MasqueradeRe:Lights ~この世界では本の力を持つ仮面の騎士がいる~   作:ダグライダー

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 おはようございます。
 眠いので短めに……タイトル通りの前編です。テレビのセイバー倫太郎曇らせ助かる。氷獣さんスーツちょっと白すぎません?アップアクション兼用だと汚れ滅茶目立つと思うんですけど……。

 それはそれとして佐賀、早ようゆうぎりはんのエピソード見たいんでありんすが。

 アリスギア久々の十連回してこれまた久々の星4がちえり、ピックアップ来ないなぁ、嬉しいけど。



ブレイズの章
14頁 緋色の王女と土豆の木 前編


 

 ──ワンダーライドブック、不思議な力を宿した小さな本。

 仮面の剣士に様々な能力を付与するソレは複数が古の戦いで失われ、私達の時代で発見される本達は時にとんでもない場所で見付かるのでした──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院・特別クラス━

 

 「──と言う訳で蒸気機関が産まれ、産業に革命が起こり、鉄道が産まれた訳だけど──」

 

 教壇の前に立つ青年が黒板に簡易図を書き記しながらサポートの女性教諭に文字の筆記を任せ対面の階段状の席に座る生徒達を見る。

 前半の歴史上の話は退屈なのか、欠伸をするルキフェルや既に寝ているラヴィ(瞼に眼を描いている)といった者がチラホラ見られる中、近代の移動手段の話題が出て以降皆一様に興味深そうにしている。

 

 何分此方の世界での一般的な陸路に於ける移動手段は馬車である。

 同様に海路も帆船が主流の為、蒸気機関や自動車の話等は関心が無くとも彼女等には興味深く聞こえるらしい。

 実の所、この世界にも輝石を利用した飛行船技術等が存在するにはするが、一般的では無い為かあまり知られていない。

 ある程度説明を終えた所に授業終了の鐘が鳴り、斗真は手にした書物を閉じる。

 

 「今日はここまで。何か解らない事があれば訊きに来てくれ、答えられる範囲で出来るだけ答えるよ」

 その言葉で彼女達も各々に席を立つ。

 

 「お疲れ様でしたトーマ先生。大分授業も手慣れてきましたね」

 板書をしていた女性教諭が斗真に労いの言葉を掛ける。

 

 「まぁ此処に来てもう1ヶ月半は経ちましたから」

 「確かに。ところで此方の文字には慣れましたか?」

 「そうですね…一応字体がローマ字の筆記体に似通っているので読む分にはもう問題は無いんですが、書く方はちょっと苦労してます」

 「そこは頑張って下さい。でも近い内に私のサポートも必要無くなると思いますよ」

 女性教諭の言葉にそうですかね?と照れながら笑う斗真、アルマやエレンに手伝って貰った甲斐もあり日常的に過ごす分には問題の無いレベルにはなっているのだ。

 そんな差障りの無い会話を終え、斗真も教室を後にしようと扉に手を掛けると、背後に気配が2つ近付くのを感じ取る。

 

 「ええっと何か用かな、確か…エミリアさん?だったかな…?」

 振り向き、気配の正体を確認する斗真。其処に立っていたのはウェーブが掛かった薄い藤紫の長髪を翻した宵闇の令嬢、ドルトガルド亜人組ユニットIV KLOREのリーダー、サキュバスの亜人エミリアであった。

 「…ちょっと訊きたい事があっただけよ。おかしいかしら?」

 切れ長の瞳が見定める様に、どこか詰る様に斗真を見つめる。

 「いや…それで何が聞きたいのかな?授業で解らない所でもあったかい?」

 「そんな事じゃ無いわ。アタシがアンタに訊ねるのは風紀委員としての義務なんだから!」

 当人は高圧的に宣言したのだろうが、声が僅かに上擦り、やや紅潮した頬もあってか年相応の艶っぽさがある。

 

