MasqueradeRe:Lights ~この世界では本の力を持つ仮面の騎士がいる~   作:ダグライダー

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 おはこんばんは。

 遂にリリースされたラピライ!待ちに待った甲斐がありました。

 今だUR出てませんし、URチケットユニットか単独かで迷って使えてないですけど……。
 折角なんで斗真くんの名前をそのまま拝借。
 他にも始めた人がいれば嬉しいですね。
 今の所フレンドもまだかなり空きがありますし。



行間 天才?刻風勇魚

 ━本の間━

 

 「斗真くん斗真くーん」

 

 勇魚主導で行われた講習の翌日、フローラ女学院図書館室奥の禁書庫の更に奥に隠された剣士達の拠点、その中枢となる本の間にて大荷物を纏めた日に焼けた褐色に黒髪の若い男が、同じく同部屋にて本を漁っていた整端ながらも人好きする笑顔が似合いそうな青年に気安く声を掛ける。

 

 「刻風?随分と……大荷物だね、まるでサバイバルに向かうみたいだ」

 

 「そッスかね?そんな大したモンは入ってないんッスけど…精々替えの下着、着替え、お土産、街で売ってたオルケストラブロマイド、ベリーボード、姐さん方に頼まれたLaLaの新作コスメ、来訪者謹製デッキブラシくらいッスよ?」

 

 「うん?待って、ちょっと待て!?着替えは分かる。お土産もまぁ分かる。頼まれた物も分かるし、ブロマイドとかは…うん、個人的な趣味として捉えれば理解出来なくも無い。ベリーボードは…想像が着かないけど…まだ良い、最後おかしくない?」

 

 勇魚が挙げ連えた物一覧に引っ掛かる物を感じて思わず手を制す斗真。

 何なのだ来訪者謹製デッキブラシって……と眉間を押さえて用途を幾つか想定するがまるっきり解らない。

 デッキブラシ──マームケステルの街にある雑貨店に来訪者が関わったとされる道具が入荷される事は多々ある。

 デッキブラシもその1つだろう。

 普段学院で見掛けるブラシと違い、素材は木製ではなく、金属。毛の部分も獣の物ではなくて加工手段は知らないが科学線維のソレである。

 別にそれは良い、問題は何故目の前の青年が外に出掛けるに辺り、そんなモノを持ち出すのかと言う事である。

 

 「おかしくないッス、一般で売ってるのより頑丈でちょっとやそっと振り回しても壊れ難い優れ物ッスよ?」

 

 「振り回す事って…前提がおかしいよ?!何で掃除具を武器にする事前提なんだ!!?」

 

 斗真のツッコミに何言ってッスか?とばかりのキョトン顔でデッキブラシの性能をプレゼンする勇魚。

 しかし斗真には彼の言い分が理解出来ない。

 

 「や、最初はサスマタと迷ったんッスけど、サスマタじゃ矛先のウェイトが重すぎなんで最終的にデッキブラシに落ち着いたッス」

 

 「違うよ?!そう言う事言ってんじゃ無いよ?!刺股だから良いとか言う問題でも無いよ?!!」

 

 勇魚が尚もデッキブラシについて語るがそう言う問題ではないと斗真は退き下がらない。

 

 「斗真くんは心配性ッスねぇ。モーマンタイッスよ、自分前にもモップで魔獣倒したんで。むしろ穂先の重量的にはこっちのが使い易いし、此処の工房の製品は武器にも使えるって売り文句で有名ッス」

 

 「エエエェェェェェェ…」

 

 斗真は思った、勇魚の思考もおかしいが、ブラシを作った工房の人間とやらも頭おかしいと。

 いやしかし、実際の所、本当に武器としても申し分無い強度を誇るのだ。

 本来は武器として使用する際、穂先の部位を交換するとして別途に矛先オプションセットなる物を買う必要性があるのだが、勇魚はブラシのままでも問題は無いらしい。

 だが、そもそも何故ブラシを武器にも利用出来る様に作られたのか?そこに言及すると、製作者の来訪者はドヤ顔で答えるだろう…趣味だと──。

 

 「ともあれッス、そう言う訳で自分もこの街とは暫くお別れなんで新しく仲良くなった斗真くんには挨拶しとこっと思い至った訳ッス」

 

