MasqueradeRe:Lights ~この世界では本の力を持つ仮面の騎士がいる~   作:ダグライダー

22 / 34
 こんばんは、おはようございます。
 或いはお久し振りになります?

 夏はやる気が上がらない倦怠感が上がる。で、どうしても筆が進まずという具合です。
 早く夏終われーーー!

 スーパーヒーロー戦記観に行きました。
 オチの方、殆どリバイスが持ってきましたね!バイスあれデップーじゃないですかぁ。

 スパロボ30も楽しみにしてたりしますが…予約出来るのだろうか……。

 マジーヌのママを名乗るアンジェラ女史、特別編の方が絡み中身まろび出てません?






20頁 Sの衝撃

 ──セドリック・マドワルド三世(ザ・サード)

 古より聖剣を鍛え上げてきた鍛冶師の一族、その中でも開祖の名を戴いた三代目にして現"音の剣士"。

 

 ラウシェンさん曰く、自分の次に学院に居る古株。

 エレンさん曰く、ムッツリで面倒臭い職人気質の頑固者。

 アルマさん、サイゾウさん曰く、厳しけれど優しい人。

 そして先生方からも評判の良い魔導技術者て名を馳せる人物…そしてルキフェルさんの学院での保護後見人。

 

 そのルキフェルさん曰く、育ての親の次に口煩い相手なのだそうです。

 でも彼の事を語るルキフェルさんはとても嬉しそうにしていました──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━野良街道・???の世界━

 

 其処は灰色…或いはモノクロ、もしくは色の無い、音も響かぬ世界。

 生きとし生けるモノが存在する事が困難なその世界に唯1人、槍を持ち佇む黒と白に彩られた鎧を纏う者。

 彼は先程まで行われていた戦闘を思い返していた。

 

 「ヤハハ!はぁ~、良かった良かった。ナルミッチ間に合ったじゃ~ん!ま、ヤバい時は矛先だけ"浮上"して攻撃しようかと思ったけど…必要なくて何よりッスわぁ。(にしてもあのメギド……本で見た時もまさかとは思ったけど…マジで()()()()()かよ。ロゴスの資料室で記録は視た事あったけど…想定より強いじゃん、マジでナルミッチのエスパーダ居なかったら危なかったわぁ~。んで、最後にあの獣畜生呑み込んだのは)……あれ月闇の闇かね?十年ちょい前にジークハルトパイセンが持ち去ってフレッドパイセンが討ち取って以降行方不明って聞いたんだけど……もしかして生きてたのかねぇ。て、こたぁ、やっぱフレッドパイセン死んだのか…それなら烈火が斗真くんの所に現れたのも納得…ではあるけど、そうなるとパイセンが可愛がってた弟子の…あー…何だったっけなぁ、地味で存在感薄くて憶えてねぇや。確か日本人っぽい名前な気もしたけど…ま、フレッドパイセンが死んだ可能性が高い以上、弟子くんも死んでるだろうし良いや」

 

 思考を纏める為に声に出しながら云々唸る槍の騎士甲冑──改め聖剣の力により変身した刻風勇魚。

 彼以外侵入不可能の空間でくるくると槍を玩びながら思考を建て列べ纏める。

 

 (まぁ今考えて解んねぇ事は考えてもしょうがねぇかな。どっちにしろ最初の想定じゃナルミッチが間に合わなかったら、替えが利きやすい哉ちゃん切り捨てる予定だったし。あの坊っちゃんの犠牲が自分()の介入ラインだったからなぁ…本人には悪いけど)

 

 言いつつ辺りの木々の陰、草むらを、本人曰く"潜行"状態のまま練り歩く。

 

 「居ない……(あの状況で畜生を回収するならそれなりに近い場所に身を隠してると践んだんだけどね、ハズレか…、もしくは自分みたいに特殊な空間の中に潜んでる?なら…)"浮上"は学院の敷地内かな。念には念を入れて警戒するに越した事は無いしね~。ヤハ♪」

 

 そう言って一先ずの結論を出した聖剣の甲冑──ソードローブを纏い、時の剣士と化した勇魚はその場を後にする。

 無論、この世界を認識出来る者は彼以外居ない、故に彼が其処に居た事すら誰も気付かない。

 

 時の剣士は来た時と同様、誰に知られるまでもなくその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━旧ノーザンベース・本の間━

