期まで、自分が死んだ事に気がつかなかったから。

 

 




パトオペ2に水中型ガンダムが実装された日に投稿するのは、全くの偶然です。
ちょっとびっくり……
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