MasqueradeRe:Lights ~この世界では本の力を持つ仮面の騎士がいる~ 作:ダグライダー
毎度の事ではございますが執筆、投稿が遅くて申し訳ありません。
ええ、はい…今回もまた分割です。
Sadistic★CandyとIV KLOREで出番を分けました、そうしないと前の話より長くなるので。
一応、途中でIV KLOREとドルトガルドの聖剣の剣士に触れていますが、そこで初めて剣士の名前と特殊な事情が明かされたりしてますが、お気に為さらず。
サブタイトルに関しては、ニコニコで見てた平成の歴史の始まりに感化されたとだけ…。
──バンプボール、それは私達の間ではごく当たり前の球技。でも先生達の世界にも似たような、でも微妙に違う競技があるそうです。そう言えばフィレンツェの聖剣の剣士さんはこのバンプボールを知っておかしな事を口走ったそうです。一体何を仰ったんでしょうか?──
━フローラ女学院・教員棟職員寮━
ガラクタ市での騒動からはや数日。戦闘と呼べるかも解らない出来事の後、居合わせた少女達から色々と詰め寄られ根掘歯堀質問責めにあった斗真であるが、劉玄の口添えとアルマの尊い犠牲もあり、何とか必用最低限のモノを購入する事が出来た。
途中、エレンがゲームを販売する店舗のテント前でルージュの小柄な生徒と珍しく楽しげに……否、あれは愉しげと表すべき顔で話していたのは印象深い。
「それはそれとして部屋に入るなり寛がれるとは思わなかったけど……」
予め部屋に備えられていた事務処理を行う趣の深い机とセットであったそこそこ豪奢な椅子に腰掛けながら斗真は眼前の2人の姿に呆れる。
「堅いこと言うなよ、同類だろ?」
「おー、そーだそーだ。ついでにワタシもモテなせー」
持ち込んだ折り畳み式チェアへ凭れるエレンと共に斗真へ指図めいた事を口走っているのは、特別クラスルージュランクのルキフェル。
斗真の部屋のソファに平然と腰掛けながら不敵な顔で無遠慮に宣う。
彼女は同じく特別クラスに所属するアンジェリカと共に、デュオオルケストラユニット【Sadistic★Candy 】の1人である。
どうも数日前のガラクタ市での騒動を見ていたらしい。
曰く、適当にフラついてゲームでも見繕って帰ろうかと思ったら奥の方で騒ぎが起きて興味本位で近付けば黄金の煙が充満し、五里霧中、視界不良の中何とか反響する音を頼りに出所の大きな方向へ向かえば…其所に居たのはクラスメートと
己の欲求に素直で怠惰な彼女はその剣士の片方の正体がつい最近自分達のクラスの担任教師となった男──つまりは斗真である事を知る。
更に彼女はこの学院に入学して以降、ある時ラトゥーラの留学に伴って帯同して来たエレンと知り合い、意気投合。
何時ものように授業をサボタージュした彼女は珍しく自室から出てきたエレンを見掛け、行先を知り、ならばと己も便乗したのである。
「うーん、まさか見られてたなんて……兎も角、もてなすかはさて置き、生徒と親交を深めるのは悪い事じゃ無いかな。でもルキフェルさんはあんまり仮面の剣士について騒がないんだね?」
経緯は兎も角、生徒と意志疎通は大事と思い会話の取っ掛かりとして自分達のもう1つの顔について訊ねる。
「ハンッ!ワタシの保護者ヅラをするヤツが貴様らと同類なのさ先生」
とても偉そうにソファにふんぞり返るルキフェル、小さな暴君は斗真の問いに鼻で笑いながら答える。
「保護者?それに同類って……」
