MasqueradeRe:Lights ~この世界では本の力を持つ仮面の騎士がいる~   作:ダグライダー

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 こんにちは。
 仕事に行く前の軽い仮眠前投稿です。

 今回は割りと難産な部分もあり、更に何時ものように後半話が長くなってしまいました。反省


 天華百剣─斬─のサービス終了悲しい。オフライン版が欲しい、桑名江と別れたくない。

 カリギュラ2買おうかなぁ…あの精神を抉るようなジュブナイル結構好きなんですよね。



19頁 雷鳴のSwordDance

 ──マームケステルの街に近付く強大凶悪なメギドを迎え討つ為、戦いに赴く先生とアルマさん。

 一方でエレンさんはサイゾウさんから逃げ続けて街の何処かに隠れていました。

 そんな彼を見付けたイサナさん。当時の私は知る由もありませんでしたが、エレンさんを戦場に駆り出す事が彼の目的の一つだった様なのです──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目覚めたばかりの()()を支配していたのは怒りと餓えだった。

 無軌道に無秩序に吼える。吼えて、一頻り空に怒号を放って気付く。

 本能が奴等を憶えている。

 目的を妨げる忌々しい存在、しかし同時にこの身に蔓延る餓えを満たせる存在。

 

 聖剣の剣士だ。

 

 紫闇の剣士目掛けひたすらに爪を振るう。

 その躰を滾らせ突撃を繰り返す。

 当たらないのらば当たるまで繰り返す。

 ()にあったのはそんな単純な思考。

 

 「──■■■■、■■■■■■■■」

 

 剣士が何事かを呟いているが、()()()にはその言葉は理解出来ない、鬱陶しいノイズでしかない。

 だから、そう、ひたすらに、愚直なまでに、力任せでぶつかって行くのだ。

 やがて剣士が虚空に剣を振るって黒い靄の様な物を出した。

 獣と化している()にソレが罠かどうかの判断は下せない、ただ頭の中にあるのは壁を遠回りするなんてまどろっこしい事をするよりも壁ごと敵を切り裂いてしまえば良いと言う、力ずくな思考。

 だからこそ、故にこそ、()は眼前の黒い靄の様な壁が、壁ではなく穴であった事に気付かなかった。

 力任せに突進して、ぶつかった感触も無く、穴に沈み、だが、それは()にとっては一瞬の事でしかなく、気が付けば荒野の廃村であった筈の其処は長閑とも言える草原であった。

 

 獲物の姿は何処にも居ない。何だそれは?ふざけるな!とでも言わんばかりの咆哮が長閑な大地を揺らす。

 そうして満たされない餓えを満たそうと獣の感覚が己の周辺全ての情報を取得せんばかりに鋭敏になる。

 

 探して、探して、探して、探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して…見付けた。

 

 先程の剣士とは違うが、間違いなく忌々しい気配である。

 かなり遠いが、他に道は無い。ならば其処を目掛けようではないか。

 そう決めて獣となった()は二足から四足へと体躯を変え、ひたすらに駆け走る。

 途中幾度と無く何かにぶつかった気もしたが、然したる物では無いので脚を止める事無く、目的地目掛け駆ける。邪魔なモノは全て轢き潰す、目的地目掛け駆ける。

 屍山血河何する者ぞ。涎を滴し、眼を血走らせ、獲物を求めて駆け続ける。

 

 もしも、()が本来の状態であれば、或いは理性が本の少しでも残っていれば、凶暴な笑顔を浮かべながら、血の海で暫し遊んび、しかし同時に清廉な気配に反吐を吐いていたかもしれない。

 それは宿敵たる剣士のみならず、幾度と無く邪魔をしてくれた魔女が住まう地。

 

 ()……メギドズオスが目指す先はマームケステル。

 

 その道行の妨げとなるもの全てを蹴散らして蒼白い獣は全身を鉄臭い赤い返り血で染めながら、餓えを満たす為にひた走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━野良街道━

 

 

 2人の男が迫る脅威を迎え討たんと剣を抜く。

 

 

『ブレイブドラゴン』

 

 『ライオン戦記』『ピーターファンタジスタ』

 

 己の力の象徴をドライバーに装填する。斗真はブレイブドラゴンを、アルマはライオン戦記とピーターファンタジスタを。

 そこから更に2人は押し付け同然に手にした、第3のソードライバーを持つ者の力を開く。

 

 

『ランプドアランジーナ』

 

 

『トライケルベロス』

 

『かつて冥界の入口に3つの頭を持つ恐ろしい番犬がいた』

 

 斗真がアランジーナをそのまま装填するのに対し、律儀にトライケルベロスを開きライドスペルの序文を聞き届けるアルマ。

 斗真はアランジーナをレフトシェルフへ、アルマはケルベロスをライトシェルフに嵌め込む。

 

 

 

 

 猛る炎と荒ぶる怒涛が2人の男を超人としての剣士の姿へ変えて行く。

 

 

『烈火抜刀』

 

 

『流水抜刀』

 

 

『二冊の本を重ねし時、聖なる剣に力が宿る!』

 

『ワンダーライダー!』

 

『ドラゴン!アランジーナ!』

 

『二つの属性を備えし刃が研ぎ澄まされる!』

 

 

 

『輝くっ!ライオン!ファンタジスタァァア!!』

 

『増冊!ケルベロス!』

 

