MasqueradeRe:Lights ~この世界では本の力を持つ仮面の騎士がいる~   作:ダグライダー

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 おはこんばんは!

 後半です!前半より長くなっちゃったよ?!
 反省点は色々ありますが、今回もまたオリジナルのメギドを登場……いや作中、突飛な事になってますけど。
 今回のオリジナルメギドも自前です。メッセージにて戴いたアイディアは後々の展開も考えて登場はまだ少し先になります。
 アイディアをくれた皆様には申し訳ありませんが今暫くお待ち下さい。

 エックスソードマンが先に来るのかぁ、プリミティブドラゴンはその次かな?



8頁 ガラクタ市のピーターファン 後編

 ━マームケステル城門前━

 

 中世建築の城門の前に不似合いなレザージャケット姿の青年が不遜な顔で立つ。

 そのまま街へ足を向け、手を伸ばせばバチッと言う甲高い音と共に肉の焼ける悪臭と煙が上がる。

 

 「成る程……これがヤツの言っていた結界、魔女め忌々しいモノを残してくれた…!」

 

 独り、己に呟く様に語る青年は周囲の人間の訝しげな視線に煩わしさを覚え、門から離れる。

 人気の無い場所へ移り、青年はタイトルも装丁も何もかもが無地の白い小さな本、【ブランクライドブック】を取り出す。

 「ふん、本来であればあの場で暴れても良いんだが……封印のブランクもある。俺が本調子で無かった事に感謝するがいい人間共!」

 誰に言うでも無く独り語ちる青年…メギド魔人レジエルの人間態がブランクライドブックに力を込める。

 「奴の言葉が本当に真実か…俺自らが試してやろう」

 不遜な態度で鼻息を吐きながらブランクの無地をアルターの黒へ変えていく。

 完成したアルターライドブックのタイトルは"ラタ&スク"。

 レジエルは青年の姿のまま城壁の上に飛び乗る。結界に触れるか触れないかギリギリの場所に器用に立ち、右手にアルターライドブックを握り締め、左手で再び結界に触れる。

 

 「ヌゥン!!

 

 左抜き手で結界を貫く。即座に修復しようとする力が働くがレジエルはそれを無視して無理矢理穴を押し広げる。

 

 「ヌゥゥゥゥッアアァッ!

 

 丁度、もう拳1つ入りそうな大きさに広がった所にアルターライドブックを掴む右手を差し込み、指を器用に動かし表紙を開く。

 結界を隔てた側の城壁屋根にアルターライドブックから現れた本が人のカタチを成そうとする。しかし、重なった本は四散し脚を構成した1冊分が残るのみ。

 

 「っ…ちっ!奴が言っていたのは()()()、確かに面倒だな」

 穴からアルターライドブックを握った右手を抜き、結界から左手をも離し焼かれた掌を再生させる。

 そうして彼は邪剣の剣士の言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 「結界…だと?」

 外からの光をカーテンで遮り、蝋燭の光のみで充たされた部屋の中でレジエルはローブの人物に聞き返す。

 「ああ、魔獣を阻み、メギドを拒む。貴殿であっても無理な侵入をすれば只ではすまない……そして、よしんば侵入出来たとして生み出されたメギドは街の半分もワンダーワールドに取り込む事が出来ぬ

 講釈を述べながら部屋の中にある本棚へ歩みを進める。

 「まるで見てきた様に……いや、既に実証済みという訳か」

 せせら笑う様にローブの人物へ返すレジエル。

 目的のモノを探す為であろうフードを外す、ローブの人物のくぐもった声がクリアになる。

 「嘗ての戦いの折…貴殿達が魔獣と共に大暴れしてくれたからな」

 目的の本を見付けたのか、棚から取り出し表紙を軽く拭う。

 「この世界に伝わる魔女と剣士の物語。その原典として記された伝記だ、軽く眼を通すと良い」

 再びフードを被り、本をレジエルが座る机に放り投げる。その言葉に眉をひそめながら言われた通り本を手に取りパラパラと捲る。

 「……………ふん、この世界の人間共は俺達と魔獣を一緒くたにした訳か…」

 「貴殿達がこの世界に現れ暴れていた時、魔獣を利用していただろう。故に貴殿等の存在を知るのは最前線で戦った初代剣士達を除けば暁の魔女のみ……。その著者はメギドを知らぬか、或いは敢えて記さずにいたのか、故にこの世界でメギドを知るのは聖剣の剣士とそれに連なる一族、各国家元首、そして"Ray"だけだ