「ルキが言ってんのはムッツリの事だな、アイツは生まれは真面目ちゃんやストーカーと同じでこの世界だし、色々あってまぁ…このちっこいのの面倒見てるというか監視と言うか……コイツの相方とは別ベクトルでな。まぁその話題の当人は今留守にしてるワケだ。監視してねーじゃんってのはナシな」
「誰がチビっ子か!?」
斗真が新たな疑問に傾げればエレンが持ち込んだチェアを器用に傾けながら軽い解説を始め、ルキフェルがすかさずチビと言う言葉に対して不機嫌を顕にする。
「相方と比べてもチビじゃねぇか」
「ほう……久しぶりに痛い目を見るか?」
「喧嘩は外でお願いします」
大人気ないエレンの物言いにルキフェルが剣呑な雰囲気を醸し出し空中に見えない火花が散る。
部屋の主としては新生活早々、部屋を荒らされたくはない。
「冗談だ、本気にするな先生」
「そうだぞ小説家。喧嘩一歩手前までの流れが御約束ってヤツだ」
途端にケロッと態度を返す2人。
「止めてくれ…心臓に悪い。後ホントに帰って……」
切実に願う、心からの声。しかし2人は取り合うつもりは無いらしい。
斗真の目の前でルキフェルが持ち込んだボードゲームに興じながら会話を続ける。
「先生を見て思い出したが…明日は久しぶりに授業に出るぞ」
「ほーん?珍しい…。いつもサボってるお前がどういう風の吹き回しだ?」
(サボってるのか……と言うか帰って…。ゲームは自室でして下さい!後…保護者の人速く帰って来て!!)
言っても聞かないので心中で吐露するのみに留める斗真であった。
「まぁアンジェリカのヤツがうるさいからな。それに偶には点数を稼いでおかないと理事長にも口煩く言われるかもしれん」
「ほーん。で、明日どんな授業があるわけ先生よぉ?」
からかう様な口調で死んだ目を此方に向けてくるエレン。正直ハイライトの無さが怖いので何とかして欲しい。
「え~っと……明日の授業だと実技だから俺の仕事は特に無いなぁ」
スケジュールを記入したメモを捲りながら質問に返答する。
するとエレンはルキフェルの方へ視線を移す。
「ふっ…気になるのか?」
「そりゃサボり魔が出たがるモンなら気になるだろ?」
ルキフェルの挑発めいた言葉にも乗らず至極当然とばかりに返すエレン。
「チッ、つまらん。…バンプボール、そのリーグ戦だ」
挑発に乗ればゲームが自分に有利になると目論んだルキフェルだがアテを外され舌打ちを打つ。
暫し自身の前髪の黄色く変色した毛先を弄った後、ポツリと溢す。
「バンプボール…?」
もう何度目かになる聞き覚えの無い単語に当然斗真は首を捻り、エレンはその名前を聞いた瞬間考え込む。
「バンプボール……バンプボール…ああ、あの超エキサイティンンン!!無差別ドッジボールか」
思考の海から帰ってきたエレンが述べた言葉に斗真は思わず声を荒げる。
「いやそれ、昔のオモチャのCMのヤツ!!って言うかドッジボールが無差別ってどう言う事ぉぉおおお!?!!?」
「煩いぞ小説家。いきなり大声を出すな」
「ふーん、先生達が居た世界には中々愉快なオモチャがあるんだな。後、うるさい」
2人から揃ってうるさいと叱られる斗真。己の部屋だと言うのに理不尽である。
結局、その日は2人の珍客のゲームに浪費されバンプボールの詳細も訊けず、気付いた時には2人共に居なくなっており有耶無耶な気持ちを抱えたまま1日を過ごすのであった。
━フローラ女学院・グラウンド━
翌日、特別クラスと他複数人の参加希望生徒による実技の授業時間。
其所には斗真の姿もあった。
「すみません、いきなり見学したいだなんて無茶を聞いて頂いて…」
実技担当の女性教諭に礼を述べる斗真。
