やっぱりスキマかぁ...
太陽暦佰九拾八年 東京 北区 ――――
駅で
「本日から第八特殊消防官隊に配属されました。第三消防官、『
ニィっと口角を上げ敬礼をして自己紹介をする森羅。
「君が――」
「大隊長っ!!緊急です!さらに焰ビト出現、ここからすぐの場所です!」
「なにっ!?すぐに向かうぞ!!君も一緒に来てくれ。ただし後ろで見ているように!」
新たに出現した焰ビトの場所へ急ぐ消防隊と森羅。
薄暗い路上裏 ――――
「はぁ....私は竹炭届けに来ただけなんだけどなんでこうなるかなぁ」
「ぎぎ!!ぎゃあアアあぁぁァァ、ぐ..アアア!!!」
赤々と燃え盛る炎、それを身に纏い悲鳴にも似た声をあげる人型。『焰ビト』、ある日を境に突然世界中で人が燃え出すようになった。彼らは『第一世代』と呼ばれ人体発火現象の被害者たちである。後に炎に適合し操る力を持つ、『第二世代』『第三世代』と呼ばれる者たちも現れ始めた。第二、第三とは違い自我を失い命尽きるまで暴れる第一世代、それが『焰ビト』である。
遭遇してしまった場合すぐに安全な場所へ逃げ特殊消防隊を待つべきなのだが――――
「とりあえずこの竹炭どうしようか....」
自分よりも竹炭の心配をしていた。自分の命と竹炭を天秤にかけ計った場合この人物のなかでは 自分の命<竹炭 と、なるらしい。
そんなある意味異常な人物。人目を引く白髪ないし銀髪のロングヘアー。髪の長さはギリギリ地面につかないほど長い。瞳は燃えるような深紅の瞳。上着は白のカッターシャツ、下は瞳と同じ赤い色のもんぺのようなズボン。サスペンダーで吊られ護符のような札がいくつか貼られている。
これだけでも一度見たら忘れることはないインパクトのある人物だがそれに拍車をかけているのがその顔。どこか中性的でそれぞれ整ったパーツ、かなりの美形そして身長も平均より少し高め俗に言うイケメンというやつである。
そんな
だれがなんと言おうと彼女は女性、間違ってもお兄さんとか言ってはいけない。そんな彼女の名前は『
◆◆◆
うーむ、本当にどうしたものか。せっかく竹炭を届けにいくところだったのに厄介な奴に出会ってしまった。最近はたしか..『焰ビト』だったけか?の発生が多くなってるとか聞いたけど自分にもそれが起きるとはね。
こういうときは特殊消防隊を呼ぶべきではあるんだが....
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」
手に持った荷物を路地の影に置き焰ビトを見据える妹紅。
「そんなに苦しそうに呻かないでくれよ....そんな風にされたらいくらなんでも見過ごせないじゃないか」
もんぺの隙間に両手を突っ込みそのまま一歩も動かない。焰ビトはゆっくり一歩一歩妹紅へと近づいていく。近づくにつれて焰ビトの放つ熱波で空気が焼けるように熱くなっていく。
「焼かれる痛みはよくわかるよ、苦しいよな。でもあんたはまだ運のいい方だと思うよ。あんたを救おうとしてくれる人達がいる、家族がいるならきっと今も心配してあんたのことを思ってる。なによりも....死ぬことができる」
どこか羨ましい、そんな表情を浮かべ焰ビトを見ている妹紅。
「永遠に焼かれる痛みに苦しむことが無い分、あんたは幸運だよ。もしかしたらお互いどこかで会ったりしてたかもな....今楽にしてやるよ」
目の前まで近づいていた焰ビトの頬へ手を優しく当てる。それと同時にジュウジュウと皮膚の焼ける音が響く。だが妹紅は顔色ひとつ変えずにいる。そのまま焰ビトを自分の方へと手繰り寄せ耳元に顔を寄せる形で抱きしめる。
「ぐ、がァァァァあァァアア!!」
「ごめん..助けてやれなくて....」
妹紅がそう一言に言うと、二人を中心の天高く雲を突き抜けるほどの火柱が上がる。時間にして数秒だけだったがどこからでも確認ができるほどの火柱だった。だがそれはまるで天へと導くための道のよう、妹紅にその意思があったかは定かではないがこれは妹紅なりの優しさなのかも知れない。
火柱の上がった地面は真っ赤に光りどれだけ高温だったかが見てとれる。そこに立っているのは最初と何ら変わらぬ姿の妹紅一人だけ。焰ビトは本来コアを破壊して鎮魂をする。だが妹紅はその並外れた火力で完全に消し去ってしまった。