『流水二冊!!』

 

『ガオーッ!キラキラ!幻想の爪が今、蒼き剣士のその身に宿る!』

 

 炎の剣士セイバーの左腕が金色に染まる。

 左肩にはランプを模した【ランプドボールド】から精霊が瞳を覗かせている。

 左胸部【スファーラムメイル】の胸元から伸びたチェーンがランプボールドの蓋に繋がっている。

 そして左腕を包む様に展開されたマント【アルカナシェード】を翻す。

 何よりも特筆すべきは左腕【スプレンディブレーザー】に握られている"雷鳴剣黄雷"だろう。

 

 水の剣士ブレイズ、その右腕だけが黄に変質する。

 その右肩は三重の攻めと守りをもたらすとされる【トライケルベロスボールド】に覆われ、右腕には三頭犬を模した【ケルベロスブレーザー】が装着されている。

 そして右胸部【カテーナメイル】の背部より伸びたマント【カテーナクローク】がはためく。

 

 セイバードラゴンアランジーナとブレイズケルベロスライオンピーターが並び立つ。

 

 「ん?え?何で?!」

 突如として左手に現れた感触、自らが何時の間にか握っていた黄雷に驚くセイバー。

 

 「ランプドアランジーナは黄雷を使用した剣士のスターターライドブックですから、エレンが変身しない以上、こうなるのは自明の理かと」

 ブレイズがおおよその見当を付け解説してくれる。

 

 「成る程……しかし二刀流かぁ、剣道の方は経験あるけど……こうなる事が判ってたら少年に教えを請いに行ったのに……」

 

 「まぁ最悪、烈火をソードライバーに収納したまま戦うと言う手もありますから」

 その間にも凶つ獣の魔人は近付いて来る。

 邪悪なる存在を備に感じ取る感覚を持つ【ブレイブドラゴンマスク】と視覚や聴覚を鋭敏に高める【ライオンセンキマスク】で2人は迫る魔人の全容を捉える。

 

 「遂に見える距離まで近付いて来ましたね…うっ!?」

 

 「何だ?体に着いている赤黒い模様は……」

 

 「血です…それも人間の!」

 

 「何だって!?なら奴は此処に来るまで何人もその手にかけているってのか!」

 

 ズオスの全身にこびりつく乾いたソレの正体にいち早く気付いたブレイズ、その拳が力強く握り込められ、怒りに震えている事を隣に立つセイバーは見逃さなかった。

 

 「アルマ…その怒りは俺も理解出来る、けど逸るな、気持ちだけ急いても危険なだけだ」

 

 「…そうですね、怒りのままに行動するのではなく、怒りを戦う力の一部に変えて、僕達はあくまでも世界を守る剣士として敵を倒さなくては!」

 セイバーの言葉に逆上せ上がっていた憤怒をコントロールし、剣士としての職務を全うせんと流水を構える。

 

 

 

 

 ZyyyuuuRRoooOOOO!!

 

 獣の雄叫びが聴こえる。彼方も目と鼻の先に此方を捉えたのだ。

 

 「向こうはやる気満々だな。行けるかアルマ?」

 

 「勿論です。それとこの姿の時はブレイズと…」

 

 ブレイズ(アルマ)の調子が元に戻った事を確認してセイバーも烈火と黄雷を構える。

 小太刀と違い、付け焼き刃とも言えない拙い構えだが、自身の経験に則って戦うだけだと腹を括る。

 

 「行くぞぉぉぉおお!!

 

 「はいっ!

 

 ズオスに向かい赤と青の剣士が駆ける。守るべきものを背に2人の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━マームケステル・住宅街━

 

 「むむむ…まさか見逃してしまうとは……えれん殿、いつの間に腕を上げたのでござろうか…?!」

 

 祭風哉慥が民家の屋根の上から辺りを見回しながら口惜しく呟く。

 何よりショックなのは斗真から頼られ任された大役を果たせなかった事だ。

 年上とは言え剣士として後輩の斗真。しかし彼はキャリアの短さにも関わらず、既にワンダーコンボを2種も使いこなしメギドを撃破している。

 対して自分はヤマトに居た頃から未だメギドと相対したことは無く、大抵が魔獣か下手人ばかり。

 嫉妬は無い、仲間が増えた事、戦力として申し分無い実力である事は喜ばしい。

 だが羨望はある。右も左も分からぬ初陣からしてメギドと戦い撃破、以降も要所でメギドとの戦闘を行っている。

 後から来た筈の彼が、哉慥の中で直ぐ様憧れの人間の1人となった。

 

 (拙者、歴代の剣士の各々方含め拙者以外の剣士の方々も尊敬しております。であるからこそ!共に肩を並べ戦いたい!なれば…!)