「いやいや、気にしないでください。担当以外の目もあった方が彼女達も気が引き締まるでしょうから。それにトーマ先生も魔女の魔法がどういったモノなのかを詳しく知る機会にもなるでしょう!」
実技教諭は明朗快活に笑って斗真の懇願を許諾する。
さて、改まってグラウンドに視線を飛ばせば、運動着に着替え健康的な肢体を覗かせるうら若き乙女達。
制服と同様ノワール、ルージュ、ラピス其々のランクが一目で判別出来る。
今回行われる実技授業──バンプボール。そのリーグ戦とあって生徒に与えられるポイントはかなりのモノ、それ故か参加者はかなりの数だ。
(見た所……特別クラスはほぼ全員参加してるな…。居ないのは例のヤマトって国の娘達くらいか)
斗真の所感の通り、特別クラスはヤマトの魔女3名を除き全てが参加している。
斗真と縁が深くなりつつあるティアラ達の班。ラトゥーラ達シュガーポケッツ。昨日会話を交わしたルキフェルのSadistic★Candy 。そしてユニットメンバー全員が亜人と言うドルトガルドのグループ、【IV KLORE】。
他数名といった具合か。
それ以外にも参加生徒や観戦目的の生徒も居る。
「結構注目されてるんだな…」
リーグ戦と言うのも大きい理由だろうが大半の生徒が参加ないし観戦という規模に驚きの言葉を洩らす。
「そりゃあ見応えはあるからな」
「うんうん。若い娘が元気に球遊びに興じるってだけでオジさん羨ましいよ」
そして何時の間にやら斗真の隣に現れている
「おぉう?!何時の間に!!?」
思わず漫画みたいな驚き方をする斗真に気さくな最年長が笑顔で答える。
「斗真ちゃんが見学に来る前から!」
「全く気付かなかった……」
同僚…と言って言いか不明だが、2人の存在に一切気付かなかった斗真。これが年季の違いという奴なのだろうか……。
「まぁ斗真ちゃんは剣士としてはまだまだ若輩も良いところだからね。仕方無いんよな、後ね、オジさん達だけじゃなくて……ほらあの木陰の所見てみなよ」
新米教師の予想通りの反応にカラカラ笑いながらフォローする劉玄、ついでにとばかりに対岸となる木々の方に指を差す。
「んん……あれは…燕尾服?に何か木の枝を括り付けて……陳さん、あれは一体…?」
眼を凝らし劉玄の差す方に注目すれば綺麗なミッドナイトブルーの燕尾服に、薄く紫がかったシャツ、反対に上着とシャツを引き立てるような白いウェストコート、タイはスタンダードに白、ポケットチーフはやや暗めの赤と…実に印象的な見た目である。頭と肩に付けてる葉の付いた枝を無視すればだが…。
「え…と…、彼は?」
何と評して良いのか分からないままなんとか言葉を絞り出し件の人物について訊ねる。
「ドルトガルドの聖剣、その担い手……
「そんでもってIV KLOREのリーダー"エミリア"の従者を自称してるストーカーな」
2人が各々に燕尾服の人物について説明してくれる。しかし斗真は劉玄の口にしたある言葉が気になった。
「なる筈だった……過去形ですか?」
「うんまぁ……ちょっと訳アリでねぇ、詳しい話は当人──は話さないかなアイツは」
「話してもオジョウサマガーってんで大した会話にならねぇだろ」
理由を知る2人が斗真を置いて互いに納得している。
「つまり?」
困惑を残しながらも再び切り込む斗真、仕方ないかと頭を掻く劉玄。
「ドルトガルドはつい数十年くらい前まで管理してた聖剣をちょっとした事情で紛失してんのよ。それで継承する予定だった奴さんがあぶれてね、元Rayのメンバーの口添えとか紆余曲折あってエミリア嬢ちゃんの実家にお世話になって、彼女がこの学院に入学するにあたって、追って来たのさ」