 

 「と、言う訳で。あの獣の上級メギドの被害に遭ったであろう領地の支援と言うか、調査に行く訳だけど……」

 本の間の中央に位置する装置を円卓代わりに集まった面子を見回しながら発言するのだが──。

 

 「う~ん少ない。当然だけど」

 

 「至極当然。流水は三冊のワンダーコンボによる極度の疲労と怪我の度合いが一番深い事から療養。翠風は比較的軽症、しかし何やら購買に掛かりきり。黄雷は変身中の活動時間の反動から全身筋肉痛でアテにならん。界時は何処を放蕩しているのやら」

 肩を大きく下げて項垂れる陳劉玄にフォローではなく追い打ちを掛ける様に現状を語るセドリック。

 そうして必然的に残る2人……剱守斗真と、ヘルマンに視線を配る。

 

 (恐い恐い恐い恐い!)

 

 斗真は斗真で自分を睨んでくるヘルマンに身を竦めながら居たたまれない気分で縮こまる。

 

 「まぁ動かせる面子は限られるよねぇ…。一応哉慥の坊やは方針に従うそうだから、頭数に入れるとして。そんでも、学院の防衛にも剣士残さなきゃなんないから、調査に出せるのは最低限になっちまうね」

 

 「然り。そして防衛の観点から学院には激土を残す。翠風はその補佐だ。となれば残るは…」

 

 「セドリックさんと………俺って事ですね?」

 

 「肯定。闇黒剣月闇候補者は心情的にも戦力的にも学院からは出ないだろうからな」

 

 年長者達の視線を受け、ヘルマンに警戒しながら意図を察する斗真。

 ヘルマンはヘルマンで当然とばかりに大仰な態度で口を開く。

 

 「愚問だな!私がお嬢様のお側から離れる事など有り得ん!お嬢様がこの学院、延いてはこの街に居らっしゃるからこそ、私もこの地に居るのだ。故にお嬢様の居ない土地に足を運ぶ事など断じて有り得ん!」

 

 「これだよ」「元より解りきった事だろう」

 ヘルマンの物言いに呆れ返る劉玄と嘆息するセドリック。

 

 「と言う訳だ。烈火、手前は小生と共にメギド被害を受けた領地に出向く事になる。学院のカリキュラムの都合を付けておけ」

 「あ、はい。大丈夫です」

 

  色眼鏡(サングラス)を直しながら席を発つセドリック。

 「所用。小生は預けていた物を取りに行ってくる。烈火、お前は出立の準備をしておけ」

 言うや否や、本の間を出るセドリック。彼はそのまま学生寮へと進む。

 

 

 

 ━フローラ女学院・学生寮━

 

 「ルキフェル。アンジェリカ。邪魔をする」

 短くノックして早々、返答も待たず扉を開ける鍛冶師の登場に部屋の主である2人の住人は一瞬固まる。

 

 「っおい!乙女の部屋に無断でズケズケと…何を入ってきてやがるんだキサマは!?」

 いち早く正気に戻ったルキフェルが突如として部屋に闖入して来た保護者に文句を投げる。

 

 「邪推。安心しろ、それに今更小娘の裸体を見て欲情するか。手前達も初心ではあるまいに。悔しければ生娘らしい反応をもう少し心掛けろ。乙女を豪語するならばな」

 

 「「あ゛ぁ゛んん?!」」

 

 勝手知ったるセドリックからのデリカシーの無い言葉に気持ちが1つになり乙女がしてはいけない顔になるSadistic★Candy。

 

 「結論から述べる。預けていた物を返して貰いに来た、以上だ」

 

 凸凹少女達から反論が飛ぶより先に要件を告げる。

 

 「あ?………なる程な。ついにキサマも戦場に出るのか。個人的には退屈な授業よりそっちに同行したいが……隣のバカが五月蝿い上に、オマエからも文句を言われるから仕方無く我慢してやろう」

 

 「誰が馬鹿だ!ったく……。てか、三世が直に会いに来んの久し振りじゃん、それでいきなりソレは私でもキレる……てかキレてる」

 

 アンジェリカが恵まれた肢体の脚を組み直しながら片肘で頬杖を着きつつジト目で抗議を飛ばす。

 

