今回のタイトルの元ネタは『ストロンガー』の「さようなら! 栄光の7人ライダー!」。一応は初登場の回なのにクライマックスとはこれ如何に……。
雄英の一角で開催された『ワン・フォー・オール』の真実を知る者達による秘密の会議は中々どうして難航していた。今の所「出久の中の『ワン・フォー・オール』を如何にして復活させるか問題」を解決する方法の候補は以下の二つ。
1.俺を除いたサー・ナイトアイやグラントリノ等に協力して貰い、彼等の間で『ワン・フォー・オール』の譲渡を繰り返した後に出久に返却する。
2.いっそ『ワン・フォー・オール』を復活させる事を諦め、俺が『オール・フォー・ワン』由来の能力を用いて出久に何かしらの力を与える。
後者に関しては本末転倒も良い所だが、俺とデヴィッド・シールド博士はむしろ其方を推している。だが、オールマイトと出久はどうにもボツ案である「俺と出久で『ワン・フォー・オール』のやり取りをする」を諦めていない節があった。
出久のメリットとデメリットを考えれば、それこそ今の出久でも使いやすく、且つ何とか周りを誤魔化せる力を……具体的には神野区で『オール・フォー・ワン』と共に投与され、俺の『バッタ』に取り込まれた“個性”の一つである『空気を押し出す』。それに『ワン・フォー・オール』と同系統の『膂力増強』の能力を与えるとかが良いのではないかと俺は考えている。
複数の“個性”所持に関しては、歴代の『ワン・フォー・オール』継承者で言えばオールマイトのお師匠さんを筆頭に何人も居る訳で、博士も「2つ位なら問題は無いだろう」と言っていた。むしろ、“無個性”のオールマイトや出久の方が、継承者としては希有な例外だと思った方が良い。
――だが、どうもオールマイトが『ワン・フォー・オール』の復活方法として「譲渡」に拘る理由は、出久に降りかかる将来的な不安だけでは無いらしい。
「面影……ですか?」
「ああ。これはお師匠の受け売りなんだが、『ワン・フォー・オール』は色々なモノを溜め込む“個性”なんだそうだ。例えば、ああしたい、こうしたい、ああなりたい、こうなりたいと言った、歴代の継承者達が培っていた力と共に、それぞれの想いが“力”の一部として『ワン・フォー・オール』に記憶されている。だから例え道半ばで斃れたとしても、『ワン・フォー・オール』の中でまた逢える……生前のお師匠はそう仰っていた」
「そう言えば、僕が林間合宿の時の怪我で入院していた時の話なんですが――」
俺がオールマイトの説明にデジャヴを感じる中、出久が入院中に『ワン・フォー・オール』の面影と言うか、『ワン・フォー・オール』に記憶された『ワン・フォー・オール』の成り立ちを夢で見た事を語った。そして、出久の口から語られたその内容は、やはり俺にとって既視感を覚えるモノだった。
「初代の記憶……! 見たのか……!」
「見たには見たんですけど、映像が粗かった上にノイズも酷くて……ただ、その後で初代が話しかけてきたんです。『まだ見せるつもりは無かった』とか、『新しい強大な力が生まれようとしている』とか……オールマイトはそこに意志は無いって言ってましたけど……とてもそうとは思えませんでした」
「それなら俺にもあったぞ。見た記憶はもっと多かったし、話しかけてきたのは別の人だったけどな」
そして、恐らくは俺も出久と同時期に『ワン・フォー・オール』の歴代継承者の記憶を見ている事。また、それとは別に超常黎明期に『仮面ライダー』を名乗り、闇の帝王との戦いに敗れ、“個性”にこびり付く記憶に成り果てながらも存在し続けたヒーローとの一部始終を話した。
「なるほど……だが、私は経験しなかったし、お師匠にもそう教えられた。私の知る限りじゃ、それは君達だけに起こった現象だ。ただ……」
「間違いなく、俺がガイボーグに改造された事が原因で起こった事でしょうね。出久に話しかけた初代からしてみれば、宿敵が増えた様なモンでしょうし」
「…………言いたくなかった事を……」
「いや、待てよ……呉島君にも『ワン・フォー・オール』の力と記憶があるのなら、『オール・フォー・ワン』で『ワン・フォー・オール』の力を調整して、その記憶と一緒に緑谷君へ譲渡すれば良いんじゃないのか?」
「「「え……?」」」
そして、俺の話を聞いた博士が提案した方法は、この場に居る誰もが納得出来る折衷案と言うべきモノだった。
出久が言うには、初代の記憶は出久が神野区で『デクさん』と化し、その力を振るう事を必死になって止めていたらしいのだが、それ以降『ワン・フォー・オール』の力と共に完全に気配が消えたらしい。恐らく、歴代継承者の記憶も『デクさん』の代価として消費されてしまったのだろう。
一方、俺に関しては超常黎明期の『仮面ライダー』の記憶が消えた感じはするが、『ワン・フォー・オール』の歴代継承者の記憶が消えた感じはしない。吸収したのがオリジナルではなくその“残り火”と言うのが少々不安だが、上手くすれば強大な力よりもずっと大切なモノを復活させる事が出来る可能性が出てきた訳だ。
「………」
「オールマイト?」
「はっ!? ああ、いや、デイブの提案は私としても賛成だ。ただ、初代の警告を無視した緑谷少年の事を、呉島少年の中にいる初代の記憶はどう思っているのだろうかと……」