言葉を探しながら斗真へ簡潔に話す劉玄。
最後に理解出来たかね?と視線で問うて来る。
「……えっ?!じゃあ彼は仮面の剣士じゃ無いんですか!!?」
これには斗真も大いに驚いた。何故ならば剣士はアルマ、劉玄、エレン、自身以外にこの学院に後2人居ると聴かされていたし、ドルトガルドからの人間がそうだとも言っていたから尚更である。
「しーっ!斗真ちゃんしーっ!正体隠して無いとは言え、大っぴらに語る事じゃないんだよこれ!」
「後…別に継承してないからって言っても、じゃあ剣士じゃ無いのかって言えば違うしな」
斗真の口を抑える劉玄の横でエレンが補足する様に述べる。
「まず、アイツは普通の来訪者とこの世界の人間のハーフじゃねぇ。亜人とのハーフだ。それに本来継ぐはずの聖剣が無くなっても、ワンチャン大戦で失われた聖剣が発見されりゃ…ソイツを使えば良いしな、お前みたいに」
燕尾服の人物をその死んだ瞳に捉えながらパタパタと手を軽く振り言葉を紡ぐ。
「亜人……確か、特異な体質や異能を持った種族だっけ?」
教師として赴任するに中りクロエやアルマから聞き齧った情報を思い出す。
「うん、そうね。オジさん達の世界で言う所の吸血鬼やら人狼やらだ」
「お前が受け持った特別クラスにも居るIV KLORE の3人がまさにソレだ。
エレンがウォーミングアップをする生徒の中から黒い襟とスカートの生徒3人を視線で指し示す。
「彼女達か……。そう言えばまだちゃんと話した事無いなぁ」
該当生徒を見付けそんな事を思い出す斗真に止めとけとエレンが呆れ半分の声を出す。
「あの御嬢様は大の男嫌いで有名だし、その従者やってるメイドはやたら毒舌だし、唯一マトモなワンコはワンコだし、そもそも御嬢様にちょっかい掛けるとストーカーがエライ形相で報復しに来る可能性があるからな」
「えー……」
「うん、エレンの言う通り、アイツはちょっと面倒な奴だからね。ハーフとは言え亜人だし、素の身体能力も高いから生身で相対するのは危ない」
劉玄も斗真の身を案じる様に言うのでそんなにとたじろぐ。
「モノにもよるけど魔獣一匹程度なら一撃よ、一撃。しかも奴さんの場合は剣士としての修行もあったからシミー程度なら生身で無傷のまま圧倒出来るし」
更に畳み掛ける様に劉玄は燕尾服の人物の詳細を語る。
エレンは生身で無傷圧倒ならアンタも大概だと小さく呟いていたが、斗真はツッコむ気もなく笑うしかなかった。
「はははは……って、それはそうと彼、名前は何て言うんですか?」
肝心な事を訊ねていなかったので、件の人物の名を問い質す。
「名前ね、名はへルマン。姓は分からんね…、基本この世界の人間は来訪者の子孫以外は姓は名乗んない事多いから」
「ん?でもへルマンも先祖に来訪者が居るんですよね?なら苗字はあるんじゃ…」
「まぁそうなんだけどね、当人曰く…『私はお嬢様に尽くす為に居る。故に家名など不要!』なーんて言ってるもんだから」
それ故にこの学院に居る剣士達はへルマンの事をそれ以上は知らないとの事だそうだ。
つまる所、どんな亜人のハーフかも判っていないのだと言う。
「所で…さっきから気になってたんだけど、エレンは何でそんな怪しい格好を?へルマンよりも目立つよ?」
「変装……オレ、ヒキコモリ。メダツ、キライ。シアイミタイ。ギャクテンノハッソウ…カオカクス、メダツヘイキ。OK?」
話題のへルマン並に怪しい見た目の
瞳に当たる部分に開けられた覗き穴から見える死んだ眼が余計に怪しさを引き立てる。
正直、へルマンよりも不審者である。
──と、へルマン某関連の話題に気を取られている内に試合が始まった。
