MasqueradeRe:Lights ~この世界では本の力を持つ仮面の騎士がいる~   作:ダグライダー

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 こんばんは、こちらでの更新はお久し振りです。

 年末が段々と近付きますと、思うように執筆が進まず困る困る……忙し過ぎますよ、ホントに…。
 さて次回に閑話を挟みまして、章がまたしても変わります、大体13話ごとになりますかね。


26頁 闇人強襲 ──時の悪戯──

 

 ━フローラ女学院・空き教室━

 

 「ふん、それなりに暇潰しにはなったか」

 ルキフェルが鼻を鳴らしていの一番に扉へと向かう。

 

 「私も帰る、このクソ野郎は先生達に任せる…と後、このワンダーライドブック、先生に渡しとく」

 アンジェリカも床に転がった勇魚を一瞥した後、ブレーメンのロックバンドワンダーライドブックを斗真に渡してそそくさ退室する。

 

 「じゃあね先生くん、行くわよ~ナデシコ、カエデ~」

 ツバキが相応の色気を持ったウインクを斗真達に向け、妹達を傍に招きながら教室の扉に手を掛ける。

 

 「先生、いつか先生のろっくな姿も見せてくださいね!」

 ナデシコは斗真の手に渡ったブレーメンに視線を注ぎながら興奮気味に語る。

 

 「ナデシコお姉ちゃん!何を言っちゃってるんですか!!?ごめんなさいお兄ちゃん、お姉ちゃん達にはカエデから後で厳しく言っておきますので」

 ナデシコの発言を聞き付け脱兎の如く、サルサから離れ、ぷんすこと言わんばかりの膨れっ面で姉を叱る、ツバキが私も?!等と一緒くたにされた事に抗議の視線を向けたが、カエデを目にして一秒と持たなかったのは言うまでも無い。

 

 「色々勉強になったし、それなりに面白かったし、エレンが何やってんのかも解ったしで参加して良かったかも」

 「オレぁ説明の手間が省けて助かった」

 「またすぐそう言う事言うなし」

 褐色金髪コンビは変わらず仲が良い。

 

 「お勉強会楽しかったの!お返しに今度お店に来てくれたらサービスしてあげるね、おにーさま♪」

 妹にしたい魔女No.1の肩書に恥じぬあざとさを斗真に向け発揮するシャンペ。

 ヒキガエルの様に倒れた勇魚が羨ましそうにうごごと唸る。

 

 「あ……え……の……『まだこっち質問してないんだぜ?それなのに終わっちゃうのは困るなぁ(*´・ω・)』」

 最初、己の口で伝えようとパクパクと開閉を繰り返すも、最終的に首から提げたベリーボードに頼って用件を伝えるメアリーベリー。

 確かに先の勇魚の抗議で後回しにされ、保留のまま結局勇魚の発言をアンジェリカがハリセンで一喝、強制解散となったものだから、質問の機会が宙ぶらりんとなったままになってしまった訳だ。

 

 「クソペテン師がクソみたいな事ほざいた所為で終わっちまったからなぁ」

 

 「もし良ければ僕達の方で答えてみましょうか?勿論、答えられる範囲の物であれば、ですけどね」

 エレンが勇魚を腐ったゴミを見る眼で見下す横でアルマがメアリーベリーに視線を合わせるよう、中腰になって微笑む。

 

 『じゃあ遠慮なくきくぜ!ぶっちゃけ先生の前の炎の剣士ってどうなったのさ(・・?』

 

 ベリーボードから放たれた何気無い疑問、その言葉に下で蠢いていた勇魚の動きが一瞬ピタリと止まったという事に気付く者は、残念ながらこの時点では誰も居なかった。

 

 「斗真殿の前の炎剣士……拙者、残念ながらお会いした事が無いので解らないでござるよ」

 

 「10年前くらいだからな。お前5歳じゃん、そりゃ知らねぇわ。かく言うオレもクソババア伝手に聞いた事しかねぇけど」

 

 「そうですね…僕も当時は修行中でしたので父に訊ねてみない事には……」

 

 斗真は元より知らないので答えようが無い。であるならば、残るは下でヒキガエルから復帰した勇魚に訊ねるのみであるが…………。

 