 「それは…うん、ありがとう?」

 

 「どういたましてーッス」

 

 結果強制的に話を戻して別れの挨拶を告げる勇魚に面食らい、思わず礼を口にする斗真。対して勇魚は妙な日本語で礼を返す。

 

 「そこででスね、帰るにあたってホントは直接渡せれば良かったんッスけど、思いの外ブラシ選びに時間掛けちゃったんで、この本斗真くんからリッちゃんに渡しといてくださいッス」

 言って背負ったリュックから白い装丁の本を取り出す。

 「これは?」

 「それはリッちゃんに渡せば()()()()()()()。それまではお楽しみつー事で」

 「えぇ…そこはかとなく不安だなぁ」

 と言いつつも本を受け取っておく。

 まぁ友人として信頼してくれたのだからその想いには応えたい。と斗真のお人好しな部分が詮索を良しとせずにしたのだ。

 

 「そんな訳で~、いざサラバーイ。ッス!」

 

 そんな言葉を残し以前見た時の様に突如として消える勇魚、残された本の間に独り佇む斗真は思った。

 

 (そう言えば…何でデッキブラシなんだろうか?曲がりなにも剣士ならそこは木刀とかじゃないの?何で長柄物なんだ?あれじゃまるで槍じゃないか?)

 

 生憎とこの場にそれに答えられる人物は居ないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━マームケステル外・街道━

 

 「さぁ~て、取り敢えずの布石…微々たるもんッスけど、打っといたし。後は気侭に遊覧の旅と洒落こむッスかね」

 ガトライクフォンを取り出し変形させながら頭の中で旅のルートを構築する勇魚。

 

 「とりま、幽霊屋敷とやらは絶対に見ときたいし……街道は無視して良いかな。どうせガトライカーは衆目にはそうそう晒せないし、説明メンドイし」

 変形し、鋼鉄の騎馬ライドガトライカーに跨がり独り語ちる。

 口にした通りアクセルを握り、道なき道をマシンの性能に任せて進むは一人旅。

 後日その不可解な轍が街で一頻り妙な噂を呼ぶ事となるが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━本の間━

 

 あれから、斗真が渡された本を律儀に開かずに観察していると、寝起きの顔で浅く隈の残る目元を抑えてエレンが現れる。

 

 「おーす……」

 

 「また随分遅いお目覚めだなぁ。徹夜は良く無いぞ」

 

 「うるへぇ、お前だって原稿詰まったら徹夜すんだろ」

 

 「適度に休息は取るさ」

 

 最早すっかり馴れた応対を交わす2人、眠気に頭を振りながらエレンは斗真が持つ白い装丁の本に視線を配る。

 

 「あ?んだその本?…忍者ぁ、温めたタオル寄越せ」

 

 「お呼びとあらば!!ニンニン!」

 本に気を向けつつも割りとどうでもいい事に哉慥を呼び付ける。

 呼ばれた方も素直に湯気立ち上る手拭いを持っているので斗真としては何だかなぁと思うばかりである。

 そんな日常の1コマへ新たに闖入者が現れる。

 

 「ただいま~。オジさん達が帰ったよ~と」

 「帰還。ふむ…三人だけか。変わりはないか?」

 

 ブックゲートワンダーライドブックにより各々が外征先より帰還し、真っ先に本の間の扉を開けて帰還の報を挙げる。

 年長者達の言葉に若き剣士達は其々の反応を返す。

 

 「お帰りなさい。これと言った事は特には……うん、特には無いです」

 

 「お帰りなさいませ!ここ数日の間は魔人の被害も無く、魔獣が街へと攻めてくる事も御座りませんでした!魔女の皆様におかれましては健やかに過ごし、学業に励んでおられまする」

 

 「ハッ!強いて言やぁウサギの疑問でペテン師が講義を開いたぐらいだな」

 

 エレンが軽く笑い飛ばしながら劉玄、セドリック不在の間に起こったイベントについて語る。

 

 「へぇ、あいつがねぇ」

 「驚愕、奴に人に教えるだけの技能があったのか!?」

 

 感心する劉玄の横でセドリックは狐に摘ままれた顔をする。

 