さて、始まったバンプボールだが、参加者は何人かでチームを作る。
己が所属する班以外に他班の者とも組み、リザーブメンバーも含めそれなりの人数となる。
更に今回はリーグ戦とあって参加人数が多い。その為時間を区切り場所を別けて試合が組まれている。
斗真達が観戦している場所の他にも試合が行われている場所があるのだ。
「それでも丸一日の授業時間いっぱい使うのか…体育祭規模だな」
「言い得て妙だな。競技自体は一択だが、ま、その分の価値はあるぜ」
同年の2人が言葉を交わしながら始まった試合に注目する。
斗真が注目しているのはやはりなんだかんだ縁があるティアラ達の居るチームだ。
もう1つ、エミリアの居るチームも気になったが別のコートでの試合であった事や、ティアラのチームと対戦するチームにルキフェルが居たので、ティアラ達の方を優先した。
「最初の獲物は貴様らか」
右手でボールを持ちながら不遜に笑うルキフェル。
「ちゃっちゃと終わらせるよ」
腰に手を当て仁王立ちしながら秒殺宣言めいた事を口走るのは同じくルージュの運動着を纏うSadistic★Candyのアンジェリカ。
ラヴィがアンジェリカの挑発に「何だとー!勝つのはあたしだー」と憤慨している。
ルキフェルが小さな暴君ならばアンジェリカは"大" 天使とでも称しておこう。他意は無い。
「みんなー!頑張ってーーー!」
控えの選手が待機するベンチでティアラがコート内の仲間へ声援を送る。
「ルキフェルとアンジェリカ…厄介ね」
ティアラの隣に座るウェーブの掛かった茶褐色の髪と丸眼鏡がチャームポイントのクラスメート、メリッサが息を呑む。
「強いの?」
「噂ではかなり。ただ授業サボってばかりの2人なので詳しくは…」
ティアラの問いに少年漫画の解説キャラみたいな科白を返すメリッサ、彼女達の真後ろで男達が『知っているのか?!』ネタで盛り上がっているのを彼女は知らない。
一方コートではルキフェルがその細腕からは想像もつかない豪速球をラヴィ目掛け投げる。
その球を危なげ無く両手と体を使いキャッチするラヴィ、しかし思いの外高い威力にその表情は苦悶に歪む。
お返しとばかりにルキフェルにボールを投げ返すが容易く受け止められてしまう。
ベンチのティアラ、メリッサとその後ろの土手の石椅子に座る斗真達が声を挙げる。
ラヴィが投げ返したボールをルキフェルは彼女にではなく隣の少女──メリッサの班員の双子姉妹、気弱なパッツンおかっぱボブカットのココ目掛け投げた。
ラヴィと比べそこまで運動神経が良くないココはあっさりボールに当たってしまう。
「まずはルキのチームが一点取ったか」
「やー、ちっこいのに凄いよね~、オジさんも吹っ飛ばされちゃうかもなぁ~!!」
「またまた……。しかしルキフェルさん、俺の授業でももう少しやる気を出してくれればなぁ」
男3人、各々感じ入った事を述べる。
ルキフェルの授業態度に斗真は嘆いていたが、サボらず参加している時点で斗真の授業に興味津々、十分真面目に勉強している方である。
「せめてもの情けだ。魔法は使わないでおいてやる」
コートの中で堂々と魔法の不使用宣言をかますルキフェル。小さな身体に見合わぬ強者のオーラが見える。
現在のコート内には片やラヴィ、アシュレイと言う運動神経抜群の2人とココと入れ代わりで外野から内野に入ったロゼッタ。
ルキフェルとアンジェリカは変わらず、もう1人ルージュの生徒がポジショニングしている。
「うーん、ラヴィちゃん…ちょっと何時もより元気が無いなぁ。それにアシュレイさんと何かあったのかな?」