 「いやぁ、自分も知らないッスねぇ」

 

 何をどうしたのか、足の指に力を込めただけでバネの様に起き上がると肩を竦め、息を吐き、ヤレヤレとジェスチャーを取りながら白々しく宣う。

 

 「クソ嘘クセェ、大体お前10年前は忍者の前任で風の剣士やってたんだから会ってるハズだろ…」

 

 「そう言えば…刻風は今幾つなんだ?」

 

 「僕より一個上なので…二十一歳の筈です」

 

 「それは…つまり十一歳で聖剣の剣士になったと言う事か?!」

 

 「左様にござります。歴代最年少保有記録者であり、歴代最速で選抜の試しを制覇し、歴代最短で引退した御仁でござる」

 

 「や、結局自分新しい聖剣の剣士になったんですけどね~やはは!」

 

 「それで結局俺の前に烈火を使ってた人の事は知ってるの?知らないの?」

 

 「(知ってるけど)いや詳しくは知らねッスね。多分昔に顔を合わせた事くらいはあるでしょうけど、ガキだったんであやふやッスねぇ…(嘘だけど)」

 いけしゃあしゃあ言ってのける勇魚の後頭部を目茶苦茶胡散臭い物を視る眼で眺めながらエレンが口を挟む。

 

 「オレぁ、ババア伝手に聞いただけだが、割りとテンプレなイギリス紳士だったらしい…ハーフだそうだが…。名前までは知らね」

 

 「それこそセドリックさんやラウシェンさんにでも訊いてみない事には…やはり詳しい事は解りませんね」

 

 「…と、言う訳で、そう言う事なんでメアちゃんの質問にはこんな答えしか返せないッス。メンゴ!」

 

 『メンゴて……(´・ω・`; )』

 

 「お詫びと言っちゃなんッスけど、メアちゃんにはコレをプレゼントフォー・ユー」

 俗に言うテヘペロ顔をしながら教壇の下に放置していたスポーツバックからタブレット端末とスマホを取り出す勇魚。

 

 「こっち来てからガトホに切り替えたんで正直持ち腐れだったんッスよね、でもナルミッチや斗真どんかから聞きましたよ?メアちゃん何か造ってるって……数日物借りて斗真どんのスマホをこっちで使える様にしたてっっっんさいっ!のメアちゃんならこの使わなくなったタブとスマホを有効に活用出来るでしょ!

 と言う訳で、コレあげまスんでメアちゃんの発明に役立ててちょーだい」

 

 ポイポイと端末2機にそれ等の周辺機器も含めメアリーベリーに渡してゆくおちゃらけ剣士に、渡されている当人は戸惑うばかりである。

 

 「良いのか?俺みたいにこっちでも使える様にしてみるとかしなくて」

 

 「そこはそれ、もう1台あるんで。メアちゃんが造ったモンの結果次第でどーとでもなりまスし、エリちに頼んだりするので」

 

 さらっと複数台端末を所有している事を明かす。因みに彼が口にしたエリちとはセドリックの兄、エリウッド・マドワルドの事である。更に言うなら心は乙女

である。

 

 「エリち?」

 斗真は当然誰の事を指しているのか判らないので置いてけぼりである。

 

 「ほ…ほ、ホントに貰っていいんですか??!!『太っ腹が過ぎるぜ!!(*/□\*)』」

 マジックアイテムクリエイター渾身の叫び、ボードも荒ぶっている。

 

 「良かったねメア」

 「う、うん」

 「でも徹夜は程々にするし、美容にわるいからね」

 「う……『善処するよ( ゚ε゚;)』」

 シャンペが頭を撫で、ラトゥーラが釘を刺す。

 溢れる好奇心と創造性を抑えられないメアリーベリーは返事もそこそこに早足で自らが有する研究室へと足を向ける。

 残るシュガーポケッツの2人もそんな彼女の後ろ姿に苦笑を溢しながら後を追って教室を出た。

 

 「さて……ティアちゃん達はともかく、何で残ってんッスか?あるふぁちゃん?」

 

 「いえ、そろそろ頃合いかと思いまして」

 