 「ふむ、であれば陳謝。謝罪を述べる。が、此方も火急だ、お前達に預けた我が愛剣とワンダーライドブック…出して貰おう」

 部屋の戸口で寄越せと手を差し出しながら動かないセドリック。アンジェリカは呆れながら自身の机の引き出しからマゼンダカラーの()()()()()()()()()()を取り出す。

 

 同じくルキフェルも自分の領域と化している一角からガサゴソと積み上げたボードゲームを掻き分け、此方はマゼンダカラーの片手剣らしき物を引っ張り出す。

 

 「ほれ、お望みの品だ。さっさと持って帰れ」

 小柄な肩に聖剣を担ぎながらルキフェルが憮然とした顔でセドリックの元へと近付いて行く。

 

 「遺憾。もう少し丁寧に扱って欲しいものだ」

 

 「ハッ!知るか、ワタシに預けたお前が悪い」

 

 言って、剣先を下に向けながら小さな暴君は学院で父代わりとも言える様な、そうでない様な付き合いの鍛冶師に聖剣"音銃剣錫音"を受け渡す。

 セドリックは受け取った錫音を腰の牛革の布鞘に納めるとアンジェリカへと視線を移す。

 

 「ん」

 それに応える様に長身の少女は取り出したワンダーライドブックを戸口に留まる男に向けて軽く投げるのだった。

 

 「手前もか。手前達…乙女どうこうと宣うならば、そう言う所だ、改めるべきは」

 

 「うっさいわ。分かってるつーの、第一、オーディエンス相手には愛想良くしてるから問題無いっての」

 

 「まぁその猫被りもちょくちょくボロが剥がれているがな…だっ?!キサマ、ワタシの優れた脳が劣化したらどうしてくれる!」

 

 「知るかバカルキ!」

 「なんだとキサマ!」

 ルキフェルが言い放った余計な一言を皮切りに、セドリックそっちのけで喧嘩を始める2人。

 あまりに何時も通りなので、止める事すらしないセドリック、用は済んだと踵を返す。

 

 「失敬。邪魔をしたな、隣人から苦情が出ない程度に存分に争っていてくれ」

 

 「いやぁ~、そこは止めません?普通」

 

 そんな無愛想な男の前に、何時の間にやら居る茶褐色に日に焼けた軽薄な笑みの男──刻風勇魚がセドリックの肩越しに諍いを繰り広げているサディキャンの2人を観察している。

 

 「おっ?(あん?)はれはひはは?(誰だキサマ?)ひほひはほひゃにゃ(見ない顔だな)

 アンジェリカの両の頬を引き伸ばされたルキフェルが勇魚に気付き誰何を投げ掛ける。

 

 「ヤハハハ、なーに言ってんだか全然っわっかんね~ッス」

 

 当然呂律がハッキリしないので勇魚は何を言われたのか全く理解出来ない。

 そんな勇魚の比較的特徴的な笑いに、先程まで頬を引っ張るのに力を込めていた手が止まるアンジェリカ。

 その顔は面倒な奴に久し振りに逢ったと言う様な、とても嫌そうな顔である。

 

 「ゲッ……なんで居んのよ!?アイツ、昔より背が伸びてるけど、アレじゃんか、ヤマトの前の風の聖剣の剣士……。いや大丈夫、あれから私も変わった、アイツと逢ったのだってホンのちょっとだったし…バレないはず!

 この間、僅か5秒の呟きである。

 

 「いつまで握ってる!…おい、どうした?」

 アンジェリカの手が緩んだ隙に逃れたルキフェル、そうして相方の様子が妙な事に気付く。

 

 「三世ぇちょっとどいてッス、アハロ~♪初めましてイサナ・トキカゼ~ッス、よろちゃんッス」

 「貴様!」

 セドリックを横合いに押し退けSadistic★Candyの方に改めて名乗る勇魚、押し退けられた方が眉間に皺を寄せながら抗議の声を挙げるが無視する。

 

 「ほほへ~、女子寮の部屋ってこんなんなんスねぇ。ふぅ~ん、十代女子特有の良い香りが充満してる~!」

 

 「うっわっ…!」

 「おい、ムッツリグラサン誰だこのおぞましい変態は」

 勇魚の奇行にドン引きするアンジェリカと極寒の瞳を向けながらセドリックに抗議するルキフェル。

 

