怪人バッタ男 THE NEXT   作:トライアルドーパント

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読者の皆様のお陰で、10月25日の日刊ランキングで9位を記録しました。『怪人バッタ男』への変わらぬご愛顧を何時もどうもありがとうございます。

最近は『鎧武外伝』の新作や、『ゼロワン』の劇場版。それに『ウルトラQ』の「2020年の挑戦」など、面白い話題が多くて楽しいです。まあ、ライチアームズのアームズウェポンがどう見てもアレとか、リミテッドレッドのゼロワンドライバーで変身する奴いねーかなーとか、色々思う所はありますが。

今回のタイトルの元ネタは『ゼロワン』の「ワタシがアークで仮面ライダー」。前話とは前・後編な感じを意識してタイトルを決めた次第です。

10/29 誤字報告より誤字を修正しました。報告ありがとうございます。


第2話 ワタシがアークでイナゴ怪人

あれから俺はエリと早めに入浴と晩飯を済ませ、葉隠の言うウルトラCな企画とやらが始まるのを、二人で絵本を読みながら待っていた。

エリはこれからイベントがある事を教えた所為か、何が起こるか不安で緊張している様子だったが、その反面どこかワクワクしている様にも見えた。

 

「シン君、エリちゃん、居るー?」

 

「居るー」

 

「い、居るー」

 

そして、ドアの向こう側から麗日のうららかな声が聞こえたと言う事は、いよいよイベントが始まると言うことだ。葉隠の渾身のアイディアの正体について色々と考えてみたが、果たして俺の仮説の中に正解はあるのだろうか? ちなみに俺の仮説の中での最有力は、夏の風物詩的な感じで百物語である。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。何が始まるの?」

 

「何が始まるんだろうねぇ? 麗日のお姉ちゃんに聞いてごらん?」

 

「……お姉ちゃん、これから何をやるの?」

 

「(可愛い)うんとね……皆で笑って、これから頑張ろうって感じの事だよ!」

 

「?」

 

なるほど、よく分からん。どうやら麗日はイベントの内容を把握しているようだが、イベントの目的は兎も角、イベントの具体的な説明は無い為、エリは首をかしげている。

 

「ハー、疲れたー」

 

「切島、荷解き終わったのか?」

 

「漸くな」

 

「お疲れ様」

 

「経緯はアレだが、共同生活ってワクワクすんな!」

 

「うん!」

 

「共同生活……コレも協調性や規律を育む為の……訓練ッ!」

 

「キバるなあ、飯田」

 

そして、エリと共に上層階から来た女子達と合流し、一階の共同スペースに向かうと、そこには都合の良い事に自室を作り終えて一段落し、駄弁っている男達が居た。

 

「男子ー、部屋出来たー?」

 

「うん、今くつろぎ中」

 

「あのね! 今女子で話してて!」

 

「提案なんだけど!」

 

「お部屋披露大会しませんか!?」

 

「「「え……?」」」

 

葉隠が発端となって採用されたであろうイベントの恐るべき内容が芦戸の口から飛び出し、出久・峰田・常闇の3人の顔から表情が消えた。かく言う俺も予想外の内容に絶句した。

 

男女を問わず思春期真っ盛りの高校生にとって、自室とは言い換えるなら何人も手を触れる事が許されない禁断の領域である筈だ。それは現代における一種のパンドラの箱と言っても良い。それが白日の下に晒されるとなれば、彼等のリアクションも当然であろう。

 

つーか、この企画の発案者であろう葉隠は一体、何を考えているんだ。こんな企画を出したが最後、自分自身も巻き込まれるのは分かり切っている筈だ。どんだけ自分の部屋に自信があるんだ、アイツは。

 

そんな事を俺が考えていた中、出久の頭に電流走る――。

 

この場から物理的に近い距離に部屋を構えている者は誰だ? 当然、2階に部屋を構えている者達だ。そして、芦戸は「男子の部屋がどんなものか見てみたい」と言ったニュアンスでモノを言っており、女子棟側の2階に部屋を構える新とエリの部屋が最初に選ばれる確率は低い。下手したら既に見ている可能性すらある。

 

ならば、部屋を披露する順番が最初、或いはそのすぐ後になるのは必然――。

 

「うわあああああああああああああああああああああああああッ!! ダメダメダメダメちょっと待ぁあーーーーーーーーーーッ!!」

 

出久はパニックに陥った。とても『オールマイトの真の後継者』とは思えない程の狼狽えっぷりだ。ある意味、林間合宿で洸汰少年がマスキュラーなる凶悪ヴィランと会敵した時よりも必死で、鬼気迫る表情をしていた。

しかし、相手は自分と同じく雄英で切磋琢磨するヒーロー候補生。出久の抵抗は無意味であり、彼が自室のレイアウトを何とか誤魔化す為の時間は皆無であった。

 

「「おおーーーーーッ!!」」

 

「オールマイトだらけだ! オタク部屋だ!」

 

「憧れなんで…………恥ずかしい……」

 

まあ、俺に関して言えば5才の頃から出久のオールマイト推しに付き合っていたから、どんな部屋なのか想像は出来ていた。そして、出久が重度のヒーローオタクである事は既に周知の事実である為、出久の部屋を見た誰もが「予想通り」と言った反応をしている。