 フードの人物が最後に口にした聞き覚えのない単語にレジエルは疑問を抱く。

 「レイ?何だそれは」

 「魔女だ。飛びきり優秀な五人の魔女……暁の魔女と聖剣の剣士が御伽噺へと変遷する程時を経た後に現れた、生ける神話、伝説のユニット、至高のオルケストラ。言うなれば英雄と呼べる存在

 レジエルの疑問にフードの人物は"Ray"という存在がどの様なモノなのか答える。

 「魔女…また魔女か、この世界に降り立って真っ先に邪魔をしてくれた存在がまた立ちはだかるか…魔女が……あの女が小癪にもしぶとく抵抗してくれた為に貴様等剣士が我々を追ってこの世界に来たのだと思うと、本当に忌々しい」

 遥か昔に受けた苦渋を思い出し呪詛を吐き捨てるレジエル。

 「初代剣士達か、それに関してはワタシに当たられても困る。それに、ワタシは連中からすれば裏切り者…まぁ、今の剣士達にワタシを知る者がどれ程残っているかは知らぬが…

 

 「それで?ならばそのマームケステルとや、どう攻略する気だ?」

 

 「何、そう難しい事では無い。マームケステル周辺の領地をワンダーワールドに取り込んでしまうのだ。それが巡り巡って、あの街の結界に影響を及ぼす

 

 「ふん…成る程、しかしあの街に拘る理由は何だ?」

 

  「あの街…いや、あの地こそ来訪者──初代、聖剣の剣士達が降り立った地。そして今に至り再び聖剣の集う地。それ故に目次録へと至る扉を開くに適している

 ローブの人物が腕を広げ大仰に語る。レジエルは得心し難いものの、理屈は理解したとばかりに頷く。

 「良いだろう。計画の為にも貴様の指示にある程度は従おう。が、果たして結界とやらが本当にそれ程の力があるのか、己が目で確かめない事にはな」

 

 「それで貴殿が納得すると言うなら…好きにすると良い。ワタシは精々貴殿のお手並みを拝見するとしよう

 

 「その言葉、忘れるなよ?もし件の街を俺が陥落させた暁にはそれ以降の計画は俺に主導させて貰う」

 ローブの人物の言葉に言質は取ったと立ち上がり、部屋を後にするレジエル。

 独り、暗澹たる部屋に残ったローブの人物は呟く。

 

  「エリザ……君はワタシが…

 万感の想いを込めたその声は誰に届くでも無く霧散した──

 

 

 

 

 

 

 

 マームケステルに来る直前に交わしたやり取りを思い返しながらレジエルは結界の内にポツンと残った本を見詰める。

 レジエルは知らぬ事だが、先日、マームケステルではsupernovaによるオルケストラの影響で結界の強度が上がっている。そしてフードの人物はそれを知っていながら敢えて黙っていたのだ。

 「チッ…認めたくは無いが、カリバーの言っていた事は事実のようだな。覚醒めて間もないとは言え、小さな穴一つ空けるだけでここまで疲弊しようとは……」

 結界越しに街を眺めながら傲慢な顔を不服そうに歪めるレジエル。その時、結界側の城壁の屋根に放置された本が動き出し、小さな靄の様な姿を作り出す。

 

 「何……?」

 

 カタカタと震えた後、小さな靄は栗鼠に竜の様な特徴を加えた姿となる。

 「小さい……不完全ながら顕現したのか?だがワンダーワールドへと至る異界が開かない。これでは使い物にならん」

 本来であれば人間大であって然るべき魔人が小動物同然の姿ではワンダーワールドに繋がる異界に変化させる事は出来ない。

 これは、外から無理矢理結界に干渉してアルターライドブックを開いた為とレジエルはローブの人物からの言葉と併せてそう結論付ける。

 事実、ローブの人物がマームケステル内でアラクネメギドを召喚した際も、異界となったのは街の5分の1程度であった。

 内側でこの結果なのだ、外からの干渉ではよりメギド自身も弱体化するのは道理である。

 「……面白く無い、しかし癪ではあるが、今はカリバーの策に従う他あるまい………」

 眼前のメギドとも言えぬ小さな姿の異形に見切りを付け、城壁から飛び降り、マームケステルを後にするレジエル。

 主の命なき出来損ないの怪物はマームケステルという名の脱出出来ぬ檻に閉じ込められ、果たす使命も無いままロランパークの方へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━ロランパーク・ガラクタ市━

 