 「……。剣士だ、遺憾甚だしいがな。それも直属の」

 ムッツリと言われた事が癪に障るのかムッとした顔で質問に答える。

 

 「はぁぁあ?!嘘でしょ?!こんなんが!!?」

 

 セドリックの返答に一番驚いていたのはアンジェリカであった。彼女は勇魚を信じられないモノを見るような眼で睥睨しながら、ありえないと溢す。

 

 「んー?さっきから気になってたんスけど、ノッポのお嬢さん、どっかで会ったことありません?」

 そこで勇魚がアンジェリカに見覚えがある様な気がして首を傾げる。

 

 「い、いや知らない!アンタの事なんて私は知らない!めっちゃ初対面!だから気のせい!ハイ!この話これで終わり!」

 

 やたらと慌てるアンジェリカを後ろ手に見ながら、要件を終えたセドリックは勇魚と関り合いになりたくないのか早々に部屋を出る。

 

 「おい、今度は返事を待てよ」

 

 「善処。気に留めておこう」

 

 去り際、ルキフェルからぶっきらぼうに言われ、口微苦笑して返す。

 

 「あ!ちょ?!待って!コイツ持って帰りなさいって!こら!おい!置いてくなぁぁぁぁあ!!!」

 

 部屋から出た瞬間、アンジェリカのそんな悲鳴を込めた叫びが聴こえたが重要ではないので無視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━マームケステル城壁━

 

 芝生い茂る城門近くの壁の前で剱守斗真はこの世界で愛馬ならぬ愛車となったディアゴスピーディーに腰を預け待ち人を待つ。

 

 「あ、来た…セドリックさーん、こっちです!!」

 

 書き物職を生業にしていたとは言え、ロードワークを実益を兼ねた趣味としていた為視力はそれなりに良い斗真。

 石造りの門から出て来た色眼鏡(サングラス)、長めの頭髪を後ろに流し、前髪に1房濃桃のメッシュが入った人物──まごうごとなきセドリックその人である。

 そんな彼に向け軽く手を上げ振ると向こうも此方に気付いたか、足速く駆けてくる。

 

 「行くぞ」

 

 そして短く告げ、懐よりガトライクフォンを取り出しては畳み、宙に投げる。

 巨大化し、セドリックの眼前に重い音を立てるライドガトライカー。

 目の前の三輪に躊躇なく跨がるとアクセルを入れさっさと走り出す。

 

 「えっ?!あ、ちょっと待ってください」

 

 あまりにも華麗な一連のセドリックの行動に呆気に取られながら、斗真も慌ててディアゴスピーディーに火を入れ後を追う。

 

 当然だが道中は無言である。セドリックという男が無駄話を必要以上好まないからだ。

 斗真としては居たたまれない気分であるが、彼も別にお喋り好きな訳ではないのでそれ事態は問題無かった。

 ズオスの被害に逢った土地を見るまでは。

 

 「これは……」 

 

 マームケステルから馬車で約1日半と2刻、ディアゴスピーディーやライドガトライカーならば半日、東南東にあたる小さな領地、こびりつく様な嫌な臭いが鼻に付く。

 

 「屍山血河、と評すべきか。例のメギド襲撃から凡そ1日足らずだが……まだ血と肉の臭いが残っているな」

 

 「こんな……惨い…」

 

 建ち並ぶ家屋の至る所、崩れ、砕け、朽ちている。

 何より忌避感を掻き立てるのは、嘗て()()()()()() 肉塊が大量に残っている事だろう。

 蠅が集り、野犬が肉を貪る。

 

 「凄惨たる有り様。醜悪、見るに堪えぬな…住人は全滅、弔う者も居ないのであればこの光景も然も有りなん…。さて、烈火、何時までもショックを受けているな、剣を取れ。()()()

 

 血肉に惹かれた…と言う訳では無いだろう、しかし死の臭いとそれに伴う負の感情に誘われてか街を囲う気配が数匹。

 見た目は可愛らしいクセしてその実この世界でメギドを除いて何よりも凶暴で悪辣な異形の獣が2人を遠巻きに囲いこんでいるのだ。

 

 「魔獣!」

 

