前回の投稿以降、怪我で長時間椅子に座ることが困難になったり、自動車事故に巻き込まれたりと、色々あって中々執筆する事が出来ず、大分遅れてしまいました。
所で、ポケモン最新作の『ゴールデンアルセウス』……もとい、『レジェンズアルセウス』が発売されたのを機に、もうずっと遊んでないポケモンを売ろうかと思い、その前に中身を確認したら……。
バシャーモ NN:アンク
エレキブル NN:カザリ
ミロカロス NN:メズール
ドサイドン NN:ガメル
カイロス NN:◎
プテラ NN:Dr.マキ
手持ちがオーズのグリードパで、他にもワルビアルのガラとか、サメハダーのポセイドンがボックスに……いっそ、この面子でポケモンを書くのもアリか?
サメハダー「命乞いはするな。時間の無駄だ」
そしてVシネクストで『仮面ライダーオーズ』の続編が出ると聞き、作者は昂ぶっておりまするぞ。こうなれば作者も未完成で放置している『DXオーズドライバーSDX』の水着回を完成させなければ……!
???「ああ、作者が『単なる水着回じゃ何番煎じだって感じで面白くない』って考えて、束さんの貝殻水着とか、箒ちゃんのボディペイント水着とか明後日の方向にフルスロットルした話だね!」
???「………」
今回のタイトルは『オーズ』の「POWER to TEARER」から。『DXオーズドライバーSDX』でも使っているタイトルですが、まあ気にしない。
妖星トガヒミコ、堕つ――!
ゴルショッカー怪人軍団を相手に、必死こいて抵抗の姿勢を見せていたトガヒミコが、トガヒミコの姿に変化した俺を見た途端に戦意喪失した事は少々思う所があるが、念には念とばかりにキッチリ止めを刺してトガヒミコを気絶させると、現場に到着したヒーローと警察に引き渡した事で任務は終了。
春の『敵連合』襲撃によって強化された雄英高校のセキュリティ程ではないかも知れないが、それでも充分に厳重であろう士傑高校のセキュリティをかいくぐったトガヒミコと言う難物を捕獲する事に成功した上、サー・ナイトアイの課題も見事に達成してバスに帰った俺を待っていたのは、鬼の形相をした相澤先生だった。
「仮免を取得してすぐにヴィラン退治とは、元気があって大変宜しい……」
言葉と表情が全く合っていなかった。捕縛布を力尽くで破る事は出来るものの、大人しく捕縛布で拘束されている方が吉と考えて一切抵抗しなかったが、俺としても相澤先生に対して言いたい事が無い訳では無い。
「確かにトガヒミコにゴルショッカーの怪人共を嗾け続ける事は、“個性”の相性を考えれば合理的な手段でしょう。それで此方が無傷で済むなら尚更です。しかし、合理性を突き詰めたヒーローとは只の装置です。只の装置に人を救う事が出来るでしょうか?」
「実際に民衆がヒーローに求めている理想像は、『平和をもたらし、それを維持する為の装置』だ。もしくは『正しさの奴隷』だな」
「ですが、ヒーローは時としてヴィランも救わなければならない職業です。再犯率を下げる意味でも、ヴィランに対して更正を促す努力をするのもまたヒーローとして当然の行為ではないでしょうか?」
「そんな事はヴィランが獄中でやれば良い事だ。そもそも悪事を働くと言う選択が間違っている」