 「やれやれ、肝心な所の詰めが甘いのは如何な物でしょうか?まぁそこが愛らしくもありますが」

 エミリアの後ろから別の声が斗真の耳に届く。

 対しエミリアが振り返り声の主に抗議を宣う。

 「仕方無いじゃない!お父様以外の男となんて早々話す機会は無いし、話つもりも無かったんだから!?」

 

 「そうですね。ご実家ではお買い物は概ね私の様な使用人の務めですし、お嬢様が直接お出向きになる店舗は総じて女性の接客要員ばかりと、お嬢様は筋金入りの男性恐怖症ですから」

 

 「恐怖症じゃないわ!嫌いなだけよ!!」

 

 声の主の言葉に売り言葉に買い言葉で言い争いを始めるエミリアともう1人。

 さて、エミリアと口論している人物にも覚えがある。というか受け持ちの生徒なので覚えが無いとおかしいのだが、エミリア含め彼女のインパクトは強烈であったから記憶に鮮烈に焼き付いている。

 桃色の髪を後ろ手左寄りに纏めた(斗真から見れば右)サイドテールを揺らす表情の変化が少ない少女。

 否、正確には少女ではなく、少女型自動人形──俗に魔律人形と呼ばれる彼女の名は"あるふぁ"。

 エミリアのオルケストラユニットIV KLORE のメンバーにして彼女の従者である。

 因みに、もう1人のメンバーであるサルサは教室の最前の席に座って2人のやり取りを眺めて、斗真の視線に気付きぶんぶん手を振ってくれる。

 その際、犬耳の様なくせっ毛が一緒にピコピコ跳ねていた事も追記しておく。

 

 (う~んバンプボールの試合で見た強者感が嘘の様だ。まぁ初めて見た時も主従コンビは漫才みたいな事してたけど)

 

 クールなビジュアルから受けるイメージとは全く異なるやり取りを繰り広げる彼女達を眺めながらそんな事をふと思う。

 しかし同時にヘルマン某の凶行をも思い出し、このままでは不味いかとも思い冷や汗が背筋を伝う。

 そんな斗真の胸中を知ってか知らずか、あるふぁがそれよりもと前置きし斗真に視線を向ける。

 

 「お嬢様は先生様にご用がおありだったのでは?」

 

 「アンタが余計な口を挟むからでしょうがっ!?」

 

 すわこれでもかとばかりに怒鳴るエミリア。唖然とも言える斗真の顔に気付き、咳払いをして先程までの醜態を無かったことにする。

 

 「こほん…、改めて風紀委員として忠告するわ。先生、アンタの部屋にかなりの頻度でウチのクラスの娘達が訪ねていっているみたいだけど…もし変なことをしたら、風紀委員権限で理事長に上申してアンタには教師を辞めて貰うから!」

 

 ビシッという効果音が聴こえて来そうな指差しをするエミリアに、成る程そう言う事かと納得する。

 要するにこのお嬢さんは自身が男性恐怖症なのもあるが、他の生徒達が心配でもあるのだ。

 それもそうだろううら若き乙女達が集う学舎で教師も女性の中、唯一現れた異物。それも異界からの来訪者なのだから警戒するのも当然であろう。

 まぁこの学院には斗真以外の男も常駐して居る。しかし、斗真程頻繁に彼女達に関わる訳では無い、よしんば彼以外の男で最も生徒と関わるのは彼女等と同年代である哉慥だけだ。

 しかし彼の忍者少年は購買部以外では呼び出しが無い限りその姿を現す事は無いので結果として斗真こそがこの学院で一番少女達と深く長く広く接する事になる。

 

 (言葉の当たりは強いしキツいけど…優しい子なんだなぁ)

 エミリアの態度や語調からそう推察する。

 そんな生暖かな視線に気付いたか亜人の令嬢は目尻を吊り上げ糾弾する。

 

 「ちょっと!笑い事なんかじゃ無いわよ、本当に何か厭らしい事件でも起こしたらアンタの事、ただじゃ済まさないわ!」

 

 「ですがお嬢様。厭らしいとは具体的にどんな事を仰っているのですか?」

 紛糾するエミリアにあるふぁの横槍が入る。

 

 「それは……!?その、だから…キ、キ、キ──」

 

 「キ?」

 「何ですか?誇り高き貴族であるならばはっきりと仰って下さい。」

 首を傾げる斗真、煽るあるふぁ、言葉につんのめるエミリアは暫く壊れたコピー機だか蓄音機の様に"き"を連呼しついぞ決意したか、顔を真っ赤にしながら両の瞳をぎゅっと閉じ力強く発言する。

 

 キスしたりよっ!!