「ああ……」
確かにどう思っているのかは気になる。記憶を見た限りではそう悪く思ってはいないと思うが、そうなると他の継承者の記憶は出久をどう思っているんだって話になる。
思い返す限り、少なくとも出久の決断に罵声を浴びせる様な方はいない感じだが、その事について説教しそうなハゲのおっさんとかは居る。
「あ、記憶と言えばもう一つ」
「うん?」
「オールマイトのお師匠さんですけど、俺はどことなく出久のおばさんに似た美人さんだと思いました。髪型とか」
「! だろ!」
「また髪型……」
「ちなみに学生時代のオールマイトも見ましたよ。お師匠さんの視点で」
「デ・ジ・マ!?」
「ウッソォッッ!?!?!?」
俺が気まぐれで投下した爆弾発言はオールマイトに直撃し、出久はその余波で『ワン・フォー・オール』の力が使えなくなっていると知った時よりも深く落ち込んだ。
●●●
『コスチュームの改良についてだが、御覧の通り私は表立って協力する事は出来ない。勿論、君達への協力は惜しまないが……コスチュームで変更したい点があるなら、校舎一階の開発工房へ行って欲しい。私よりもずっと頼りになるサポーターがそこに居る』
「それで挨拶に伺ったのですが、まさか貴方まで雄英に来ているとは思いませんでした。ほら、出久。そろそろ元気出せよ」
「……お久しぶりです……メリッサさん……」
「え、ええ、デク君も久し振り。私もまさか雄英でサポートアイテムの研究をする事になるなんて思わなかったわ。ねぇ、レオン?」
「……メリッサはん。透明になっとるワイに目ぇ向けて言ったら、透明になった意味があらへんやないですか。てか、何でワイの居場所が分かるんでっしゃろ……」
出久の中の『ワン・フォー・オール』の復活方法が決定した後、博士からのお墨付きを貰ったサポーターに会う為、俺と出久は開発工房に足を運んだのだが、そこに居たのは博士の一人娘であるメリッサさんだった。
無論、博士とイナゴ怪人スーパー1の取引により、何かと悪意に晒されそうなメリッサさんの護衛として派遣された変な関西弁を話すカメレオン怪人こと「死神カメレオン」のレオンも一緒である。
「そう言えば、ヒーロー科の皆は必殺技に伴うコスチュームの変更や改良を考えてるって話を聞いたんだけど、デク君達はどうなの?」
「俺はコスチュームに関しては全部父さんに任せてあります。今日の訓練で得た戦闘データを元に、コスチュームのバージョンアップが施されるかと」
「僕はその……必殺技のヴィジョンすら出来て無くて……オールマイトは『君はまだ私に倣おうとしてる』とか、『あっちゃんを参考にしたら良い』とか言ってたんですけど……」
「俺を参考に、ねぇ……」
メリッサさんの質問に言い淀みながらも、出久は必殺技修得の圧縮訓練でオールマイトから指摘された事を告げるが、出久自身はそのアドバイスの意図がまるで分からず、どうすれば良いのか困っていた。
単純に考えるなら、オールマイトは「出久は『ワン・フォー・オール』をオールマイトと同じように使う必要なんて無い」と言いたいんだろう。実際、歴代の『ワン・フォー・オール』の継承者が全員、オールマイトと同じ使い方をしていたとは思えない。
……仕方ない。もういい加減に言ってしまおう。このままだと変に拗れそうだし。
「確かに、これまでと同じくオールマイトに倣った“個性”の使い方をしていたら、誰かがまたお前の壊れた体を治さないといけなくなる。治療する事を前提にした“個性”の運用は、ハッキリ言うと『安定行動』にはならない……だろう?」
「う゛……た、確かに……」
「それでだ。人が手っ取り早く喧嘩に強くなる方法は、大きく分けて二つある。『腕力を脚力並みに強化する』か、『足を手並みに器用にする』かだ。出久はこれまで前者のやり方をしていた訳だが、それは“個性”に頼った極端なモノだった。それしかやりようが無かったとも言えるがな」
「うん……」
「だが、職場体験で“個性”の使い方を学び、身体能力を全体的に増強させる『フルカウル』を修得した事で、勝己並みの機動力と小回りを手に入れた。現状ではコレが今の出久に出来る、唯一の『安定行動』と言える訳だ」
「……つまり、手から足をメインにしたスタイルに変える?」
「どちらかと言うと、一撃必殺のパワータイプから、手数で補うスピードタイプに変えるって感じだ。それか技術や知識を武器にして戦うテクニックタイプ。勿論、スピードとテクニックを両立したスタイルもアリだ」
と言うか、本音を言えばテクニックタイプこそが、出久の本来のスタイルだと思うんだよな。
これまで持っていなかった“個性”と言う力を手に入れ、手に入れても禄にその力が使えなかった分、出久はヒーローオタクとしての知識を元に知恵を絞り、その観察眼と分析力を武器にして戦っていた訳だが、“個性”がまともに使える様になればなる程、何処か考え無しの脳筋になっていた様な気がする。
その最たる例がI・アイランドの事件である。ヴィランに奪取された警備システムの解除に、メリッサさんの様な警備システムを解除できる人間が必要だと気付かなかったとか、俺の知る出久ではまず有り得ない。