「そうかも知れませんが、ヴィランはただ退治すれば良いと言うやり方を突き詰めた結果が、象徴の不在によって混乱している今のヒーロー社会ではないでしょうか? それは相澤先生の言う合理的なやり方では不十分だと言う何よりの証明であり、今後はヴィラン退治に全く新しいアプローチが必要とされるのではないでしょうか?」
「否定はしないが、それはお前がやらなきゃいけない事なのか?」
百戦錬磨の合理主義者は、俺の想像を遙かに超えた恐るべき強敵だった。幾ら肉体的にはクジラとミジンコ位のスペック差があるとは言え、一介の学生に過ぎない俺如きの稚拙な策では難攻不落の相澤城を陥落させる事は到底不可能であると痛感した。
「我が王よ。素直にコレはナイトアイの課題だと言えば良いではないか。ヴィランの都合や事情など一々考慮していてはヒーロー活動など出来ない。生まれ持った“個性”に苦しむ人々を救う為には、生まれ持った“個性”で苦しんだ結果ヴィランになった者達を打ち倒さなければならない。その為にトガヒミコに直接手を下しに行ったのだとな」
色々な意味で頭が上がらないナイトアイに余り迷惑を掛けたくねぇからだよ。しかし、そんな事は知ったこっちゃないイナゴ怪人達は別だった。もっともらしい理由では相澤先生を説得できないと思うや否や、平気な顔をしてナイトアイを生け贄として差し出した。
「……………んん」
すると相澤先生は青筋を浮かべつつも沈黙した。どうやら俺が言葉にするのを意図的に避けていたトガヒミコ捕獲に直接出向いた最大の理由――「生まれ持った“個性”に苦しむ人々を救う為には、生まれ持った“個性”で苦しんだ結果ヴィランになった者達を打ち倒さなければならない」と言う矛盾は、相澤先生の琴線に触れる内容だったらしい。
「……確かに結果を見ればお前のやった事は大手柄だ。セキュリティの関係から最も警戒していたヴィランを捕縛した事で、ゴルショッカーの有用性と雄英の安全性をアピールし、保護者を安心させた上により強い信頼を得る事が出来るだろう」
「では……」
「だがあくまでも結果としてだ。此方の指示を無視し、要らない危険を冒した事を結果オーライで済ます訳にはいかん。俺達はお前達の親御さんから、『今度こそお前達生徒を守る』と言う条件で、雄英に預ける事を許されたんだからな」
「………」
そう言われると耳と心が痛い。特に俺は林間合宿で『敵連合』……と言うか、オール・フォー・ワンの手によって攫われた挙げ句、改造手術と自己進化によって人間ではない超生物に成り果てている。
それに相澤先生は俺がヒーローをやる事に何処か否定的な部分がある。しかもそれは俺が散々利用された挙げ句、守ってきた人々から平和を乱す異物として切り捨てられる未来を心配しての事だから、ヒーローとして活動するにしても余り目立つ様な事はして欲しくはないのかも知れない。
「今後、お前の行動が正解だと他の生徒に思われても困る。よって、示しを付ける意味でも処罰を下す。呉島は三日間の寮内謹慎! 朝と晩にA組とB組の寮内共有スペースを清掃! +反省文の提出!」
ウォオオオン! 示しって言うか、見せしめじゃねぇか!!