 「あ?何がそろそろなんだ?」

 「謎です、魔律人形の思考は謎過ぎます」

 「???」

 

 あるふぁの意図の読めぬ発言に剣士達は疑問を浮かべるばかり、唯一勇魚はあるふぁが斗真に視線を注ぐ様子からおおよそ理由を察する。

 

 「あるふぁが何を考えているかなんて多分エミリアでも早々判らないんじゃないか?」

 「それは……そうかもね」

 「ん?何か廊下から変な音しない?」

 「そう言えば何か騒がしいような……」

 「声…かな?」

 

 「わふ…さーん、にー」

 

 ティアラ達が怪訝な顔を合わせる横で、予め示し合わせていたのかサルサがカウントを始める。

 彼女の口が1を告げる形となったと同時に教室の出入口にあたる扉が勢いよく開け放たれる。

 

 

 「剱守ぃぃぃぃぃトォォォマァァァアッ!!」

 

 

 「ひっ…」

 「何だっ!!?」

 「恐っ!?!めちゃ恐!!?」

 「あ、あんな人…学院に居たかしら…?!」

 「て言うより…今の名前って、先生の名前じゃ…」

 

 突如憤怒の形相を貼り付け現れた燕尾服の青年にリネットが悲鳴を溢し、アシュレイが驚き、ラヴィが慄き、ロゼッタが見覚えの無い顔に当惑し、ティアラが青年が口にした名が自分達の担任の名前である事に気付く。

 

 「うわっ?!でた!!?」

 

 「やはり来ましたね」

 

 そして名指しされた本人と、彼の襲来を予想していた魔律人形がほぼ同時に声を上げる。

 片や本能から出た苦手意識、片や呆れが入り雑じった無表情を浮かべ、件の青年──ヘルマンを見やる。

 

 「死ぃぃぃぃねぇぇぇええ!!」

 

 そしてヘルマン、斗真を視界に収めるなり、途轍もなく物騒な事を叫び両の指に銀食器のナイフとフォークを挟み跳び掛からんと跳躍する。が───

 

 

 「御免!」

 

 

 突如としてヘルマンの横合いから伸びた細腕が彼の二の腕を掴み、勢いのままに床下に投げ、叩き付けられる。

 

 「ナイスでございます、サイゾウ様」

 斗真を庇う様に前に立ち塞がるあるふぁが、下手人を投げ飛ばし押さえた人物を褒める。

 

 「いえ、当然の事をしたまででござるよ」

 照れながらも極める所はキッチリと極め、ヘルマンの抵抗を無力化する哉慥、忍者は伊達ではない。

 

 「ぐぬぅぉおおおお!!」

 年下の少年に押さえ込まれ唸る燕尾服姿の青年、手にした凶器はアルマとエレンにより隠していた物含め押収されている。

 

 「お前遂にやりやがったな…此処にオレらが居なかったらちょっとした惨劇になってたぞ、あ?おい」

 

 「ヘルマン……トーマさんとは仲が良好ではないとは言え、いきなり殺害に踏み切るのは見逃せません!何が君をそこまで駆り立てたのか…動機を話して下さい」

 押収した凶器を教壇に並べ置き、哉慥と併せて立ち上がらせたヘルマンが暴れない様に取り囲むアルマとエレン。

 しかしヘルマンはそれを待っていたのか、口端をニヤリと歪め言い放った。

 

 「獲った!」

 

 ヘルマンの足元から影が急激に延び、斗真へと向かう、しかし──。

 

 「ほい」

 

 「?!?!」

 

 他人事よろしく、ニヤニヤ眺めていた勇魚が割って入り、ヘルマンから延びた影を踏みつける。

 

 「おの…れ!?貴様!刻風!!邪魔するか!!退け!」

 

 「や・だ♪」

 

 「糞っ!絶妙に体重を掛けおってからに!()()()()()()()()()()()()!!」

 

 ヘルマンが忌々しげに叫ぶ、どうやら勇魚はヘルマンの半亜人としての能力が何かを知っているらしい。

 