 

 ならばせめて任されたエレン捜索の任ぐらいは楽にこなさなくてはと思ってしまう。

 と同時にこんな事を考えているなんて里長(祖父)や父に知られたら未熟者と謗られてしまうかもしれないと、少々考えが悪い方向に傾きかけた為、首を思い切り横に振って霧散させる。

 

 「わふっー!追いついたー!」

 

 そんな事をしていたら後ろから溌剌喜楽とした声が耳に届く。

 

 「さるさ殿?どうなされました?」

 振り返らずとも声の主が誰かは判る。が礼儀として彼女の方に顔を向ければ、そこには予想通りに人狼の少女が少しばかり息を切らして立っているではないか。

 

 「あのね!なんか街にスッゴイ魔獣っぽいめぎど?って言うのが近づいてて、せんせ~とアルマが戦いに行ったんだよ!それでボクはサイゾーに、あのエレンって人の居場所を教えるように言われたんだ」

 

 「なんと!?えれん殿の居場所が判ったのですか!むむ?教えるとは……一体誰がその様な事を?」

 サルサのエレンの居場所が判ったと言う言葉に驚き、しかし、彼女の一連の発言に第三者の存在を感じて首を傾げる。

 

 「えっとねぇ…イサナって人!その人がボクと一緒に魔法で探し当てたの」

 

 「ニン!?刻風殿が!?この街にいらしているのでござるかっ!!?それに魔法!!?何やら探究しているのは存じておりましたが、まさか魔法を使えるようになるとは…拙者とても驚きでござるぅ」

 自身の先代の風の剣士にして現剣士統括議会直属の剣士となった来訪者の男の顔を頭に浮かべ驚愕する哉慥。

 彼の中で刻風の株がうなぎ登りに上がって行く。

 

 が──。

 

 「それでえれん殿はどちらに?」

 

 「えっ?う~~~ん……わふ、ごめん…わかんない」

 

 「ニンと!?失敬…なんと!?刻風殿肝心な所をさるさ殿に教えておらなんだではないですか!?」

 

 男性としては中背よりの小柄な少年と、その彼よりも小柄な少女がウンウンと唸る。

 暫く2人して往来で右往左往していると、そんな彼等が目に留まったのか、新たな人影が声を掛けてくる。

 

 「何してるんですか…サイゾウお兄ちゃん、サルサさん…」

 

 「お二人が一緒だなんて珍しいですね?」

 

 「何か困り事かしら?」

 

 3人分の声、その主はこれまた哉慥が良く知る相手──この花は乙女の三姉妹、ツバキ、ナデシコ、カエデであった。

 

 「カエデ!」

 

 「ツバキ殿、ナデシコ殿!」

 

 カエデと同室のサルサが末妹の名を呼び、姉2人の方を哉慥が呼ぶ。

 風の剣士と縁が深いヤマトの魔女姉妹が揃って2人の状況に訳を訊ねる。

 

 「良かったら何があったのか話してくれませんか?わたくし達が力になれるかもしれませんし」

 

 「何となく只事ではない気がします」

 

 「私は愛しの妹達と一緒ならなんだってしちゃう!」

 

 約1名、会話が明後日の方向に飛んでいるが気にしない。

 哉慥は姉妹の好意に感激しながら訳を話始める。

 

 「実は───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━マームケステル・???━

 

 白い石造りの街の何処か、恐らくは屋内であろう場所の幾重にも荷物が積み重ねられた場所に彼は居た。

 

 「黄雷が消えやがった。て事は小説家がオレのアランジーナを使ったか……魔獣でも出たか?いや、それにしちゃ街は慌ただしい感じがしねぇ、アイツら外に行ってんのか?」

 積み荷の隙間を縫うように開いたスペースに器用に入り込み、4畳半1間の空間が作り出されているその場所で己の聖剣が納められていた空になったソードライバーを確認しながら、独り呟く。

 

 「どっちにしろ戦闘中なのは間違いねぇ…。となるとこれでオレを追うのは忍者だけになってる訳か…、こりゃもう暫くは此処で大人しくしとくかね」

 薄暗い空間の中で手持ちぶたさになりながら積み荷に背を預けて天井をボーっと眺めるエレン。

 しかし暇が過ぎるのか退屈を持て余す。

 

 「チッ、やっぱ撒くためとは言えガトホを置いてきたのは失敗だったか……ヒマだ」

 

 「そりゃまた、ならコレ使いまス?」

 

 「おう、サンキュ……あ゛?」

 

 持て余して空を漂っていた手に横合いからガトライクフォンが極自然に渡され 、エレンもこれまた極自然に受け取り礼を述べて、そこで初めて自分の聖域に真似かねざる客人が現れた事に気付く。

 

 「おひさしハローッス、ナルミッチ」

 

 「テメェ…ペテン師、どっから現れやがった!?」

 

 知らぬ間に現れた勇魚に警戒のガンを飛ばすエレン。対して勇魚は芝居掛かった動きで答える。

 

 「んもう!忘れちゃったんスか?!この間あんなに自分の事を頼りにしてくれたのに!」

 

 「寝言は死んでからほざけ」

 

 「冷たいッスねぇ~。それにアダ名もペテン師って、酷くないッスかぁ~?もうちょいこう…これぞ自分ってのがあるっしょ?」

 

 「ねぇよ。大体、何で此処に来てんだよ?確かに頼み事はしたが、来いとは言ってねぇ!」

 苛立ち気に勇魚へ言葉を飛ばしながら彼が何故マームケステルに居るのかと糾弾する。

 

 「そこは自分もあの島に籠りっぱなしは毒なんで。オッちゃんが戻るついでにって♪それに自分だってナルミッチ達みたく可愛くて美人が多い乙女達に囲まれたいんッスよ~!」

 

 「最低だなお前。つーかどうやって此処を見付けやがった?」

 

 「ヌフフ知りたいッスか?なら教えてあげまス!実は、自分が新開発した魔法でナルミッチを発見したんッスよ!!」

 驚きました?と末尾に付け加えてウインクする勇魚。

 エレンは吐くようなジェスチャーで応じ、口を開く。

 

