ドラゴンボールZ──宇宙の危機!極悪人統一決定戦── 作:SHV(元MHV)
メタルクウラへと転じたことで再生能力を得たクウラであったが、状況は好転したとは言い難かった。
より鋭く、より
さらにはもはや緑の巨大なゲル状物質と化したスラッグは近づくもの全てを取り込もうと荒ぶり、周囲の物体を荒地もろとも取り込みながら肥大化を続けている。こちらは上空にさえ逃れてしまえば対処は容易だったが、それとて気を抜けば食われかねない。
いっそブロリーと共食い状態になってしまえばその隙を突いて一網打尽とするところだが、現状ではそうもいかなくなっていた。
「ばっ!!」
超能力を用いた衝撃波でせり上がってきたスラッグを散らし、次いで瞬間移動を応用した遠隔爆撃であるロックオンバスターをブロリーに用いる。結果は無傷。いっそ清々しいほどにダメージがない。
──不意に、クウラはブロリーの様子に違和感を感じた。彼から放たれる、自分以外の全てを苛む圧倒的な害意が、突如として止んだのである。
さながら嵐の渦の中心へと招かれたような一瞬の静寂は、スラッグを除いて場の空気を書き換えることに成功していた。
ブロリーの視線が向かう先に存在していたのは、言わずと知れたバーダックであった。数百を超えるサイヤ人らの魂をその身に宿し、超サイヤ人という新たな力へと覚醒したことで、いよいよもってフリーザ打倒を誓った彼は、手始めにより大きな力の持ち主──すなわちブロリーの下へと向かっていた。
「グァ……ォォッドォ!!」
スラッグに巻き付かれることも厭わず、魔猿となったブロリーが人語めいた唸り声を呟く。スラッグは全身から消化液のようなものを分泌し、ブロリーの体からは肉の焼ける音と臭いが立ち込める。
さしものブロリーも、直接取りつかれてはエネルギーの奔流による防御も儘ならないらしい。だが、紛れもない激痛が襲っているであろうにも拘わらず、ブロリーはそれらを無視していた。それどころか、全身のあちこちを焼かれながら歩き始める。
「ゴア、ルォォォォ!!!」
再びの猿叫。此度の咆哮は破壊光線を伴い、広範囲に吐き出されたエネルギー波が地平線に至るまでの景色を更地へと塗り替えていく。
──否。ただ一人、この破壊光線の津波を真正面から受け止め、凌いだ存在がいた。
地平線に浮かぶ彼──バーダックを目の当たりにし、ブロリーはその目を血走らせ雄たけびを上げる。
「ゴアオォォォドォォォォ!!!!」
「……なんだぁ、こいつは」
未だブロリーがいる場所との距離は十キロはある。だが、規格外の大きさを誇るその姿は既に確認できていた。
そんなブロリーの姿を見て、バーダックが思わず独り言ちたのも無理はない。姿だけを見るならば、色を除けばその容姿は大猿となったサイヤ人そのものであるからだ。しかしその全長は優に300メートルを超え、全身から溢れるエネルギーの奔流はオーロラを思わせる輝きを放ち続けている。
バーダックが思ったのは、果たしてここまで巨大な存在が
とはいえ仮にパラガスがいたとしても、その困惑と恐怖が内から伝わるだけであっただろうが。
「ゴオオアアオオオオ!!!」
「くぁっ……!?」
再びの破壊光線が、今度は明確にバーダックを狙い放たれる。
悪夢において無惨に焼かれていく自身の姿を見たバーダックは、それを予め回避することで生還に成功。ブロリーが示したシンプルな挑戦のサインを受けて、バーダックは唇を笑みに歪めつつ超サイヤ人へと変身する。
「いい度胸だ、相手になるぜ!!」
同胞であれば手加減する、などという考えはサイヤ人にはない。むしろ、同じサイヤ人でありながらこれほどまでの力を発揮する強さそのものに、内包する多くのサイヤ人が興味と興奮を抱いていた。
「ガガロッドオオオオオ!!!!」
再三の咆哮が言葉であることを、ようやくバーダックは察した。そして同時に、その発音が自身の息子を示していることも。ということは、この巨大なサイヤ人も息子が倒したのかとバーダックは思い至り、思わず大笑した。
「ハッハッハ! カカロットの野郎、どんだけ恨みを買ってやがる!」
内に宿った息子や元同僚から聞いた事情によれば、フリーザによる星の滅亡から生き残った息子は、兄であるラディッツやかつての仲間とも戦ったことは聞き及んでいた。