 「もぅ、ホントにヘルっちはエミリアちゃんしか眼中に無いッスねぇ。その所為でコミュニケーションが不足し過ぎッス、基本エミリアちゃんかあるふぁちゃん、後はカミラたんの言う事くらいしか聞かないッスよねぇ…あ!一応ジークハルトパイセンの言う事もか」

 

 「おい、クソペテン師とクソストーカー…今はクソ殺人未遂犯って呼ぶか、テメェらだけで話進めんじゃねぇ、キチンと説明しろ説明」

 

 「出来れば穏便に頼みたいかな、なんか未だにヘルマンの眼が恐いし」

 

 ニコニコ顔の勇魚と怒り顔のヘルマンの応酬に苛立ちながらエレンが事情の詳細な解を求め、標的となった斗真も額に汗を滴らせながら同じく説明を求める。

 

 「良いッスけど、その前に…ヘルっちは影引っ込めて、さもなきゃ哉ちゃんに()を縫って貰っちゃうよ?」

 

 「ニン!よくは解りませぬが、お任せ下さい!」

 

 「っ……チィッ!だから風の剣士の系譜は苦手なのだ…!」

 性格的にも能力的にも相性が悪いのか、ヘルマンは哉慥と勇魚を鬱陶しく思いながらすごすごと影を元の長さまで戻す。

 

 「あの……大丈夫ですか?」

 

 そこまで済んで、やっと蚊帳の外になっていた少女達が会話に加わろうと、ティアラが取り敢えず斗真やアルマに問い掛ける。

 

 「多分……だよね?」

 

 「ええ、まぁ…予断は許されませんが、一先ずはサイゾウとトキカゼが居ますから大丈夫かと」

 

 「後あるふぁちゃんも居まスしね。で、ヘルっちったら何をそんな激おこプンスコなんッスか?」

 再び影を延ばす事のないよう会話に紛れてヘルマンとの距離を自然に詰める直轄剣士、彼の態度の割りに油断ならない行動に舌打ちをしそうになるのを堪え、屈辱にまみれた顔で質問に解を返す。

 

 「決まりきった事を訊く!私が動くのは全てお嬢様の為、お嬢様の知り得る事知り得ざる無い事に関係無く、お嬢様の害となる者は等しく私が裁く」

 

 「はは~ん、読めたッスよ…ヘルっちエミリアちゃんのパイ乙に斗真どんが触れた事を知ったんッスね」

 

 勇魚がエミリアのパイの部分を口にした時点で、ヘルマンの殺気がおおよそ2回り程鋭く大きくなるのをこの場の全員が感じ取った。

 が、そんな剣呑な空気を理解した上で余裕をみせるのが刻風勇魚と言う男である。

 真正面から鬼気を遮り、受け止める男の顔は実に満面の笑みであった。

 

 「貴様!お嬢様の神聖で美しい御身の一部を軽々しく……」

 

 「えー、パイはパイッスよ。それともお山って呼ぶ方が好みでス?或いはメガロポリス?思えばエミリア山も中々のメガロっぷりッスねぇ、リッちゃんに並ぶ大きさと見た」

 

 「うぇぇ!?」

 

 まさかの自分の名前が話題に挙げられた事に両腕で自身の胸を隠すように抱きながら身を隠すリネット、と言うか勇魚は最早セクハラ発言を隠す気が無い。

 これで鼻の下が伸びて下卑た笑みを浮かべていたら、少女達も実力行使に出ていたかもしれないが、堂々とケラケラカラカラ笑いながらさらっと言ってのけるので、少女の代わりにアルマが勇魚を諌める。

 

 「下品ですよトキカゼ」

 「アルマっちは紳士ッスねぇ。でも人は遅かれ早かれ下ネタ色ネタ恋ネタにゃあ触れるモンッス、自分の場合は八割方下ネタッスけどね!!」

 

 「自信満々に返す事かよ」

 「少年がさっきからリネットちゃん以上にめっちゃ顔赤くしてんだけど」

 

 「にゃ、にゃ、にゃにをおっしゃいましゅる!?せっしゃきわめてれいせいでごじゃりゅよ!!」

 

 「呂律ガタガタじゃねぇか」

 「初すぎないか?」

 

 ((かわいい……))

 