つまり、言っては悪いが『ワン・フォー・オール』を習熟すればする程、出久の持ち味が失われていたのである。
原因としてはオールマイトへの大き過ぎる憧れや責任感。何よりオールマイトの力そのものが足枷になり、視野狭窄に陥っていたのだとは思うが……。
「そうね……デク君は体が強過ぎる“個性”についていけてないし、仮に『フルガントレット』みたいなサポートアイテムを使っても、その力を発揮する回数には限度があるわ。体に“個性”の負荷をかけないスタイルに変えて継戦能力を高めるのは、サポーターとしても良いアイディアだと思うわ」
「スピードとテクニック……確かにそれなら、オールマイトのアドバイスにも通じるモノがある……オールマイトに倣うって部分も、あっちゃんを参考にって部分も!」
「なるほど! つまりは、今までの戦い方だと不安だから、思い切って別の戦い方に切り換えていこうって訳ですね! 好きですよ、そう言う発想ッ!!」
「出やがった」
「はい! 出やがりました! ご存じ、呉島明です!」
「勝手に呉島を名乗るんじゃない」
かくして、出久がこれまでのパワー重視のバトルスタイルを一新し、スピードとテクニックに重点を置いたバトルスタイルへの変更を決意しようとした矢先、何処から沸いてきたのか発目が俺達の会話に乱入した。そして、畏れ多くも呉島の性を名乗る発目が乱入した目的は、何となく察しが付いている。
「でしたら、私がまずドッ可愛いフットパーツベイビーを作ってあげましょう!! それ以外にもコスチュームの大幅な変更が必要になるでしょうが、問題ありません!! ここは一つ、私とメリッサさんに全てお任せ下さい!!」
「あ、いや……でも僕、今のコスチュームからデザインを大きく変える気は無いんだけど……」
「クライアントの無茶・無知・無謀に応えるのがデキるデザイナーです! 先生!! 私達の案、良ければ採用して貰えますね!?」
「…………良ければね……」
「では早速取りかかりましょう!」
「ええ!」
相変わらず押しの強い発目によって、出久のコスチューム変更が瞬く間に決定してしまった。そんな発目に常日頃から大分苦労しているのか、開発工房の主であるパワーローダー先生は妙に疲弊しており、半ば諦めた様子で発目の提案を認めている。
「それで、出久は良いのか? よりにもよって発目にコスチュームを任せて」
「うん。確かにちょっと不安はあるけど……」
「金属ベースで耐久性をアップ! 内部には衝撃吸収剤を詰めます!」
「なるほど。頑丈そうな構造ね!」
「発目さんとメリッサさんの二人が組んだら、何だか凄いのが出来そうだと思わない?」
「……なるほど」
確かにこの二人なら“ありとあらゆる意味で凄い物”が出来るだろう。出久が期待する気持ちも分からないでは無い。
だが、俺は父さんを通じて知っている。サポートアイテムの研究と開発に携わる人間……つまり研究者と言うのは、総じて譲れない拘りや信念を持っている人種なのだと。
「設計できました! コレは……最高に可愛いんじゃないですか!?」
「でも、コレじゃ重過ぎるんじゃないかしら……ココは逆に軽い素材にしてみたら――」
「いいえ! こっちの方が可愛いです! 早速、作業始めます!」
「待って! サポートアイテムはあくまでもヒーローを補助する為の道具。デザインは変えないと言う要望だし、まずはヒーロー側の意見を酌まないと……」
「ですが、緑谷君はサポートアイテムに関しては素人です」
「そうね。でも……やっぱり私はサポーターとして、第一にヒーローの事を考えて作るべきだと思うわ!」
「……見解の相違の様ですね」
「(あ……あれれ……?)」
「(やっぱこうなったか)」
「では緑谷君に判断して貰いましょう。どちらがより優れたサポートアイテムを作れるか勝負です!」
「……ええ!」
「え? 勝負……?」
「……じゃ、俺はエリを待たせてるから、この辺で」
「えッ!?」
「フフフ……私のベイビーは負けませんよ!」
「私だって、サポーターとして負けられないわ!」
まあ、過程は兎も角として、出久が望む様な凄いサポートアイテムが出来る事は間違いないだろう。だから、ここは結果オーライ。結果オールマイトと言う事で何とか頑張ってくれ。
ヒートアップする発目とメリッサさんに巻き込まれる出久を尻目に、俺はリカバリーガールに預けたエリを迎えに行くべく、開発工房を後にした。
○○○
雄英での圧縮訓練が始まって四日が経過した頃、各々がコスチュームの改良と平行して必殺技の開発と修得に精を出す中、教師としてアドバイスした生徒達の進捗状況を確認するべく、体育館γにオールマイトが現われた。
「オッハー。進捗どうだい、相澤君?」
「また来たんですか……ボチボチですよ。漸くスタイルを定め始めた者も居れば……既に複数の技を修得しようとしている者も居ます」
「ふむ……その中でもやはり……」
「はっはぁ! 出来たぁ!」
生徒達の歩幅には個人差こそあるものの、誰もが順調に「自分だけの必殺技」を朧気ながらも形にしており、早い者では現段階で複数の必殺技をモノにしつつあった。
そして、早い者の代表格はオールマイトの予想通り爆豪勝己である。