 

「やべぇ、何か始まりやがったぞ」

 

「でもちょっと楽しいぞ。コレ……」

 

「フン。くだらん」

 

突如始まったイベントの破壊力(意味深)を目の当りにし、戦慄と期待が入り交じる上鳴や瀬呂とは対照的に、常闇は「興味は無い」とばかりに言い捨てた。そんな常闇は自室の扉を背にして腕を組み、不動の構えを見せている。

 

しかし、何度でも言うが、抵抗は無意味である。芦戸と葉隠が二人がかりで天岩戸を守らんとするツクヨミを押しのけて部屋の中に突入すると同時に、我々もまた常闇の部屋に雪崩込んだ。

 

「「黒ッ! 怖ッ!」」

 

「貴様等……」

 

すると何たることぞ。部屋の中に天照大御神は何処にもおらず、その代わりに出久と同レベルで趣味全開のレイアウトが施された、物理的にも精神的にもダークでオサレな固有結界が混沌をそのままに展開されているではないか。

 

「このキーホルダー、俺中学ん時買ってたわぁ」

 

「男子ってこう言うの好きなんね」

 

「出て行け……」

 

(つるぎ)だ……カッコイイ……」

 

「出て行けぇええーーーーッ!!」

 

しかし、コレはチョット参ったな。常闇に関しては以前、飯田達と遊園地に遊びに行った際に知り合った迷子の幼女とのエピソードを聞いていた手前、エリとも相性は良いのではないかと期待していたのだが、当のエリは真っ暗な常闇の部屋が怖いのか、余り芳しくない表情をしている。

 

また、それ以前の問題として、不可侵の聖域を暴かれた事で怒りに満ちている常闇をどうにかしなければなるまい。折角、仲良く頑張ろう的な意図で葉隠がイベントを企画したのに、その結果互いの信頼関係にマリアナ海溝よりも深い亀裂が入ってしまっては本末転倒も良い所だ。

 

……やむを得ん。此処は俺が一肌脱ぐとしよう。

 

「変身ッ!!」

 

「えッ!?」

 

「く、呉島君! 何故、変身をッ!?」

 

「シャドーセイバーッ!」

 

俺は神野区でこの姿に進化した時と同時に誕生したと言う「イナゴ怪人RX」なるイナゴ怪人に倣って「アナザーRX」と名付けた姿に変身すると、クラスメイト達の驚きを無視してベルト状の器官の中央にある宝玉から暗闇を紅く照らす一本の光剣を取り出し、超強力念力で常闇の部屋の壁に掛けてあったローブを引き寄せ、その身に纏った。

 

俺の次の行動に誰もが固唾を呑んで注目する中、俺はシャドーセイバーを手に堂々と言い放った。

 

「ワシにはフォースがついておる……」

 

「「「バフォッ!!」」」

 

「ツクヨミよ。貴様もフォースの導に従い、ダークサイドへ身を委ねるのだ……」

 

「「「ブフォオッ!!」」」

 

「ちょ、ヤバ……! ウチこの呉島……」

 

「デーデーデー♪ デーデデーデーデデー♪」

 

「ツボッフォ!!」

 

ハッハッハ、ウケてる。麗日と芦戸と葉隠は普通に、耳郎は初めこそ耐えていたが、俺のアカペラを聴いて堪えきれず盛大に噴き出している。他の連中も笑いながらヒーヒー言ってやがる。そして肝心の常闇はと言うと……。

 

「………………返せッ!!」

 

ふむ。ダークサイド(笑)の抗いがたい誘惑(爆)を撥ね除けるまでの間が少々気になるものの、返せと言われたら素直に返すしか無いな。その理由がヒーローとしての矜恃なのか、はたまた単なる羞恥心なのかは知らんが、この小芝居によって多少は常闇の怒りが和らいだと思いたい所である。

 

続いて拝見するのは青山の部屋であるが、青山は出久や常闇と違って抵抗する事は無く、むしろ「存分に俺の部屋を見てくれ!」と言わんばかりのアグレッシブな態度を取っていたのだが……。

 

「「「「「「「「「「眩しい!!」」」」」」」」」」

 

「ノンノン。まぶしいじゃなくて、ま・ば・ゆ・い!」

 

「思ってた通りだ」

 

「想定の範疇を出ない」

 

……まあ、青山には悪いがコレは普通にまばゆいを超えて眩しい。青山の部屋は不必要な位に照明器具が多く設置されている上、鏡やラメ入りのカーテンなど光を反射する物がこれでもかと配置されている為、常闇の部屋とは逆に光に満たされている。

しかし、芦戸と葉隠は「予想通り」と言っているが、俺としては照明がミラーボールなのは趣味の範疇と言う事で理解出来るが、なんでテーブルの上にもう一つミラーボールが置いてあるんだ。まるで意味が分からんぞ。

 

「楽しくなってきたぞ~。あと二階の人は……」

 

そして、次の部屋を拝見しようとした時、我々は見た。半開きになったドアから邪悪なオーラが間欠泉の様に噴出し、その中で此方をじっと見つめる峰田の姿を。

 

「入れよ……。スゲェの……見せてやんよ……」

 

「3階行こー」

 

「入れよォ……なァ……」

 

『………』

 