 

 不覚にも可愛いと思う斗真であった。

 綺麗系の娘が見せる羞恥の様にそんな感想、彼女の性格を考えれば言葉にせぬ方が身の為だろう。

 

 「えぇっと、ご忠告感謝するよ…けど君が危惧する事態にはなっていないし、これからもならないと誓うよ」

 取り敢えず、差障りの無い答えを返す。これ以上会話を続けたら彼女の沽券に関わる事態になり得るだろうし、ヘルマンが恐ろしい。

 

 「本当に理解してるの?!もし男女でキスなんてした日には…あ、あ、赤ちゃんが出来ちゃうのよ!!?」

 「お嬢様、お話はそろそろこの辺りで切り上げた方が宜しいかと」

 言葉にするのも恥ずかしかろうに精一杯、強気を維持しながら斗真に頓珍漢な男女感の性知識を衝き述べるエミリア、そんな彼女にバレるかバレ無いか絶妙な大きさで鼻で嗤いながら次の授業に移動すべきだと進言するあるふぁ。

 その今の一瞬のやり取りで何と無く、いや…大分彼女達の関係性が理解出来た斗真はエミリアに同情を憶えた。

 

 「兎に角!精々気を付けなさい!アンタだって無職になりたくはないでしょ」

 フンと言い残し斗真を避けながら教室を出て行くエミリア、サルサが駆け寄り後を追う。

 残されたあるふぁも一礼し斗真の真横を通り抜ける……瞬間、彼の耳元に抑揚の少ない少女人形の声が届く。

 

 「ヘルマン氏の事はお嬢様にはご内密に」

 

 思わず振り返るが亜人の従者は足を止める事はせず、仕えるべき主の後ろを半歩遅れて追従するのみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院・正門前━

 

 生徒が街へと繰り出す以外にも物資の往来に業者の者が時折訪れる。

 大半は購買部の商品であるが、園芸部の温室で使用される肥料や用途別の土も運ばれる。

 そしてその荷車は荷物を教師が改め、生徒が運ぶのである。

 そんな土嚢の中に彼女達が想像もしない様な"とあるモノ" が紛れているなど露知らず………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━マームケステル・街道のレストラン━

 

 「そりゃあの御嬢様はストーカー野郎の存在を知らないからな」

 放課後、ラトゥーラが働くレストランにて、食事がてら同席した悪友(エレン)に先程の出来事を話し返ってきた言葉である。

 「へ?でもヘルマンって人はエミリアさんの従者として彼女の実家に世話になってるんだよな?」

 「ま、そうだな。正確には御嬢様の両親とメイドはあのストーカー執事の存在を知っているが、御嬢様だけは知らされて無い、が正しいんだが」

 思わず聞き返した斗真にエレンは彼が知る限りのエミリアとヘルマンの関係について説明する。

 

 「前にも言ったろうし、今回、御嬢様自身と会話して理解したろうが、あのサキュバス、大の男嫌いだからな。父親は兎も角、使用人も御嬢様にはあのメイドがほぼ専属で付きっきりだ。んで、ストーカーの奴は元Rayのカミラん所で面倒見てたのを御嬢様の両親が引き取って、けど…御嬢様はアレだろ?だからストーカーは御嬢様を知ってるが、御嬢様はストーカー執事野郎を知らないって図式さ」

 