戦闘センスの塊である爆豪にとって、“個性”を用いた必殺技のヴィジョンは入学時から既に複数あり、それを今になって形にしているのだろう。実際、そう思わなければ納得する事が出来ない修得スピードである。
「……爆豪少年は相変わらずセンスが突出しているな……」
「あ!! オイ、上!!」
「馬……ッ!!」
改めて爆豪のバトルセンスの高さに感心するオールマイトが背を向けた時、爆豪が必殺技で破壊したセメントの的が一部崩れ、オールマイトの頭上に向けて落下する。
爆豪が焦り、相澤がそれに対処しようとした時――ソレは現れた。
「「「「「トォオオオオオオオオオオオオオウ!!」」」」」
「!?」
威勢の良い掛け声と共に、セメントの塊を一発の蹴りで粉砕する赤い影と、それに続く青・緑・黄・桃色の4色の影。そして、色の違いこそあれ、5人全員がバッタを模したコスチュームに身を包み、マントを羽織っている。
その正体は何となく想像がつくものの、オールマイトの危機を救ったソレ等は何かを待っている様にオールマイトを凝視しており、オールマイトは期待に応える形で彼等にその正体を問う事にした。
「えっと……き、君達は、一体……?」
「アカライダー!」
「アオライダー!」
「ミドライダー!」
「キライダー!」
「モモライダー!」
「我ら、仮面戦隊!!」
「「「「「ゴライダー!!」」」」」
「………」
どう考えても中身がイナゴ怪人な彼等は仮面戦隊ゴライダーと名乗ると、ポーズを決めると同時に背後で爆発が起こり、五色のカラフルな煙が上がる。
体育祭で似たような光景を見た記憶があるが、コスチュームによって見た目がヒーローっぽくなっている所為か、何となく前よりパワーアップしている様な気がする。
「何ぃ!? 仮面戦隊ゴライダーだとぉ!?」
「うむ! そこのショッカーライダー達よ! 我々が貴様等に真の必殺技と言うモノを見せてやる! そこの人間共を実験台とする形でなッ!!」
「「「「「「「「「「え゛え゛ッ!?」」」」」」」」」」
「行くぞ! ゴライダーハリケーンだッ!」
「「「「応ッ!!」」」」
勝手に実験台にされる事に「聞いてないよ!?」と言わんばかりのリアクションを見せるA組の面々と、「そんな事、俺達が知るか!!」と言わんばかりに必殺技の準備にかかるゴライダーに、それを止める事無く傍観するショッカーライダー達と教師陣。
まあ、実戦において対戦相手が此方の必殺技をワザワザ待つ訳がないので、これはある意味ではとても実戦的な訓練と言えるだろう。現に名乗った直後に必殺技を世界征服組織にぶっ放すヒーローも存在する訳だし。
「ゴライダーハリケーン・視力検査!!」
「あん?」
「いや、視力検査って何?」
「アタックッ!!」
モモライダーがラグビーボールの様な物を何処からともなく取り出すと、A組の困惑を他所にゴライダーは一斉に駆け出した。A組の面々はゴライダーが誰を狙っているのか分からず、中には「一度に全員を倒す広範囲攻撃なのではないか?」と予想を立てている者もいるが、ゴライダーのターゲットは一人だけである。
「いくわよッ!! キライダー!!」
「任せろッ!! ミドライダァーーッ!!」
「アオッ!!」
「OK! アカライダー! クラウディングトライだッ!!」
「オッケイ! トォオオオオオウ!!」
モモライダー、キライダー、ミドライダーが空中で華麗にパスを回し、アオライダーがジャンプキャッチしたエンドボールを地面に固定すると、アカライダーは助走をつけて天高く跳躍。空中で華麗なバク転を決め、右足でエンドボールに狙いを定めた。
「エンドボォーーーーーーーーーーーールッ!!」
――その時、不思議な事が起こった。
アカライダーが勢い良く蹴り込んだ五色のカラフルなラグビーボールが空中で視力検査表に変化し、真っ直ぐ飯田の手元へと向かっていったのだ。
「むっ!? これは、視力検査表か? 何々……」
飛んできた視力検査表を受け取ると、飯田は律儀にも視力検査(至近距離)を行った。しかし、今回は飯田のその生真面目な性格が徒となった。
「ダ・イ・ナ・マ・イ・ト……何ぃ!? ダイナマイトだとぉ!?」
「いや、それがどうしたって……」
コントの様なやり取りに耳朗が呆れる一方、飯田は危険を察知し、視力検査表を手放してその場を離れようとするも、時既に遅し。飯田が手にしていた視力検査表は大爆発を起こし、飯田は爆炎に包まれた。
「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!?」
「次だッ! ゴライダーハリケーン・耳栓!!」
「え? ちょっと、何でウチを見てんの? それに耳栓って……」
「アタックッ!!」
そして、耳郎もまたコント染みたやり取りをした後、大爆発に飲み込まれるのだった。
●●●
時を遡ること、今から3日前。イナゴ怪人スカイ~イナゴ怪人RXの5人のイナゴ怪人が俺の元に集合し、イナゴ怪人スカイが平伏しながらこう宣った。
「私が王に問いたい事は一つのみ。何故『強化服・一七伍式』は6着しかないのか」
「データ取り用に雄英に寄こしたのが6着なんじゃなかったっけ?」
「そんな事を我々に言われても……」
「試験までには全員の分が来るよ。父さんがチューニングしたコスチュームと一緒に」
「我が王! どうか我々に
「………」