 「嘘乙」

 

 「いや、嘘じゃないって、本当なんッスよ?」

 

 「よしんば事実だとしてもお前1人じゃ使えないだろう」

 

 「ワォ、さっすがナルミッチ!心の友よ~。やは~…ま、その通りッス。魔女とお手手繋いで秘密の道具を少々~!それで魔法っぽいモンが発動!ナルミッチ発見!更についでに、街に近づく敵も発見!斗真くんとアルマっちは街の外で迎え討つ!と、そんで今に至りまス」

 逐一大袈裟なリアクションを取る勇魚に胡散臭いモノを見る視線を向け続けながらエレンは興味無さげに相槌を打つ。

 

 「ほーん。で?何処までが本当で、何処までが嘘だ?」

 

 「やだなー、全部本当ッスよ?実際、ナルミッチは黄雷消えてるでしょ?」

 

 「ハンっ、良くもまぁヌケヌケと…。ま、聞いた感じ、オレを探し当てた魔法モドキは本当。小説家達が敵を迎え討つってのも本当だろう。だがその魔法モドキで敵を見付けたってのは嘘だね」

 勇魚の言葉を聞き流していた様に見えてしっかり聴いていたエレンが勇魚の嘘を指摘する。

 

 「その魔法モドキっての発動すんのに魔女がいるっっつったな…そいつぁ、もしかしなくても犬コロだな?」

 

 「ウッス、サルサちゃん…勝手にルサちゃんと呼ばせて貰いまスけど、まぁそうッスね。それが?」

 

 「アイツはドルトガルドの亜人で、人狼だ…「小さくてモフモフしてそうで可愛かったッスねぇ」…話の腰を折るんじゃねぇ!……兎に角!犬っコロの力を借りたってんなら、オレを見付けた手段とやらは嗅覚か聴覚…或いは両方か?その鋭くなった感覚でオレの痕跡なり息遣いなりを察知したんだろうが、その魔法モドキ…実践すんのは初めてなんだろ?ならテメェがいくら天才だの言われてもいきなり街一つ…ないし、それ以上の広範囲を察知出来る事は不可能だ。お前、その態度で誤魔化してるつもりだろうが、リスクが不確かな実証不十分の手段を試すタイプじゃねぇ。つまり…だ、お前は事前に敵が来ることを別の手段で知っていたんだろ?」

 エレンなりの観察眼で得た知見を勇魚に語る。勇魚は最初こそ茶化したが、話の腰を折るなと言われ、後はニコニコ笑いながら黙って聴いていた。

 

 「あー……久々に長々喋って疲れた…。でだ、お前、オレに何させたいワケ?」

 

 「ヤハハハハ♪いきなりッスね。先の質問の答えは訊かなくていいんでスか?」

 

 「どうせ訊いた所で答えやしねぇだろ。なら、お前がオレをどう利用する気かの方が気になんのは当然だろうが」

 背を預けていた積み荷から離れ立ち上がる、そして勇魚の返答を待つように彼を鋭く見据える。

 

 「なるなる~ナルミッチ、そういう知恵はすぐ働くんスね。で自分がナルミッチにさせたい事は、まぁ単純!ナルミッチさぁ、戦場に出てちゃんと戦いましょうよ?斗真くんも来て戦力も大分アップ、でもメギド本格復活で世界もヤバイ!だからナルミッチもいい加減覚悟決めましょ?大丈夫ッス、斗真くんはお人好しッスけど、度を越した英雄症候群じゃないッスよ、同期の候補者みたいに早死になんかしないッスよ」

 

 「ハンッ!何の事だか…、全くもって見当違いだ。大体オレが居なくてもあの二人だけで事足りるだろ。もし無理でもオッサンや忍者も…グラサンだっている。あの五人で充分オーバーキルじゃねぇか」

 

 勇魚の言葉を受けて尚も露悪的な態度でやる気を見せないエレン。

 しかし勇魚もそれを見越していたのか特段諦めた素振りは無い。どころか更に言葉を重ねる。

 

 「うーん普通のメギドとかならそうなんッスけどね。今回はかなり特別なんッス、何せ敵は最上級のメギドなんスから」

 

 「んだと?」

 

 勇魚の物言いに眼を細め、意図を読み取ろうとするエレン。だが目の前の日焼けた男の笑顔からはその顔の裏を察する事が出来ない。

 

 「まぁオッちゃんに三世も居るんで最悪街を守る事は出来るでしょうけど、少なくとも今の斗真くんやアルマっち、哉ちゃんはタダじゃ済まないかもしれないッスねぇ」

 

 「分かんねぇ、分かんねぇなぁ、それが分かってて何でアイツら二人だけで行かせた?」

 

 「それはほら、斗真くんがどの程度か知りたいじゃない?それにナルミッチの事も自分は信じてまスし」

 

 「白々しい。やっぱお前ペテン師だよ」

 

 勇魚がいけしゃあしゃあと心にも無いことを立て列べていると感じているエレンは勇魚をペテン師であると言って憚らない。

 

 (最悪の最悪は自分()も戦うつもりだし、そもそも斗真くん達の戦いを見る為にも、どの道戦場に行きまスし、ヤバい時は影から助ける。みんなが負けたら自分が矢面に立つ。要はそれだけの違いでしかないんだよね。とは言え黒幕の事を考えるとあんまり目立ちたくない、だからナルミッチに自発的に動いて貰わなきゃ)