余りにも禍々しいエネルギーに満ちた峰田の部屋を誰もが無視して三階に向かおうとしたその時、どう言う訳かエリの影からイナゴ怪人アークが出現し、単身で峰田の部屋へと向かった。

 

 

○○○

 

 

峰田の部屋に侵入したイナゴ怪人アークの複眼に映ったモノは、口に出すことも憚られる暴力的なまでに肌色の“悪意”に満ちた空間だった。

そして、年頃の娘と年端もいかぬ幼女の網膜にこの光景を焼き付けようとした男が、よりにもよってヒーローの学校に在籍している事実にイナゴ怪人アークは“恐怖”した。

 

イナゴ怪人アークは地獄の業火の如き“憤怒”を覚えた。常軌を逸した卑しい変態と、そんな害悪をのさばらせる事を良しとする人間の思考回路を“憎悪”した。ヒーローが善なる者に“絶望”を与える存在であってはならないと言う思いが燃料となり、ソレ等を増長させた。

 

押さえ込んでいた“闘争”本能が存分に刺激され、変態に対する底なしの“殺意”が後押しとなり、イナゴ怪人アークは事態の解決に“破滅”と言う名の手段を選択する。

変態とは“絶滅”すべき、この世で最も愚かな種族であると定義したイナゴ怪人アークは、自身が守るべき者達の為、この世界から変態を“滅亡”させる事を此処に誓う。

 

『変態は、滅びる……』

 

「へ?」

 

『ハァアッ!!』

 

正に唯一絶対にして完璧なる結論(パーフェクトコンクルージョン)もはやこれ以上の推敲は不要である(ラーニングエンド)

 

イナゴ怪人アークから発生した破壊エネルギーにより、峰田が半生を賭けて構築した広大なアーカイブと膨大なデータは一瞬で灰燼に帰した。

 

「うぉおおおおおおおおおおおああああああああああああああッ!?」

 

血と汗の結晶が破壊され尽くした事に絶叫する峰田。しかし、イナゴ怪人アークは止まらない。怪人としての高度な情報分析と演算により、峰田の秘蔵のお宝が隠された場所を難なく探し当てると、それを手にして峰田に見せつける。

 

「ば、馬鹿な! な、何故それを隠していた場所が分かった!?」

 

『峰田実。お前がコレを隠し持っている事は分かっていた……』

 

「ま、待て! 何をする気だ! やめろ、アークゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

『身を以て、ラーニングさせてやる……!』

 

恐らくは、人生でもう二度と手に入らないであろうお宝が手の届かない場所に逝ってしまう事を察し、峰田は一も二も無くイナゴ怪人アークに懇願するが、イナゴ怪人アークは容赦なくお宝を……I・アイランドで峰田が発目から貰った脱ぎたてのパンティ(修繕済み)を破壊した。

 

 

●●●

 

 

尋常ならざる峰田の絶叫を聞いた俺達が何事かと峰田の部屋を覗くと、なんたる事ぞ。イナゴ怪人アークが峰田の目の前で見覚えのあるパンティを石に変え、握り潰し、粉々に砕いていた。

 

そして、秘蔵のパンティを破壊された事に慟哭し、エロ本やらエロDVDやらエロゲーやらをゴミ屑にされた怨み節を炸裂させる峰田に同情する者は誰一人としておらず、むしろ「学生寮にそんな物を持ち込むな」と、当たり前過ぎる正論を叩きつけられる形で峰田は止めを刺されていた。

 

『変態の滅亡は既に決まっている。しかし、どうすれば「変態絶滅」と言う結論に至ると思う? 魔王……』

 

「………」

 

「いや、それって普通じゃない?」

 

一方、周囲に被害を出す事無く峰田の部屋に存在したありとあらゆるエロスな物品だけを破壊したイナゴ怪人アークは、如何なる理由でそうなったのかは分からないが、流暢な日本語でのコミュニケーションを可能としていた。しかも割と良い声で。

つーか、今までエリに見つからない様に行動していた上に、一言も話さなかったのが嘘の様に堂々と姿を現し、堰を切った様に喋りまくっていた。そして、何事も無かったかのように、何食わぬ顔でしれっとお部屋披露大会に参加しているのである。

 

無駄に図太い所は実にイナゴ怪人っぽく、話の内容もやはりと言うか何と言うか中々物騒なのだが、イナゴ怪人アークの掲げる「変態絶滅」と言う目的は、女性陣から絶大な支持を得ているのが現状だ。

 

「わぁー、普通だァ!」

 

「普通だァ! 凄い!」

 

「これが普通と言う事なんだね!」

 

「言う事無いなら良いんだよ……?」

 

そんな予期せぬトラブルはあったものの、お部屋披露大会は引き続き三階の尾白の部屋から再開された訳だが、確かに尾白の部屋は普通としか言い様が無かった。これまでに見てきた部屋と違い、特に弄る部分が無いと言える無難なレイアウトだ。……うん、つまりは普通だな。

 

「難しそうな本がズラッと……流石委員長!」

 

「おかしなモノなど無いぞ!」

 

続いては飯田の部屋だが、ゴミ箱が可燃と不燃と言った具合に複数ある等、全体的に生真面目な飯田の性格が反映された感じの部屋だった。ただ、飯田本人は「おかしな物は無い」と言うが、明らかにおかしい物がある。

