ドラゴンボールZ──宇宙の危機!極悪人統一決定戦── 作:SHV(元MHV)
ある方との会話で思いついたこのお話。落ちすらまだ決まっていませんが、いつも通りノリと勢いで書いていきたいと思います。
「た、大変じゃ~~~~!!」
青白い顔をさらに青くしながら、小柄な男が小さな星の上で走りまわる。その様子を同じくどこか慌てながら眺めているのは小型のゴリラにも似たバブルスくんである。
この小さな星の名前は界王星。かつて破壊神によって壊され後に再構成されたこの星は、あの世の果てに存在している。そのサイズは歩けばほんの数分で一周出来るほどのサイズではあるが、その重力は地球の十倍。質量にして月ほどもあるというちょっと特異な星でもある。
そんな星で苦も無く走り回る存在。彼こそは界王と呼ばれる宇宙の管理者の一人であると言えば、その強さが幾らかは伝わるだろうか。
界王とはすなわち、それぞれの星を統べる神の上に立つ存在。そもそもこの世界における神々とは、一柱の破壊神とそれ以外無数に存在する創造神に分けられる。宇宙とは脆く、時として星一つを破壊しかねない存在が呆気ないほど唐突に現れかねない。故に神々らはそれぞれの星を管理し、必要に応じて生命のバランスを
界王とはそんな神々が管理を怠らぬように存在する監視者でもあるのだ。東西南北にそれぞれ存在する中の北の界王である彼はとある事情によって既に死んでいるものの、あの世でもこの世でもないこの空間においてその違いは頭に天使の輪っかが付いている程度に過ぎないが。
さて。それではそんな宇宙の大物である彼が何故慌てているのか。当然であるが、慌てざるを得ない状況が起きたのだ。
『か、界王様!』
「ぐぬぬ……こんなことがビルス様に知られたらとんでもないことに……いやいやだからといってさすがにワシ一人でどうしようもない事態じゃしどうすりゃいいんじゃこんなもん……ブツブツ……」
『界王様!!!』
「どわぁ~~~~~~!!!!」
そんな界王の頭に怒声が響く。彼と同じく、今起きている事態を目の前で感じ取ったであろう存在。閻魔大王である。
念話によって会話するその体躯は、界王が人間の子供ほどだとすれば小さい山ほどに大きい。強さもそれ相応のものではあるが、さりとて界王には敵わぬ程度である。彼の仕事は各銀河に存在する死者を天国と地獄へとそれぞれ取り分けるという、創造を司る神々の中においても重要な仕事に就く神の一柱であった。そんな彼と界王が慌てている。
すなわち、今回の騒動は死者の世界であるあの世で起きていた。
『界王さ「聞こえておるわやかましい!! さすがにわしもこんな事態になれば気づくわい!!」す、すいません』
頭に響いた声に驚いてひっくり返ってしまった身を起こしつつ、やかましいとばかりに唾を飛ばしながら念話に応える界王。
彼からすれば悩ましいを通り越して理解不能な事態が今まさに起こっていた。
まさか
これまでもある男と共に銀河の危機とも呼べる状況にさんっざん関わってきた北の界王であったが、ここ数十年における経験則から嫌な予感がして仕方がなかった。普段はのほほんと過ごしている彼であったが、一応北の銀河の管理者としての責任感がないわけではないのだ。そして彼の予感は即座に現実のものとなる。
『おい北の!! 一体何が起こってる!?』
先ほどの閻魔大王どころではない勢いで、文字通り口角泡を飛ばしながら念話をしてきたのは西の界王。何かと北の界王をライバル視する存在でもある彼だが、今回ばかりは嫌味を飛ばす余裕もない。
『ちょっとまさか皆さんのところもなの!?』
『私の銀河も同様だ……!』
僅かに遅れて東と南の界王からも動揺した声が響き渡る。恐らくほぼ同時に北の界王へと連絡を取ったのであろう。北の界王は確信した。もはやこの事態は、この宇宙全体の問題とも言えると。
