Fate/GrandOrder 蒼眼と大罪   作:碧羅蒼天

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めっちゃくちゃ遅れました。


第一話:魔術とは何ぞや。

…目覚めた時、蒼井が目にしたのは曇天の空だった。

 

「…もはや、天井すらないのか。」

 

体を起こしながら、蒼井は周囲を確認する。

瓦礫にあふれた大地。そこら中、炎で包まれた景色。

崩落したビルがあちらこちらに見られ、生命を一切感じられない。

そして、何よりも()()()()()()()()()()

 

「……待て待て、どんな魔法だ。」

 

どういう訳か、蒼井はどこか別の場所へ飛ばされてしまったらしい。

ふと、自分の右手を見てみると鎖のような細いS字状の赤い文様が刻まれている。

何時、タトゥーなんて掘った…?そんな疑問が浮かぶが、今気にする事ではないだろう。

兎に角、状況を整理する。

大規模なテロがあったのか、それとも何かの災害に巻き込まれたのか…。

その詳細は分からないが、カルデアの管制室近辺が爆破。

蒼井が視認した限り生存者はゼロ。

 

(いや、マシュは意識を保っていたし、あの場合生存者になるのか…?)

「…!そうだ、マシュ!!」

 

そこまで思考を巡らせた所で蒼井は一つの可能性に気づく。

あの場にいたマシュも此処に転送されたのなら、瓦礫から抜け出したかもしてない。それなら、まだ助けられるかもしれない。

 

「よし…!!」

 

可能性としては限りなく低いだろうが、諦めるよりずっといい。

蒼井はすぐさまマシュを探す為、走り出した。

 

「……。」

 

そして、初っ端から動く骸骨に出くわす蒼井。

 

「わぁ、リアルホ●ーマン。」

 

精神的に余裕はあるらしかった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃。

同じく転送されてきた立香は再びパニック状態にあった。

 

「い゛や゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!!ナニコレナニコレナニコレェェェ!!!」

 

後ろには大量の骸骨集団。しかも大きな声に反応して周囲の骸骨がぞろぞろと集まっていた。

しかし、立香の運動神経が並外れているからか、骸骨達との距離はかなり離れている。

その上、骸骨達が手に持つ武器が剣や槍といった近接武器のみだったことも幸いし、見た目に反し立香には幾分かの余裕がある。

 

「なんか目が覚めたら知らないとこにいるし、起きてすぐにリアルホ●ーマンに見つかるしなんなのもぉぉぉぉ!!!」

 

ちょっとした軽口を挟むくらいはある。

しかし、このままでは埒が明かない。最悪、体力切れした時に一気に追いつかれる。

 

「えぇっと、どっかに隠れられそうなとこは…!!」

「きゃぁあああ!!」

 

立香が身を隠す場所を探していると、前方から聞き覚えのある声が聞こえて来た。

 

「…、今の声!!」

 

声の主は立香と同じように骸骨から逃げながら立香のいる方角へ向かってきている。

 

「あ!私にビンタしてきた…あ~、え~と…そう!オルガ何とか所長!!」

オ・ル・ガ・マ・リ―よ!!って、貴女、補欠の!?何でこんなところにいるの!?」

 

そう、彼女の名はオルガマリー・アニムスフィア。

カルデアの所長にして、立香をビンタして管制室に追い出した張本人である。

 

「今はそんな事いいですから!!…口閉じててください!舌嚙みますよ!!」

「え、ちょっ…きゃぁあああ!!!??」

 

そう言うや否や、立香はオルガマリーの体を抱え再び走り始める。

先ほどよりも加速し、みるみるうちに骸骨達との距離が離れていく。

しかし、

 

「…!!」

 

前方に一体の骸骨を視認した立香は足に力を入れ、急ブレーキ。

しかし、それが悪手となった。

 

「…やばい。」

「ひぃっ!!」

 

急ブレーキの音に気づき、骸骨がこちらを視認。

しかも、後ろから集団の骸骨達が追い付いてくる。

横に逃げようにも前の骸骨の装備は弓。迂闊に動けば狙撃されるだろう。

 

「……____!」

なんでこんなことになんでこんなことになんでこんなことになんでこんなことになんでこんなことに…

 

立香は息を呑み、オルガマリーは小声でぶつぶつ言いながら怯えている。

絶体絶命。その一言が立香の頭によぎったその時…。

 

 

「マシュ!頼む!!」

「はい!マスター!!」

 

二つの声が辺りに響き、前方の骸骨が吹き飛ばされた。

一つは聞いたことのない少女の声。

もう一つは先ほど聞いたばかりの声。もっと言えば立香(自分)を置き去りにしようとしたヤツの声。

 

「アオ!!…と、どなた!?