 「はぁ…要するに、エミリアさんの為にご両親がヘルマンの事を秘匿しながら、エミリアさんの護衛をあるふぁさんとは別口で任せたって事か」

 エレンの大雑把な説明を自分なりに解釈した斗真が結論を出す。

 「そう言うこった。ああ、でも犬っころも一応知ってるちゃ、知ってるか」

 「そうなのか?」

 「ああ、幼馴染みだそうだからな。あのチビッ子存外空気は読めるからな」

 犬っころと聞いて誰だか判ってしまうのも失礼だとは思ったが事実なので仕方無い。

 

 「ま、あれだ。御嬢様関連でヘルマンが絡んでヤバくなったらメイドを探せ、大体御嬢様と一緒に居るから見付かり易いだろうし、従者序列的にメイドのがストーカーよか上だからな。後は忍者を呼べ。何故かは知らんがあのストーカー、忍者が苦手らしい」

 それっきり話は終わりだとエレンはガトライクフォンのゲームアプリを弄り倒す作業に戻る。

 斗真も一応のヘルマン対策を聞き心に留め置く事にした。

 そうして食事に黙々と集中していると何やら学院方面が騒がしい。

 

 「あぁ?何だぁ…あっち、やけに騒々しくなってんな?」

 デザートのジェラートを食べていたエレンがスプーンを咥えながら学院の方へ視線を向ける。

 「学院の方…だよな、何かあったのか……悪いけど先に戻る。代金は此処に置いて「いらね、奢りにしてやるから今度、適当に何かで返せ」助かる。それじゃ!」

 エレンが代金を肩持ちした事に礼を述べ、テラスから飛び出す斗真。

 そんな友人を見送りながら雷の剣士は独り呟く。

 

 「アイツが来てから矢鱈メギドやらワンダーライドブック関係の問題が起きる様になった。こりゃいよいよオレっちも馬車ウマの如く齷齪(あくせく)働かされるな…はぁ、働きたくねぇなぁ……」

 

 そんな愚痴を溢しながら彼はウェイトレスにケーキを注文するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院・温室━

 

 「……ぁあ」

 

 「メリッサ!?しっかりしてメリッサ!」

 

 突如として目の前で起きた異変に、現実を受け入れられず立ち眩みを起こすメリッサを抱き抱え、彼女の名を叫ぶティアラ。

 他の園芸部員達も、今し方己の目の前で起きた現象に目が点になっている。

 

 そう、今、園芸部員達が居る温室の中では信じ難い事に大きな緑の蔓が互いに重なり合いながら温室の硝子天井を破り、天高く聳え立っているのだ。

 

 「ティア!」

 

 「ティアちゃん!」

 

 騒ぎを聞き付けたロゼッタとラヴィがメリッサを抱えるティアラに駆け寄る。

 

 「うわぁ…デカっ!長っ!」

 「前々から妙な植物も育てていると噂があったが…本当だったか」

 Sadistic★Candyも近くでそんな根も葉も無い事を言っている。

 

 「果てが見えないわ」

 「とってもろっくです~!」

 「言ってる場合じゃ無いのでは?」

 この花は乙女ことヤマトの三姉妹も上を眺めながら暢気に物申している。

 「むむ、何と珍妙な…。てっぺんが空まで伸びているのでござろうか?」

 勿論、哉慥も騒ぎに気付き姉妹に合流している。

 

 「何事です?」

 

 そして学院の敷地でこれ程の騒ぎとなれば理事長自らが現場に出て来る事も至極当然である。

 

 「くろえ殿!」

 

 「サイゾウ、何があったのか詳しい情報を」

 

 クロエは異変の原因を知ろうと哉慥に仔細を訊ねるが、少年は申し訳ありませぬと首を横に振る。

 

 「拙者も今し方馳せ参じました故、詳しい事は存じませぬ。ですが今から調べて参ります!ニン!」

 言うや否や駆け出し、極太の蔓へ飛び付きそのまま垂直に登り出す。

 

 「ニン!ニン!ニン!─ニン!ニン!──ニン!ニン!──ニン!ニン!…ニン!…ニン!…ニン!──ン!──ニ──」

 