 「せどりっく殿、刻風殿は剣技等の実践における実技指導に難があるだけで、寺子屋等の学問にて知識を語る分には申し分無い程度には教鞭を執れまする」

 幼少期、勇魚から短い期間翠風の継承に際し指導を受けた経験のある哉慥が困った様な顔をしながら一応のフォローを述べる。

 

 「まぁ仕方無いさね、オジさん達はあいつがガキーンだのズバーンだの言ってる所しか見たことないから」

 

 「馬鹿なのか頭いいのかイマイチ判んねぇ野郎だなアイツ」

 

 「同意。あれで剣士としては天才等と持て囃されるのだから世の理とは解らぬ物だ」

 

 劉玄、エレン、セドリックとそれなりに付き合いがある面々が語る勇魚の武勇伝だか与太話だかに斗真は興味がそそられる。

 

 「その…良いですか?結局刻風勇魚って、どういう人間なんです?」

 

 「ふむ…どういう人間か…。その前に斗真ちゃんはあいつをどう見た?」

 斗真の質問に対し、暫し熟考してから質問で返す劉玄。

 最年長者からの質問返しに面を喰らいながらも、彼がまず、斗真自身が勇魚をどの様に観察し、解釈したのかを知りたがったと見て、斗真なりの所感をポツポツと語り出す。

 

 「そうですね……一見するとお気楽でちゃらんぽらんでいい加減な青年ですけど、講義の時の生徒達に対する対応やヘルマンとの会話を聞いたりした感じ、エレンの言い分を含めると、腹に一物ニ物は抱えてる感じだなぁとは思います。少なくとも額面通りの軽薄な人物では無いかと………ふざける時は本気でふざけてるみたいですけど」

 

 「おおう…存外良く"観て"るのね斗真ちゃん」

 「慧眼…かどうかはさておき、中々に興味深い評ではあったな。再評」

 斗真の勇魚評に思いの外たじる劉玄と斗真の観察に対し彼の人物評を修正するセドリック。

 

 「まぁ度々エレンがペテン師なんて言ってるしねぇ。オジさんはどの辺がペテン師なのか解らんけども…。うん、確かに刻風はこっちの反応をちょくちょく確認しながらふざけてる所あるよ」

 

 「腐っても、現マスターロゴス直属の剣士だ。腹芸くらいはやってのける。態度に軽薄が過ぎるのは考え物だがな…辟易」

 

 「なんとぉ……そうだったでござるか!!?刻風殿はそこまで聡明な方だったのでござるか…!!?」

 

 「いや何でテメェが驚くんだよ忍者!」

 

 哉慥のリアクションにエレンが呆れた声で手刀を下ろす。

 勿論、少年忍者は容易く白羽取りしてしまうのでエレンが軽く拗ねるのだが、それは些細な事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「は…くショッカー!?!ズビ…風邪かな?それとも誰か噂してる?」

 山岳地帯に入り、ガトライカーから降りてハイキング気分で登山していた勇魚が鼻を啜りながら溢す。

 

 「いやぁ舐めてたわ山。そこまで高い所じゃないけど徒歩だと長時間はクるねぇ~。でもガトラは使わない!負けた気になるし!」

 一体何と張り合っているのかは分からないが、フンスと鼻息荒く意気込む。

 其所だけ見ればとても普通の事である。其所だけ見れば。

 

 ≪bbeeeee…≫

 

 「あっ、ダメッスよ抵抗しちゃあ。君らはきっちり消してあげるから大人しくしてて欲しいッス」

 

 勇魚の足下には羽根の捥げた虫型の魔獣が山となって横たわっている。

 数はそこまででもないが、それなりに大型なので強力な魔獣だ。

 それを彼は生身で手にしたデッキブラシ1つで撃退し、組み敷いているのだ。

 ブラシの穂先を魔獣の傷に押し当てて擦りながら、まるで友達に語り掛ける気安さで言葉を発す。

 

 「いやぁ魔獣が出るなんて思わなかったからつい遊んじゃったッスね~。君らちょっち凶暴すぎじゃない?自分眼にした瞬間襲って来るとか…思わず楽しくなっちゃったよ」

 尚も執拗に傷口を抉る様に擦る。その内、勇魚の下敷きとなった山の頂上の魔獣が消滅する。

 