 「果断即決。迷うな、遅れるな、戸惑うな、魔獣は問答無用で狩れ」

 魔獣に驚く斗真を尻目に既に一番近くの魔獣へと駆け出しているセドリック、腰の革鞘からマゼンダカラーの片手剣(ショートソード)とワンダーライドブックを取り出す。

 

 

『音銃剣錫音』

 

 対して魔獣──キノコの様な見た目に2本の触手を傘の下にぶら下げた魔獣は触手を槍の如く鋭く飛ばす。

 セドリックはそれを躱し、或いは切り払いながら跳躍し魔獣の頭上を踏みつけると迎撃が来るよりも早く聖剣を突き刺し絶命させる。

 魔獣が地面に倒れ込むと同時に着地したセドリックが目前のソレを軽々と群れている魔獣達に向け蹴飛ばす。

 

 「このままでも勝利は容易い。が、迅速、手早く済むに越した事は無い。烈火、手前も本を出せ」

 

 変身するぞ──と鍛冶師は斗真を色眼鏡越しに見つめる。

 

 「はい!」

 

 襲い来る魔獣を斬り倒しながら先達からの発破に応じる斗真。既に腰に装着していたソードライバーに烈火を納刀し、魔獣の攻撃を避けながらブレイブドラゴンワンダーライドブックを取り出し挿入する。

 

 その行動を視線を僅かに動かし確認したセドリックは魔獣が態勢を立直す前に己のワンダーライドブック、【ヘンゼルナッツとグレーテル】のガードバインディングを人差し指で弾く様に開く。

 

 

『ヘンゼルナッツとグレーテル!』

 

 彼の手にしたワンダーライドブックから軽快な声でライドスペルが読み上げられる。

 

 

『とある森に迷い込んだ小さな兄妹のおかしな冒険のお話…』

 

 「転変にて我が意を示す。変身…」

 

 右手に握った音銃剣錫音のスズネシェルフにヘンゼルナッツとグレーテルを装填し、スズネトリガーを引く。

 

 

『銃剣撃弾!銃でGO!GO!否!剣で行くぞ!音銃剣錫音!』

 

 セドリックの周囲を彩る様に囲うお菓子のオーライメージ、カラフルな音符がビートエフェクトを刻む。

 それによってセドリック・マドワルド三世の姿がマゼンダと黒と茶色といったサイケデリックな甲冑に包まれる。

 

 

『錫音楽章!甘い魅惑の銃剣がおかしなリズムでビートを斬り刻む!』

 

 その姿を一言で表すならばお菓子の家だ。

 マゼンダのソードローブの上をパティシエが装飾したかの様に装甲が重ねられている。

 首周りを覆う黒い装甲【ソニックメイル】、首元の左側に付けられた三色のボタン飴(カラーキャンディドロップ)型のボリューム調整機【ドロップノブ】、胸部装甲【ファウンテンボレロ】はチョコレートを模し、そこから続く様に肩に備えられた盾の様な装甲【クッキーディバイダ】は名の通りチョコレートコーティングされた四角いクッキーを思わせる。

 両腕を覆う【ライドルチェアーム】、両脚の【ライドルチェレッグ】が柔軟性と高い強度を誇り、纏う者の望む動きを支障無く発揮する。

 手首、足首に付けられたドーナツ型の腕輪と足輪【ドーナッツバンド】の力により軽快な動きを可能とさせる。

 踊る様に舞う彼の今の名は音の剣士スラッシュ。

 音銃剣錫音を模したと思われるソードクラウンの下、サウンドエフェクトの様なバイザー【リズムバイザー】の独特なデザインも相まってとても派手である。

 

 「円舞曲と洒落込もうか知恵無き魔獣共」

 錫音を軽く撫でたスラッシュが軽快を通り越して無音のステップで駆ける。

 それはスラッシュの【ライドトラックブーツ】の能力によるモノ。

 この無音の歩方によって、視覚を退化させ聴覚を頼りにしている魔獣は自らに何が起きたのか理解出来ぬまま死に至った。

 

 

『Wo~Wo~Wo~Wo~♪ブレェイブドラッゴォォォン!!』

 

 「凄い…陳さんとは違った意味で強い」

 セドリックがスラッシュに転じたと同時にセイバーブレイブドラゴンに変身した斗真がスラッシュの戦い様に感嘆を溢す。無論その間にも烈火で魔獣を斬り倒してはいる。

 片手間レベルで対応出来る程度には斗真も順応してきたと言う事だ。

 