 

「ブフッ! 眼鏡クソある!」

 

「何がおかしい! 激しい訓練での破損を想定してだな!」

 

「いや、それよりもベッドの近くに本棚置くのは止めとけ。地震が起きたら死ぬぞ」

 

「ハッ! た、確かにッ!!」

 

見る限り本棚が固定されているかどうかは分からないが、本棚の上にも本が山積みされているとなれば、夜中に地震が来たら間違いなくそれらは雪崩と化し、就寝中の飯田を襲うだろう。自殺行為も良い所である。

尚、当の飯田は俺に指摘されて漸くその事に気付いたらしく、明日以降地震を筆頭とした緊急時を想定した部屋の模様替えを余儀なくされている。

 

「「「チャラい!!」」」

 

「手当たり次第って感じだなー」

 

「えー!? よくねー!?」

 

また、自身のインテリアセンスに割と自信があったのか、上鳴は思った以上に高評価が得られなかった事に戸惑っていた。

まあ、此処まで見てきた部屋のセンスが「深く狭い」と言った色々と濃いモノが多かったのに対し、上鳴の部屋は「浅く広く」と言った印象である事は否定できない。耳郎が言う様に「興味本位で手を出して、すぐに飽きた」って感じだ。

 

「「ウサギいるー!! 可愛いぃいいいい!!」」

 

「………(キラキラ)」

 

「口田。この子触っても大丈夫か? ……なるほど。向こうから近づいてくるのを待つんだな」

 

一方、インパクトと言う点において、意外なダークホースは口田だ。口田はペットのウサギを連れてきていたらしく、その余りの可愛さに芦戸と麗日が魅了され、エリも目を輝かせていた。ただ、エリとしては触りたいけどちょっと怖いみたいなので、まず俺が触っている所をエリに見せようとしたのだが……。

 

「………(シーン)」

 

「………(アワアワ)」

 

「……取り敢えず、コレは『触って良い』と解釈して良いのか?」

 

件のウサギは近づくどころか、俺を見るとその場で仰向けになり微動だにしなくなった。飼い主の口田としても想定外のリアクションだったようだが、恐らく俺が生物として逸脱した存在である事を本能で看破したのだろう。

尚、甲田曰くウサギの名前は「ゆわいちゃん」と言うのだが、性別はオスだった。しかも年齢を人間に換算すれば30代。つまりは脂の乗った中年のおっさんである。

 

「あったかくて、ふわふわする……」

 

しかし、可愛いは正義だ。ゆわいちゃんをおっかなびっくり触りつつ、嬉しそうな様子を見せるエリに免じて、俺に対してヒグマかエゾオオカミにでも出くわしたような反応を見せた事は許してやろう。

 

「てゆーかよぉ、釈然としねぇ」

 

「ああ、奇遇だね。俺もしないんだ。釈然……」

 

「そうだな」

 

「僕も☆」

 

しかし、しかしである。この世の全てにおいて、光が当たる所には必ず影がある。即ち、勝者と言う概念がある以上、敗者もまた同時に存在しなければならない。

口田と言う勝者の出現により、敗者へとカテゴライズされた者達が不満を露わにする中、イナゴ怪人アークの意志によって滅ぼされた筈の変態が不死鳥の様に蘇った。

 

「男子だけが言われっぱなしってのは、変だよなぁ? お部屋、披露大会っつったよなぁ? なら当然んッ! 女子の部屋も見て決めるべきじゃねぇのかぁ!? 誰がクラス一のインテリアセンスの持ち主かぁ、全員で決めるべきなんじゃねぇのかあッ!?」

 

「? 初めからそうだったんじゃないのか?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「良いじゃん!」

 

「え?」

 

「え!?」

 

峰田の主張に俺は「何を言っているんだ」との思いを込めて発言したが、耳郎と芦戸の反応を見るに、どうやら女子勢は自分達の部屋を披露するつもりは無かったらしい。そして、その上でお部屋披露大会を提案していたと……。

何と言う事だ。俺がお互いの腹の内を見せ合うイベントだと思っていたお部屋披露大会は、実は女性陣による男性陣への一方的な開腹手術だったのだ。いや、見方によっては最早、解剖と言うべきなのかも知れん。

 

「えーっと……じゃあ、誰がクラス一のインテリアセンスかー、部屋王を決めるって事で!」

 

「部屋王?」

 

「いや、別に決めなくて良いケドさ……」

 

「フフフ……『(オイラだけが主張しても足蹴にされてただろう。だが! 少なからず自尊心を傷つけられたコイツ等の意志に乗じる事で、オイラの主張は“民意”と言う皮を被るのさぁ! これにより実に自然な流れで、女子部屋を物色出来るッ!!)」』

 

そして、俺がお部屋披露大会の真実を知って驚愕する中、イナゴ怪人アークが唐突に何かを語り始めたと思ったら、峰田がその発言に合せる様に邪悪な炎を両目に宿し、性欲丸出しの顔で口から滝の様に涎を垂れ流し始めたではないか。

その光景は先程イナゴ怪人アークの手によって変態ブドウへの変身に必要なパンティを破壊された事も相俟って、峰田に向けられる女性陣の視線には殺意が込められている。

 