しかしまあ、言いたい事は分からんでもない。実際に「手柄さえ立てればお咎め無し」的な前例を作ってしまっては学校側としても困るだろうし、無駄に対抗心があるB組が今回の事件を知り、ヒーローインターンなんかで『敵連合』を筆頭としたネームドのヴィランと遭遇して似たような事をされたらもっと困るだろう。
「以上! お前等も分かったな!!」
「「「「「「「「「「はいッ!!」」」」」」」」」」
かくして俺の独断行動に関する裁判は終わった。勝己と轟の仮免落ちに加え、トガヒミコの捕獲と言う予想外もあったが、結果的には何とか無事に終わって雄英に帰る事が出来たから良かったと言った所だろう。
「お兄ちゃん!」
「ただいま、エリ。良い子にしてたか?」
「むぎゅ……うん。おかえりなさい」
帰って来た俺の姿を見て、トテトテと駆寄ってくるエリをギュッと抱きしめ、今日の疲れと明日から始まる公開処刑に向けて、なんかこう尊い感じのエネルギーを補給する。
その後は制服から私服に着替え、皆と一緒に晩飯を食べてからエリを風呂に入れると、仮免合格の証である仮免許証を持ったエリとのツーショット写真を父さんに送信した。
怪人共を使ったトガヒミコ捕獲作戦に集中していた為、報告が大分遅れてしまったが、緊急時における“個性”を用いた戦闘が法的に許可された事で、父さんも少しは安心してくれる事だろう。
「明日からフツーの授業だねえ!」
「色々有り過ぎたな」
「一生忘れられない夏休みだったな……」
「あら、カワイイちゃん」
「ゆわいちゃん……!」
口田が腕に抱えている生きた白い毛玉こと、ウサギのゆわいちゃんを見たエリがそのモフモフの毛皮を目当てに近寄る様子は見ていてかなり癒やされるが、そろそろ寝る準備に入らなければならない。
子守を担当しているぴっころとムック……もとい、怪人ストーミングペンギンとスノーマンの話によると、エリは今日余りお昼寝をしなければ、おやつもそんなに食べなかったらしい。今日はこれまでと違って昼間にエリの所へ会いに行かなかったので、その辺がエリにとってストレスになったのかも知れない。
「おい!」
「ん?」
「後で表出ろ」
そんな事を考えながらエリを見ていた俺にただそれだけ言うと、勝己は俺の返事も聞かずに去って行った。え? 俺、これからエリを寝かせなきゃいかんのだけど……。
「………」
○○○
「待っていたぞ、ボンバー・ファッキュー」
「……何でテメェが居やがる」
「決まっておろう。我が王は我が君を寝かしつけるので忙しい。貴様の我儘と我が君の不安。優先すべきがどちらなのかは明白だ」
「テメェ……」
「何より、話だけならワザワザ表に出る必要はあるまい。つまり、貴様にはそれ以外の何処か後ろめたい目的がある。違うか?」
「………」
「内容について予想はつくが、そんな貴様の我儘に我が王が付き合った結果、我が王が処罰の対象になるのは我々としても不本意だ。貴様とて我が王に余計な迷惑が掛かるのは本意ではあるまい? ましてや幼子に不安を与える等以ての外だ」
「……チッ。着いてこい」
●●●
突然だが、ヒーローとは常に選択を迫られる職業である。重要なのは自分の選択が正しいと信じる事であり、日々の選択に迷いや後悔があると、とてもではないが続ける事は出来ない。
さて、此処で一つ質問がある。ストレスを溜め込んだ暴力的な幼馴染みと、少々人見知りで寂しがり屋の幼女。貴方ならどちらを優先するだろうか?
ちなみに俺は後者だ。これに関しては、寂しい思いをさせたエリの相手をしなければならないコッチの都合を一切聞かなかった勝己にも非がある。だから文句は言わせない。
しかし、だからと言って歩く時限爆弾と化した勝己を放置する訳にもいかない。そこで俺はひとまず勝己に対しイナゴ怪人1号を派遣した。その行動力に色々と思う所はあるものの、こう言う時イナゴ怪人は本当に便利な存在である。
「『うん? 此処は……』」
「俺達が雄英に来て、初めての戦闘訓練で使った場所だ」
「『………』」