 上に昇って行くにつれ、哉慥の声が途切れてゆく。皆が少年が駆け上がって行く様を眺める中、クロエが改めて訳を知っているであろう園芸部員のティアラに訊ねる。

 

 「それで…何があったのか説明をお願い出来ますか?ティアラさん」

 

 「は、はい」

 

 クロエからの求めに応じティアラが数時間前に起こった事の始まりを語り始める。

 

 「──今日は以前から取り寄せていた珍しい植物の苗を育てる為、その植物が好む環境に合った土壌の土と、他に幾つかの肥料を新しい花壇に撒いていたんですけど……それで、花壇の整備を終えて苗を植えて水を注したら急に何も植えていない筈の場所から大きな蔦と蔓が天井を突き破ったんです」

 

 「土…ですか……。成る程、信じ難いですが、おおよそは理解しました。そうですね、まずは園芸部以外の生徒の立ち入りを制限しましょう」

 一考し、決めるや否や集まった教員に話を通し、野次馬に集まった生徒達を寮なりへ追い返す。

 哉慥はその間に力尽きたのか無念そうにムササビの様に落ちてきた。

 そして関係者のみが残された温室に漸く到着した斗真が顔を出す。

 

 「クロエ理事長!」

 

 「トーマさん」

 

 青年からの呼び掛けに首のみを向け、一瞥すると目の前の巨大な蔓に視線を戻す。

 

 「状況はご覧の通りです。今は関係者である園芸部員の生徒以外には自室に待機して貰っています」

 「凄いですね…、上の方はどうなってるんです?」

 クロエの隣に立ち、状況の進捗を訊ねる。彼女は腕を胸元で組ながらその事ですがと前置きし、眼鏡のブリッジを押し上げながら何やらテキパキ組み上げている哉慥にレンズの照り返しで隠れた視線を投げる。

 

 「彼が一度、その身を呈して確認したのですが…どうやら途中で限界があったらしく、今は二度目の調査の為に凧を作っているようです」

 「は…はぁ。(何故に凧を?!)それで原因の方には……?」

 「目下調査中とだけ。ラウシェン氏が居れば究明も早いのですが…」

 「そう言えば陳さん居ませんね?これだけの騒ぎなら、何時もなら真っ先に駆け付ける筈なのに」

 クロエとの会話で学院の安全を守る男の姿が無い事に訝しむ。

 

 「彼は現在、所用によりリュウトに一時帰省しています。帰る期間は今の所未定ですが…早くても四日後になるでしょう」

 「それじゃ地道に原因を探すしか無いですね」

 「ええ、念の為にアルマには街の方に何かしらの影響が無いか確認に出てもらっています。恐らく街の何処かに居るだろうエレンさんと共に事に当たってくれるでしょう。トーマさんはサイゾウを手伝ってあげて下さい」

 理事長としての指示をテキパキと出すクロエ、因みにヘルマンとセドリックの名が出なかったのは、ヘルマンはこの手の事には一切協力する気が無いからであり、セドリックは既に温室の修復に駆り出されているからである。

 と言う訳で斗真は哉慥の元へと近寄る。

 「少年、手伝える事はあるかい?」

 「おお!斗真殿、丁度良い所に!こちらをお持ちくだされ」

 早速仕事を与えてくれる少年。果たして斗真が手渡されたモノとは凧を操る為の凧糸と、それを巻き付けた木製の操具を手渡す。

 

 「これは…?て言うか、凧デカくない?」

 

 「拙者これより先の醜態の汚名を返上すべく、この凧に乗り上が如何様になっているのかを確かめて参りまする!それで舵取りを誰かにお願いしたかったのですが、斗真殿であれば安心です。ささ、先ずは温室より出ましょう」

 

 「あ、うん」

 