 

 「お前の事だから最悪のケースも考えてんだろうが……チッ、癪だが乗ってやる。此処には護衛対象もダチも居るからな」

 勇魚の思惑に乗る事を癪と感じながらも脳裏に浮かんだラトゥーラやルキフェルの顔に雷の剣士は遂に覚悟を決める。

 

 「一応訊いとくが、メギド出現をオッサン達は知ってんのか?」

 

 「まだッス。一応、これから自分のガトホで連絡するつもりだったんッスけど、結界の作業進捗を考えると…斗真くんの救援に間に合うかはギリッスかね」

 

 自分でけしかけておいてあっけらかんと宣う勇魚。そもそも結界の作業が遅れているのも勇魚が途中で脱け出したからなのであるが、そんな事までエレンは知らない。

 

 「本当に白々しい奴……」

 

 吐き捨てる様に言い残し外へ駆け出す。

 

 

≪RideGatriker!!≫

 

 手にしたガトライクフォンをライドマシンへと変形させ宙に投げると、飛び乗る様に跨がる。

 

 「くたばっててくれるなよ…」

 

 悪友の健在を祈りながらアクセルを全快にしてマームケステルの街道をひた走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「思ったより簡単に動いたなぁ、じゃ自分もオッちゃんに連絡…の前に哉ちゃんに連絡して哉ちゃんも…まぁルサちゃん辺りが代わりに出てくれるでしょうからそんであの子にも戦場に参戦してもらえばオッちゃんが遅れてもナルミッチがいれば…うん、無傷ではないかもだけど、まぁ再起不能になる様な怪我はしないっしょ」

 手元のガトライクフォンを弄りながら呟く勇魚。メッセージアプリで劉玄に連絡し、次いで哉慥には通話を掛ける。

 

 「もしもーし…あっ!カエデちゃん?へぇ、哉ちゃん達と一緒なんだ!なら哉ちゃんに伝言、ナルミッチを見付けたから哉ちゃんは斗真くん達に合流して助太刀してって言っといてよ。え?自分?自分はオッちゃん達の方に行くから(嘘だけど)じゃそゆことで!バイナラ~」

 

 「さぁて観戦♪観戦♪へーんしーん!」

 

 

界時逆回!

 

 愉快そうな声を残しこの世界から消える勇魚。その際またしても音ならぬ音が轟き、空間に飛沫が立つ。

 役者は揃った、そういう事なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━野良街道━

 

 そして場面は再び2人の剣士と獣の魔人との戦いへ戻る。

 

 「っあぁ!」

 

 「このぉ!」

 

 セイバーとブレイズ、2人掛かりで蒼白の獣に斬り掛かる。

 既にライドブックのワンダー技や習得技を駆使しズオスに幾度もダメージを与えているのだが、魔人の勢いは衰えない。

 

 「ダメージを負っているはずなのに…全然勢いが衰えない!」

 

 「手負いの獣が一番恐いとは言うけど……攻撃を受ける度に強く…速くなっている気がするだけど……」

 

 セイバー──斗真の見立ては間違いでは無い、ズオスは理性を手放したのと引き替えに、敵対者の能力や実力に応じ即座に適応進化している。

 故に半端な攻撃ではズオスをより強化させるだけとなってしまうのだ。

 

 Zwooooulllrr! 

 

 ズオスが吼える。

 

 「くそっ!このままじゃ此方がジリ貧だ…」

 

 セイバーが忌々しげに吐き捨てながら烈火でズオスの爪撃を防ぐ。

 

 獣魔の王と戦いを繰り広げる2人の剣士、そこへ翠碧の風が巻き荒れる。

 

『翠風速読撃!ニンニン!』

 

 風の手裏剣がズオスを襲い、2人から引き離す。

 

 「これは…!?」

 

 「サイゾウ!」

 

 「斗真殿!あるま殿!祭風哉慥…此より助太刀致しまする!」

 翠色の軽装鎧の様なソードローブに身を包んだ風の剣士、剣斬が参戦する。

 

 「少年、エレンは?」

 

 「刻風殿が発見した次第でして、拙者は刻風殿よりお二方に合流する様に申しつかりました」

 

 「トキカゼさんが…ですが、今は助かりました。サイゾウ、気を付けて下さい。敵はただのメギドでは無いです、一瞬でも気を抜いたら命はありません!」

 

 「なる程、敵の首級は大将首でござるか!然らば拙者がめぎどの爪を捌きまする。お二方はその隙を衝いてくだされ!」

 

 「ああっ!」「分かりました!」

 剣斬の案に即座に応じフォーメーションを組む。

 

 「参る!」

 己を鼓舞する様に鬨を挙げ剣斬はズオスに近接する。

 

 「RRRoooooyyyy!!