そんな訳でエリを寝かしつけつつ、テレパシーによる感覚共有によって俺はイナゴ怪人1号の肉体を通し、別の場所に居る勝己と相対していた。場所はグラウンド・βの市街地。オールマイトが担当した屋外戦闘訓練で使われた場所だ。
「どう言う訳だか“無個性”で出来損ないの筈のデクが“個性”発現してて、テメェとタイマン張って膝ぁ着かせてよォ。何でだかデクもテメェも何時の間にかオールマイトに認められててよォ……」
「『………』」
「見下してたヤツが実は“個性特異点”だか何だか訳分かんねぇモンで、それがスゲェ才能だってんでオールマイトに見初められて、テメェに至ってはそれ以上にヤベェってんで、オールマイトの“個性”まで貰ってやがったって?」
「『………』」
「それでテメェもデクもドンドンドンドン上に登って行って、しまいにゃテメェ等は仮免受かって、俺は落ちた。何だこりゃ? なぁ?」
「『……何が言いたい』」
「……俺とデクはオールマイトに憧れた。他のモブ共もそうだった。でもテメェだけは違ってた。テメェはオールマイトに憧れてなかった。なァ、そうなんだよ」
「『………』」
「だからよ……戦えや。此処で、今」
「『……良いだろう』」
完全に誤解である。しかし、出久の安全の為にも、この勘違いは貫き通さなければならない。何より自分と同じ様な憧れを持った出久が実はオールマイトの真の後継者だと知れば、間違いなく勝己は出久の方へ怒りと鬱憤の矛先を向けるだろう。
「構えろ。『一七五式』つったか。持ってんならソレも使え。それでも生身のテメェより弱ぇんだろ?」
「『ああ、それなら問題ない。スペックダウンは否めないが、コイツは俺になれる』」
「あん?」
「『変身……!』」
このイナゴ怪人1号はその名が示す通り最古のイナゴ怪人であり、単独でヨーロッパへ向かい『ローカスト・エスケープ』と言うワープ能力を習得したスペシャル個体である所為か、他のイナゴ怪人よりも高い性能を発揮する事が出来る。
更に、今では『モーフィングパワー』を筆頭とした複数の能力を俺自らコイツに分け与えてある為、オリジナルである俺にかなり近い能力を発揮できる仕様になっている。
その一つがコレだ。『モーフィングパワー』を用いた肉体改造。生物的なフォルムのイナゴ怪人1号の身体が、金属質な外骨格を纏うシャドームーンのソレへと「変身」する。
「『……良し。始めよう』」
数回手を握って動作確認の終了を告げると同時に、勝己が大きく踏み込んだ。しかも左手の爆発によってダッシュ力を上げている。
「オラァッ!!」
「『ヌゥン……!!』」
大振りの右。勝己は上から下へ、俺は下から上へと言う違いこそあるが、お互いにファーストアタックの選択は同じだった。
「グッ……何時だって真っ直ぐ突っ込んで来るんだよなぁ、テメェはァ……!」
「『………』」
俺の拳は勝己の腹に当たり、俺は勝己の爆破を正面から受けた。銀色の装甲には爆発を至近距離から受けた事で焦げが出来ているが、行動不能になる様な損傷は無い。
「来いやぁ!!」
「『ハハ……』」
勝己とのタイマンは体育祭以来であるが、こうして人目を避けて勝己とやり合う事はあのヘドロヴィランの事件以降、一切無かった。随分と久し振りのイベントに、不思議と笑みがこぼれてくる。
「オラァッ!!」
「『………』」
幾度となく繰り出される爆破を回避しつつ、現在の勝己の戦闘力を分析する。林間合宿と圧縮訓練の賜物か、爆破の威力が明らかに上がっており、攻撃の余波で周囲のビルの窓ガラスが軒並み割れている。……いや、爆破の威力がアップしたことについては、今の勝己の精神状態による部分あるか。
「逃げんな!! 戦え!!」
「『逃げてはいない。見極めているだけだ』」
「あ゛あ゛!?」
爆破による攻撃に加え、爆破を用いた空中移動。以前と同じ様に三次元的な移動と攻撃を同時にやってのけているが、単純な“個性”の出力アップは、それと引き替えにコントロールが難しくなるが、勝己は事も無げに強力になった『爆破』を使いこなしている。それは勝己の類い希なるバトルセンスを感じさせるには充分なモノだ。しかし……!