コート内で顔を合わせた瞬間反目しあった生徒達を見て斗真は心配を顕にする。
「おや?斗真ちゃんってばもう一人前の教師としての自覚が出来てきたのかね?うんうん、若いって良いねぇ」
そんな不穏な雰囲気をコートから感じつつも、試合はラヴィがルージュの生徒にボールを当て同点へと得点を戻す。
「よし!とりあえず同点!!」
「一点ぐらいで調子に乗るなっての!」
今度はアンジェリカがボールをアシュレイの方に目掛け投げる。 すかさず指の背を咥え口笛を吹くアシュレイ。
少女の瞳が金色に変色し、彼女が眺める世界の全てがスローモーションの様にゆっくりとなる。
傍目から見ればアシュレイが加速した様に見えたであろう。彼女はボールを躱し左側へと動くもすぐ隣に同じ様に右へ動こうとしたラヴィとぶつかり、縺れ倒れる。
「なにすんのーー!」 「そっちこそボサッとするな!」
途端言い争いを始める2人。しかし敵はそんな事を悠長に待ってはくれない。
「危ない!」
「あぁ?!」
ロゼッタの警告も虚しく、ラヴィの顔面目掛けボールが思いっきりぶつかる。
終いには互いに敵チームそっちのけで隙あらばボールをぶつけようと意識しあう余り、2人揃ってアウトになる始末。
「おいおい大丈夫なのかね?あのお嬢ちゃん達…」
「端から見てる分には面白いがな」
「うーんこのままじゃマズイな……」
観戦している3人も流石に不安を口にする。
アシュレイはココの双子の姉のリリ──前髪を上げ髪止めで止めた少女と入れ代わる。ラヴィはリネットと交代だ。
得点は8対1でSadistic★Candy の居るチーム優勢、このままではティアラ達の班はポイントを得ることが出来ない。
「(このままじゃ…)ラヴィ」
この状況をロゼッタも不味いと感じ、リネットと代わって外野へ移動するラヴィの背中へ声を掛ける。
「ん?」
「
ロゼッタからの"アレ"なる懇願に一瞬何を言われたか考えるも金髪ウサギは即座に思い至る。
「あぁ。アレね、わかった!」
コート中腹付近でロゼッタが瞑想する傍らラヴィが突如声を張上げ踊り出す。
すぐ側ではリネットがボールを持っている為、狙われる心配は無い。
「フレ!フレ!ロゼちゃん!ゴーファイゴーファイロゼちゃん!すごいぞすごいぞロゼちゃんっ!!!」
ラヴィ流のアレンジが入ったチアダンス、最後に両の指でフィンガースナップを軽快にロゼッタへ向けて打ち鳴らす。
するとどうだろう…ロゼッタの全身が青いオーラに包まれ発光しているかの様に変化する。
「リネット。ボールを…」
「あ…はい!」
魔法に掛かったロゼッタが瞑想を止め、右目を開きリネットが持つボールを渡す様に指示する。
それら一連の様子をベンチから見ていたティアラが驚きの声を洩らす。
「あれがラヴィの……」
「肉体強化魔法よ」
付き合いに一日の長があるメリッサがその魔法の正体を明かす。
「え?ナニ今の?かわいい!?」
「あの金髪の子の魔法だねぇ、青髪の子の様子から見るに肉体に作用するタイプかね?」
「あざといな、あのウサギ」
3人の素直な感想である。
強化され輝くロゼッタが腕を思いっきり振りかぶってボールを投げる。
昭和日本のスポ根漫画のような強烈なストレートがアンジェリカに襲い来る。
「くぅぅっ?!う…うぅ…うぅっ!わぁっ?!」
両手を眼前で構えて受け止めようとするも球の勢いを殺せずヒットして外野に転がるアンジェリカ、正に魔球に吹き飛ばされる漫画のキャラである。
「うへっ…」
ドシャと表現するのが適当な音を立て悲鳴を溢す。
「2対8」
「何をしている!」
