MasqueradeRe:Lights ~この世界では本の力を持つ仮面の騎士がいる~   作:ダグライダー

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 お久しこんばんは。

 夏バテ気味な体調を何とか復調させて投稿しまんした。
 その間に起きた事と言えば、サマータイキがチケット1発で来た事や最近虚ろなるレガリアにハマって購読しているくらいですかね。
 ストブラは原作はマニャ子絵が私に響かなかったので買わなかったんですが、レガリアは挿絵の深遊絵がレギオス、グランクレストの時よりツボったので買いました。
 虚レガもう少し既刊増えたら何か二次創作したいなぁ。
 
 復刻でツバキ姉さまゲット出来たよー!!



31頁 女傑の指導

 

 ──リベラシオン。聖剣の剣士が自らの力を高め、試す為に時には命を賭して挑む修練の間の総称。

 その場所は南北双方の本の間の一階、中央から見える奥の扉の中にあるとされる部屋。

 その部屋は私達が認識とは異なる時間が流れ、更には挑む剣士に対し負担を掛けると言う物なのだそうです。

 エレンさんは当時それを聞いて何やら苦笑しながら抵抗していたのですが、レオナさんに難なく先生やアルマさん共々部屋の中へ放りこまれたのでした───

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━本の間・リベラシオン扉前━

 

 「い、イヤだ!!オレは絶対に入るもんかァあああっ!!」

 

 「往生際が悪い!死ね!そんでリベラシオンの中で大人しく修行しろバカ弟子!!」

 

 (死んだら修行出来ないんじゃ…いやよそう、あの師弟の関係には口を挟まない方が良い)

 

 扉の前で繰り広げられている程度の低い口論に呆れながら推移を見守る斗真とアルマ。

 

 「ねぇちょっと、斗真かアルマの坊やどっちかソコの扉開けてくれる?このバカを真っ先に中に放り込むから」

 愛弟子をガッチリと逃げられないよう卍固めにしながら斗真達に指示を飛ばす。

 

 「あ、はい………どうぞ」

 

 流れる状況に身を任せたまま斗真がリベラシオンへと続く扉を開ける。

 

 「テメっ!?小説家ァッ!!オレを売るとは何事だぁぁあア!!?」

 

 「売るも何も…別に示し合わせた訳でも無いのに言われてもなあ」

 

 「それでもダチかァあああっ!?」

 

 「そう言われても……親友じゃなくて悪友の方だからなぁ」

 

 レオナに関節を極められたままぷるぷると必死に声を上げるエレンと、先の戦闘の傷も治療され疲労もすっかり取れた斗真のやり取りは、端から見れば割と何時も通りの漫才である。

 側に立つアルマの顔が曇っている事を除けばと註釈が付くが。

 

 (………やはり、トーマさんからは既にワンダーコンボを使った疲労が抜けている。アンジェリカさんから治癒魔法を受けたとは言え、ワンダーライドブック三冊分の疲労は並の物では無いはずなのに………)

 

 これがレオナが言っていた斗真と己の差なのかと1人沈痛に浸る。

 そんな自由騎士の胸中なぞとは関係なく、遂に力尽きたエレンはレオナによってまるでゴミ袋でも放るかの様に軽々投げられ、リベラシオンの中へと消えていった。断末魔は憶えていろクソババアである。

 

 「さて、あのバカ弟子があの中で体力を回復するのはかなりの時間有するでしょうから、今の内に斗真達にも説明しときましょうか」

 一仕事終えたOLみたいに清々しい顔でレオナが2人に向き直る。

 

 「アルマ坊やは知っているだろうけど、この中(リベラシオン)は此処とは時間の流れが違う…バカ弟子曰く精神と時の部屋みたいなもんね。そこでバカ弟子とアンタら2人にはアタシが直々に徹底して鍛えてあげる、咽び喜んで頭を垂れても良いわよ?」

 

 (う~ん…何と言うか…ホント、弟子が弟子なら師匠も師匠なんだなぁ)