 「あははは!ビンゾウくん変なの~!」

 

 「しゃ、しゃいじょうでごじゃりゅよらう"ぃどょの!?!」

 

 勇魚がパイだの何だのと発言する度に顔を赤面させている哉慥、斗真の指摘に当人は否定を口にするが、エレンが言う通り呂律が回らず噛み噛みの発言を繰り返す為、女性陣からの印象が完全にマスコットのソレである。

 その上ラヴィだけがツボにクリーンヒットしたのか吹き出して大笑いしている。

 そのお蔭か、はたまた所為か、先程の剣呑殺伐とした気が霧散する。

 

 「ヘルっちさぁお嬢様優先主義は構わないけど、度が過ぎるとカミラたんにチクッちゃうよ?

 

 「ぐっ……!」

 

 ふにゃふにゃになった哉慥の代わりに即座にヘルマンを拘束した勇魚は、ヘルマンの背後から小声で耳打ちを始め、ヘルマンも恩人の名を出されると大人しくならざる終えない。

 大人しくなった彼の耳元で勇魚は尚も耳打ちを続ける、先程よりも一層小声で話す為、喩えサルサの聴覚を以てしてもゴニョゴニョとしか聴こえない。

 

 「何だと…?!」

 「そう言う訳で、斗真どんへのヘイトを下げましょう」

 ヘルマンが勇魚の真意を推し量る様に見つめるが、勇魚は終始笑顔を浮かべるのみ。

 

 「ふむ、ひとまずは先生様の安全は確保出来たと見てよろしいでしょうか?」

 

 「ッスね、問答無用でKILLされる事は無くなったッス。一応は」

 

 「勘違いするなよ、私は別に剱守の無礼を許したつもりはない!お嬢様に破廉恥な行為を働いた事は万死に値する事には違い無いのだ」

 

 「わざとじゃないんだけどなぁ…」

 

 「そ、そうですよ!あれは不幸な事故だと思います!」

 「う、うん先生には下心とか悪意は一切無かったよ!」

 リネット、ティアラが斗真を弁護する様に発言すると、流石にヘルマンも分が悪いのか口ごもる。

 

 「やや、斗真どんモテモテでスねぇ。つー訳でヘルっち、斗真どんを処したらティアちゃん達が悲しむ訳ですよ?そんであるふぁちゃんがその辺りの経緯含めエミリアちゃんに報告する可能性がある訳でしょ?そしたらヘルっちはどうなっちゃいまスかねぇ~?」

 

 「…忌々しい男だな刻風貴様!くっ、良かろう…剱守に過失が無かったとし、此度の件は不問にしてやる」

 

 「良かったッスね斗真どん…やっぱ言い辛いから斗真くんで良いッスか?良いッスね!」

 

 返答を待たず、有無を許さず、一方的に捲し立てる勇魚。斗真は只々首をコクコクと縦に振るしかない。

 問題は一先ずの解決をした……かに思われた、勇魚が去り際に放った一言さえなければ。

 

 「んじゃ、自分もこれにてドロンしちゃうッス!あ、そうそう、斗真くん転ばしてエミリアちゃんのパイにToL○VEるもといトラブルさせた原因は…実は自分ッス♪チャオチャオ~」

 

 「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」

 

 場を支配するのは一瞬の沈黙、しかして真実を知り真っ先に反応を起こしたのは…当然エミリア史上主義を謳うヘルマン。

 

 

 刻風ェェエェエエエエ!!貴様ぁぁぁああ!!

 

 

 薬缶が沸騰するからの如く、怒気を湯気にして噴出しながら去った勇魚を追走するヘルマンなのであった。

 

 「アホらし、おい小説家ぁ帰るぞ」

 「少年は放置して大丈夫なのか?」

 「その内戻んだろ」

 「えぇ…。と、取り敢えずティアラちゃん、リネットちゃんもありがとう。そう言う訳で俺達は戻るよ、ラヴィちゃんは課題しっかり復習しておいてね」

 2人に庇ってくれた礼を述べ、先に行くエレンを追う様に斗真も教室を去る。

 その場に残った面々もそう言う事ならばと次々去り、後には未だ言語がバグった忍者少年が残るのみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院・理事長室━