 そんなセイバーの視線が追う先、錫音を己の手足の一部の様に軽々と、華麗に扱うスラッシュ。それはスラッシュの【ライドクラップブロー】による錫音の力に対応する機能もあるが使い手であるセドリック自身が錫音を深く理解しているからこそである。

 だからこそ錫音の柄【カナデヒルト】を片手で自在に振るう。順手、逆手、順手と端から見れば曲芸だ。

 

 (エレンも聖剣を逆手にしたりしてたけど…あいつと違って雑さは無い。寧ろ丁寧故の神業と言っても良い)

 獣型の魔獣を殲滅せしめたセイバーがスラッシュの(スキル)(アート)を兼ね備えた文字通りの技術(テクニック)に目を奪われる。

 

 「容易い。まぁ魔獣ごときまぁ遅れを取るのは未熟に過ぎるのだから当然と言えば当然至極。畢竟、烈火の実力を目に出来た事は重畳と考えるべきか」

 片手剣型とは思えぬ程硬そうな魔獣を撫で斬りする錫音の切れ味も見事なモノ。

 それは錫音の刀身【スズネソウル】に備えられた2つのスピーカーから発せられる高周波が刃を震わせ、その刃【センリツジン】が纏わせた音色によって切れ味を変化させる事が出来るからである。

 

 「お見事です。流石としか感想が出ませんでした」

 セイバーがスラッシュの元へ近付き、彼を称賛する。しかしスラッシュは応えず沈黙している。

 

 「セドリックさん?」

 

 「()()()()…。こそこそと姿を隠しても無意味、である。小生の耳にはその耳障りな"声"が聴こえているぞ」

 

 その問い掛けに応じたか、廃墟と化した街の周辺から何時の間にか新たな気配が複数現れる。その気配はセイバーにも覚えがある。それは──

 

 「これは…メギド!まさかずっと隠れていたのか?!」

 そう、新たな気配の正体は黒いシンプルな見た目の蟻の様な魔人──アリメギドであった。

 

 「否。隠れてはいたがずっとでは無いだろう、寧ろ…いや話は後だ、手早く片付けるぞ烈火」

 

 「はい」

 

 セドリックが一瞬何かを言いかけて、しかしメギド殲滅を優先しセイバーに指示を飛ばす。

 対し蟻の名の通りゾロゾロと数を顕にしてゆくアリメギド。

 セイバーが先陣を切る中、スラッシュは戦場を俯瞰し、敵の展開状況と数を大雑把に把握すると何と()()()()()()()()()()()()

 

 (えっ?!ええっ?!?!)

 先陣を切る際、後に続かないスラッシュを不審に思い視線を向けたセイバーが胸中にて驚愕する。

 そんなセイバーの胸中の驚愕など知らず、まして興味も無いスラッシュは変形させた音銃剣錫音を構えスズネトリガーを引く。

 すると変形し刀身の中央が綺麗に割れ、バレル部分となった【ワオンイコライザー】が音の弾丸【錫音弾】を作成、銃口【オンリツマズル】から弾丸を射出し遠距離からメギドを撃ち貫く。

 

 「銃?!剣なのに銃!?っていうか銃剣ってそういう意味じゃ無いですよね!!?」

 群がるアリメギドを斬り伏せながら思わずツッコむセイバー。

 小説家として創作作品に触れた経緯から錫音の銃剣としての異質さに声を挙げられずにはいられない。

 

 「喧騒(やかましい)。これはそういう聖剣なのだ、手前がどう宣おうがその事実は変わらん」

 言う間にも弾丸を撃ち、アリメギドを次々と倒してゆく。

 

 「聖剣ってなんだろう……「余所見をするな」あえ?っ゛だ?!!」

 錫音の変化に驚き無防備に聖剣とは何たるかを耽っていた所に背後からアリメギドの一匹が近付き奇襲を掛けようとした所、スラッシュが弾丸で撃ち抜き、ついでにセイバーにも1発軽めに当てる。

 

 「すみませんでした……」

 ソードローブの保護があるとは言えヘルムが軽く煙を立てるだけに収まっているのはスラッシュが一応の手加減をしたからである。

 

 「気を取り直して…」

 失態挽回の為、腰のホルダーからジャッ君と土豆の木を取り出しレフトシェルフに挿入するセイバー。

 烈火を納め再び抜刀する。

 

 

『ワンダーライダー!』

 

 「こいつで蹴散らす!」

 

 ドラゴンジャッ君となったセイバーがインタングルガントから生えた蔓を烈火の柄に巻き付かせ伸ばす。

 

 「おぉぉぉおおおっ!!これでどぉぉぉだぁぁああ!!