 斗真のフローラ女学院教師就任に際し、寮生活に必用なモノを安く買う為、ガラクタ市へと来た斗真含む4人の剣士。

 彼等は其所で特別クラスの生徒、リネットとラヴィに遭遇し、ラヴィの案で他のメンバー…ティアラ、ロゼッタ、アシュレイを捜索するついでに共にガラクタ市を巡る事となる。

 途中、出店の中で見付けたマジックアイテムの大手ベリー社のテントにて遭遇した、これまた特別クラスの生徒──メアリーベリーにエレンの後押しを受け自らのスマホを預け、この世界でも使用出来る様にと頼み込む。

 そして先に行ったラヴィ達をエレンと共に追えば、アシュレイが合流しており、ラヴィと口論を激しく交わしたかと思えば取っ組み合いに発展していたのだった。

 

 「だーかーらー!なんでリッちゃんを探しに行ってアシュレイがヌイグルミに夢中になってるのさ!」

 

 「む、夢中になどなっていない!ただ、ちょっと…本の少し…気になっただけだ!!」

 

 互いの手を組み、腕押しの状態になっている2人。

 アシュレイの方が背が高いので若干押している様にも見える。

 そして2人が姦しく騒げば当然周囲の衆人環視の注目を集める訳で、斗真は他人様の迷惑にこれ以上発展しないよう2人の諍いを止めに入る。

 因みに同行者3名の内2名は面白がって暫く止める気は無い。

 アルマは面白がってこそいないが、取り敢えず斗真に期待し一任する気らしい。

 

 「二人共、その辺に…!他の人達も見てるから!」

 果たして異世界でセクハラの概念があるか怪しいが、来訪者が多く存在する世界なので法は兎も角、言葉くらいはあるのかもしれない。

 そうでなくても年頃の娘さん2人に不用意に触れるのはどんなものかと思う斗真は取り敢えず、一先ずは言葉で諭そうとラヴィとアシュレイの取っ組み合いの最中に近付く。

 一応、2人の友人であるリネットの方へ視線をチラリと寄越せば、何時の間にか本に夢中で此方の事は目に入っていない。

 助力は望めない、なので新任教師は独力でどうにかするしかないのだ。

 「先生はどう思う!!?」

 「え?いや、まぁアシュレイさんも悪気があった訳ではないし…」

 「教官……!教官もこう仰っている、お前ももう少し寛大になれ」

 我が意を得たり、斗真の言葉により意気揚々となるアシュレイ。

 ラヴィはぐぬぬと歯軋りする。

 「で、でもラヴィちゃんがお冠になるのも分かるよ?アシュレイさんも少しは節度を持たないと……」

 「そ…それは確かに……」

 「ほらぁ!先生だってこう言ってるじゃん!せっとーを持てー!」

 とは言えラヴィの言い分も理解出来るのでアシュレイにも忠告すると、流石に罪悪感があるのか尻すぼみになる純紫のポニーテール。それを好機と見た金髪ツーサイドはここぞとばかりにアシュレイを責める。因みに本人的には節度と言いたかったのだろうがおバカな頭ではこれが限界である。

 なるべく角を立てぬ様に互いの顔を立てつつ諌めればどちらかがマウントを取るので結局取っ組み合いが再開するのだ。

 

 「くくっ……斗真ちゃんもこれから大へ……ん?」

 

 他人事目線で微笑ましく見守っていた劉玄が何かに気付く。

 

 「あ、あの…先生!こ…「斗真ちゃん、アルマ、後エレン!」あぅ…」

 

 本に夢中になっていたリネットが何かを見付け斗真に声を掛けようとしたタイミングで劉玄から剣士達に声を荒げて呼ぶ。少女の声は剛剣の騎士の轟声に掻き消されてしまう。

 

 「何だよオッサン、声デケェ!」

 「何事ですか?!」

 「陳さん?」

 

 3人が劉玄に視線を向ける。当人は周囲の観衆に道を空けるように謝罪しながら大地に耳を付ける。

 「足音…小さい……小動物?だがこの気配……かなりか細いが…メギド…こっちに近づいてる…?」

 そのまま大地に伏せた状態でブツブツと声を溢す。

 「場所は……あっちか!みんな着いてこい!」

 見当を付けた方向に顔を上げ巨体が駆け出す、同輩に後を追うように指示し劉玄は人波を割っていく。

 