 一見して20代後半程度の外見の美女が自信満々とふんぞり返る様は画にはなるが、言動が逐一高飛車感溢れている。それでいて偶に実年齢相応に染々とした科白まで吐く物だから斗真としても対応に困る。

 劉玄が穏やかだった分、余計に破天荒を絵に描いたこの女傑のノリが調子を狂わせるのだ。とは言え──。

 

 「確かに、ソードライバーを扱った先達から学べるなら心強い事この上無いですし、咽び喜ぶとまでは行きませんが、どうかご指導ご鞭撻宜しくお願いします」

 レオナに対して深々お辞儀をして応える。

 

 「っふ…!素直!今の、ウチのクソ弟子だったら悪態の一つくらい吐いてた所よ…。ヤバい涙でそ…ンン!で?アルマ、アンタはどうする?」

 

 「勿論、僕もお願いします。このままでは家名に恥じる己になってしまう。それは国の為にも世界の為にも避けたい」

 続けて心情を僅かばかり吐露しながらアルマも深く頭を下げる。

 

 「っぁ~!真面目かっ!!アンタ肩肘張りすぎなのよ。疲れない?それ?まぁ良いわ、どっちにしろ元から拒否権は無かったけど、一応建前は必要だから言った訳だし」

 

 (この人も結構適当だなぁー!?)

 フィレンツェの剣士は皆この様な人種ばかりなのかと不安に駆られる斗真、そんな風に思っている内に、背後に回ったレオナに背中を強く押されアルマ共々リベラシオンの空間に消えて往く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━ウェールランド首都・ブリストル━

 

 この世界で最も魔法が発展している国、その中心となる王族が城を構える首都ブリストルの一角に()()()()()()()

 

 「………王都に足を運んではみましたがぁ、やはり此処に私が求めている物は有りませんでしたか。

 となると、レジエル、ズオスの元に参じるべきなのでしょうが…共に居る剣士、カリバーの行動が解せない」

 下唇の下に人差し指の背中を当てながら街の喧騒に紛れる程度の声量で溢す、長身痩躯で左側のみ1房長々伸ばした長髪を垂らす耳の側で外にハネる短髪、身に纏う衣服は釦で前までキッチリ止めた足下にまで届く程のコート。

 一見すれば穏やかで人の良さそうな顔立ちをした青年はしかし瞳の奥底が昏く光る。

 

 「一度、カリバー個人に接触する必要がありますねぇ」

 ブランクライドブックを空いた右手で弄びながら城を見上げる。

 

 「鍵を握るのは、やはり結界に覆われたあの街。となれば一先ずは、彼等の謀略に乗るとしましょう。その為にもこの世界を改めて知らなくてはね…」

 行き交う人波の中、空の雲が太陽の光を一瞬遮った瞬間に青年の姿は既に其所には無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━リベラシオン━

 

 「グ、グ、グ…ぅぅう、オノレぇクソババアぁ。ゼッテェ~いつかやり返しちゃる」

 

 「その様で凄んでもなぁ」

 

 「説得力がありませんね…」

 

 弱々しく吠えるエレンを見下ろしながら斗真とアルマは嘆息する。

 

 「クソォ…お前ら何で平気なんだよズルいぞクソッタレ」

 地べたに突っ伏したまま、声だけ怨めしそうに出すプリン頭。

 

 「って言われても、俺にはこの場所ちょっと怠いかなぁ…程度にしか感じないし」

 

 「確かに少し疲れが襲ってきますが、そんな無様を晒す状態になる程では……」

 

 「クソッ、体力バカどもめ!無駄にアクティビティな自慢かコノヤロウ」

 必死の力で俯せから仰向けに体勢を変えてエレンが悪態を吐く。

 

 「あー、まぁほら、さっきまで関節極められてたし、その前には思っいっ切り蹴っ飛ばされてたからその辺のダメージが残ってたんじゃないか?」

 

 「うーんそれだけがこの有り様の理由なんでしょうか?」

 