俺に対して何か妙に腹が立つやり取りをするイナゴ怪人スカイ達の話を要約すると、能力を分け与える実験台として自分達を使う際、出来ればモーフィングパワーを与えて欲しいのだと言う。
他者に能力を分け与える練習自体は、出久やプッシーキャッツの為にやらなければならないので、俺としては別にワザワザ言わんでもやるつもりでいるのだが、やる気があるなら物は試しと思い、俺は彼等にモーフィングパワーを含めた能力を幾つか分け与えた。
その結果がコレである。ショッカーライダーになれなかったイナゴ怪人スカイ達は、モーフィングパワーを用いて独自のコスチュームを作り、どんな形状に変化しようとも爆発力は一切変わらない恐るべき必殺技を編み出していた。
最大の特徴はその変形のバリエーションの多さだ。『ゴライダーハリケーン・冷凍スプレー』で梅雨ちゃんを冬眠状態に追い込んでから爆破したと思えば、『ゴライダーハリケーン・ドクロ』なる技で青山の頭にカラフルなドクロを被せ、青山が変な顔になったショック(?)で爆発する。
極めつけは『ゴライダーハリケーン・変化球』と言う、リモコン操作で軌道をコントロール出来るインチキボールで「テレ朝がナンボのモンじゃーい!!」と叫んでバットを振るうスポーツガチ勢の麗日を三振させ、麗日が野球界からの引退を決意した所で爆破する。
うん、まるで意味が分からん。尚、教師陣は「並外レタ臨機応変サハ、確カニ必殺足リ得ル」「相手が苦手にしている事を押しつけるのもアリだね」「チームを組むなら代名詞になる合体技は必須よね!」と言った具合で、思ったよりも評価は高い。
パッと見た感じだと5人の連携を崩す事が最も有効の様に見えるが、『ゴライダーハリケーン』はモーフィングパワーによる必殺技である為、連携は本来不要である。つまり――。
「ジャッカー必殺武器――アフリカ象ッ!!」
「さっきも思いましたが、大きさ的には武器と言うより兵器では!?」
「ビィーッグ・ボンバーーーッ!!」
八百万のツッコミを無視し、ゴライダーは各々が大砲のパーツを造りだして合体させると、宣言通りに必殺としか言いようのない武器を大砲から射出する。
イナゴ怪人スカイ達は律儀にも相澤先生の「二つ以上の必殺技を修得する」と言う課題をしっかり守り、大砲から射出された砲弾が空中で変形し、相手を問答無用で爆破する必殺技を開発していた。
そして、この『ビッグボンバー』と呼ぶ必殺技も『ゴライダーハリケーン』に負けず劣らずの理不尽さに溢れており、『ビッグボンバー・蜘蛛の巣責め』はすり抜けてかわす事が出来そうな常闇の『
「SMAAAAAAAAAASH!!」
「何ぃいい!?」
しかし、どんな必殺技でも流石に何度も見せていれば、何かしらの対応をされるのが世の常である。
昨日、俺は出久に俺の中の『ワン・フォー・オール』の力を、その出力を30%程度まで落として譲渡した。これは出久の体を診察して得たデータと、出久との問診で「出力が20%を超えると体が動かなくなる」と言った体験談を元に、デヴィッド・シールド博士が判断した限界ラインである。
オールマイトが言うには「出力が15%を超えると、手足から風圧を繰り出しての遠距離攻撃が出来る」と言っていたので、発揮できる最大出力が従来の半分以下だとしても、大抵のヴィランを相手に充分戦う事が出来るだろう。
ちなみにこれから出久の許容上限が増えれば、俺が追加で『ワン・フォー・オール』の力を譲渡する予定なので、『ワン・フォー・オール』の出力を元に戻せるか、或いはソレを超える事が出来るのかは、出久のこれからの努力次第と言った所である。
かくして、『ワン・フォー・オール』が使用可能になった出久は『フルカウル』によって増強した身体能力を用い、ジャッカー必殺武器が変形する前にゴライダーへと蹴り返す。
蹴り返された砲弾がゴライダーに向かう最中、砲弾は巨大なアフリカ象へ変形したと思いきや、何故かそこで更に人間大のアフリカ象の着ぐるみに再変形した。
「「「「「アフリカ象、嫌いぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」」」」」
そして、アフリカ象の着ぐるみはゴライダーに組み付いて大爆発を起こし、ゴライダーは素敵な遺言と共に全員仲良く爆裂四散した。
「何、緑谷ぁ!? サラっとスゲェ事やったな!」
「おめー、パンチャーだと思ってた」
「上鳴君、切島君」
出久が『シュートスタイル』と名付けたスピードとテクニックを重視した戦法を、体と『ワン・フォー・オール』に馴染ませるべく練習し始めた蹴り技を早速実戦で使った様を見て、これまでとは違うバトルスタイルに驚いた上鳴と切島が出久に話しかけていた。
尚、上鳴と切島はそれぞれが『ゴライダーハリケーン・電気コンロ』と、『ゴライダーハリケーン・ブリリアントカッター』を食らっており、二人とも体が黒焦げになっている。
「発目さん考案のソールと、メリッサさん考案の新素材のお陰だよ。あっちゃんや飯田君から体の使い方を教わって、スタイルを変えたんだ。方向性が定まっただけで、まだ付け焼き刃だし、必殺技と呼べるモノでも無いんだけど……」
「いいや! 多分、付け焼刃以上の効果があるよ。こと、仮免試験ではね」