 「あ、死んだ…つか消えた。はい、んじゃ次~♪」

 

 消えた魔獣に感慨も懐かず、新たに足下に来た魔獣倒したんで傷に再びブラシを当て擦る。

 

 「ホント、魔獣の生態系って謎ッス。ヤハハ!」

 

 魔獣の悲鳴を無視して甚振る。

 

 「やー、弱いモノ虐めは趣味じゃ無いんッスけど、君らがどういう構造なのか昔から興味あったんで……ゴメンネ~苦しんで死んでよ?」

 

 本当に心の底から申し訳無さそうに謝る勇魚。

 

 「んー、大体分かった。や、君らの相手は楽だわ。腹芸する必要無いし…、普段人間相手に探り合いとかしてっと疲れるんだよね~。フローラ女学院の娘達とかマームケステルにいる剣士のみんなとか良い人らなんだけど、だからこそ楽しいから逆に疲れるって言うか…」

 

 言葉通り心底疲れた顔して魔獣にのみ本音をブチ撒ける、そうして言いたい事を言い切った勇魚は魔獣の山から飛び降り、デッキブラシをバットの様に思い切り振りかぶる。

 

 「お掃除完了♪ブラシだけに。さぁて、お楽しみはこれからだ~♪幽霊~♪幽霊~♪ゆ・ゆ・幽霊~♪カイガン♪カイガン♪バッチリミナ~♪」

 

 謎の鼻歌を口ずさみながら近くに投げ捨てた荷物を回収し森の方へと刻風勇魚は消えていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院・購買━

 

 「そう言えば…」

 「どしたの斗真ちゃん?」

 本の間での雑談から一転、職員としての備品を補充する為に購買に来た斗真。

 同じく所用で同行していた劉玄が唐突に呟いた斗真の言葉に反応を示す。

 

 「いえ、度々陳さんやセドリックさんが刻風の事を天才って言ってますけど、具体的どう天才なのかなって…」

 

 「あ、あーそれね。う~んどう説明したもんかな」

 

 「その話カエデも気になります!」

 「中々興味深いお話ですね」

 劉玄が説明に迷っていると後ろから愛らしい声と淡々とした声が掛かる。

 2人して振り替えれば其所には声の主であるカエデ、あるふぁに加え、ロゼッタとリネット、シャンペと講義に参加していた面子が一部揃い踏みであった。

 

 「あららぁ、お嬢ちゃん達ってば随分とアグレッシブになって。ちょいと此処じゃ邪魔になるから場所変えよっか」

 困った顔を作りながらも断らないのは彼の人の好さ故か、劉玄の提案に従って学院のエントランスラウンジにある談話席、その内最も人目から遠い席を選んで座る。

 足りない席はカフェテーブルから拝借する。

 

 「さて……どっから話したもんかね」

 ソファの長椅子に腰掛け、膝上で手を組みながら話の切り出しを思案する。

 

 「どこからも何も、トキカゼ氏が天才と呼ばれている理由をそのまま語るのでは?」

 

 「や、まぁそうなんだけどね?取り敢えず此所にいるお嬢ちゃん達はみんな刻風と面識あんのよね?君らから見てあいつってどんなイメージよ?」

 

 「変態不審者さんです」

 「お嬢様に不埒を働いた不届き者でしょうか」

 「面白いお兄さまだったの」

 「個性的ではありましたね…」

 「あ…その……」

 

 「あー…、リネットちゃんはまぁ初対面であんな事言われちゃったしねぇ。無理しなくて良いよ」

 

 順にカエデ、あるふぁ、シャンペ、ロゼッタと勇魚のイメージを語っていくが、最後リネットの番となった時、リネット自身が勇魚との初対面時の記憶を思い起こして顔を紅く染める。

 それを見て、リネットと勇魚の対面時に立ち会っていた劉玄は彼女の心情を慮ってリネットの発言を制する。

 

 「はい…」

 

 「まぁ兎も角。大体みんなのあいつに対するイメージとか好感度?って奴は解ったよ」

 

 「印象で言ったら過半数マイナスですかね」

 

 「いえ、私はそんなつもりは…!」

 

 顔を見合せて肩を竦める2人にロゼッタが忖度するが、メンバーで好感が高かったのがシャンペだけだったので口ごもってしまう。

 