「しゃーないでしょうがあんな球!」
審判役の教師の宣言を聞きながらルキフェルは無様な格好になったアンジェリカに文句を飛ばし、アンジェリカはどうしろと言わんばかりに転がったまま、ジタバタ抗議する。
幸いにしてアンジェリカに当たったボールはルキフェルの手の内にある。
「チッ…くらえっ!!」
「わっ…!?」
小さな暴君は気を取り直してリリ目掛けボールを投げる……がリリに当たる直前、横合いから伸びてきた手に阻まれる。
「なんだと!?」
ボールを止めた手の主はロゼッタ。彼女は片手でルキフェルの剛球を止めたのだ。
お返しに強化されたロゼッタがボールを投げる、ルキフェル以上の剛球が彼女のチームの魔女の腹を撃ち抜く。
「もひとつ!」
反動で返って来たボールを再び相手コートへと投げ込む。狙うはルキフェル。
強化された膂力、腕力で振りかぶり小さな身体のど真ん中にヒット、衝撃で吹き飛ぶ……そしてルキフェルに当たったボールが上空へと逸れ地面に落下する間際、アンジェリカが華麗に飛び込みキャッチ、そのまま前転しながらボールをキープする。
どうやらヒットしてもボールがコートに落ちなければ当たってもセーフになるようだ。
「アンジェリカ……」
まさかのフォローに唖然とするルキフェル。ボールを抱えたアンジェリカがルキフェルにニヒルに笑い掛ける。
「貸しにしといてやるわ」
そんなミラクルプレーを眺めていたロゼッタにバチッという音が走り、彼女が纏っていた光のオーラが消える。
「う…」
「ロゼッタ?」
「まさか!効果がもう?!」
魔法の効力が切れた瞬間、ガックリと膝から崩れ落ちるロゼッタ。
リリがどうしたとばかりの声を挙げ、リネットは彼女が何故崩れたかの理由に思い至る。
そして相手は動けないマトを放ってはくれない。
すぐ目の前のアンジェリカが容赦無くロゼッタにボールをヒットさせた。
「ロゼちゃんのかたき!」
再びコート内へ戻ったラヴィが外野で未だ魔法が切れた事により項垂れるロゼッタへ視線を向け、仇は取るとばかりにアンジェリカ目掛け投げる。
が、魔法によって強化された訳でも無いボールはアッサリとアンジェリカにキャッチされそのまま前へ出て来たルキフェルに渡される。
「よっと。ルキ」
「任せろ。そりゃぁ!」
ボールの軌道の先はリリ──
「リリさん!」
リネットが叫び視線を送る。しかしリリは余裕の顔で応える。
「大丈夫!」
両の人差し指と中指を口に咥え、笛を吹く。
リリの顔にボールが迫る……かに思われた瞬間、リリの姿がぶれる。
「え?…ぶっ!?」
リリ?が鼻血を吹いて倒れる。
「ココーーーーー!!」
「え?リリじゃないの?」
メリッサが叫ぶ。隣のティアラが今の一瞬何が起きたのか分からず思わず訊ねる。
「今のがリリの魔法で…ココと瞬時に入れ替わる事が出来るの」
迫真の解説を熱弁するメリッサ、そこへティアラがツッコむ。
「それ…意味なくない?」
沈黙…からの顔ごとティアラの追及から視線を逸らすメリッサ。
ティアラの指摘は至極その通りであった。
「便利なんだか不便なんだか…」
「入れ替わっても結局ポイント取られてんじゃねぇか!ギャハハハッヒィ…笑っちゃ悪いけど…こりゃ笑うしかねぇ!」
「何か昔読んだ漫画を思い出したよ俺…」
再び後ろの剣士達のリアクションである。
そしてリリとココ、双子達はと言えば──
「ごめんね!ごめんねココ!」
「ううん…私も欠点に……気づく…べき…」
「ココーッ!?」
倒れる妹に駆け寄り謝罪するリリ、ココは息絶え絶えになりながらも姉を労り、ガクッと言う音と共に気絶する。
「あー…ったく」