 辺り一面黒い果ての無い空間でうんうん唸る2人とぼやき続ける1人。

 ややあって彼等の背後の空間が人1人分通れる程度の白い光に溢れる。

 

 「お待っとさん。修行を始めるわよ!」

 

 光の中から颯爽と現れたレオナは3人の足下(約1名頭上であるが)に片手剣型の模造刀を放る。

 心なしか各々の聖剣に形が似ている。

 

 「これは?」

 

 「見ての通り…ってか感じての通り、この部屋には負荷が掛かっているワケじゃない?……結構平気そうね」

 仰向けの弟子は兎も角として、斗真、アルマが思ったより平気そうで拍子抜けした顔になる。

 

 「バカ弟子ちょっと……アルマはともかく斗真は剣士になってまだまだ半月行くか行かないかくらいでしょ?何なの?今の若い子ってみんなああな訳?斗真って元は小説家でしょう?恐いわー」

 

 「あの小説家は見た目に反してバイタリティ高いぞクソババア。アルマはまぁアイツ真面目だし別にしても世の中不公平だ」

 

 「「??」」

 師弟で内緒話を交えて、斗真達をチラ見すると件の2人はハテナとクエスチョンを浮かべている。更に言えば、斗真は疑問符を浮かべつつも何だかんだ師弟の仲は良いんだなとか思っていたりする。

 

 「まぁもやし弟子は後で叩き起こすとして、2人共普通に平気みたいだから予定を繰上げて行きましょうか!」

 言って、肩に下げていたバッグを下ろし、中の物を取り出す。

 

 「ここに取り出したるはリベラシオン内で装着すると使用者に更なる負荷を掛けるウェイトバンド諸々!あ、製作者は兄ワルドね。

 ホントはアンタ達が普段の負荷状態に一定以上慣れてから使う気だったんだけど、アタシの予想以上に元気だったから初日から使う事にしたわ!」

 

 さぁ巻きなさいなと宣って重量を感じさせるソレを投げて寄越す。

 

 「っ…危なっ!?」

 

 「!…はい!」

 

 片や避ける斗真、そして受け取るアルマ。

 

 避けた斗真はウェイトがガシャリと落ちる音を耳にし、受け取めたアルマはその重さにつんのめる。

 そう、つんのめる。先の傷が癒えたアルマの鍛え上げられた生身を以てしても姿()()()()()()()()。斗真が避けた側のウェイトと全く同じ形でありながら。

 

 「お、重い…!?トーマさんの物と同じ筈なのに?!落ちた音に比べて()()()()!!」

 

 実際に耳にした音から想定される物より重いと自由騎士は言葉を絞り出す。

 

 「ソレは特別製らしくて、予めある魔法の魔力を込めた輝砂を練り込んで製鉄された物で、現役の剣士が持つないし身に付けると重量が増加する代物だそうよ」

 要するに触っただけでウェイトに込められた魔法が発揮されるのである。

 

 「んな危ねぇモン投げんなクソババア!!」

 

 「だから一番軽そうな腕に装着するのを投げたんでしょうが。あ、アンタにはこっち」

 そう言って、2人に投げ渡した物よりも小さいリストバンド大のウェイトをエレンの腹に置く。

 

 「オゴォォォオオオ…!?ご、ゴゴゴ?!デベヂグジョヴゴロズゥゥゥウ!!」

 

 「なぁに言ってんのか全然解らん。とにかくまずはソレを利き手に着けて、後の残りを此処に置いたカバンの中から取り出して装着しなさい、それがファーストステップ。バカ弟子は第一段階はソレ1つで許しちゃるからさっさと着けろ」

 

 こうして稲妻の女傑指導の下、3人の修行が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院・理事長室━

 

 医務室での騒動の後、生徒達を解散させ執務に戻ったクロエ。切り良く仕事を片付け、応接用のソファに行儀良く着席するオルガとクロエと共に彼女から話を聴く為に同行し茶を啜っていた劉玄に視線を飛ばす。

 