 「……今、メギドって」

 「言ったな、普通はありえねぇが」

 「ですが、以前この街にメギドが出現しました。それは少なくともメギドに協力している人間が居ると言う事です」

 剣士達が互いに顔を合わせ頷けば3人も先行した巨体を追う為に駆け出す。

 「ごめん!ラヴィちゃんリネットちゃん、アシュレイさん!ちょっと急用が出来た!人探し協力出来なくてごめんね!!」

 「一先ず此処から離れて下さい!危険かもしれません!」

 「ついでだ、見掛けたら連れてきてやるから嬢ちゃん達は逃げとけ!………よく考えたらオレ要らなくね?」

 最後にエレンが一応フォローのつもりで、残るティアラとロゼッタを見付けた際、連れて来る事を公言し、ふとそこで自分が行かなくても既に劉玄と斗真、アルマと3人も剣士が現場に向かっているのだから自分は必要無いのではと思い足を緩めるも、即座にアルマから手が延び引き摺られて行った。

 

 

 

 

 「行ってしまったな……どうしたリネット?」

 アシュレイがポカンとした顔で男達を見送って呆然としていると、リネットが隣で所在なさげに手を中途半端に上げた手を引っ込めるのに気付く。

 「あ…その……実は…」

 アシュレイの問い掛けにリネットはすぐ側の小さな本屋の露店から何時の間にか購入していた小さな本ワンダーライドブック【ピーターファンタジスタ】を握っていた。

 「何それ?ってか先生達、ドコに行ったんだろ?」

 ラヴィはリネットが持つ覚えの無い本に目をパチクリと瞬きさせ、消えた彼等の行方を見る。

 「多分ですけど……戦いに向かったんだと、思います…」

 斗真と共にワンダーワールドに取り込まれた経験からリネットが心当りを口にする。

 「何?どういう事だ!?」

 「……私、先生達の後を追います!きっとこの本が必要になると思うんです!」

 言うが早いや、リネットは見えなくなった彼等を追い掛け始める。

 「えっ!?ちょ、リッちゃーーーーん」

 「リネットのヤツ、えらく真剣だったが……まさか本当に…?」

 ラヴィの静止も聞かず拙く走り去るリネットにアシュレイはまさかと思案する。

 「何やってんのさアシュレイ!リッちゃんを追わなきゃ!!」

 しかし思考に没頭しようとした彼女をラヴィが足踏みしながら妨害しリネットを指差す。

 「あ、ああ…そうだな!待てリネット!私達も行くぞ!」

 ラヴィと合わせ慌ててリネットの後を追うアシュレイ、紫のポニーテールと金のロップイヤーが風を切る。

 

 

 

 

 

 「はひぃ……はひぃ……ひぃ…」

 

 「リネット……」

 

 「リッちゃん…イノイチバンに駆けてったのに……」

 

 元々体力が無いリネットは数分としない内に人の波に揉まれ体力切れでバテていた。

 逆に運動の得意な2人にあっさり追い付かれ追い越されている有り様である。

 途もあれ、3人は元気にガラクタ市の道が交差する十字の中央に差し掛かると展望エリア側に向かう道辺りにガタイの良い長身を見掛ける。よく見ると紅い髪と蒼い髪の少女も居る。

 

 「さっきのオジサン!それにティアちゃん、ロゼちゃん!ってことはアソコに先生もいる!」

 ピョンピョン跳ねながら目立つ長身を見付けたラヴィが声を挙げる。

 「まさかティアラ達も見つかるとは、兎に角急ぐぞ!」

 「おー!いっせーにちょーだー!」

 アシュレイが音頭を取るとラヴィが同調しリネットの手を取る。因みに一石二鳥だ。

 

 

 

 

 

 そして件の斗真達は──

 

 「本当にメギドなのかよ?」

 植物を販売する大規模の露店のテントと対岸に花瓶や壺等の陶器類、ランプや照明等の灯火商品を販売するテントの間に他者の注目を集めながらエレンはその視線を鬱陶しそうにしながら劉玄に訊ねる。

 「う~ん実は…良く判らんのよ、大地から伝わる震動に人間とも普通の動物とも違う邪気を含んだナニかをかんじたんだけどね……どうにも気配…というか存在が小さいと言うか虚ろと言うか……」

 エレンに問われた劉玄は顎に手を充て首を捻る。

 

 「陳さん…あんな事言ってるけど……実際どうなの?」

 片や斗真はアルマに劉玄の感じた気配とやらの是否、正確性を訊ねている。

 「大地の聖剣に選ばれたのは伊達じゃありません。ラウシェンさんはリュウトでの修行により大地の気から伝わる震動を頼りに邪なモノを感知出来るそうです。ましてマームケステルは結界によって魔獣やメギドを阻みますから、もし侵入したと言うなら信憑性は高いです」