 

 向かい来る剣斬の二刀に剛腕の爪を振るい対応するズオス。

 

 対し、迫る剛爪を翠風の刃で反らす様に受ける剣斬。

 真っ向の力比べでは不利と承知してインパクトの瞬間に掛かる衝撃を最低限に受け流しているのだ。

 並外れた速度で動く狂乱の獣の怒涛の攻撃に、一心不乱に反らしながら追従する剣斬。

 しかしソードローブの表面には徐々に傷が増えていっている。

 

 「なんの…これしき!」

 必死に食い付き耐え、ズオスが大振りの攻撃を繰り出すのを待つ。

 ズオスもまた理性無き状態とは言え、眼前の羽虫が一向に潰れない様相に痺れを切らし両腕を大きく振りかぶる。

 

 「好機!」

 振り上げられたズオスの両腕に併せる様に跳び上がり脚を開いて、振り上げられた二の腕を止める。

 そしてズオスの鋭い牙が立ち並ぶ口外に二刀の翠風を突き立てる。

 

 「今でござる!」

 

 

 

『ジャックと豆の木!フムフム…習得一閃!』

 

 セイバードラゴンアランジーナが烈火のシンガンリーダーに読み込ませたジャッ君と土豆の木による習得技で豆の弾丸を撃ち込む。

 幾つかはズオスに、もう幾つかは地面に当たり、ズオスに直撃した豆は当たった瞬間から中身が割れ、蔦が獣の肉体と下半身を絡め取る。

 大地に当たった豆は、即座に発芽し太い幹へと成長し蔓を伸ばして獣の腕を絡み取る。

 剣斬は蔓が腕に絡み着いたタイミングで離脱、同時突き立てた翠風を斬り付ける様に引き抜く。

 

 「よし!動きを止めた!」

 

 「ええ!これで確実に一撃を当てます!」

 

 

『必殺読破!』

 

 拘束され動きが止まった所を空かさずブレイズがソードライバーに聖剣を納刀した状態でトリガーを2回引く。

 

 

『ケルベロス!ライオン!ピータファン!』

 

『三冊撃!ウォ・ウォ・ウォ・ウォーター!!!』

 

  剣斬の奮戦、セイバーによるアシストによる拘束というコンビネーション。そして、生まれた大きな隙をブレイズがトドメの跳び蹴り(ライダーキック)で穿つ。

 

 ワンダーライドブック3冊分の力が込められた蹴りを受けて的になった凶獣が吹き飛ぶ。

 そして爆発が巻き起こり空気が揺れ水が揮発し蒸気が霧の如く立ち込める。

 

 「やったでござるか!?」

 

 「手応えはありました」

 

 「倒したさ、間違いなく」

 

 しかしその言葉とは裏腹に3人の中には言い様の知れぬ不安が渦巻く。

 そして──

 

 z ZwaaaaAAAAガァァァアァァ!ケンシィ…ケンシハ倒スゥゥゥウウ!!

 

 不安は的中し、咆哮と共に霧を払うようにして再び凶獣が姿を現す。但し、その眼は狂気に染まりつつも明確に剣士を倒すと物語っている。

 

 「しぶとい!」

 「何処までタフなんだ…奴は!?」

 「なれば今一度!」

 

 先程よりもより鮮明に此方に向けて敵意を向けて向かって来るズオスにもう一度必殺を叩き込もうと剣斬とセイバーが動く。

 

 しかし──

 

 「ズェAaaaAAAA!!

 

 ズオスが一瞬、躰を揺らめかせたかと思うと既に凶獣は剣斬とセイバー、大きく手を大の字に広げた状態で2人の間に立ち、そのまま2人の仮面に覆われた顔を掴み振り抜く。

 

 「「っ゛ああ゛!?!」」

 

 大地に叩き付けられ吹き飛ぶ2人の剣士。そのままブレイズより後ろにボールの様に転がる。

 セイバーはその衝撃でランプドアランジーナが外れてしまった。

 

 「セイバー!?剣斬!?」

 

 三冊撃の反動で動けずに居たブレイズが自身の視界を横切った仲間達の名を叫ぶ。

 

 「ぐ…っ…」

 

 「かふっ……」

 

 幸いな事に変身は解けていないが大きなダメージを負って2人とも動けそうには無い、そしてブレイズの方にもズオスの凶刃が迫る。

 

 「しまっ…!?う゛ぁあ゛」

 顎を蹴り上げられ宙に浮いた所を、鋭い爪が光る貫手で打たれ、ブレイズもまた吹き飛ぶ。

 

 

 

 「わふっ!?せんせー!!?」

 

 「サイゾウお兄ちゃん?!」

 

 「カエデ!危険です!!」

 

 「貴女もよナデシコ!待ちなさい!」

 

 倒れ伏す剣士達の耳に聴こえる若い少女達の声。

 セイバーが声の方向に痛みを圧して僅に首を動かすと、一体何時から其所に居たのか、木陰から飛び出して来るサルサ、カエデと、それを追うナデシコ、更に追うツバキといった面々の姿。

 

 「みんな…どうして此処に…!?」

 

 「わふっ?!サイゾーくんの後を追って来たらせんせー達が怪物と戦ってて…」

 

 「わたくし達はお邪魔にならないよう隠れ潜み様子を伺っていたんです」

 痛々しい声を発するセイバーにビクッとしながら答えるサルサと悲痛な顔をするナデシコ。

 

 「…ここは…、危ない…貴女達は…早く逃げて…下さい……」

 セイバー達よりもズオスに近い場所で倒れていたブレイズが流水を杖代わりに立ち上がりながら現れた生徒達に逃げるよう告げる。

 

 「そんな…!?先生もサイゾウお兄ちゃん達もボロボロなのに!」

 