「『シィッ!』」
「ガッ……!!」
「『ヌゥンッ!!』」
マルチタスクならば俺も負けてはいない。勝己を蹴り飛ばして距離を取ると『ブリザードクラスタ』――モーフィングパワーで作り出した氷のイナゴの群れを操り、勝己の動きと“個性”を封じに掛かる。
勝己の“個性”『爆破』の天敵は低温。「爆発する汗を掌から出す」と言う関係上、体温が低下すれば“個性”がまともに使えない状態を招き、戦闘力が大幅に低下する。その事は使い手である勝己も嫌と言うほど理解している。
「舐めんなぁッ!!」
四方八方から殺到する氷のバッタの群れに対し、勝己は両手をそれぞれ別方向に爆破し続ける事で『ブリザードクラスタ』を蹴散らしつつ、ネズミ花火の様に回転しながら距離を詰めてくる。
「『ふむ……』」
それを見た俺はサタンサーベルを造り出すと、地面に突き刺して後ろに一歩下がった。コース的にこのまま進めば勝己は真っ二つになるが……。
「チィッ!!」
流石に避けるか。まあ、直撃して真っ二つになっても困るケド。
爆破の力で回転していた勝己が地面に掌を向けたと思えば、回転を強引に停止させて直角に跳ね上がり、そのまま更に上昇。
真上と言う背後に匹敵する弱所からの攻撃は、人間を含めた全ての生物を相手取る上で理に適ったモノ。それもまた勝己が天性の捕食者であるからこその判断だろう。
……もう少し本気を出しても良さそうだ。
「ハウザー……」
「『フ……』」
勝己が持つ技の中でも、最大威力を誇る必殺技の発動態勢。それを確認した俺は、銀色の装甲の表面に緑色の電流を走らせると姿を消した。
「!? 何処に――」
「『シャドーキックッ!!』」
――『瞬間移動』。ワープ系の能力を独力で編み出したが故に、相性は決して悪くないだろうとイナゴ怪人1号に分け与えた能力だが、やはり便利だ。
上空から俺に向かって真っ直ぐに突っ込む勝己の更に上空へと瞬時に移動し、背後から必殺の両足蹴りを放つ。しかし、並外れた反射神経の賜物か、シャツは破けたものの勝己は辛うじてシャドーキックをかわしている。
「ってェ……!」
「『どうした? この程度か?』」
「!! まだまだぁああ……ッ!!」
直撃は避けたとは言え、シャドーキックの余波で吹き飛び、地面に倒れ込んだ勝己。その瞳からはより一層激しく燃え盛る炎の様な闘志をメラメラと感じる。
「『フンッ!!』」
「なろ……」
「『シィッ!!』」
地面に刺したサタンサーベルを引き抜くと、立ち上がった勝己にサタンサーベルを投げつける。そして真紅の魔剣を避けた勝己の背後に瞬間移動すると、キャッチしたサタンサーベルの刀身にオレンジ色のオーラを纏わせ、勝己を斬り付ける。
「ガァ……!」
「『ヌゥウウン!』」
「おおおおおおおおおおおおお!?」
浅い。しかし、それで良い。刀身から伸びるオレンジ色のオーラが勝己に巻き付いて身動きを封じると同時に、サタンサーベルの動きに合せて勝己の身体が宙に浮かぶ。そして、宙に浮かべた勝己をビルに擦りつけながら、振り回す様に投げ飛ばす。
「『シャドービーム!!』」
「グゥウウウ!!」
勝己の着地地点を目標に、掌から放つ高出力ビーム。勝己は爆破によって着地地点をズラし、またもや必殺技の直撃を避けているものの、ダメージは確実に蓄積している。
「『ハハハ……』」
「! スタン――」
再び瞬間移動を発動。これまで瞬間移動する度に勝己の後ろを取っていた為、勝己には「瞬間移動=背後」と言う情報が刷り込まれている。
――故に、真っ正面からの一撃には、対応が一瞬遅れる。
「『シャドーパンチッ!!』」
「グオァ……ッ!」
勝己の体がくの字に曲がり、そのまま殴り抜けると、勝己は吐瀉物を撒き散らしながらアスファルトの上を飛んでいく。地面をボールの様にバウンドし、漸く止まって地面に伏した勝己が俺に向ける眼差しからは、未だに闘志が衰える様子は微塵も無い。