 少年のやる気に押されそれ以上二の句を告げなくなる斗真。

 黙々と操具を手に哉慥が凧に身体を固定するのを見届け、そのまま彼が駆け出し、風を捉え気流に乗るまで漫画の様な気の抜けた顔で一連の流れを見届けていたのだった。

 

 

 「質問。手前はそんな処で棒立ちで何をしている?」

 

 温室の修繕の為、中と外を見回していたセドリックに声を掛けられやっと正気に戻る。

 

 「はっ!いえ何か少年の行動に呆気に取られて…」

 「納得。あれが突飛な行動を取るのは今に始まった事では無い。それよりもこの怪奇の原因であるが……」

 サングラス越しの瞳を空から地上へと戻しながら技師にして鍛冶師は第三者に聞き耳を立てられぬ様に斗真の耳元に顔を近付ける。

 

 「推察。調査の結果を省みるに…経緯は知らんが、あの温室の土の中には恐らくワンダーライドブックが紛れていたのだろう。それがどういう訳だか輝砂と水に反応し、()()が出現したのだろう」

 「ワンダーライドブックですか!?そんな能力を持ったライドブックが存在するなんて……」

 「畢竟。良い機会であるから教えておく、ライドブックとは元は一冊の本であったのだ。それが別たれ、頁が様々な力宿す本へと転じた」

 「だからこんな巨大な植物を生み出す事も十分有り得る…と?」

 「肯定。あの力には心当りがある…物語に分類されるワンダーライドブック、命題は"ジャッ君と土豆の木"であったか……失われて久しいブックの一つだな」

 セドリックが側頭部に人差し指を充てながら記憶の中にあるワンダーライドブックのタイトルを列ねる。

 

 「…また何処かで聞いたようなタイトルだなぁ……」

 「注意散漫。糸が引いているぞ」

 「え?あっ…!」

 斗真の手元の操具の糸がどんどん伸びてゆく、話に夢中になっていた所為か、上の方で凧が風に流されていた様だ。

 「っと、お…とと…とととぉ?!あっ…」

 慌てて引き戻そうと糸を巻き戻していると途中、プチンッと音が聴こえ糸を引かれる手応えが無くなる。

 聴こえないが、恐らく上空では凧に乗った哉慥が「ござぁぁぁああ!!?」等と絶叫しているのでは無かろうか。

 

 「さ…哉慥しょぉぉねぇぇぇぇぇんん!!」

 斗真の叫びも虚しく凧は流されて行った。

 「放置。あれでも剣士、況して風の聖剣の剣士だ。下手は打つまい…それに幸いにして彼方は街の方、運が良ければ流水か黄雷に拾われる筈」

 割りと無情に哉慥を切り捨てたセドリック。それよりもと斗真を伴い再び温室に入る。

 

 「え?いや、ちょっ…セドリックさん!?」

 

 馬耳東風とばかりに蔓の根元に歩くセドリックと追う斗真。

 件の蔓の元にはティアラと病み上りのメリッサ、クロエに園芸部員と数人の教員達。

 

 「あ…トーマ先生、それに…えっと……」

 

 「セドリック・マドワルド三世。見知り置くかは任せる」

 斗真と共に居た稀に見掛ける見知らぬ人物が間髪入れずに名乗るものだからつい怖じ気付いてしまうティアラ、しかし名乗った所を見るに悪い人物では無いと断じ会釈を返す。

 

 「提案。策を一つ提訴する蒼き死に「オホン!聞きましょう」

 セドリックがクロエを呼ぼうとしたのを態とらしく咳払いで遮り機先を取るクロエ。

 「効率優先。激土が不在である以上、力任せに斬り倒す事は出来ない。しかしこれ以上時間を掛けるのは無為。強硬…。ならば此処は今有る手札でどうにかするより他に無い、烈火を使いこの巨木同然の蔓を燃やしてしまえ」

 

 「え?」 「へっ?」 「Pardon?」 「それは……いえ、そうですね」

 

 セドリックの過激な提案に目を点にするティアラとメリッサ、信じられないとばかりにセドリックを見やる斗真。

 最後に何かに納得するクロエである。

 