 「でござりますな……ですが、まだ……拙者達は…戦えまする…!」

 剣斬も不恰好ながら必死に腕と脚に力を込め、立ち上がらんとする。

 

 「無茶よ!?いくら変身していてもそんな傷だらけで…」

 ツバキが彼等の身を案じて言葉を投げるが剣士達は退かない。

 

 「アイツを…今の街に入れる訳にはいかない!」

 

 結界が大いに弱まった状態のマームケステルにズオス程のメギドが侵入すればタダでは済まない。

 3人ともそう結論付け、頑なに立ち上がろうとする。

 

 「ですが…!」

 

 そんな3人へ尚もナデシコが何か言おうと口を開きかけた瞬間、ズオスが少女達を"認識"する。

 

 「ママママMァ女ォォooooo…

 

 「ひっ…?!」

 獣の剣幕にカエデが思わず悲鳴を溢す。

 

 それに反応したか、ズオスの目標が剣士から少女へて移る。

 獣が半端に取り戻した知性が真面に動けぬ宿敵よりも、己を封じた忌々しき"清廉"なる力を持った小娘達を排除せよと囁くのだ。

 

 「止め…ろっ!」

 

 「逃げて下さい…!!」

 

 「カエデ殿!?!」

 

 弱った剣士達が何かをほざいている。しかし知った事では無い、弱り切った連中なぞ後でどうとでもなる。

 それよりも厄介な存在を片付けなくては…!

 ズオスの思考が魔女の排除という1つの事に埋め尽くされる。

 先ずは直ぐ手近のチビからだとにじり寄る。

 

 「「「カエデッ!!」」」

 2人の姉と親友の人狼が彼女の名を必死に叫ぶ、しかし腰が抜けたカエデは動けない。

 

 沫やこれ迄、そう思った時であった。遥か彼方の背後より轟く轟音。

 次の瞬間には轟音に爆発音が混ざり、ズオスの肉体に複数の火花が立ち上る。

 

 

 「え……?」

 茫然とするカエデ。

 

 「今のは……」

 音の出所にセイバーが視線を巡らせる。

 

 ブルンとまるで牛か馬が嘶く様な音を発するそれは鋼鉄の騎馬。

 三輪の車輪を人の叡知が作り出した動力で動かす乗機。

 

 "ライドガトライカー"…車体に備え付けられた銃口から煙を上げるその鉄の馬に跨がるのは頭頂部の一部が黒く染まった金髪の青年。

 

 「やれやれだな。どうにも偉いタイミングで間に合っちまったらしい」

 

 「「エレン!!」」

 「えれん殿!!」

 見知った顔の登場に3人が声を挙げる。

 

 「ハァ…マジでヤられてんじゃねぇか……」

 当の名を呼ばれた本人は倒れる3人を見て何とも微妙な顔を浮かべる。

 

 「エレン…良い所に…、どうにかして彼女達を逃がして下さい…!敵は強敵です!時間は僕達が稼ぎます…」

 

 「アホか、寝言はベッドで言え。よっ…と」

 ブレイズが少女達を逃がすよう嘆願するが、エレンはそれを一蹴、足下に転がっていた黄雷とランプドアランジーナを器用に足を使い回収する。

 

 「後少ししたらオッサンが此処に来る。それまではまぁ……あの糞ケダモノの相手はオレがしてやるよ」

 

 

『ランプドアランジーナ』

 

 ズオスがダメージで怯んでいる間に、ワンダーライドブックを開き、ライドスペルの序文のテキストが読み上げられる。

 

 

『とある異国の地に伝わる不思議な力を持つ魔法のランプがあった』

 

 「ハッ、変身…!」

 

 

『黄雷抜刀!』

 

 ワンダーライドブックをドライバーの左スロット──レフトシェルフに装填し、拾い上げた黄雷を納刀、短く嘆息し抜刀、下から上に振り上げる様に黄雷を掲げ、斬撃を飛ばす。

 

 青年の背後に雷電迸る本棚の空間が現れオーライメージのランプドアランジーナが捲られ、電光がエレンを包む。

 そして跳んだ筈の斬撃がエレンの顔を回る様に迸り姿を変える。

 

 

『ランプドッアランジィィィナァァ!』

 

『黄雷一冊!ランプの精と雷鳴剣黄雷が交わる時、稲妻の剣が光り輝く!』

 

 左腕を除く全身を白のソードローブに包んだ剣士が稲妻を纏い、威風を立たせる。

 

 雷の剣士エスパーダ──それこそが今のエレンの名である。

 

 「悪いが…長々と戦う気は無ぇ、早々にケリ着けるぜ」

 雷のフレアを模したマスクが呟く。

 瞬間、稲光を残し消えるエスパーダ、ズオスが漸くガトライカーの機銃【ガトライクシューター】のダメージより復帰し、前を向いた瞬間、既に眼と鼻の先まで肉薄しているエスパーダ。

 ズオスが反応して迎撃よ為に行動に移すよりも速く黄雷を突き出し新たなダメージを与えていく。

 

 「速い…!」

 

 「わっふー!全然見えな~い!?」

 

 「エレン…エスパーダは直線的で素早い攻撃を得意としています。更にエレンの素質から、短時間であれば瞬間的に光速を越えた移動速度をも叩き出す事が出来るんです」

 その速さに瞠目するセイバーと驚愕の声を挙げるサルサにブレイズが解説を交えて教えてくれる。

 その間にもズオスの四肢、胸部、頭部に閃光が瞬き、ダメージを与えていく。

 これではズオスも対応が追い付かない。

 