 自分が知る大先輩の技能を斗真に語るアルマ。

 蒼い騎士は邪なモノを感知すると語ったが、正確には人間以外の邪なモノを感知出来るが正しい。

 「いや…オッサンのは修行の成果ってより剣を──」

 「コラコラ、折角信じてくれてる純粋な若人の夢を壊しなさんな!」

 「マジで騙してんのかよ、クソだなオッサン」

 「騙してるとは失礼な、感知出来てるのは事実よ?まぁそれもこれもリュウトの聖剣が()()()()()()()()()()()()

 等と語り合っていると横合いで困惑しているロゼッタが口火を開く。

 「あの…一体何があったんですか?」

 ティアラの左手をしっかり握りながら空いた自身の開くを胸に置き、不安を押し込め青年達に何が起きているのかを訊ねる。

 その時である──

 

 「な、なんだぁ!!?」

 植物を販売しているテントから店員の声が挙がり、皆揃って其方へ注目が行く。

 其所では何やら小さな影が右へ左へ、商品棚の上に載ったかと思えば、人の足下をスルスルと駆け抜けている。

 

 「っ!あれだ!!?

 劉玄が再び声を挙げる。

 すかさずアルマが流水を抜き小さな影に斬り掛かる。

 「ぜあっ!」

 しかし影はその小さな体躯を活かしスルリと躱すではないか。

 「ちょ!?アルマくん!?」

 問答無用に抜刀し正体不明の影に斬り掛かったアルマに斗真は目が飛び出さんばかりに驚く。

 「っチッ、あのバカ…あんだけオレに講釈たれといて自分はいざとなったら容赦無しかよ!しゃあねぇ!」

 そう言って悪態を吐くエレンが手元から取り出したのは黄金の本。

 

 

『ランプドアランジーナ』

 

 ライドスペルが本のタイトルを告げる。

 

 「こういう使い方は想定してないが……ま、出来んだろ、ランプの魔神なら」

 表紙を指で弾き開く。

 

 

『とある異国の地に伝わる──「今はそういうのはいい!」

 

 開かれた途端読み上げられるランプドアランジーナの概要のライドスペルを無残に切って捨てるエレン、その言葉を聞き届けたのか不承不承ながら宙を舞う絨毯と黄金のランプが飛び出す。

 絨毯に乗ったランプが金色の煙は吐き出しながら周辺の人を遠ざける。

 「わっぷっ!?」

 「何も見えませんーーー?!」

 「ええい!小癪な!」

 しかし、ティアラとロゼッタだけはその場に留まり、果ては斗真達を追い掛けて来たラヴィ、アシュレイ、リネットまでもが新たに乱入する。

 「あぁっんん?!なんで嬢ちゃん達が残ってやがる?!あー、もう面倒クセェ!後は任せた小説家!真面目ちゃん!オッサン!」

 考えても理由が解らないので丸投げして3人に託したエレンは不貞腐れてランプドアランジーナを仕舞う。

 

 「エレン!貴方も戦うんです!」

 

 「知るか!剣は持ってきてねぇんだよ!オレはオッサンとは違うの!!ってかオッサンも持ってはいないだろうが!!!」

 

 「なっ!?剣士たるもの常如何なる時も聖剣を身に付けておくものですよ!と言うか、ラウシェンさんも持ってないとはどういう事ですか!!?」

 

 「ゴメンねぇ、オジさん基本引退する心積りだから…」

 

 「オレはお前らにムリヤリ引っ張られて来たヒッキーだぞ!そんな状況で持ってる訳ねぇだろうが!オッサンはアレすりゃ戦えんだろうが!!

 

 アルマの抗議にエレンがまさかの答えを返したので剣士の心得を説き、この場の最年長すら聖剣を持ち合わせていない事を嘆く。

 対し当人達は其々、引退と引き隠りを理由に不可抗力だと返す。

 

 「兎に角オジさんも加勢はムリかな。素早い上に小さいんじゃオジさんは邪魔でしょ?取り敢えず斗真ちゃんとアルマのサポートはするから頑張って!」

 

 敵の特殊な状態も相まって、劉玄は徹底して居場所の探知なりに精力する心算で戦線に加わる事を辞退する。

 

 「くっ…仕方ありません!トーマさん!」

 

 「ああ、うん、取り敢えず俺達が何とかしよう!」

 

 生徒の手前もお構い無しに斗真とアルマは腰にソードライバーを充て、其々のワンダーライドブックを取り出し、そのまま挿入し叫ぶ。

 

 