 「いや…いやいやいやいや、それはマズくないですか?下手したら温室全焼しちゃいますよ!?」

 流石に良識から抵抗を示す斗真、しかしセドリックはサングラスで伺えない顔を向けながら平然と言ってのける。

 「無問題。手前がしくじらなければ済む事である」

 「えぇぇ……クロエさん?」

 真顔でやれと宣う歳上に理不尽を感じ、クロエに助けを求めるが彼女は顔を横に俯かせながらやや申し訳無さそうに応える。

 「やって頂けますか。人を下がらせますので」

 疑問符は付いていない。丁寧語だが命令形である、決定事項だ。

 クロエが最終的に許可を下したので斗真は渋々準備に入る。

 その間、クロエの命によりティアラを除いたメリッサ達園芸部員と事態解決に集った教員が温室より追い出される。

 御膳立ては整ってしまったらしい。

 

 「……はぁ、仕方無い…のか?うーん……」

 

 『ブレイブドラゴン』

 

 釈然としないモヤモヤを抱えながらブレイブドラゴンを取り出し、ソードライバーを装着装填する。

 

 「えー…変身」

 

 『烈火抜刀!』

 

 何時もの勇ましい変身ではなくやる気がイマイチ足りない変身を遂げる斗真。

 手早くセイバーへと姿を変え、何処と無く哀愁を漂わせながら蔓へと近付く。

 

 「それじゃあ…いきます。あの出来ればフォローお願いしますね?」

 烈火を納刀しながらクロエとセドリックに振り返り確認を取るセイバー。

 2人の大人は無言で頷くのみ。ティアラは1人心配そうに見守る。

 

 

『必殺読破!烈火抜刀!!ドラゴン一冊斬り!ファイヤー!!!』

 

 火炎剣烈火を炎が包む。そのまま炎剣で蔓を横一文字に斬る。

 忽ち蔓には炎が燃え移り天辺まで燃え盛ってゆく。

 クロエは炎が蔓を登った瞬間にエコーギフトで温室周辺範囲の蔓の周囲を見えない膜で包み、炎が他へ燃え広がらない様に備える。

 後はただ、巨大な蔓が燃え尽きるのを待つばかり。

 時間にして凡そ二時間、遂に蔓さ一片も残さず燃え尽き、空から何かが降って来る。

 

 「ふぇ?!」

 

 まさか自らの頭上にモノが落ちてくるとは思わなかったティアラが思わず声を上げてしまう。

 まるでティアラに引き寄せられる様に落ちてくる物体、そしてこれまた思わず受け止めてしまえばそれは見覚えのある形をした小さな浅葱色の本。

 

 「先生、これ…!」

 担任教師に確認を取ろうと呼び掛けるが、セイバーの姿のままの彼は新たな本を取り出し温室の外へと向かう。

 

 「ごめんティアラちゃん!暫く預かっといて!ちょっと少年探しに行ってくる!」

 

 

『発車爆走!』

 

 赤い仮面の剣士はまだ外に疎らに生徒や教員が残って居るにも関わらず、風に流された哉慥を探しにディアゴスピーディーを召喚し走り去って行くのであった。

 

 幸い目撃者は学院内だけで済み、斗真もディアゴスピーディーはそのままに街に入る頃には変身を解いてはいたが、此より暫く学院内ではお伽噺の剣士の様な謎の仮面怪人の話題で持ち切りとなる。

 

 

 

 TO BE Continued!

 

 

─ブレイブドラゴン──ジャッ君と土豆の木─

 

 

─ライオン戦記──ピーターファンタジスタ─




 次回は戦闘しますよ。本当ですよ?

 DXダイナゼノン、アニメ見てたら余計に欲しくなっちゃった…。
 でもスマホの容量大きい奴に買い替えたいから暫く我慢せんといかんとよ…。
 それはそれとして新しい巫剣欲しいなぁ、出来れば影打欲しいなぁ。
 では次回お会いしましょう。おやすみなさい
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