「?」
「オールマイト。色々と危ないんで、余り近づかない様に」
「いや失敬! すまないね」
出久のシュートスタイルを絶賛しつつも、何処か含みのある事を言うオールマイトに出久は怪訝な様子を見せていたが、オールマイトがその場を離れた事で気を取り直し、上鳴と切島の二人と向き合っていた。
「それより……! 皆もコスチューム改良したんだね!」
「あ!? 気付いちゃった!? お気付き!?」
「ニュースタイルは何もおめーだけじゃねぇぜ! 俺等以外の奴等もちょくちょく改良してる! 気ィ抜いてらんねぇぞ!」
「だがなぁ、中でもこの俺のスタイルチェンジは群を抜く! 度肝ブチ抜かれっぞ! 見るか!? 良いよ!? 凄いよ、マジで!!」
ほう。上鳴もスタイルチェンジを考えていたのか。さっきは、『ゴライダーハリケーン・電気コンロ』による、ゴライダーの無駄に上手いパス回しと、沸騰したヤカンに翻弄されていた所為でその辺がよく分からなかったので、ちょっと面白そうだ。
上鳴がハイテンションで出久に見せつけている右腕のサポートアイテムの形状と、腰に装着している複数のカートリッジっぽい物から察するに、俺としては何かを射出する類いのサポートアイテムだと思うのだが、果たして……。
「そこまでだA組!! 今日は午後からB組が此処を使わせて貰う予定だ!」
「B組!」
「カー! タイミングッ!!」
「イレイザー、さっさと退くが良い」
「まだ10分弱ある。時間の使い方がなってないな、ブラド」
……と思いきや、B組が体育館γにやってきた事により、上鳴のニュースタイルのお披露目は出鼻を挫かれる形となった。
尚、ブラドキング先生の後ろをB組の面々がゾロゾロとついてきており、小森の後ろで何故かマタンゴがフォーフォー言いながら俺に向かって大きく手を振っていた。俺と目があった小森も小さく手を振っていたので、一応手を振り返しておく。
「それよりも、ねぇ知ってる!? 仮免試験て半数が落ちるんだって! 君ら全員落ちてよ!」
「(ストレートに感情ぶつけてくる……)」
「つか、物間のコスチュームってアレなの?」
「“個性”がコピーだから、変に奇をてらう必要は無いのさって言ってた」
「てらってねぇつもりか」
「まあ、精神がアレな状態になるのも無理はない。B組の中で最も危険なのはこの男なのだからな」
「はぁ!? 一体、何を根拠にそんな事を言ってるのかなぁ!?」
「『敵連合』だ。奴等は複数の“個性”所持を可能とする改造人間の製造を目的としていた。つまり、複数の“個性”を使用できる“個性”と体質を持つ者は、連中にとって喉から手が出る程に欲しい改造人間の素体と言う事になる」
「……ちょっと待って、それって、つまり……」
「うむ。そして、今こそ貴様にこの言葉を贈ろう。『あー怖い、怖い! 何時か君が呼ぶトラブルに巻き込まれて、僕らにまで被害が及ぶかも知れないなぁ! 疫病神に祟られたみたいに! あー怖い、怖い!』」
「………」
何時ぞやの食堂で物間が浴びせてきたクッソムカついた言動を、声帯模写まで行って物間にそっくりそのままお返しするイナゴ怪人1号の芸の細かさに、物間は絶句していた。傍目から見ると凄まじいまでの意趣返しであるが、実はこのやり取りの真意は他にある。
これはイナゴ怪人1号を経由して得た情報なのだが、物間は現在公安委員会や警察から要注意人物とみなされているらしい。
物間の“個性”『コピー』は、「触れた相手の“個性”が5分間だけ使える」と言うモノであるが、これは一つだけと言う訳では無く、複数の“個性”の使用を可能としている。
それ単体では全く意味を成さず、限定的ながらも複数の“個性”所持と使用を可能とする“個性”。そして何より、“個性”には「遺伝する」性質がある。
故に、物間が実はオール・フォー・ワンの血縁関係者。或いは同系統の“個性”を持つ事による師弟関係にあり、雄英に潜り込んだ『敵連合』の内通者なのではないかと疑われているのである。実際、『敵連合』が活動を開始したのは物間が雄英に入学してからの話なので、タイミングは合っている。
また、林間合宿においてA組男子とB組男子の腕相撲対決が行われた二日目の夜。補習組の物間は頻繁にトイレと称して補習の教室を抜け出していた訳だが、実はその時に神聖なる男と男の勝負に横槍を入れるだけでなく、合宿先の位置情報を『敵連合』に送信していたのではないか……と言う疑惑もあるのだとか。
尤も、この世には『
基本的に“個性”は親から子へと遺伝し、世代を経る度に強化され、複雑化し、深化していく傾向にある為、「“個性”を奪えない」「複数の“個性”の同時使用が不可能」「5分間しか“個性”をストックする事が出来ない」と言った具合に、性能面の明確な劣化だけが起こり、強化された部分がまるで見当たらないと言う事はまず有り得ない。
そして、あらゆる“個性”に対応出来る体質は確かに魅力的かも知れないが、逆に言えば『敵連合』にとって物間の価値はそれだけだ。改造人間の製造は全てオール・フォー・ワンの為の研究であり、それが『ガイボーグ:SEVEN』と言う完成を見た以上、『敵連合』の改造技術者が複数の“個性”所持を目的とした改造人間の素体として物間を狙うだろうか?