 「ふぅ……取り敢えずは斗真ちゃん達は暫くレオナに任せるしかないとして。オルガちゃんよ、いい加減話してくれるかい?まさか本当に治療の為だけにレオナに付いて来た訳じゃああるまい?」

 

 「ふふ、美味でございました。それで……レオナさまに同行した理由でしたわね。ええ勿論治療の為だけではございませんわ。

 あのイサナさまとマスターさまが関心を向ける方にわたくしもとても興味が湧いておりましたの!!」

 優雅に両の手を合わせて笑顔で語るオルガ。しかし劉玄とクロエは逆に拍子抜けした表情になる。

 

 「んん?それだけかい?」

 

 「はい」

 

 「なんかこう……もうちょっと他にないかい?」

 

 「はて?他にと仰いますと…?」

 

 「本当にご自身の興味による好奇心だけでレオナ女史に同行したんですか…」

 

 (う~ん、この娘こんなんだったか?昔はもうちょっとキレたナイフみたいな性格してた気がするんだけど………いやそもそもプライベートとかで彼女と個人的に話す機会はそんな無かったか、大体見かける時はいつも国家代表議会で進行役してる時だけだったし…)

 オルガへのアテが外れ、片眉を下げつつも過去彼女との交友時期を思い返して、そう言えば私的に会話した回数は数える程も無かったと思い至る。

 劉玄にしろクロエにしろ、オルガの顔を見る機会は、組織の本拠地で行われる国家間会議だけであったからだ。

 

 「好奇心は大事ですわ。時には活き過ぎれば猫さんも殺めてしまいますけれど、かと言って無関心であり続ける事は人を人足らしめる物を殺してしまいますもの」

 カップの淵を指で艶かしくなぞりながら柔和に微笑む。

 

 「そんな嬉しそうに言われてもなぁ」

 「詰まる所、オルガ女史の当学院への来訪に組織の意図や政治的な含みは無い……と?」

 

 「わたくし政治闘争はあまり好みませんの。大病院時代に嫌と言う程目にしましたから」

 目が隠れている方の頬に手を当てながら息をそっと吐く。

 

 「となると、カリバーの件も訊くだけ無駄か」

 軽く握った拳で額を数回叩き、困った顔を作る。オルガが何らかの情報を持っていると践んでいたアテが外れたからだ。

 

 「かりばー……ああ、そう言えば。関係があるのかは判りかねますが、以前現れたメギドズオスの復活には件のカリバーが関わっているのではという報告が挙がっておりましたの」

 

 「そう言うのは先に言おうねぇぇえええ!?」

 

 おかわりを注ぎながら、世間話の合間にふと思い出した様に気楽に言ってのけるオルガに思わず叫ぶ劉玄。

 しかし当人は何故彼が叫んでいるのか理解出来ずにそそと首を傾げるばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院・女子寮━

 

 「つまり…アンタ達は先生やアイツらが聖剣の剣士って事を知っていたってわけ?」

 

 「まぁ、有り体に言えばそう言う事になりますね」

 

 「わふ…ごめんねエミリア、おじさんたちから…知らないなら他言するもんじゃないから秘密にしてって言われてたから」

 

 「と言ってもお嬢様を除いた特別クラスの大半、先生様達が剣士であった事は知っていましたが」

 

 「ちょっとアンタは黙ってなさい!性悪メイド!!」

 

 数ある女子寮の部屋の1つ、特別クラスきってのオルケストラ人気を誇るIV KLOREの部屋にて、あるふぁとサルサから聖剣の剣士にまつわる事情を聴いていたエミリアが目端を吊り上げて従者の頭を叩く。

 

 「はぁ、でも考えてみたらそうよね。あの割りといい加減な…もとい自由人ばかりのお国柄が特徴のマルルセイユの中で例外的に真面目な自由騎士が、留学生の警護だけで学院に滞在するなんておかしな話だったし。

 リュウトの堅陣騎士についても……いくら選抜クラス所属のエリート扱いな上ユエがお姫様だからって、学院に役職付きで居座るのもおかしな話よ」

 人差し指で額を軽く圧しながら思い当たる節として有名人2人を例に出し息を吐く。

 