 

 ある程度の長さまで伸ばした蔓を振り回すセイバー。近くのアリメギドは蔓に吹き飛ばされ、離れたアリメギドは蔓の先端に握られた火炎剣烈火によって斬り刻まれる。

 

 「ほぅ…(驚愕。ワンダーライドブックのコンボあの様な形で利用するとは興味深い。聖剣の扱いには思うところあるが……黄雷の様に嫌々扱っている訳でも無し、大目に見てやろう)それはそれとして油断があった事は激土に報告しておく」

 

 「そんなぁ?!」

 

 セイバーの突飛な発想による戦い方に感心しつつも、先程の油断による無防備を晒した事を指南役の劉玄にはきっちり報告すると宣言するスラッシュにセイバーは思わず情けない声を出す。

 

 「終局必滅。トドメを刺すぞ」

 「あ、はい!」

 残り僅かとなったアリメギドに向けケリを着けると宣言するスラッシュにセイバーも合わせる。

 スラッシュは銃奏モードの錫音のスズネシェルフからヘンゼルナッツとグレーテルのガードバインディングを閉め、取り外しシェルフの対面に位置するシンガンリーダーへヘンゼルナッツとグレーテルワンダーライドブックを銃のカートリッジの様に挿し込み読み込ませる。

 

 

『ヘンゼルナッツとグレーテル!イェイ!錫音音読撃!イェイ!』

 

 「弾撃。ビート・ロリポッパー

 

 オンリツマズルからマゼンダ色のエネルギーが弾丸となって放たれ幾匹かのアリメギドを滅殺する。

 

 

『必殺読破!烈火抜刀!』

 

 残るアリメギドをセイバーが仕留めんとドライバーに聖剣を納刀、トリガーを引く。

 

 

『ドラゴン!ジャックと豆の木!二冊斬り!ファ・ファ・ファイヤー!!』

 

 インタングルガントから生えた蔓に烈火から発した炎を纏わせ鞭の如く振るう。其処へ烈火の炎の斬撃を横一閃に跳ばしてアリメギドを跡形も無く焼き付くす。

 

 「好評。剣士としては型破りだが、手前の戦い様は中々に愉快だ。激土の指導の甲斐もあって十二分使えるな」

 

 「どうもです。しかしセドリックさん滅茶苦茶強いですね?!本当に鍛冶師が本業なんですか!?」

 

 「無論。しかして今代の我が一族の適材が双方小生だったと言うだけの事」

 そうして、旅道中の時とは違い、軽口を挟む余裕を見せながら2人の剣士はメギドを全て討伐せしめた。

 

 「今度こそ終わりですかね?」

 暫く身構えたままでいても周辺に変化が見られなかった事から、力を抜き改めてスラッシュへと近寄るセイバー。

 

 「肯定。魔獣の醜い音もメギドの不愉快な音も聴こえん。一応は全て倒したと見て間違い無いだろう。(些かメギドの方に違和感はあったが…これ以上の動きが無い所を見ると…先の連中は小生達の力を量る為の当て馬……と言った所か)この様子ではこの領地に生存者は居まい、である以上我々に出来るのは死した彼奴等を供養してやる事くらいか。しかし他にも同じ様な土地がある可能性もある、一々埋葬する時間は無い、故に烈火よ、抵抗があるやもしれないが…手前の炎で弔ってやれ、遺体集め程度は付き合う」

 

 一段落した状況で死屍累々…それも来た当初よりも魔獣やメギドの襲撃により更に荒らされた現場を眺めながらスラッシュは言う。

 

 「…っ!」

 

 「それくらいしか今の小生達に出来る事は無い。此処をこのまま捨て置けば土地に負の念が溜まり再び魔獣の温床となる。しかしだからとて時間を掛け過ぎては同様の土地に魔獣が蔓延り、近く他の人里の脅威となる。残酷かもしれんが、燃やして処理する事が状況的に一番有効なのだ(結局もう1つの音は消えた、杞憂であったか?)」