「........ちょっとやり過ぎたかもしれないなぁ。消防隊にも今の見えただろうしさっさとお暇しよう。説明もめんどくさいし竹炭も届けなきゃだし」
竹炭を回収してその場をあとにしようとした妹紅だったがなにかを思い出したかのように立ち止まり焰ビトのいた場所へ振り返る。
「えーと、こういうとき消防隊って何て言ってたっけ?鎮..鎮..鎮火?....あー、まあいいや。南無三」
そういい片手合掌をしてその場を去っていく妹紅。
現場から少し離れた民家。
よし、いろいろあったけど漸く目的地までたどり着けたな。こんなことがなければぱぱっと終わってたんだけど....。ここの家の人はお得意さんの一人だから私個人的には遅れたりしたくない。
....くんくん、ちょっと焦げ臭いかな?シャツも焦げてるし..聞かれたら適当に誤魔化すか。
「ごめんくださーい!なんでも屋でーす、竹炭届けに来ました」
もう何度目か分からない家の扉を開けて中へと入って挨拶する。すると、ドタドタと足音が近づいてくるのが聞こえてきた。まったく、あんまり走ると転けるっていつも言ってんのに。
「あー!妹紅の兄ちゃん!!何しに来たのー!」
「あのなぁ..兄ちゃんじゃないって何度言えば分かるんだよ。このチビッ子。それと走ると危ないっていつも言ってるだろ」
ぴょんぴょんと跳び跳ねる小学生くらいの子供。
「えー!妹紅兄ちゃんは妹紅兄ちゃんでしょ?それに女の人はもっとおっぱいあるじゃん」
「....おい、どういう意味だよそれ。それに胸で男か女か判断すんな。ほら、おばあちゃん呼んでこい竹炭持ってきたって」
「わかったー!おばあちゃん!妹紅兄ちゃんが竹炭持ってきたってぇー!」
そう言ってまた元気に走って呼びにいくチビッ子。
「だから兄ちゃんじゃないっての....さらし..外すか..」
しばらくすると奥からさっきのチビッ子とおばあちゃんがやって来た。この家はおばあちゃんとチビッ子との二人暮らし時々こうして届けるついでに様子を見に来ている。
「あらあら、いつもありがとうねぇ。なんでも屋さん」
「どうも、どうやらまだまだお元気なご様子で」
「そりゃあ、なんでも屋さんみたいな若いイケメンと会ってれば元気にもなるさね」
一緒に戻ってきたチビッ子はおばあちゃんを連れて来るとすぐに「わー!兄ちゃんじゃあねぇー!」と言って走っていった。何がそんなに楽しいのか....子供は元気だあと兄ちゃんじゃねえって。
「そりゃどうも、今後ともご贔屓によろしくお願いします。それとこの近くで焰ビトが出たらしいから気をつけて」
「それでそんなに焦げ臭いのかい?」
「ははは...ちょっとねぇ....」
んー、このおばあちゃん何気に鋭いけどなんなんだろ。まあ別にだからどうこうするって事もないんだけど。
「はぁ...それにしてもお宅のチビッ子の元気っぷりは来るたんびに増してない?最近の若いのは凄いねぇ、私にも分けて欲しいくらいだよ」
「何言ってんだい、なんでも屋さんも若いじゃない?」
「んー、そうでもないかもよ?実はおばあちゃんよりも歳上だったり」
おばあちゃんは、「あらあら冗談を」と笑っているけど実際自分よりも断然若い奴が実は歳上です何て言っても信じないしこんな感じになる。私でもそうなる、というよりも私よりも歳上ってこっちにいるのだろうか?
「それじゃあ、そろそろ行くよ。またよろしく」
そう告げてその場を後にする。
.........替えのシャツ..あったっけ?
◆◆◆
焰ビト出現の現場の路地裏。
第八特殊消防隊の一同は困惑していた。
「大隊長、これって....」
「ああ、確実に誰かの仕業だ。しかもかなりの力の持ち主の」
消防隊が到着した時には既に焰ビトの姿はなかった。だが戦闘があったのは素人が見てもすぐに分かる。
今もなお赤く光って高熱を保っている地面。真っ黒に焦げた壁面。一ヶ所だけはコンクリートさえ溶けへこんでいる。どの痕跡も一点から広がるようになっている。
「中隊長、マキ、周囲の安全を確認。周辺に聞き込み、何か見ている人がいるかも知れない」
「「了解」」
身長はプリンセス火華よりもちょい高いか同じくらい