「「変身!!」」

 

 

『ブレェイブドラッゴォォォン!』

 

 

 

『ライオンッ戦記ィ!』

 

 ライドスペル省略での変身にて即座に姿を赤と青の仮面の剣士へと変える2人。

 当然、それを目撃した5人の少女は瞠目する。

 

 「えっ?!えっ!?先生が真っ赤っか仮面になっちゃったよ!?」

 

 「もう一人は青い…あれは剣士か?!」

 

 「やっぱり…あの時の事、幻なんかじゃなかったんだ……」

 

 「もしかしてお伽噺の伝説に出てくる仮面の剣士なの?!」

 

 「先生だけじゃなかったんですね…!」

 

 ラヴィが頓珍漢な事を口走り、アシュレイは初めて見る仮面の剣士の姿に興奮気味になり、ティアラはあの時ワンダーワールドに飛ばされた事が夢幻でなかった事実を噛み締め、ロゼッタは混乱する頭で物語の空想が現実であった事に驚きを顕にしている。

 そしてリネットはもう1人、仮面の剣士が居た事に驚愕していた。

 

 「変身したは良いけど…!相手が小さい上にすばしっこいから結局、やりずらい!!」

 斗真は烈火を振り回しながらもなるべく商品に気を遣い、思うように戦えない事を歯噛みする。

 「それも理由としてはありますが、そもそもこんなメギドは見た事が無いです!」

 アルマも同様に苦戦している様だ。

 

 「斗真ちゃん、アルマ!落ち着け!まずは進路を限定するんだ!」

 劉玄が檄を飛ばす。

 「っても小さすぎだろ。おい、嬢ちゃん達の誰か何か都合良く捕まえられるような魔法無いか?」

 見かねたエレンが少女達に助力を乞う。

 「えっ!?そんなのいきなり言われても…」

 ラヴィが答えにどもる。

 「ま、任せて下さい!」

 しかしリネットが腰に下げた革張りのポーチから魔導書を取り出してページをパラパラ捲る。

 「…!ありました!これなら……!!」

 魔導書を掲げ、そこに記された呪文を唱える。

 

 「我はイザベルの子、73番目の物語…彼の者に束縛を!

 

 リネットが呪文を唱え終えると本に魔方陣が表れ、方陣から飛び出した光が網目状の檻となってセイバーとブレイズに追われ追い詰められている影を捉え閉じ込める。

 「やった!」

 まさかの成功にリネットは思わずガッツポーズして喜ぶ。

 「ヒュ~♪やるじゃん本屋ちゃん」

 「まっさか、お嬢ちゃん達に助けられるとはねぇ」

 エレンと劉玄が感心したように言葉を洩らす。

 「さて、メギドらしいけど…一体どんな姿なんだ?」

 「ご拝見と致しましょう」

 セイバーとブレイズはバックルに各々の聖剣を納刀し檻に閉じ込められた影の正体を見極める為近付く。

 

 「これは!?」

 「なんと!!?」

 2人の剣士の驚嘆の声が木霊する。

 「なんだぁ?どうしたってんだよ……ハッ、マジか!?ひ…ひ、ヒャヒャヒャヒャ!!こりゃ傑作だ!」

 「うん?何だったんだい?この妙に小さい邪気の正体……はー、こりゃ小さい訳だ…!」

 そんな2人の間に割って入るエレンと劉玄、エレンはその正体がツボに入ったのか馬鹿の様に笑い転げ、劉玄は違和感の正体に納得する。

 少女達も何故、エレンが笑っているのかが分からず、恐る恐る4人の周りに近付き、光の檻に目を向ける。

 

 「え……可愛い!」

 ラヴィが思わず呟いた。

 檻の中に囚われた影の正体は栗鼠らしき小動物。但し、竜の角らしき部位と鱗、爪が生えている。

 栗鼠はキィキィ啼き喚きながら檻を掴んではチョロチョロと動いている。

 

 「うーん…これは……彼女達の手前、斬りずらいなぁ」

 仮面の口許をポリポリ掻きながらセイバーは困ったように唸る。

 「見た目に騙されてはいけません!どんな姿であろうとメギドはメギドです!放って置く事は出来ません!」

 アルマは厳しく叱責し檻の中の栗鼠竜を警戒する。

 「つっても、檻に閉じ込めたは良いが、結構スペースあんのかチョロくさ動き回ってんな。これ下手に斬ったらそっから逃げ出さね?」

 エレンは檻の中を駆け回ったり唸ったりしている栗鼠竜を観察しながら懸念を呟く。

 「確かに。こういう時に奴さんがマームケステルに居てくれたら楽なんだが……」

 劉玄が何某かの人物を頭に思い描きながら腕を組む。

 「なんの!モノは試しです!トーマさん!」

 「え、あ、うん」

 セイバーに声を掛け、共々檻に近付くブレイズ、何事かを指示し、セイバーと共にしゃがむと檻の隙間から剣を黒ひげよろしく突き刺し始める。

 