 

 「随分と色男になりましたね」

 

 「やぁ~、一応責任はそれなりに感じたんで一発は甘んじて受けたんッスけど、ヘルっちたら本気で殺しに掛かるもんだから、後は全力で抵抗させて貰いましたッス」

 日の暮れた理事長室でクロエがソファに寛ぐ人物に声を掛ける。

 掛けられた人物──当然刻風勇魚の事である──が紫色に腫れた左頬を擦りながら紅茶を啜る。

 

 「念の為確認しますが……ヘルマンは生きていますよね?」

 

 「だいじょびッス、本気で殺り合ったら自分のが強いの知ってるでしょ?」

 

 腫れた頬の締まらない顔をして尚余裕と言った雰囲気を醸し出す青年に少々蟀谷を押さえたくなるクロエ。

 

 「それで、貴方はまだ学院に滞在する気ですか?」

 

 「んにゃ、明日軽~くこの辺一帯の土地を回ったら噂の幽霊屋敷を軽く見に寄って帰るッス」

 

 "幽霊屋敷"…、そう発言した勇魚を眼鏡越し見開いて見つめる。

 

 「どこでその情報を…?」

 

 「壁に耳あり障子にメアリー……冗談ッスよ冗談、だからそんな恐い顔しちゃ嫌ッス」

 

 「貴方に情報の出処を訊いても無駄でしたね……ですが、近い内に課題として例の屋敷がある一帯の調査を生徒達に出す予定です…ですから──」

 

 「モーマンターイ、安心してくださいッス。自分はただちょこっと野次馬しに行くだけなんで、台無しにするような事はしませんよ、ついでに例えメギドが出ても不干渉するッス」

 

 「そちらの職分はトーマ先生達にお任せする予定です」

 

 雲を掴むどころか掴んでも逃げる水を相手にする気分になるクロエ、呆れつつも勇魚に最後に問う。

 

 「トーマ先生…トーマさんは貴方とマスターロゴスのお眼鏡に叶う御仁でしたか?」

 

 「さぁ?自分は斗真くん嫌いじゃないッスし、ロゴマスも個人としては好意を示すでしょうけど……組織としてはまだ解んねぇって感じッスね、何せジジイ共が堅物ッスから」

 

 「ですが、さる筋から聞く所によれば、賢神の一角が入れ替わると」

 

 「耳がはやーい。そうッス、哉ちゃん所の里長が候補てして挙がってまス、だからまぁ…あの合法ショタお爺ちゃん辺りは斗真くん参入は賛成するでしょうね、やははは~オヤスミー」

 

 芝居掛かった何時もの笑いを挙げソファから発つ勇魚、クロエの反応や返答を待たずさっさと理事長室を後にする。

 階段を降りながら人が疎らなエントランスを眺める褐色の剣士は最後にふと呟く。

 

 「ま、一番油断ならないのはそのお爺ちゃんなんッスけど

 

 誰に聞かせるでもない一言は空気の中に溶けて消える。

 時の剣士刻風勇魚、彼の本心は彼と彼が仕える組織の長以外に知る術は無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──抗議を終えた次の日、トキカゼさんは学院を後にしていました。

 結局彼が何を考えて何をしたかったのか、当時の私達は、この時点では知る由も無かったのです。

 後日、トーマ先生を介して渡されたとある物の意図も、やはりあの時の私には気紛れとしか思えなかったのです──

 

 

 TO BE Continued

 

 

 

─ジャアクドラゴン─

 





 さらっと出て来た三世のお兄ちゃん漢女設定。
 更にガーネットに関わる事にも少しだけ言及すると言う、まぁガーネットの登場より先にカリバーに関連した話が次の章であるんで登場は今暫くお待ち下さい。
 
 今回のなんちゃってTip、勇魚がメアリーベリーに渡した端末、スマホの方はカバーが軍事用もかくやとばかりの頑丈さを誇るモンです。
 そんなもんをホイッと渡す辺りメアに期待してるのか、はたまた執着が無いのかはご想像にお任せするとして、これで今作に於けるベリーパッド開発が更に進む訳ですね。

 では次回にておば
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