 

 スラッシュの提示した案に、返事を言い澱むセイバー。そんな彼に畳み掛ける様に理由を述べるスラッシュ。彼の剣士の言う通り、ズオスの被害に逢った場所は他にも存在する。

 そこにも同じ様に死体が散乱しているならば魔獣が集まって来る事だろう。

 調査に出向いた土地1つ1つで逐一埋葬していたら、その間に無事な街や里が被害に逢う可能性の方が高い。

 

 「せめて…学院に彼等の家族が居ない事を願います」

 もしかしたら被害に遇った何処かの領地の出身者がフローラ女学院に在学しているかもしれないし、居ないのかもしれない。

 出来れば後者であって欲しいと願いつつ、セイバーはスラッシュが1ヶ所に集めた物言わぬ彼等或いは彼女等を聖剣に炎を纏わせ焼いた。

 そうしてズオスが通過したと目される土地を道なりに目指し、到着しては魔獣を掃討し火葬するという行為を繰り返す。

 彼等2人が学院に帰るまでに繰返したその行為は12回にも及ぶ。

 ズオスが出した被害は土地の規模を問わず12ヶ所も存在していたのだ。

 

 数日程掛けて学院へと戻った2人を、偶々園芸部の活動で朝早く出ていたティアラが目撃し、斗真が酷く意気消沈している様を見て思わず胸を締め付けられる思いに駈られるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━ズオスの被害に逢った領地跡━

 

 ズオスという生ける災害に行き逢った領地、その中で斗真とセドリックが一番最初に調査に訪れた場所の雑木林の影に人影が佇んで居た。

 

 「ふぅん…アレが今の剣士ですか、随分と様変りしましたねぇ。特に炎の剣士、何とも甘い。あまり人死にには慣れていないご様子。逆に音の剣士は冷静でしたねぇ」

 手にしたアルターライドブックを弄びながら既にこの場より去った剣士達の戦い様を振り返る謎の人物。

 そんな彼の傍らには蟋蟀を模した異形が控える。

 

 「何より音の剣士は私の存在に気付いた節がありますねぇ、まぁ半信半疑であった事や他の土地の調査と炎の剣士のケアを優先していた様ですが、此方としては有難い限り…フフフ…何やらレジエルやズオスも復活している様ですし、私も暫く遊んだら彼等の元に持参するとしましょうか」

 端整な顔に薄気味の悪い笑顔を浮かべてアルターライドブックを撫でまわす謎の人物。

 彼は傍らの魔人に命を下す。

 

 「今の世界がどれ程の物か……剣士達が拠点とする街へ向かいなさい。嘗ての戦いから変わっていなければ、其処に魔女も居る筈です。出来れば次は今の時代の魔女の実力が見てみたいですね…ある程度、適度な数の魔女を見付けたら襲撃なさい、勿論結界から出てきた所を…ですがね」

 マームケステルの結界の事まで把握している謎の人物は沙汰は下したとして魔人を置き去りに暗がりへと消える。

 残された魔人──キリギリスメギドはその命を受けマームケステルへと向かう。

 

 新たなる波乱が若き魔女へと襲い来る。

 

 

 TO BE Continued……。

 

 

─ストームイーグル─

 

 

─ブレーメンのロックバンド─




 今回のTipは三世実は既婚者。注釈しておきますと、ルキフェルの育ての親の女性とは別の女性と結婚してます。
 そもそもルキの言う女性の年齢、明言されて無いですし。

 ちょっとした個人の思相としてなんですが、私は無双チートとハーレムは別けるべきと考えているんです。勿論、自身の作品での事です。他者様にまで彼是は申しません。
 と言うよりも私、主人公が酷な目に逢うの割りと好きみたいなんですよね。具体的には小林靖子脚本辺り……殿とかレオンとか千翼とか。
 なのでハーレムよりもドロドロの修羅場か、青春のほろ苦い三角関係の方が好みですし。
 無双も物理的に雑魚を蹴散らせるけど同格や格上には相応に苦戦、敗北とかが好きだったりします。

 勿論チートハーレムを読まない訳ではございません。他者様の作品としてはそういうジャンルも読みますが、私が書く場合は大体別けます。

 ではまた次回
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。