 「えいっ!」 「とりゃ!」 「なんの!」 「こなくそ!」 「finish!」 「喰らえ!」

 

 互いに隙間から刺しては引いて、刺しては引いてを繰り返すが、栗鼠竜は器用に凡て躱してしまう。

 

 「うーん何か手は無いもんかね?」

 劉玄が間抜けな絵面を眺めながら考えていると隣から視線を感じる。

 「うん?何か用かなリネットお嬢ちゃん?」

 視線の主はリネット。彼女はおずおずと劉玄に自らの手に握ったとあるモノを差し出す。

 「あの…先生達が姿を変えた衝撃で忘れてたんですが……これ、使えませんでしょうか…?」

 「こいつぁ…!?お嬢ちゃん!コレを何処で!!?」

 目にしたモノの正体に驚き、筋肉質な腕でリネットの肩をガッシリ掴む劉玄。

 「ひっ!?……あ、あの……痛いです、離して…

 いきなり眼前にドアップする厳つい顔に怯えすくむリネット、一瞬少女が何に怯えたのか解らず考えるも即座に己の事かと理解して手を離す。

 「スマンスマン、恐がらせた様で申し訳ないのよ、しかしリネットお嬢ちゃんが持ってんのは確かにオジさん達にとっては重要なモノだよ」

 「やっぱり…そうなんですね」

 ピーターファンタジスタを持った手ともう一方の手を豊かな胸の前で重ね何事かを思うリネット。

 「でしたらコレをお返しします。先生達のお力になるんですよね!?」

 再びワンダーライドブックを差し出した彼女、その顔を見てエレンが口を開く。

 「別にオレらに渡さなくても、あそこで間抜けしてる小説家達に投げ渡せば良いだろ?」

 

 「えっ?!で、でも私…運動には自信が無くて……」

 

 「大丈夫、オジさん達はみんな鍛えてるから!あっちで何とか受け止めるさ!斗真ちゃんは知らんけど

 

 聖剣の剣士は常人よりも身体能力が高い、だから下手くそに投げても大丈夫と少女に言い聞かせる劉玄。と言っても斗真は他の剣士と違い何の備えも無く剣士になったので劉玄は小さな声で保証しかねると予防線を張った。

 

 「分かりました!先生ーーー!受け取ってくださいっ!!」

 

 えいっ!と可愛らしい声からセイバーに向かって投げられるコバルトブルーのワンダーライドブック。

 ブレイズが小さなメギドにムキになっている傍らでどうしたものかと思案していた紅き剣士が宙を舞うソレに気付きキャッチする。

 

 「コレは…?」

 投げ渡された新たなワンダーライドブックに困惑を顕にするセイバー、ブレイズに声を掛け用途を訊ねようとした所、エレンが声を飛ばして来る。

 

 「小説家!ソレをお前から見てバックルのスロットの左に差し込んで抜刀しろ!!」

 「あ!おい!?エレン!!?何言っちゃってんのよ?!アレはアルマに──「分かった!」あちゃぁ…」

 エレンの悪巧みに劉玄が慌てて止めに入るが、既に斗真は行動に移していた。

 

 

『ピーターファンタジスタ』

 

 ワンダーライドブックの表紙【ガードバインディング】からタイトルが読み上げられらる。

 表紙が開かれ中に描かれていた画は先鋭的なタッチの対面する妖精の少年と鉤爪の海賊。

 

 

『とある大人にならない少年が繰り広げる夢と希望のストーリー』

 

 「こいつを…左のスロットに…!」

 

 烈火を納刀し、ガードバインディングを再び閉じたピーターファンタジスタをレフトシェルフに装填する。

 

 「それで……抜刀する!!」

 

 

『烈火…抜刀!』

 

 その声と共にセイバーの背後にビジョンとしてブレイブドラゴンとピーターファンタジスタのワンダーライドブックが現れ、ページが捲られる。

 

 

『二冊の本を重ねし時、聖なる剣に力が宿る』

 

『ワンダーライダー!!』

 

『ドラゴン!ピーターファン!』

 