「……ちく、しょう……!!」
「『………』」
夜のグラウンド・βに「カショ……カショ……」と、独特な足音が響いている。勝己は最早ボロボロだが、此方は殆ど無傷。しかも、イナゴ怪人1号が元になったこの分身体の戦闘力は、総合的に見れば最大でも本体の10%程度の出力しか出せない。
――勝負は着いていた。
「何でだ……何でだよ……! 何で!!」
「『………』」
「何でテメェ等が力をつけて……! オールマイトに認められて……強くなってんのに!! 何で俺は……オールマイトを終わらせた“だけ”になっちまってるんだッ!!」
「『!!』」
「俺が強くて、ヴィランに攫われなんかしなけりゃ、もしかしたらあんな事にならなかったかも知れねぇ! 幾ら考えねぇ様にしてても……フとした瞬間、沸いて来やがる!! どうすりゃいいか、わかんねぇんだよ!!」
「『………』」
ああ、なるほど。お前は自分が不甲斐ない所為で、オールマイトを終わったのだと。神野区の事件以降、お前はずっとそう思って自分を責めていた訳だ。
なるほど、なるほど……ふざけるなよ、お前。
「『……お前がオールマイトを終わらせただと? 頭が
「は?」
勝己の頬に銀色の外骨格を纏った握り拳が突き刺さる。思わず最大限以上の力を出してしまい、その反動で拳が砕け、指がひしゃげた。
一方、全く反応できない速度で繰り出された拳をまともに受けた勝己は「何が起こったのか分からない」と言った有様で、自分が再び地面を転がっている事に混乱していた。
「……が……、あ゛……?」
「『チッ……やはり脆いな。まあ良い。お前は憧れがどうのこうのと抜かしていたが……憧れとは言い換えるなら幻想と言う名の色眼鏡だ。他者に押しつける身勝手な理想だ。それはその人の本質を見ない、見えてないと言う事に他ならない』」
「ん……だ、と……?」
「『お前、昔から言ってたよな? 「オールマイトはどんなピンチでも、最後は絶対に勝つんだ」って。「一番スゲェヒーローは、最後に必ず勝つんだ」って。そんな一番スゲェヒーローのオールマイトが「お前が攫われた程度で終わる」? 言ってる事が矛盾してるぞお前』」
「……ッ!」
「『あの時、神野区に居たお前なら分かっている筈だ。オールマイトとオール・フォー・ワンには面識があった。過去に二人は交戦していた。あんな規格外の怪物と戦って、オールマイトが無事で済むと思うか?』」
「………」
正直言って、デヴィッド・シールド博士にせよ勝己にせよ、オールマイトを一体何だと思っているのだろうか? オールマイトが人間である以上、“平和の象徴”だって何時かは倒れる。それは必然だ。避けられない運命だ。そして、それが今だ。
「『終わりが近い事を悟れば、人は託す。何だってそうだ。そこかしこに建つ家やビル。何気なく口にする食品。全て人から人へと託され、発展してきたものだ。皆がやっている事を、オールマイトもやろうとした。ただそれだけの話だ』」
「………」
誰も考えようとしなかっただけで、間違いなくオールマイトの時代の終わりは迫っていた。『神野区の悪夢』がそれを加速させ、決定打になったのは間違いないが、少なくともそれは勝己の所為ではなくオール・フォー・ワンの仕業である。
と言うか、立場的には俺の方がよっぽど神野区でオールマイトを直接的に消耗させている筈なのに、普段のキャラ的に「俺は悪くねぇ!」とか言い出しそうな勝己の方がずっと罪悪感に苛まれているとは一体何の冗談だ? むしろ俺の方が「俺は悪くねぇ!」と思っていたと言うのがまた皮肉としか良い様がない。実際に全部オール・フォー・ワンが悪いし。
「『あと、お前は一つだけ勘違いしている』」