「ふーん……実に自然な流れで、女子部屋を物色出来るねぇ……」

 

「!? ば、馬鹿な! どうしてオイラの考えている事が分かったんだッ!!」

 

『ククク……お前が何を思考し、どう行動するか、その結論は予測出来ている。「法に触れる事無く、溢れんばかりの性欲を満たしたい」と言う心が透けて見えるぞ?』

 

協議の結果、峰田は女子棟へ足を踏み入れない事を条件に、お部屋披露大会は続行された。中止では無い事に耳朗がちょっと残念そうにしていたが、今後の寮生活の平和の為には雌雄を決する以外に誰もが納得する方法は無いので仕方が無い。

 

「男子棟4Fに住んでるのは、爆豪君と切島君と障子君……だよね」

 

「爆豪君は?」

 

「ずっと前に『くだらねぇ、先に寝る』って部屋行った。俺も眠い……」

 

「じゃあ、次は切島部屋!!」

 

「ガンガン行こうぜ!!」

 

「どーでも良いケド、多分女子には分かんねぇぞ。この男らしさはッ!!」

 

「……うん」

 

「彼氏にやって欲しくない部屋ランキング2位にありそう」

 

「アツイね。アツクルシイ!」

 

「ホラな」

 

麗日が言う様に、切島の部屋は実に暑苦しく男らしい部屋であり、切島本人が自身のインテリアセンスを自覚している分、精神的なダメージは他の面々と比べても低い……いや、目に涙を浮かべている所を見るに、やはり女性陣からの理解は得たかったのだろう。そんな切島を見て、上鳴・尾白・常闇の3名もまた目に涙を浮かべている。

 

「次! 障子!」

 

「面白いモノは何もないぞ?」

 

部屋を拝見する前に飯田と似たような事を俺達に告げる障子だったが、飯田と違い障子の部屋には本当に面白いモノは無かった、と言うか、物そのものが圧倒的に少なかった。具体的には布団と座布団と机だけだった。

 

「ってか……」

 

「面白いモノどころか!!」

 

「ミニマリストだったのか」

 

「まあ、幼い頃から余り物欲が無かったからな」

 

「こう言うのに限ってドスケベなんだぜ」

 

『流石は破れたパンティを修復する為、自ら裁縫のスキルを習得した男だ。説得力が違う』

 

なるほど。I・アイランドでの戦闘で破れた筈の発目のパンティが何故修復されていたのか疑問だったが、峰田が自分の手で直していたのか。

しかし、峰田のリアクションを見ればそれが真実である事は間違いないが、どうやってイナゴ怪人アークはそれを知ったのだろうか? まあ、知った所で正直どうでも良いが。

 

「次は一階上がって5F男子!」

 

「瀬呂からだ!」

 

「マジで全員やんのか……? ……フッ」

 

「!?」

 

障子の意外な一面を知った後、全員で男子棟の最上階へと足を運ぶ中、俺は瀬呂が一瞬不敵な笑みを浮かべているのを見た。一見すると瀬呂は乗り気では無い感じなのだが、その目は何か確信に満ち溢れている様に見える。どうやら瀬呂はインテリアセンスに相当の自信があるようだが、果たして……。

 

「おおーーッ!」

 

「エイジアン!!」

 

「ステキー」

 

「瀬呂こう言うの拘る奴だったんだ」

 

「フッフッフ……ギャップの男、瀬呂君だよ!」

 

此奴、やりおるわ。尚、個人的には部屋の何処かしらにチャリの要素があると思っていたのだが、瀬呂の部屋にはチャリの影も形も無かった。そして単純な部屋のセンスで言うなら、瀬呂は現時点でピカイチと言っても過言では無い。

 

「次々ー!」

 

「轟さんですわね(クラス屈指の実力者……)」

 

「(クラス屈指のイケメンボーイ……)」

 

「(クールな轟君の部屋……ちょっとドキドキ……)」

 

「さっさと済ましてくれ。ねみい」

 

さて、次は普段の成績とクールな態度からクラスの興味と注目を集める轟の部屋だ。轟本人は面倒臭そうな態度でイベントに余り関心は無さそうだったが、それでもこのイベントに付き合ってくれるあたり、入学当初の頃に比べると轟も大分人付き合いが良くなったものである。

 

そして、肝心の轟の部屋だが、それは意外性に富んだ瀬呂の部屋のインパクトを上回る、我々の想像の斜め上を行くモノだった。

 

「和室だッ!!」

 

「造りが違くね!?」

 

「実家が日本家屋だからよ。フローリングは落ち着かねぇ」

 

「理由はいいわ!」

 

「当日即リフォームって、どうやったんだお前!」

 

「…………頑張った」

 

「何だよコイツ!!」

 

「大物になりそ」

 

「いや、既に大物だろコレ」

 

『確かに小物に出来る芸当でない』

 

「イケメンはやる事が違ぇな」

 

「じゃ、次! 男子棟最後は!?」

 

「俺……」

 

男子棟最後の部屋を飾るのは砂藤だが、洋室から和室へと劇的にビフォーアフターした轟の部屋の直後となると、流石に高評価を得るのは難しいだろう。それは本人も分かっているようで、正直運が悪いと言わざるを得ない。