 「や、仕方無いし、当然だと思うよ?あいつ自身もその辺は分かった上でやってんだろうし」

 そんなロゼッタに劉玄も苦笑しながら応えてやる。

 

 「さて…ちょっと脇道に逸れちゃったけど、本題に入ろうかね。

 刻風勇魚はね聖剣の剣士としては歴代最高峰の適正を持つ天才なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院・MIP━

 

 「つまりどういう事だ?」

 

 「簡潔。要するに奴は全ての聖剣の力を使う事が出来る」

 

 マジックアイテム研究会にて、魔法道具のゲームを修理しているセドリックが不遜に腕を組んで作業を見届けているルキフェルに答える。

 側にはこの部屋の主であるメアリーベリーがとある道具の試作をしながら聞き耳を立てている。

 また現在この部屋には他にアンジェリカ(セドリックに引っ張ってこられた)、ラヴィ(ルキフェルとゲームする為に居る)、ツバキ(カメラのメンテ)、アルマ(ラヴィに誘われた)が各々の所用にて同席している。

 

 「初耳です…。トキカゼにそんな才能があったなんて……」

 年代が近いアルマが、勇魚の才能に驚愕を示す。

 

 「補則。より厳密には所有者不明のまま行方不明となった光の聖剣、女性しか選ばぬ煙の聖剣、元所有としていた風の聖剣を除くが…いや、風に関しては剣の意思を無視すれば今でも変身は出来るんだったか…」

 

 「人は見かけによらないのね~」

 「ホント、見た目はチャラいクソ野郎なのにね」

 「え~?普通にカッコいいじゃん!?先生の次くらいには好きだよ?」

 

 ラヴィからだけは好評の勇魚であった。

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院・購買奥━

 

 「ま、言っちまえばクソペテン師は持ち主の有無に関係無く、他の聖剣でも変身出来るつーこった」

 

 「マジ!?スゴいじゃん!!でも何でそんな事知ってるし?」

 購買のバックヤードで物色しながら語るエレンに同じく購買部にトーン等の必要物資買い物に来ていたラトゥーラが自身の護衛に疑問を投げる。

 

 「実際に目の前で実践されたからな」

 

 「全ての聖剣で変身!?ろっくです~!!」

 「何だか想像出来ないなぁ…」

 「持ち主の有無関係無くとは…!確か聖剣は前任者が没したか当人の意思で引退しない限り、その力を振るう事は出来ない、でしたよね?」

 「わふ~!イサ兄スゴ~い!!」

 

 同じく替えの弦を買いに来たナデシコ、園芸用品を買いに来たティアラ、裁縫に必要な物品を購入しに来たアシュレイ、何故かエレンに矢鱈と懐いているサルサと言った面々が口々に感想を述べる。

 

 「刻風殿曰く、煙叡剣は変身は出来なくとも力だけならば使用出来なくも無いとの事でござる」

 翠風の前所有者と現所有者という繋がりで本人から教えられた事を哉慥が説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━エントランステラス談話席━

 

 「ま、そんな訳で…。聖剣の剣士として見れば破格の才能は天才と言っても差し支え無いんよ」

 

 「信じられません…」

 

 「なる程、では次にお会いした際は変態の天才様と呼んで差し上げましょう」

 

 「それだと別の意味にならないかしら…?」

 

 「本当に凄い人だったんですね…!」

 

 カエデは納得がいかない顔をしているが、あるふぁはあっさり受け入れ、勝手に不名誉な異名を付けている(付けられた本人は喜びそうではあるが)。

 

 「まぁ、俺達剣士を纏める組織の長の側近やってるくらいだし、そりゃあそれくらいは凄い所あるよね」

 斗真もあるふぁの言い様に苦笑しつつ勇魚という人物の才に感心の言葉を口にする。

 

 

 

 「見付けたわよ!ポンコツ従者!帰りが遅いと思ったら変態教師と一緒だったなんて、何を考えてるのよ!」

 

 其所へエミリアがプリプリした顔で現れる。

 

 「これはこれはお嬢様、もうそんな時間でしたか」

 

 「変…態教師………そうだよね、事故とは言え事実だけ見たらそうなるよね………」

 