 「サイゾーくんたちが居座ってるのは不思議じゃなかったんだ…」

 

 「だって、このはなの関係者だし、ヤマトだし…。それにあのエレンとか言う男は傭兵なんでしょ?フィレンツァの事情までは知らないけれど、そもそもあの男を見掛ける頻度が上がったのはアイツ(先生)が来てからだもの。セドリックだったかしら、あのスミスに関してはごく稀にだけど実技場でマジックアイテムを整備してる所を見掛けた事はあったから、お抱えの整備士が週に一度のメンテか何かで来てたものだと思ってたし……」

 

 「まぁ実際には今名前が挙がった方は全員もれなく学院に住み込んでいますけどね」

 しれっと会話に復帰するあるふぁ。

 

 「何だか頭が痛くなってきたわ……。って、ちょっと待ちなさい、まさかウチの国の剣士も居るの!?」

 

 「いえ、我がドルトガルドに伝わる月闇を扱う()()()()()()()。何せ、トキカゼ氏曰く闇黒剣月闇は行方不明なそうなので」

 まぁ剣士候補は居りますが、と心中で付け加える。

 

 「そ、そう…え?ドルトガルドに伝わった聖剣が行方不明!?何よそれ!!?」

 

 「おっと……話の流れで洩らしてしまいました」

 

 「絶対わざとだ…」

 

 「嘘でしょう?ドルトガルドの象徴の1つが行方不明?と言うか…トキカゼってこの間来てた変態ヘラヘラ男よね?アイツも剣士なの?!剣士ってあんなヤツでもなれるのね……」

 

 「はい。それとお嬢様、先生様方が聖剣の剣士である事実はおいそれと他者に喧伝せぬ様にとの事です」

 

 「特段秘密にしている訳でも無いのに隠すなんて……おかしな話ね。良いわ、別に自慢する様な事でも無いし黙っておいてあげる。

 一応訊いておくけど…先生達の正体を知ならないのは誰?」

 

 「特別クラスならばティアラ様達の班を除いたオルケストラユニットを組んでいらっしゃらない方々でしょう」

 

 「メリッサとココリリたちなんかだね」

 

 「それと他クラスの方々。選抜クラスのフィオナ様でしょうか」

 

 あるふぁが挙げた意外な名にエミリアが眼を丸くする。

 

 「フィオナはsupernovaのメンバーでしょ、なのに知らないってどう言う事?」

 

 「厳密にはラウシェン氏の事はご存知でしょうが、他の剣士についてはユエ様、ミルフィーユ様共に詳細は語っていない様です」

 

 そう、フィオナだけは聖剣の剣士について詳しく知らない。劉玄に関してはユエがフィオナの押しの強さに負けて語ってしまったものの、学院内に現れる謎の紙袋の正体がエレンだとは知らないし、エレンが雷の剣士エスパーダであるという事も知らない。

 

 「エレ兄はフィオナのこと苦手だからね」

 

 「ああ……あの週に何回か見掛ける謎の紙袋との追い駆けっこ…」

 半ば名物と化した光景を思い浮かべて納得してしまう己がいるエミリア。

 

 「まあ…そう言う理由なら黙って然るべきね、風紀をアタシ自身が乱す訳にいかなしい」

 本音としては多分に面倒事が増え頭を悩ませたくないと言う心算も僅にある。

 

 「では、お嬢様も納得されたようなので、お茶に致しましょう」

 主が相応に落ち着きを見せた頃合いを見計らって、茶器を取り出す。

 ある種、最もぶれないあるふぁであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━リベラシオン━

 

 「ォォォ……し、死ぬ……」

 

 「流石にそれは大袈裟では?」

 

 修行を始め数時間、外では1分にも満たない合間となる空間の中で、エレンは一気に老け込んだと見紛う調子で声を絞り出す。

 隣で素振りを繰り返していたアルマが誇張が過ぎると苦言を呈するが、ニートを続けていた傭兵騎士は模擬刀を杖代わりに青年を恨めしく見つめる。

 