今の茶番を見せられたアンジェリカはバツが悪そうに頭を掻きながら倒れたココに近付き手を翳す。
手から放たれる癒しの光、それがココの傷を癒す。
「エコーギフト無しで…すごい」
アンジェリカが見せた神業の如き魔法にリネットが感心の声を洩らす。
治癒の効果により即座に目覚めるココ、リリは感極まり最愛の片割れに抱き着きながらアンジェリカに感謝を述べる。
「ココ、良かった!あ…ありがとうございます!」
「お礼なんていらないっつーの」
やれやれといった表情で自陣のコートへ戻るアンジェリカ、ルキフェルは鼻を鳴らしながら彼女の行動に苦言を呈する。
「フン!敵の傷を治すとは、随分と甘いな」
「あんたがゲガ人出すからでしょうが、このチビルキ!」
相方の暴言にルキフェルは我慢出来ずに苛立つ。
「なんだと!」
その隙にリネットがボールを投げる。が、リネットのか弱いボールなど簡単に受け止められる。
「あぁーすまん。手が滑った」
ルキフェルはその止めたボールを、彼女に投げ返す……事はなく、アンジェリカ目掛け投げた。
「どう見てもワザとだろっ!」
やられたらやり返す。当然、アンジェリカもルキフェルへ思いっきり叩き返す。
今度はSadistic★Candyが相手そっちのけで喧嘩を始める。
「あの…二人とも落ち着いて」
「「あぁっ!?」」
「ひっ?!」
仲裁に入ろうとしたリネットに凸凹コンビの憤怒の形相が向けられる。その顔に思わず悲鳴を溢すリネット。
とは言え、仲裁の効果はあった様で、2人共試合に戻る。
「続きは試合が終わってからだ!」
「望むところよ!」
そこからSadistic★Candyの2人による一方的とも言える蹂躙が始まる。
リネット、リリをアッサリ降し、アシュレイ、ラヴィすら手も足も出ずポイントを取られゲームセット。
結果は15対3でSadistic★Candyのチームが圧勝、敗北に膝を折るアシュレイを尻目に2人揃って何処ぞへと雌雄を決する為歩き去る。
「さぁ決着つけるわよ!」
「上等だ!表に出ろ」
「もう表だっつーの!」
しかし年頃なのだからがに股で歩くのは如何なものか……。
「凄かった……色々と。後半、殆んどワンサイドゲームと化してたけど」
「サディキャン的には寧ろこの後のケンカが見所なんだがなぁ」
「まぁ、ティアラ王じょ……ティアラ嬢ちゃん達は相手が悪かったとしか言えないねぇ。後は斗真ちゃんの懸念通り、金髪ちゃんとポニーちゃんの不和かな、敗因は」
1回戦目からの色々な意味で白熱した試合に斗真は只々呆気に取られるばかり。
エレンはエレンで喧嘩の為に去ったSadistic★Candyが気になる様だ。
そして劉玄は今の試合の
バンプボールリーグ戦はまだまだ始まったばかりである──
TO BE Continued→
プリミティブの暴走がどんな感じになるのか気になるなぁ。東映はバンダイ事業部とそろそろ腰を据えた話し合いをしてアイテムの売り方なり改善してくれないかなぁ。
それはそれとして新しいのは大歓迎です。
因みにエレンは基本的に他人を彼なりの呼称で呼ぶので、ルキフェルのように名前の愛称で呼ぶのはかなり親交が深い証拠だったりします。
それとは別にルキフェルにもエレン流の呼称がありますが。
剣士に関しては凡て名前ではなく呼称呼び、魔女に関してはルキフェルとラトゥーラが現段階でエレンから名前で呼ばれたりします。
陣さんは剣士歴が長いのでティアラの素性を当然の様に知ってます。勿論、アンジェリカの正体もです。
それでは次回、IV KLOREバンプボールでお会いしましょう。