『二つの属性を備えし刃が研ぎ澄まされる!』

 

 セイバーの左側にワンダーライドブック同様、肩が妖精の羽と少年の顔を模したコバルトブルー装甲に、腕も同様の色となり、籠手の装甲には吊り鐘のフックが追加される。

 バックルのライドブックに描かれた画は竜の籠手を強調する仮面のシルエットと直線に伸びたフックが付いた肩から籠手にかけてののシルエット。

 その姿の名は仮面ライダーセイバードラゴンピーター。

 

 「姿が変わった?!」

 セイバーが新たな己の変化に驚く。

 

 「うそん…!」

 「はっはっー!マジで成功させやがった!しかも割りと平然そうにしてやがる!?あいつスゲエな!」

 劉玄とエレンはワンダーコンボとなったセイバーに驚愕と歓喜を溢す。

 

 「また変わったぁー!!?」

 「赤に白を挟んで青か……」

 「お伽噺の本にも仮面の剣士にこんな力があるなんて載って無かったです」

 「リネットが言うなら確かね……でもまさか先生が…!」

 「どんな力なんだろう……」

 5人の少女も新たな姿となったセイバーに瞠目する。

 

 「えっ!?と、トーマさん?!!何時の間にワンダーコンボをっ!!?え?と言うか平気なんですか!!?」

 遅れてブレイズもセイバーの変化に気付き、その身を案じる。

 「うん?まぁ、平気かな?特に身体が重いとかは無いね、それじゃ決めようか!」

 ケロッとした声音で答え、バックルのピーターファンタジスタの開かれたページをタップする。

 

 

『ピーターファンタジスタ!』

 

 左腕の鉤爪【キャプチャーフック】が同じく左腕から出現した光の玉に引き伸ばされて魔法の檻の中に侵入、栗鼠竜をグルグル巻きに拘束する。

 「なるほど……こうなるのか、なら!」

 技の結果を確認し、ならばと3度納刀、烈火のグリップのトリガーを押し引き抜く。

 

 

『必殺読破!烈火抜刀!ドラゴン!ピーターファン!二冊斬り!ファ・ファ・ファイヤー!!』

 

 キャプチャーフックから妖精が離れ、檻の周りを一周したかと思えば、光の檻が壊れること無く球状に変化、宙に浮きキャプチャーフックがリールを巻くかの如く巻き戻る。

 勿論、栗鼠竜のメギドを拘束したままでだ。

 「これでお仕舞いってね!」

 閉じ込められた上に動けぬ小さなメギドを待ち受け烈火に炎を纏わせ掬い上げる様に斬る。

 檻は断ち斬られ、キャプチャーフックに捕らわれたメギドは小さな断末魔と共に両断され燃えて灰となった。

 

 「う~ん…やっぱりちょっと可哀想だったかな?」

 

 剣を軽く振るいながら、栗鼠竜メギドであったモノが存在した焼け跡を見てセイバー──斗真は呟いた。

 

 

 「はぇ~、すんっごい」

 「あぁ……ちょっとで良いから抱いてみたかった…」

 ラヴィが感心した様に呟き、アシュレイは栗鼠竜メギドを抱けなかった事を苦心していた。

 

 「先生…いえトーマさんの急な教師就任の理由って、もしかして……」

 「理事長は先生が剣士だと知ってる?」

 ロゼッタとティアラは斗真が教師に任じられた理由に思いを巡らせる。

 

 「…………!」

 リネットは1人、込み上がる高揚と感動に目を光らせていた。

 

 

 ──この時の私達は目の前で起きた事に只々、驚き、興奮するだけでした……いえ、私達ではなく"私"…がです。"私が見付けた本が先生の力になった"そんな物語みたいな出来事に有頂天になっていたのです。

 それが先生を益々戦いに臨ませる事のキッカケになるなんて、この当時は思ってもみなかったから──

 

 

 TO BE Continued──

 




 次回にワンダーライドブックが記載されてないのは、恐らく出番が無い為です。
 
 はい、遂にエレンが何の聖剣なのか判明しました。
 何故、あの剣になったのか……それはフィレンツェと言う国名と出身の2人の名前の感じから、ドルトガルドよりはフィレンツェかなぁと思いまして、ならエレンのフルネームの苗字には連想させる鳴美の字を入れよう、となりまして!
 後、今回のライドブックから出したランプは、ほらアレです、賢人くん初登場時に空飛ぶ絨毯に乗ってたし、なら魔神のランプも出せるんじゃないかなぁと思いまして…ええ、はい。

 ではまた次回で!
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