「あ……?」
「『出久がオールマイトに選ばれたのは、誰よりも特別な力を持っていたからじゃない。あのヘドロヴィランの事件の直前、俺達はオールマイトに会い、出久はそこで……オールマイトから夢を否定された』」
「…………は?」
「『“個性”が無くてもヒーローになれるのか? その質問に対し、オールマイトは言外になれないと言った。憧れのヒーローに夢を否定され、俺は出久に何一つ言葉を掛ける事が出来なかった。そんな深い絶望の淵に立っていても尚……あの時の出久は、お前を助けに走った』」
これは俺と出久、そしてオールマイトだけが知っている、ヘドロヴィランの事件における隠された真実。一年以上の時を経て、それを俺の口から知らされた勝己の瞳には、「信じられない事を聞いた」と言わんばかりの驚愕があった。
「『だからこそ出久はオールマイトに認められた。絶望を乗り越えたその心をな。お前が言う様な理由なんかじゃない。てゆーか、お前はまだ認めてなかったのか?』」
「あん?」
「『いい加減、認めろよ。本当に強いのは、腕っ節に力を持ったヤツ何かじゃない。心に力を持ったヤツなんだって。だから弱いんだよ。お前は』」
「んだと……!」
「『仮にお前があの時の出久の様に、オールマイトからお前はヒーローになれないと否定されて、それ相応に現実を見ろと言われて、絶望しないと断言出来るのか? それでも尚、鉄火場に踏み込む事が出来るのか? 何の力も持っていなかった、あの場の誰よりも無力だった、あの時の出久の様にッ!!』」
「……ッ!」
勝己から歯ぎしりの音が聞こえた。自分には無理だと理解はしている。しかし、それを受け入れる事が出来ない。そんな顔をしていた。
「『……そうか。認められないならそれでも良い。それなら此処でそのつまらんプライドを完全にへし折って、その葛藤から解放してやる……永遠になッ!!』」
砕けた拳の再生は既に完了している。俺は二本目のサタンサーベルを生成すると、両手に握るサタンサーベルの刀身を交差させて構えた。
「『サタンクロスッ!!』」
「あっちゃん! かっちゃん!」
二本のサタンサーベルより放たれる、破壊エネルギーの奔流。それが動く素振りも見せない勝己を呑み込まんと迫る最中、一筋の緑色の光が流星の様に横切った。
「『……出久』」
「何で……テメェが……」
「……君が、助けを求める顔をしてたから……」
勝己を救ったのは出久だった。共有スペースで俺と勝己のやり取りを見ていた出久は、密かに勝己とイナゴ怪人1号の後をつけていたのだ。
「そこまでにしよう、三人共。悪いが……聞かせて貰ったよ」
「オール……」
「マイト……」
「『………』」
「気付いてやれなくて、ゴメン」
「………今……、更……」
そして、出久に続いてオールマイトが現われた。これで『オールマイトが引退したのは、どう考えても俺が悪い』問題の重要人物が全員揃ったと言えるが、何だか逆に気まずい雰囲気が漂っている。
「…………何でだ。ヘドロん時からなんだろ? 何で、コイツ等だった」
「……呉島少年は誰よりも人の悪意に晒されながら、誰よりも人を愛していた。緑谷少年は誰よりも非力でありながら、誰よりもヒーローに相応しい心を持っていた。君は誰よりも強く、誰よりもヒーローにならんとし、それを望まれた男だと思った。あの時、多くの称賛と祝福を受けていた君よりも、彼等にソレ等を与えるべきだと判断した」
「…………俺だってそんな強くはねぇよ。弱ぇから……ヴィランに攫われた……ッ!!」
「コレは君の所為じゃない。呉島少年の言う通り、どのみち限界は近かった……こうなる事は決まっていたよ。君は強い。ただね、その強さに私がかまけた……抱え込ませてしまった。済まない。君も少年なのに……」