「説明は後だ、まずはこいつ等を片付ける!!」

「はい!引き続き、言語による対話は不可。これより戦闘を開始します!!」

 

そういって蒼井の隣にいた短髪の少女は骸骨達に向かって突進。

身の丈よりもおおきな盾を振り回し、骸骨達を薙ぎ払っていく。

 

「…すごい。」

 

骸骨達が用いる剣は瞬く間に折られ、槍はその盾を貫くことも、あわや振るう事すら敵わない。

反撃の機会も与えられることなく、あっという間に骸骨達は全滅した。

 

「…戦闘終了。何とかなりましたね、マスター。」

「あぁお疲れ様、マシュ。…さて、藤丸。無事か?」

「あ、うん…。なんとか大丈夫。どこも怪我してない…じゃなくて。」

 

骸骨達を退けた後、いつもと同じペースで話そうとする蒼井に待ったをかける立香。

それもそのはず。爆発現場に居合わせ、気付いたら見知らぬ土地に飛ばされ、怪物に襲われ、極めつけに超人じみた力の少女と共に現れた知人…。文字におこしても情報量が多すぎる。

 

「ちょっと待ちなさい!今、マシュが貴方をマスター…って」

「…オルガマリー所長。ソレを含めて、今から説明します。先輩、指定されたポイントに到着しました。サークルを設置します。」

「…わかった。状況説明は…すこし待ってください。」

 

短髪の少女…マシュが持っていた盾を地面に置くと、周囲の景色が一変する。

まず、炎と瓦礫だらけの風景が消え、周囲は全くの暗闇に包まれる。

さらに、いくつもの明るい青色の線がまるで電子回路のような形状で水平上に浮かび上がった。

 

「『こちら、カルデア管制室。通信状況は良好。うまく設置できたみたいだね。』」

 

そして、マシュのもつ端末からロマンの声が発せられた。

 

「ちょっと、ロマン!?何で貴方がその椅子(所長席)に座っているの!?」

「『うえぇ!?しょ、所長!?あの状況で生きてる!?どんな生命力!?』」

はったおすわよ!!それに、それだけじゃないわ!!何故、彼がマスターになっているの!?彼、魔術回路からして一般人の筈よね!?」

 

そう言って、オルガマリーは蒼井を指さす。さされた蒼井本人は若干困った顔をしている。

 

「アオ、とりあえずそっちで…ていうか、カルデアでなにがあったの?」

「あ、あぁ。まずはそこからだな。…ドクター。」

「『…うん、わかった。』」

 

そこで立香は助け船を出すように口をはさんだ。

立香の言葉を聞いてオルガマリーも冷静になったらしく、おとなしくロマンの言葉に耳を傾ける。

 

「『まずは現状。

「『カルデア管制室が何者かの手によって爆破、被害は甚大。

「『カルデアにいる生存者は約二十名程度。

「『現状、ボクより上の階級の職員がいないため臨時で指揮をとっています。』」

 

ロマンの報告を聞いたオルガマリーは、先ほどと打って変わって真っ青な顔をしていた。

 

「…まって、じゃあ…マスターは?レフは、レフはどうなったの!?」

「『…残りのマスター四十五名。全員、危篤状態。レフ教授については捜索中ですが…。』」

「__!!!今すぐコフィンの冷凍保存機能を使いなさい!!一人も死なせないで!!」

「『…え、は、はい!?』」

 

顔を絶望に染めつつも、オルガマリーは適格な指示を出す。

ロマンがコフィンへ大急ぎで向かったためか一時的に通信が切れる。

本人の許可なしの冷凍保存…。おそらく犯罪行為ではあるが、現状最善の選択ではあるのだろう。

 

「…それで、貴方が何故マスターに?」

「えぇっと…俺にもさっぱり。いつの間にかこうなってた…としか。」

「はい、先輩には私から一方的に契約したんです。先輩に落ち度はありません。」

「……。」

 

そして今度は蒼井の方へ詰め寄った。そこにマシュも加わり、立香は段々とおいて行かれる。

 

「…そう。なら今回、特例として藤村蒼井、貴方のマシュ・キリエライトとの契約を認めるわ。」

「分かりました。」

「…それで、オルガマリー所長。これからどうするんですか…?」

「……あのぉ。」

 

オルガマリーや蒼井達が話を進めている横で、立香はおずおずと手を挙げ、言った。

 

「まず、()()()()()()()()()

「「あ」」

「はい?」

 

立香以外の全員が、声をあげた。

 

…そして、乾いた音が辺りに響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターについて語るにはまず、サーヴァントについて語らねばなるまい。

“サーヴァント”。魔術世界における最上級の使い魔。その正体は歴史上に実在したあらゆる時代の英雄達、正確にはその影法師。それらと契約を交わし、使役する人間…否、()()()こそがマスター。

そして、蒼井はデミ・サーヴァントと呼ばれるサーヴァントと人間の融合体、マシュ・キリエライトと知らずの内に契約してしまったらしい。

 

「なる、ほど…?つまりそのさーう゛ぁんと?と契約した人がマスターって訳ね。」

「貴女、正座させられてその態度ってどういう神経してるのよ!?」

「私にまたビンタしといてよく言いますね、パワハラですよ普通に!?」

 

そして、目の前では自分の同期が上司にビンタされ、正座させられている。

そんな光景(カオス)を目にし、蒼井は一人これからの道のりが予想以上に前途多難である事を悟った。

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