 「ハンッ!小説家達がある程度弱らせてくれたお陰で楽で良い…が、オマエみたいなのは手っ取り早く片さねぇと学習して適応するからな…休む暇はくれてやんねぇ」

 口にしながらも刺突を絶え間無く続けるエスパーダ。

 そのまま空いた左手でドライバーのアランジーナのページをタップする。

 

 

『ランプドアランジーナ』

 すると左肩の魔法のランプを模したランプドボールドからランプの精霊現れ、エスパーダとスイッチしズオスに拳のラッシュを見舞う。

 

 「真面目ちゃん!ケルベロス投げろ。理由は訊くな時間が惜しい」

 

 「…?!嫌な予感がしますが分かりました!」

 

 エスパーダに乞われ自身のライトシェルフからトライケルベロスを外し投げるブレイズ。

 投げられ宙を舞うワンダーライドブック、エスパーダはトライケルベロスの裏側、【スピリーダ】に黄雷の剣先のシンガンリーダーを翳し読み込ませる。

 

 

『トライケルベロス!フムフム…習得一閃!』

 

 「そぉらよっ!!」

 

 聖剣から振るわれた雷のオーラが象った三つ首の番犬がズオスに噛み付く。

 

 「Gャaッ?!

 

 「そらそら!どんどん行くぜ!」

 

 

『黄雷居合!』

 

『読後一閃!』

 

 「Vァwaooオォo?!

 

 居合抜きから放たれる、一撃にして連撃の斬閃。

 絶え間無く与え続けられた攻撃に遂にズオスの肉体が悲鳴を挙げる。

 

 「こいつでフィナーレにしてやるよ!」

 膝から崩れたズオスの隙を見逃さずエスパーダがドライバーに黄雷を納めトリガーを引く。

 

 

『必殺読破!』

 

『アランジーナ!一冊斬り!サンダー!』

 

 黄雷の刀身に稲妻が走り、雷の力が満ちる。

 そしてそのまま雷の力に満ちた黄雷でズオスに眼にも止まらぬ速さで突進、剣戟を抜き放つ。

 

 「aaァァガァッ?!?

 

 痺れ絶叫するズオス。その瞳に走る狂気の光が消え、倒れ沈黙する。

 

 「トルエノ・デストローダってな」

 

 「最後に言うのか……」

 

 ズオスが倒れた事を見届け、自身が放った技の名を口にするエスパーダにセイバーが少し呆れた様に溢す。

 

 「今度こそやったんですね…」

 「ニン、少なくとも起き上がる気配は致しません」

 

 対しブレイズと剣斬は倒れたズオスがまた立ち上がって来ないかと戦々恐々としている。其所へ──

 

 「おーーーい!!」

 

 大声と共にバスターと化した劉玄がエレンが現れた時の様にライドガトライカーに乗って現れる。

 

 「無事…とは言い難いが、どうやらオジさんが来る前に終わったみたいだね」

 状況を見回し開口一番、既に決着が着いた事に胸を撫で下ろすバスター。

 爆散せず倒れたままのズオスに不気味なモノを感じつつも皆の元へ駆け寄る。

 

 「手酷くやられたみたいだね、お嬢ちゃん達の方は無事で良かったよ」

 

 「遅せぇぞオッサン。オレぁ疲れた…後の処理は任せる」

 言うや否や変身を解き、フラフラと倒れるエレン。

 

 「お、おい?!」「わわっ、わふ!?」

 そんな彼を受け止めるセイバーとサルサ。エレンが倒れた事に目を白黒させる。

 

 「やれやれ相っ変わらず燃費が悪いねぇ。さて…後処理ね……」

 エレンの言葉を受け、倒れたズオスへ向かい激土の切っ先を向けて振り上げるバスター。

 そのまま突き刺す為に振り下ろした瞬間、獣が背にした大地から闇が広がり、ズオスを呑み込む。

 

 「何っ?!」

 その光景に思わず手を止め見いるバスター。彼はズオスを呑み込んだ闇に見覚えがあった。

 結局、獣の魔人にトドメを刺す事が出来ぬまま、立ち尽くし、闇が完全に消えたのを見届け、色々な感情がない交ぜになったタメ息を洩らす。

 

 (まさか…とは思いたく無いがね……)

 複雑な感情を胸中に抱えながらも、今は体力を使い切ったエレンや傷付いた若き剣士達、共に居合わせた少女達の元へ戻る。

 

 そして、バスターと同じ様にとある人物もまたズオスが呑み込まれた闇を見て、ある考えに至った人物が直ぐ近くに居た事は…エレン以外知る由も無い事であった。

 

 

 TO BE Continued

 

 

 

─ヘンゼルナッツとグレーテル─

 

 




 はい。いや本当に…何故か長くなってしまうんですよね…。

 何時もの様にTiP、勇魚の言うエレンの同期の候補者達と言うのは、フィレンツェ時代に居た黄雷継承者の人達の事。純来訪者、ハーフ、クォーター等が居て魔獣退治が候補者を絞る試験の1つだったりする。

 次回は三世もですがSadistic★Candyにも本格的にスポットを当てられたら良いなぁと思っております。

 それでは次回
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