『……うん、ちょっと洒落にならない事態が起きてるみたいだね』
『『『『大界王様!!!!』』』』
異口同音に返事をした相手は、そんな彼ら東西南北の界王らを従える老人の界王。通称大界王である。数万歳を超える老人でありながらサングラスの奥に輝く眼光は鋭く、今もなお現役であの世の達人を鍛え続ける、武術という概念における最高位の存在でもあった。
『これ、早めに何とかしないと生命のバランスがとんでもないことになると思うんだよね。最悪幾つかの星を破壊してもらわないと、あの世自体が維持できなくなる可能性があるよ』
「そ、そんな……!!」
言われるまでもなくそのことに気づいていた界王ではあったが、言葉にされたことによる重みは深い。
そもそも、ありとあらゆる宇宙において死んだ存在はすべからくあの世へと送られる。その際肉体は完全消滅でもしていない限り現世へと置き去りにされ、魂のみとなった者達は生前宿した魂に宿る気の性質を見抜かれ、“善の気”を持つ者であれば天国に、“悪の気”を持つ者らは記憶ごとスピリッツロンダリング装置によって灰汁抜きされ、その身に宿した“悪の気”を全て絞り落とされる。
そうして無垢な魂となって初めて、彼らは再び生まれる命として転生させられるのである。善の気を持つ者らが天国に存在しているのは、あの世における気の性質のバランスを保つ為でもあるのだ。何故なら、すべての“悪の気”を持つ者達がスピリッツロンダリング装置で浄化しきれるわけではないからである。
何故なら数万人を殺したような特に濃い悪の気を所有する魂らは、どれだけ絞っても悪の気を絞り切れぬのだ。そして、そんな者達を悠久の時を費やしてさらなる浄化を施す場所こそが、地獄。ここに落とされた者たちは、スピリッツロンダリング装置で濾しきれなかったほどの悪の気を洗浄する為、敢えて仮初の肉体を与えられ無数の責め苦が施される。
これは悪の気を逃さんとする魂の強度とも呼べるものを弱体化させる為に行われる措置で、ここで与えられる痛みは魂そのものに響かせるものである。血の池地獄という、種族によっては何ら痛苦ではない装置が存在するのも、これら魂の洗浄に必要な処置の一つだからだ。
そして、大界王らが言うあの世のバランスとはまさにこれのことでもある。長い時を費やしてあの世に満ちた善悪の気は一種の圧力を備えており、その一部が急激に失われたことで現状の地獄は一種の真空状態にある。今はまだ閻魔や界王らが存在していることで形こそ保っているが、このままではあの世が崩壊し死者が蘇る事態になりかねない。そんなことになれば、かつてジャネンバが現れた時以上の混乱は必須である。最悪、宇宙のリセット装置である全王によってこの宇宙ごと消滅させられかねない。
さらにこれは北の界王と大界王しか気づいていなかったが、この仮初の肉体を持つ者達の中には溢れんばかりの“悪の気”から生前に近い強さを持ってしまう者たちもいる。そんな者たちは抵抗できぬよう封印を施した状態で、“善の気”を持つ者らが住む天国に保管されていたのだが、今回それら凶悪な存在までもが忽然と消え去ったのだ。
彼ら極悪人の一部は界王ですら到底敵わぬほどの実力を持つ存在である。しかも質が悪いことに、彼らは死人である以上通常の手段では倒すことすら出来ない。魂となった存在を管理できるのは、神以外に他ならないからだ。
重い沈黙が続く中、北の界王は此度も一人の男の力を借りねばならない。そんな確信とも言える信頼を胸に浮かべることでどうにか暗澹とした気分を晴らそうとしていたが、今回ばかりはそれも上手くいきそうにはなかった。
細かい設定に関しては完全オリジナルですので悪しからず。
まあドラゴンボールに関してはスーファミとかその辺含めると原作以外公式設定と言っていいのかわからない部分がありますので、この辺は作者自身の考察による部分が大きいです。