「………」
「ただ、長いことヒーローをやっていて思うんだよ。世間は私を“平和の象徴”なんて言うけれど、全てを救えてはいない。ヴィランによる犯罪は減少こそしたが、無くなる事は無い。特にヴィラン犯罪の中で、異形系の“個性”を持ったヴィランの割合がどれほどのモノか、君達なら知っているだろう?」
「『………』」
「元々、後継は探していた。だが、この社会は“平和の象徴”と言う一本の柱だけでは、人々の心を支えるには不十分で、他にも“象徴”たる柱が必要なんだと思った。だからこそ私はあの時、あの場で誰よりもヒーローだった、緑谷少年と呉島少年に希望を見た」
「………」
「人を救けたいと思う心と、人を救けられる力。この二つが揃う事で、初めてヒーローは自分の正義を貫くことが出来る。緑谷少年は呉島少年の力に憧れ、呉島少年は緑谷少年の心を尊敬していた。
この互いの力と心を認め合い、真っ当に高め合える二人が、人々から“象徴”と呼ばれるヒーローになったなら、何時の日か誰の心も取りこぼされる事が無い、今よりもずっと良い社会が出来るのかも知れないと……」
「……そんなん、聞きてぇ訳じゃねぇんだよ」
慰めるつもりで頭に乗せられたオールマイトの手を払いのけ、悪態をつく勝己だったが、オールマイトの話はしっかりと聞いていた。一応は冷静さを取り戻している様だ。
「オールマイト。雄英に入学した時にはもう、後継はシンとデクの二人に決めてたんだよな?」
「ああ」
「……シン。俺……強くなってたか?」
「『……体育祭の時よりも“個性”の出力は上がっている。『爆破』のコントロールもより精密になっている。反射神経も反応の早さも以前より磨きが掛かっている。ただ……意外性が少なかったな』」
「……回りくでぇ。予想出来る様な事しかしてねぇって言えや、クソが……」
聞き慣れた口癖を最後に、地面に座りこんだ勝己は沈黙した。しばらくすると色々と整理が付いたのか、勝己は立ち上がると幾分か調子が戻った声色で俺に言った。
「つまんねー事に付き合わせて悪かったな。とっととソレ解除しとけ。いらねー迷惑は掛けねぇからよ」
「『……分かった』」
その言葉を聞いた俺は、テレパシーによる感覚共有を解除し、エリが眠っている事を確認してから俺も眠りについた。
キャラクタァ~紹介&解説
呉島新
デク君と違って割とすぐに頭と気持ちを切り換える事が出来る為、かなりスムーズに事が進んでしまう怪人。どいつもこいつも、オールマイトを人間だと思ってないんじゃないかと思う様な発言をしている事に、内心かなり腹が立っている。
爆豪勝己
原作と対戦者が違うものの、原作よりもデク君の心の強さを痛感させられる結果となったボンバーマン。同時に自分がオールマイトに選ばれるチャンスなど無かった事も知ったが、オール・フォー・ワンの発言が少し違っていた事に内心ホッとしている。
オールマイト
この世界線ではデク君に真っ当な幼馴染みがいる為、原作とは少々異なる考えに至っている元№1ヒーロー。前話でのオール・フォー・ワンの言い分を鵜呑みにするつもりは無いが、デク君ではトガヒミコを救う事は出来なかっただろうと考えている。
イナゴ怪人ベースのシャドームーン分身体
短編作品に登場した『真・怪人バッタ男 序章(プロローグ)』における、主人公のシャドームーンルートに登場したヴィランが遂に本編に登場。ちなみに戦闘力はどちらも全く同じ。どう考えてもUSJと言う序盤に出てきて良い様なヴィランではない。
かっちゃん VS あっちゃん
正直、前作で主人公を無駄に強くさせてしまったので、こうしたバトルでは主人公の出力を大幅に落とすしかない。その結果、主人公が将来的に「イナゴ怪人は全員私ですよ」とか言い出しかねない状況に成りつつある。