 

「ま、つまんねー部屋だよ」

 

「轟の後は誰でも同じだぜ……」

 

「て言うか、良い香りするのコレ何?」

 

「ああ、イケね!! 忘れてた!! 大分早く片付いたんでよ、シフォンケーキ焼いてたんだ!! 皆、食うかと思ってよ……ホイップがあればもっと美味いんだが、食う?」

 

「「「KUU~~~~~~~~~~~!!」」」

 

「「模範的意外な一面かよ!!」」

 

ううむ、個人的には夜にお菓子を食べるのは悪い文明なのだが……まあ良いか、今日くらいは。それに砂藤のお菓子は美味しい。きっとエリも気に入る事だろう。

 

「あんまぁい! フワッフワ!」

 

「ボーノボーノ」

 

「瀬呂のギャップを軽く凌駕した」

 

「ウンウン」

 

「素敵なご趣味をお持ちですのね、砂藤さん。今度私のお紅茶と合わせてみません?」

 

「オォ……こんな反応されるとは……! まあ、“個性”の訓練がてら作ったりするんだよ。甘いモン食うと高えし……」

 

「ちっきしょー、流石シュガーマンを名乗るだけ……うまっ!!」

 

「ここぞとばかりに出してくるな……うまっ……」

 

確かに美味い。林間合宿の時にバスで食べたチーズタルトも相当美味かったが、このシフォンケーキも絶品だ。これでホイップがあれば更に美味いと言うのだから、大した腕前である。砂藤が振る舞うシフォンケーキに誰もが喜びの舌鼓を打つ中、シフォンケーキを手にしたエリが予想外の行動に出た。

 

『……何だ』

 

「い、一緒に食べよう……?」

 

『………』

 

自分に渡されたシフォンケーキを半分に千切り、恐る恐るイナゴ怪人アークに手渡すエリ。イナゴ怪人アークは無言のままシフォンケーキを受け取り、しばし手にしたソレを凝視した後、閉ざされていた口を展開してシフォンケーキに噛り付いた。

 

『……理解した。これが、人間の善意か……』

 

何となく、この瞬間に超人世界の未来を左右するような特異点が生まれた様な気がする。いずれにせよ、エリのお陰でイナゴ怪人アークは善意と言うモノを理解したらしいので、少なくとも悪い事にはならないだろう。

 

『しかし……いや、だからこそ、私の結論は変わらない……』

 

そう思ったのも束の間、イナゴ怪人アークは決意を秘めた剣呑な視線と共に、右手の人差し指を峰田に向けた。

 

 

●●●

 

 

この学生寮『ハイツアライアンス』が女子棟と繋がっているのは共同スペースがある一階だけなので、男子棟から女子棟へ行くには一階まで降りる必要がある。この道中、イナゴ怪人アークによって念入りに石にされた峰田が二階の自室に放り込まれたが、我々にとっては必要かつ些細な事である。

 

そして、いよいよ本来なら使われる事の無かった女子棟二階に設けられた、俺とエリの部屋を披露する時がやってきた。

ちなみに相澤先生によれば、女子棟二階が使用される予定がなかったのは、性欲の権化である峰田を警戒しての事だったらしい。雄英のセキュリティを考えれば相澤先生にしては珍しく非合理的と思える対応だが、その気持ちは分からんでもない。

 

「おー! アウトドア系だー!」

 

「本棚の絵本はエリちゃんの物でしょうけど……図鑑が多いですわね?」

 

「ああ、俺の私物だ。俺は基本的に食い物を持ちこまないキャンプをしていてな。万が一に備えて、最低限の水やチョコレート何かは持っていくケド、食料は現地調達を心掛けている。最近はよく似た有毒の外来種も出てきてるから、食材の知識は必須だ」

 

「なるほど! 現地での食料調達や調理法などのサバイバル技術を身に着ける事で、緊急時への備えとしていると言う訳だな! 流石だ!」

 

「ガチキャンってやつか……それにしても、どっちの部屋も子供っぽくないな」

 

「これって実質、二つとも呉島の部屋だよな? ちょっとズルくね?」

 

「むしろ、子供っぽいのはダメなんだよ。意外に思うかも知れないが、エリは今までちゃんとした、それこそ子供っぽい子供部屋で過ごしていてな。ヴィランからは食事を充分に与えられなかった訳でも、不衛生な環境に居た訳でもない。それどころか女児用の玩具なんかも頻繁に与えられていたらしい」

 

「マジか」

 

「ま、思い込みや固定観念で判断せず、相手に合わせて柔軟に対応する必要があるって事だ。そして、今のエリにとってはコレが一番落ち着く環境なんだよ」

 

「じゃ、ワザとこうしてんのか……」

 

「ねぇ、あっちゃん。壁にルアーが掛けて無いケド、どうしたの? 家に置いてきたとか?」

 

「何かの拍子でエリに刺さると危ないから、全部タックルケースにしまってある。同じ理由でオールマイトから貰ったサボテンは家に置いてきた」

 

「な、何て事をッ!!」

 

芦戸が釣り竿やクーラーボックスなんかを興味深そうに見ている中、八百万は本棚を物色し、飯田が何時も通りに何かイイ感じに解釈してくれている。

また、切島と上鳴による部屋のレイアウトに関してのツッコミは、エリの境遇と教師寮での惨劇を知らなければごもっともな話なので、前例を知ると言う意味でもしっかりと説明させて貰った。