オール・フォー・ワンの言葉を鵜呑みにする訳では無いが、『敵連合』の改造技術者が脳無やガイボーグから得たデータを元に何か新しい物を造ろうとしているなら、今後『敵連合』の手の者が物間を「複数の“個性”を操る改造人間の素体」として狙う事はないと俺は考える。
どちらかと言えば『敵連合』の改造技術者が持つ“複製個性”の技術の土台。或いは教材になったのが物間の『コピー』で、物間の細胞を使って“個性”を複製しているとか言われた方が、俺としてはまだ納得できる。
だが、例えそうだったとしても、それをやる上で物間自身の意思は必要ない。改造技術者の正体が医者と考えられる以上、その気になれば検査だの何だのと容易に物間の細胞を入手する事が可能だろう。
しかし、それでも物間の内通者疑惑が晴れたと言う訳では無い。そこでイナゴ怪人1号は物間に対し、大胆にもカマを掛ける事にしたのである。
「………」
そして、問題の物間のリアクションを見る限り、『敵連合』と物間は無関係だろう。これで本当に物間が『敵連合』の内通者だったなら恐るべき演技力であるが、そうなったら俺は素直に敗北を認めるしかない。
「……まあ、貴様の事情はどうでも良い。それよりもデクの“個性”の調子の方が重要だ。エネルギーが蓄積されて使用可能になった“個性”の調子をもう少し見ておきたいのでな」
「……なるほど、緑谷君は“スカ”って訳か。そりゃいい! “スカ”と分かれば、事前にそれに応じた策を練れるからねぇ!」
デヴィッド・シールド博士と共に考えた、出久の“個性”の弱体化に関する言い訳……「これまでに発揮していた超パワーは、“個性”が判明するまでに蓄積された10数年分のエネルギーによるものである」と言う理論に基づくイナゴ怪人1号の言動を聞いた途端、物間は水を得た魚の様に生き生きとした。
しかし、“スカ”? 何となく物間にとって良くない意味である事は予想は出来るが、その発言に疑問を持ったのは俺だけではなく、早速上鳴が物間に疑問をぶつけていた。
「? “スカ”って何だ?」
「緑谷君の“個性”をコピーしても、僕には何の意味も無いって事さ。僕の“個性”は『“個性”の性質そのもの』をコピーする事が出来る。でも何かしらを蓄積してエネルギーに変える様な“個性”の場合、その蓄積まではコピーする事が出来ないんだよ」
「? つまり、どう言う事?」
「例えば、物間が上鳴の“個性”をコピーしても、上鳴が体に貯めこんだ電気まではコピーする事が出来ない。物間が上鳴の『帯電』を使うには、“個性”をコピーした後で電気を溜める必要があるって事だ。違うか?」
「いや、それで正解だよ。たまに居るんだよね、僕がコピーしても“個性”が使えないって事。そう言う君達みたいな使えない“個性”を、僕は“スカ”って呼んでるのさ」
「なるほど……って、ヒデェな、オイ!!」
物間の言い分に上鳴は憤慨するが、俺としては非常に良い事を聞いた。その理屈で言うなら、物間は溜め込む系の“個性”に該当するエリの『巻き戻し』は使えない。
相澤先生はエリの『巻き戻し』の訓練において、物間に協力して貰ってエリに『巻き戻し』の使い方を教えると言う方法も考案していると言っていたが、それは不可能と言う事だ。つまりは、エリを物間と会わせる必要も無い。良かった……。
「しかし……彼の意見はもっともだ。同じ試験を受ける以上、俺達は蟲毒……潰し合う運命にある」
「だからA組とB組は、別会場で申し込みしてあるぞ」
「へ……?」
「ヒーロー資格試験は毎年6月・9月に全国三ヶ所で一律に行われる。同校生徒での潰し合いを避ける為、どの学校でも時期や場所を分けて受験させるのがセオリーになっている」
「ふむ……と言う事は、学校によってはセオリーとは違う例外的な対応をする事もあると言う事か?」
「それは例外と言うか、単に受験する生徒が少ない為、学校側でそうした配慮をする必要が無いってだけだ。例えば、『ヒーロー科が一学年に一クラスしかいない』とかな」
「………」
「そもそも学校側からすれば、只でさえ合格率が低い試験の合格者を少なくするメリットは無い。同じ試験会場に多数の生徒を受験させ、少ない合格枠を巡っての潰し合いが起こってはむしろ困る訳だ。何より、仮免試験は同校の生徒同士で協力する事が認められている」
「え? 生徒同士で協力?」
「仮免試験って、チームプレイもOKなんすか!?」
「最初に言っただろう。仮免試験では情報力・判断力・機動力・戦闘力の他に、コミュニケーション能力・魅力・統率力等、多くの適正を試される……と。当然、チームプレイも判定基準に入っている。その上で、合格率が例年5割を切る」
「あ……」
ブラドキング先生の口から「チームプレイが認められている」と聞き、少しは試験が楽になるかもと思った者もチラホラ見受けられたが、逆に言えばそれで合格率が例年5割を切っていると知り、仮免試験の厳しさを各々が再確認した。ある意味では、雄英の入学試験よりも狭き門と見る事が出来るだろう。
「そして、1年の時点で仮免を取るのは全国でも少数派だ。雄英も本来のカリキュラムなら2年で仮免を取得する。諸君等は例外的に通常の習得過程を前倒しする形での受験になった訳だが……それは君達よりも訓練期間が長い者。未知の“個性”を持ち、洗練してきた者達と合格を奪い合う事になる訳だ」
「ククク……もったいぶった言い方よな、イレイザーヘッド。ハッキリと言ってやればどうだ? 貴様等は全国放送で各々の“個性”やバトルスタイルは勿論、人によっては“個性”の発動条件や使用制限、リスクやデメリットと言った弱点さえも割れているとな」
「え? 弱点が割れてるって……」
「! そうか! 体育祭か!」