 「黙れフィジカルエリート。お前には大した事じゃなくてもオレには地獄の苦しみなんだよ」

 

 「全部自業自得では?トーマさんを見て下さい、稽古とは言えマエストロレオナ相手に良い立回りをしていますよ!」

 

 「クソぅ、そー言ゃあ野郎もフィジカル高いんだった裏切り者め……」

 

 アルマとエレンが見据える先で、剣を交える斗真とレオナ。

 ウェイトによる重心のズレと身体への負荷に顔を歪めながらも果敢に斬り込む青年に対し、打ち込まれる刃を己の模擬刀でいなし、脚を使って素早く踏込み斗真へ向け突く。

 さながらフェンシングにリペストの如く流麗な技の冴だ。

 

 「っ゛!?!」

 

 先端を潰してあるとは言え強烈な突きを喰らい呼吸が乱れ、声ならぬ声が漏れる。

 そして相対する女傑は自分が態勢を建て直す暇など与えてくれない。

 彼女は突き出した模擬刀を引き戻す事なく、中空で手離して剣が落下するより速く足で柄頭を押し出す。

 

 「かっ゛ぢゃぁっ!!?」

 再び漏れる声は最早言語らしい呈を為さず斗真は押し倒れる。

 同時に彼の身体に当たったレオナの模擬刀は肉をバネにして跳ねた所をレオナが器用に足先で受け止め、手元へと持ち直す。

 

 「クソ師匠がハナっから足使ってんのはまぁ確かに……小説家のヤツがいい線行ってるからなんだろうが…容赦ねぇなぁ」

 

 「マエストロレオナの戦闘スタイル…、始めて見ましたがエレンと似てますね。特に足癖のあたりが」

 

 「そりゃ一応師弟なんでな。まぁ足技に関しちゃオレが勝手に視て盗んだモンだが」

 

 成る程と納得して2人の戦いを見守る。最初は奮戦していた斗真だが、次第に状況は一方的になり、倒れた所を女傑は容赦なくストンピングしては斗真はそれを喰らわぬよう、ゴロゴロと転がりながら躱す。

 

 「何と言いますか……もう少し手心が有っても良いのではないでしょうか?」

 

 「ムリムリ、クソババアは兎に角身体に憶えさせるタイプだから。つーかあれでも手加減してる方だぜ?本気出したらもちっとストンプが速いからな…パッと見脚が四つ位に増えた様に見える感じ」

 

 「それは………えぇぇ…」

 アルマが思わず返答に困窮していると、レオナが持ち込みアルマ達の方に置かれていた砂時計が全て落ち切る。

 

 「よし。模擬戦闘終了!三十秒休憩して良いわよ」

 

 「…ぁぃ」

 

 斗真を見下ろす形でケロッと宣うレオナに対し、何とか呼吸を整え吐いた返事はとても小さいモノであった。

 

 「それとクソ弟子、アンタは一旦アタシ共々外に出るよ」

 

 「しゃっ!外に出たらこっちのモンよ!!」

 

 リベラシオンから出られると聞き、ガッツポーズを取るエレン。しかし彼が思う程美味しい話ではなく───

 

 「負荷から解放されたアンタの速度がどの程度上がったかを定期的に確認する為の措置な訳だけど……アンタ、このアタシ様から逃げられると本気で思ってんの?」

 ポキポキと指を鳴らして不敵なオーラを漂わせるレオナ。

 

 「フッ…んなもんやってみなきゃ分かんねぇだろ?クソ師匠」

 

 やっぱり一週回って仲良いんじゃないか?と思うようなやり取りを交わし、尚且堂々と逃げる事を肯定する辺り肝が図太い。

 互いにフッフッフッ…と不敵に嗤いながらジリジリと退がるエレンと詰めるレオナ。

 ややあってリベラシオンへの出入口が開く。

 

 「貰ったぁあっ!」

 駆け出すと言うよりは跳ぶに近い動作で開いた扉へと走るエレン。

 