 

そして、この中で唯一、実家の俺の部屋を知る出久がこの部屋との差異を指摘し、オールマイトから貰ったサボテンの処遇を聞いて過剰反応するが、エリの安全には変えられない。コレは可能な限りリスクを排除する為の必要な犠牲だ。それにサボテンの世話は何とかなるだろう。実家にはイナゴ怪人やマタンゴがいるし。

 

「次は私達だね!」

 

「やだなー。マジで全員やるの? 大丈夫?」

 

「大丈夫でしょ。多分」

 

「……ハズいんだけど」

 

さて、俺で男性陣は最後となり、いよいよ女性陣のお部屋拝見となった訳だが、珍しく耳郎が消極的な態度を見せている。何時もの強気な耳郎らしくないと思いつつ拝見させて貰うと……なるほど、コレが理由か。

 

「思ってた以上にガッキガキしてんな!!」

 

「耳郎ちゃんはロッキンガールなんだねぇ!!」

 

「コレ全部弾けるの!?」

 

「まぁ、一通りは……」

 

「女っ気のねぇ部屋だ」

 

「ノン淑女☆」

 

耳郎の部屋はある意味、出久や常闇等の部屋と同レベルで自分の趣味一色に染まった部屋だった。それを皆に披露するのは憚られると言う事なのだろうが、そんな耳郎の心境を知ってか知らずか、上鳴と青山がここぞとばかりに舌剣を振るい、耳郎から制裁を食らっていた。余り言いたくはないが、自業自得である。

 

「次行こ、次!!」

 

「次は私、葉隠だぁ!」

 

さて、いよいよこの企画を提案した張本人の出番である。果たして、葉隠のインテリアセンスは如何ほどのモノか……。

 

「どーだッ!?」

 

「お、オオ……フツーに女子っぽい! ドキドキすんな!」

 

上鳴の言う通り、葉隠の部屋は女の子っぽさに溢れていた。直前に見た耳郎の部屋との対比の効果も多少はあるだろうが、それを踏まえても見る者に「女の子の部屋」と言う印象を抱かせるお洒落な部屋だった。

 

「次は私だぁ! じゃーん! カワイーでしょーが!!」

 

「「「「「「「「「「おォ……」」」」」」」」」」

 

「味気の無い部屋で御座います……」

 

「「「「「「「「「「おぉ……!」」」」」」」」」」

 

「何かこう……あまりにもフツーにフツーのジョシ部屋見て回ってると、背徳感出てくるね……」

 

「禁断の花園……」

 

各々が4階に上がり、披露された芦戸と麗日の部屋だが、芦戸の部屋が派手目で、麗日の部屋が地味目と言う差異こそあるものの、どちらも充分に女子っぽい部屋である。尾白と常闇の台詞は、この場に居る男子全員の心境に当て嵌まるのではないだろうか。

尚、俺としては麗日の部屋に関してのみ、麗日が借りていたアパートの部屋とよく似ていると思っていたが、敢えて黙っていた。

 

「次の部屋は蛙吹さん……」

 

「って、そういや梅雨ちゃんいねーな」

 

「あ、梅雨ちゃんは気分が優れんみたい」

 

「優れんのは仕方ないな」

 

「優れた時にまた見して貰おーぜ」

 

そして、女子棟の最上階に到着した訳だが、梅雨ちゃんは具合が悪いのか欠席している為、俺達は梅雨ちゃんの部屋を通り過ぎ、八百万の部屋に向かったのだが……。

 

「………」

 

「?」

 

はて、気の所為か? 今、梅雨ちゃんの部屋の扉が開いた様な気がしたが……。

 

「最後は八百万か!」

 

「それが……私見当違いをしてしまいまして……皆さんの創意溢れるお部屋と比べて……少々手狭になってしまいましたの」

 

「でっけぇ、狭ッ!! どうした八百万!?」

 

「私の使っていた家具なのですが……まさかお部屋の広さがこれだけとは思っておらず……」

 

「「「(お嬢様なんだね……)」」」

 

そう言えば、相澤先生が俺達に部屋を案内した際、八百万は部屋の大きさについて「我が家のクローゼットと同じ位」と言っていたな。これまでに過ごしてきた部屋の基準が庶民と違う為、こうした弊害が生まれた……と言う事だろうか。

 

しかし、天井付きのベッドはお姫様感があって、エリには良いかも知れん。その発想はなかった。後でエリに相談して、ソッチの方が良いと言ったら明日にでも改造だ。

 

 

●●●

 

 

勝己と梅雨ちゃんを除いた全ての部屋が披露され、いよいよ部屋王を決める投票の時間である。但し、エリはまだ平仮名すら書けないので、俺が代筆する事で投票に参加する形になっている。

尚、イナゴ怪人アークは普通に漢字すら書ける事が判明し、やはり何食わぬ顔でしれっと投票していた。石になった峰田も復活した為、投票数は合計で21票である。

 

「えー、皆さん! 投票はお済みでしょうか!? 自分への投票は無しですよ!? それでは、爆豪と梅雨ちゃんを除いた、第一回部屋王暫定1位の発表ですッ!! 」

 