 「ああっ!?!お兄ちゃんがショックで項垂れてます?!」

 

 「よっぽどショックだったんですね…」

 

 背後にブルーオーラが見える程落ち込む斗真。

 

 「にーさま元気出してなの、いい子いい子」

 

 斗真の隣に陣取っていたシャンペがあざとさを存分に発揮して担任を励ます。

 

 「そこっ!公序良俗違反よ!」

 

 「ふぅ、お嬢様がお冠なので私めはこれで失礼致します」

 エミリアが現れこれ以上の会話は続けられないと判断したあるふぁが静かに起立するとそそくさと寮へ向け歩き出す。

 

 「あっ、ちょっと待ちなさい!あるふぁ!」

 

 エミリアも斗真達にまだ何か言いかけていたが、あるふぁが足早に去るのを追い掛け、自らもその場より立ち去った。

 

 「あるふぁちゃんが帰っちゃったけど、取り敢えずまぁ刻風の事を一言で言うならチェスのクイーンの働きが出来るナイトって事らしい」

 

 「らしい、とは?」

 

 「奴さんの師匠、前時の剣士がそう言ってたんよ」

 

 「成る程。すると実力も相当な物なんですね」

 

 「そうなるねぇ、その内オジさんを越えちゃうかもね」

 

 「またまた、ご冗談を」

 

 「チェンさんが負ける所、カエデは想像つかないです」

 

 「おじさまはまだまだ現役でいけると思うの!」

 

 「おチビちゃん達の期待が重いなぁ、や、頑張るけどね?まぁそう言う事で刻風が天才って言われてるのはそんな感じの理由な訳、分かった?」

 

 「はい。ありがとうございました」

 

 「良いんよ、委員長ちゃんは真面目だねぇ」

 

 ロゼッタが深く頭を下げ、それに続き、残った少女達も頭を下げる。

 それを苦笑しながら堅陣騎士はよっこいしょと年季を感じさせる声を挙げて立ち去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おっ?御姫さん」

 皆から離れて数分、廊下を歩く彼と劉玄はリュウトの姫ユエに遭遇する。

 

 「おじ様、さっきの話…本当なの?」

 

 「さっきの?……ああ!刻風がいずれオジさんを越えるかもってトコの件かい?」

 

 「そんな事、私は認めない…!リュウト最強の剣士は誰にも負けない!おじ様が他の聖剣使いに負ける訳が無い!」

 

 「落ち着きなって御姫さん。斗真ちゃん達にも言ったけどオジさんが現役の間は早々負ける気も譲る気も無いよ」

 

 「それなら良い」

 

 劉玄が最強である事に拘り熱くなっていたユエだが、当人から最強の肩書きは早々降ろさないと告げられて、僅かではあるが口元を緩め満足そうな表情をするとそのまま来た道を引き返して去って行った。

 

 「やれやれ…まだまだユエも子供って事かね」

 残された最強の男は独り、溜め息を吐きながら己が生活する用務員小屋へと足を向けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━何処かの山峰にある森林樹海━

 

 「ぶえっらぁっあぁぁるえっくしょん!!…まぁた誰か噂してるッスね」

 ふざけているとしか思えないくしゃみをしながら次期最強(予定)の天才は夜を待つ。

 怪奇現象──幽霊を見る為に。

 

 

─side episode end─

 




 はい、勇魚がどう天才なのかが判明する回でした。

 作中でも言われた通り、狼煙だけは聖剣側が変身拒否するので煙の力を振るうくらいしか出来ません。
 最光に関しては適正不明ですが、虚無は確実に扱えます。
 因みにエレンの前で実演した時は激土、錫音、黄雷、流水、月闇での変身を試しています。
 烈火もフレッドから実演を頼まれて変身して見せました。
 
 魔獣相手に本音を溢しはすれども情け容赦一切しない男勇魚。
 勿論人前で魔獣退治する時は何時も通りです。
 ただ、疲れるとは言っても悪い意味ではなく、相対的に己の悪党ぷりに嫌気が湧いてしまう自己嫌悪からの疲労です。
 そう言う意味ではエレンが一番遠慮無くズバッと言って来るので勇魚はエレンを親友と見ています。

 ではまた次回。
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