 「甘いっ!」

 それを追うレオナは引き絞られた弓の如く脚を曲げたかと思えば、リベラシオン内に漂うスモークにクレーターを作りエレンの影に迫る。

 

 「は、速い!!?」

 

 (速いし凄いんだけど……その力を発揮する理由が呆れる他ないんだよなぁ)

 

 バトル物の漫画よろしく素直に驚くアルマとは対象的に、ひたすら呆れ果てて乾いた笑いを浮かべる斗真は消えた2人を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━本の間━

 

 「に、にん?!!?にゃ、にゃにごとでござるかっ!!?」

 事前にレオナに頼まれた通りに、本の間からリベラシオンへの扉を開けに来た哉慥は暗闇の中から飛び出した2つの動体物に慄く。

 

 「うぉぅぉぉおおおお!!逃げ切るっ!逃げ切ってオレは自由を手に入れるぅぅう!!」

 

 「んなに上手く行く訳ないでしょうがぁぁああっ!!」

 本当に妙齢の女性か?!と言わんばかりの強烈なアームフックを掛けエレンの左肩を強く掴む。

 

 「なんのこれしきぃぃいい!!」

 「生意気なぁぁああああ!!!」

 

 捕まりつつも尚も逃げようとするエレンと、片手の力だけで彼の肩を引っ張り引摺り倒そうとするレオナ。

 

 《Gatlin♪Gatlin♪》

 

 割りと良い感じに拮抗していた2人の緊張を破ったのは、エレンの懐から鳴り響くガトライクフォンの着信音であった。

 

 「(クッソ!?こんな時に誰だよ!!空気読めよ)ちょ、まっ、ババア!着信来ってからタンマ!一旦タンマー!!」

 

 「だが断る!」

 

 必死の懇願虚しく、エレンはレオナの手により仰向けに倒れる。

 

 「ゴホォォオッ!?!」

 

 「そぉら、さっさと出なさい。電話の向こうで相手が待ってんでしょ」

 

 「──ゴッホッ…鬼か!(鬼か!)」

 

 噎せながら悪態を吐いて懐からガトライクフォンを弱々しく取り出すエレン、画面の表示はセドリックの名。

 

 「グラサン?ちくちょうテメェの所為で───もしもし!」

 

 『ん、出たな』

 

 八つ当り気味に語調荒く通話を繋げれば、しかし聴こえて来た声は男の物ではなくややダウナー気味な少女の声。

 

 「あん?お前…ルキか?なんでオマエが」

 

 『フン、別におかしくは無いだろう。ワタシとヤツは知らん仲では無いし、このアイテムの使い方はサイゾウの件で憶えがある。しかし中々繋がらんから少々焦ったぞ』

 

 「そいつぁ悪かった。こっちも色々あんだよ…、しかしまぁ、言われてみりゃそりゃそうか。

 しかしよくムッツリグラサンがガトホ貸してくれたな?」

 

 『フッフッフッ、ワタシがヤツから素直に物を借りると思うか?当然無断借用だ!

 別に構わんだろう?なんせ工房に籠っている方が悪いんだからな!!』

 電話の向こうの声から小さな暴君が悪い笑みを称えている様が浮かぶ。

 

 「で?用件は?」

 

 『おっと、いかんいかん…キサマと会話が思いの外心地好いものだからつい忘れる所だった』

 

 「(そういうトコがノッポに地味地味言われる要因なんだよぁ…)手短に頼む」

 暗にグダグダ長話はしないと告げるエレンの言葉にルキフェルは喜色を含む声音で宣言した。

 

 

 『今すぐ我がゲーム同好会に来い!キサマに見せたい物がある!』

 

 

 TO BE Continued!

 

ニードルヘッジホッグ




 
 最近はインプットよりアウトプットが多かったから、何処かで雑学なり仕入れるべきかなぁ。

 取り敢えずデジモンサヴァイブプレイしていきたい。

 ではまた次回でお会いしましょう。
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