まあ、正直に言えば部屋王など、最早どうでも良い。今回の企画で多少なりともクラスメイトとエリに取っ掛かりが出来たなら、俺としてはそれで充分だ。

そして、俺の中では明日になったら口田にはゆわいちゃんによるエリのアニマルセラピーを、砂藤にはエリが好きなリンゴを使ったお菓子を作って貰えるように頼み込む事が決定している。

 

「得票数5票! 見事、部屋王に選ばれたその部屋は―――砂藤力道―――ッ!!」

 

「はああッ!?」

 

「ちなみに全て女子票! 理由は『ケーキ美味しかった』だそーですッ!!」

 

「部屋はッ!?」

 

「ちなみに2位は口田で、得票数は3票! 理由は『ゆわいちゃん可愛かった』だそーですッ!!」

 

……チョット待て。俺とエリとイナゴ怪人アークの3人は揃って口田に投票していた筈で、口田の得票数は3票。つまり、半ば組織票じみた結果で口田は2位を取ったと言う事になるのか……?

ま、まあ、別に口田本人がそれに関与した訳でもないし、口田自身もまさかの結果にどぎまぎしつつも嬉しそうだから、問題は無いだろう。多分。

 

「「テメー、ヒーロー志望が贈賄してんじゃねー!!」」

 

「知らねーよ! 何だよ、スゲェ嬉しい」

 

「終わったか? 寝て良いか?」

 

「俺はダメだって言っても寝るぞ。これ以上エリに夜更かしはさせられん」

 

最後まで起きていようと大分頑張っていたが、腕の中に居るエリはウトウトし始めている。これは投票の結果を聞いてイベントが終わったと安心した所為もあるだろうが、本来ならそろそろ寝る時間だと言う事もある。何より寝不足はエリの成長に悪い。この辺が6歳児の限界だ。

 

「うむ! ケーキを食べたので歯磨きは忘れずにな!」

 

「分かっている。エリ、皆におやすみって挨拶しな」

 

「うん……お兄ちゃん、お姉ちゃん、お休みなさい……」

 

「よしよし。それじゃ、皆お休みー」

 

「んぅ……」

 

俺は褒めて伸ばす方式を採用している為、些細な事でも出来たら褒めるを心がけている。それと同時に頭を撫でるスキンシップも欠かさない。

そして、胸に顔を埋めるエリはとても可愛らしい。まあ、それでも歯を磨かずに眠る事は許さないがな。その辺は心を鬼にさせて貰う。

 

 

◯◯◯

 

 

「……なあ、思った事言っていいか?」

 

「何だ?」

 

「今の呉島、もうお兄ちゃん通り越してお父さんじゃね?」

 

「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」

 

新とエリが去った後、二人のやり取りを見た上鳴の感想に対し、A組の面々は沈黙を以て肯定した。




キャラクタァ~紹介&解説

呉島新
 ある意味では元ネタのシンさんの様に見えなくも無い怪人。生物としての規格がおかしな事になっている為、仮にヒグマやエゾオオカミに出会ったとしも、今回のゆわいちゃんと同じリアクションを取られる可能性が高い。

エリちゃん
 今回の企画を割と楽しんでいた幼女。そして、彼女の優しさによって人類の未来は救われた。後日、アニマルセラピーでゆわいちゃんに人参をあげようとした際、ゆわいちゃんの好物がバナナだと知って仰天する。

イナゴ怪人アーク
 人間の悪意を学習し、自我を獲得した怪人。コレに伴い、元になったエターナル克己……もとい、イナゴ怪人4号の自我は完全に消滅した。そして、人間の善意を学習した事で「変態を絶滅させる為に、人類を絶滅させる」と言う手段は選択肢から消えた。

常闇踏影
 ダークサイドの誘惑を撥ね除けたダークっぽいヒーロー。この世界線では、小説『雄英白書Ⅰ』で起こった出来事を理由に主人公からは密かに期待されていた。後日、エリちゃんとは「リンゴが好物」と言う共通点がある事を知る。

砂藤力道
 スイーツの腕前で部屋王となった男。上述のエリもそうだが、彼のクラスメイトに美味しい食べ物を提供する心意気もまた人間の善意である為、彼もエリと同様に人類の未来を救った救世主と言っても過言では無い。

口田甲司
 ペットの可愛さで準優勝を飾った男。小説『雄英白書Ⅲ』での描写を見る限り、ペットの気持ちを第一に考える素晴らしい飼い主。エリのアニマルセラピーに伴い、エリとはウサギの世話の仕方を教える形で交流する事になる。

ゆわいちゃん
 小説『雄英白書Ⅲ』で名前が明かされた、口田のペットたるウサギ(♂)。好物はバナナ。校長と違って“個性”は無い筈だが非常に知能が高く、峰田の性欲にある程度の理解があると言う希有な存在。まあ、ウサギだからなのだろうが。



イベント「部屋王」
 原作における経緯は不明だが、この世界線では葉隠が発端となっている。基本的には原作と同じく進んだが、峰田の部屋に保管された有害物質と、変態ブドウの変身に必要なドライバー(笑)が消滅した。え? 変態ブドウ02? 余り考えたくはないな……。
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