そして、駄目押しに相澤先生が言った事を、より分かりやすくイナゴ怪人1号が解説した事で、ただでさえ難易度の高い仮免試験が更に困難なモノになっている事を、ヒーロー科の全員が理解させられた。
「まあ、その通りだ。『同校の生徒同士で協力する』事が認められているなら、必然的に学校単位での対抗戦になる。なら当然、受験生は合格する為に『どの学校の受験生が一番倒しやすいか』と誰もが考える。その為、仮免試験では毎回他校の受験生による『雄英潰し』と呼ばれるモノが、半ば慣習として行われている」
「雄英潰しぃ!?」
「何っすか、その悪しき慣習!!」
「落ち着け。確かに諸君等は他校の受験生と異なり、既に情報面でアドバンテージを取られている。だが、プロになれば相手に自分の“個性”が知られているなんざ、ヒーロー活動をする上での大前提だ。必殺技を習得する為の圧縮訓練と、それに伴うコスチュームの改良は、そうした諸君等の状況を覆す為のモノでもある」
うん。改めて思うのだが、相澤先生は普段からそれ位丁寧に説明してくれても良いと思う。
別にヒントだけ与えて各々で考えさせる教育方針を否定はしないが、『雄英潰し』に関してはブラドキング先生が言わなければ、相澤先生は黙っているつもりだっただろう。「言おうが言うまいが、生徒達にやって貰う事は何も変わらない」とか合理的に考えて。
「試験内容は不明だが、明確な逆境が待ち受けている事は間違いない。余り意識し過ぎるのも良くないが……忘れないようにな」
「「「「「「「「「「はいッ!!」」」」」」」」」」
しかし、結果的にはブラドキング先生が早めに来てくれたお陰で、仮免試験に対して更なる対策を練る事が出来、相澤先生を含めた先生方の株が全体的に上がったと言える。
そして、相澤先生が何か美味しい所を持っていった感じがするのだが、その事はA組に並々ならぬ対抗心を燃やすブラドキング先生が気付いた様子は全く無い。
キャラクタァ~紹介&解説
呉島新
いよいよ本格的に『魔王』へと至る道を歩き始めた怪人。エリを保健室へ迎えに行ったら、I・アイランド産の植物怪人達がエリの遊び相手をしている光景を目撃する。そしてエリからクレヨンで描いた自分の絵を渡されてホッコリする。
緑谷出久
復ッ活ッ! 緑谷出久、復ッ活ッ! ちなみに復活の方法はシンさんの緑色の血を果糖と一緒に飲む事……ではない。ヒロアカは彼が「最高のヒーローになるまでの物語」と言うが、原作のガンギマリデク君を見ると……だからちょっとだけ変えます。
メリッサ・シールド
スピンオフの『チームアップミッション』と比べ、かなり前倒しになる形で雄英にやってきた少女。彼女のお陰でデク君のコスチュームは全体的に原作よりも強化されているが、その分デク君の気苦労も増えている。主に発目とのサポートアイテムバトルで。
発目明
イナゴ怪人に負けず劣らず何時も通りのサポート科女子。上記のメリッサとの関係は割と良好。しかし、やはり時折譲れない拘りがアグレッシブにぶつかり合う時があって、その度に開発工房は爆発し、パワーローダーの胃袋にストレスが溜まる。
A組の面々
ゴライダーハリケーン&ビッグボンバーの犠牲者。相手はイナゴ怪人なのにヒーロー的なコスチュームを着ているものだから、見方によっては彼等の方が悪役怪人に見えるかも。爆発の威力は割と抑えられていた為、食らっても黒焦げになる程度で済んでいる。
B組の面々
マタンゴが近くに居ても別にどうって事がなくなった連中。この後、復活したゴライダーによる『ビッグボンバー・ドブネズミ』を、銀の小峠こと戦士鉄の爪っぽい鉄哲が食らって半端じゃない大爆発が起こり、レトロな特撮好きの円場は大興奮。
相澤先生&ブラド先生
原作よりも多くの情報を教え子に与えた教師達。作者の所感として、ブラド先生はB組の生徒に『雄英潰し』の事を普通に教えていると思う。またA組対B組の『合同戦闘訓練編』を見る限り、受け持ちの生徒同士の合体技とか提案していそう。
コスチュームγ
メカニカルな発目のサポートアイテムと、メリッサさんのスマートなサポートアイテムがモリモリ盛ってあるデク君の新しいコスチューム。原作との相違は改良されたフルガントレットを筆頭とした両腕の装備や、ベースのスーツに使用されている素材。
ヒロアカの元々の設定だと、デク君は『“無個性”でヒーローを目指す主人公』だったらしいので、それなら同じ“無個性”の視点で開発されたメリッサさんのサポートアイテムはかなり重宝される気がする。
仮面戦隊ゴライダー
変身者は下弦の鬼……ではなく、主人公から能力を分け与えられたイナゴ怪人スカイ・スーパー1・ZX・BLACK・RXの5体。血ではなくジーフィーを求めたのは、『いきいきごんぼ』の作者である陸井栄史先生が、烈海王の異世界転生マンガを描いていると知った事が原因。私は一向に構わんッッ!!!
見た目は劇場版『超スーパーヒーロー大戦』等に登場した「仮面戦隊ゴライダー」と瓜二つ。使用する必殺技は「ゴライダーハリケーン」と「ビッグボンバー」の二つだが、技の性質はどちらも似たようなモノなので、実質的には一つと言える。
ゴライダーハリケーン&ビッグボンバー
ありとあらゆる意味で最強の必殺技。名前こそ「ゴライダーハリケーン」だが、作者の趣味で戦隊ヒーロー屈指の謎過ぎる必殺技「ゴレンジャーハリケーン」の要素がふんだんに組み込まれている。「ビッグボンバー」は「ゴライダーバズーカ」的なポジで出した。
技の内容と言うか、爆発に至までの過程が余りにも意味不明過ぎるし、まず予測する事など不可能に近い性質を持つので、仮免試験編に登場したアニメオリジナルキャラクターである印照才子の様なタイプにとっては天敵と言って良いと思う。