サイヤ人において、単なる喧嘩が殺し合いに発展することなど珍しくはない。とはいえわざわざ生き残った同族同士が殺しあう虚しさを僅かばかりに感じつつ、果たしてどれだけの相手をあのクズのごとき戦闘力しかなかった息子が成しえたのか。
いや、クズというのは彼自身の勘違いだったのだろう。その証拠に、カカロットによって倒された相手にはあの日バーダックが手も足も出なかったフリーザさえ含まれているのである。この分では、この場に招かれた地獄に亡者の幾人がカカロットの手によって倒されているのか。バーダックはそちらに興味が乗ってきていた。
「ふっ、生き返ったら孫の顔でも見に行ってみるか……!」
ラディッツから孫の存在を聞いていたバーダックは、似合わぬセリフを吐きながら全身から噴き出す金色のオーラを推進力として、ブロリーの繰り出した拳へと真正面から突っ込んだ。
「ゴアア!!!」
「ラアア!!」
サイズ差にして数百倍どころではない質量差があるにも拘わらず、バーダックの一撃はある程度までブロリーの拳と拮抗し──弾かれ吹き飛んだ。
「ぐあっ痛ぅ!! ……ククッ、ハッハッハ!!」
それはそうだろうと、トーマら仲間達からのツッコミが入りバーダックはまたもや笑う。早くも血まみれとなったバーダックであるが、理性を失ってなおこれだけの力を発揮し続けるブロリーの強さにますます惚れこんでいた。
吹き飛んだ勢いを空中で高速回転することで殺し、体勢を整える。真正面からがダメならばと、次にバーダックはブロリーの周囲を旋回しながら無数のエネルギー弾を雨あられと降り注がせ始めた。
一発一発がクウラが放ったスーパーノヴァに匹敵するほどの爆撃だが、その程度のことはクウラとて行っている。だが彼との最大の違いは、ダメージの是非はともかくバーダック自身が実に楽しそうにブロリーとの戦闘を行っていることだった。
ちなみに二人が戦う間もスラッグはブロリー及びバーダック、戦いに引き寄せられてきた生き残りの亡者を取り込まんとゲル状の触手を伸ばすが、それらは邪魔だと言わんばかりのブロリーによる一撃を受けて集まった亡者ごと四散していた。
ブロリーは、笑いながら向かってくるバーダックにイラつきと我知らず興奮を覚えつつ、失った筈の理性を徐々に取り戻しそれに応戦し始めた。
……すっかり蚊帳の外となってしまったクウラであったが、むしろこれ幸いと、先ほど思いついた一つの技を練り続けていた。
クウラが作っているのは、一種の天体図を思わせる複数の円盤が複雑に重なり合ったエネルギー体であった。
これはフリーザが扱うデスソーサーと同じく、斬撃を目的としたエネルギー体である。クウラ自身は、この斬撃を目的としたエネルギー波には大きな欠点があると考えていた。それは、この斬撃光線とも呼べるエネルギー体を構築するのにどうしても手間がかかってしまうということである。
格下相手やとりあえずの目的で放つのならともかく、ある程度近い実力ともなれば、通用させるために必要な“溜めの時間”をどうしても必要としてしまうからだ。
これを無くすのには機甲戦隊のサウザーブレードのように直接纏うなどすればよいのだが、そうなると今度は射程が犠牲になる。さらには斬撃という強力無比な特性を活かす為、回転に速度を奪われてしまうこともデメリットと言えた。これによって速度はどうしても遅くならざるをえず、当てる為にはフリーザのように遠隔操作するなどの工夫をせざるを得ない。これらを総合的に見ればエネルギー斬撃は攻撃力一点特化のロマン技であり、実戦においてこれを運用するにはどうしてもその大きな隙を補う必要があった。
これらの欠点に気付いていたクウラは弟の扱うデスソーサーと同じことは出来たものの、彼との差別化を図る為もあってか殆ど用いることはなかった。
しかし、今がブロリーの注意が自身に向いていない千載一遇の好機ともなれば話は違ってくる。クウラは複数のデスソーサーじみたエネルギー体を構築しこれを重ね、乱回転じみた軌道を取らせることで天体図のようなエネルギー体──プラネットソーサーを構築していたのだ。
仮にこれだけ高密度な斬撃が命中すれば、さしものブロリーであろうと防ぐことは出来ないであろう。当初の狙いは尻尾であったが、これであれば背中から心臓を一撃に貫くことさえ可能な筈だ。
「──ガッ……! ガカッ……!!」
──突然、自身の技の出来栄えに満足していたクウラの背中から胸にかけて、鋭い衝撃が走った。
口から大量に吐血しながら見下ろせば、胸元から鋭い針状のエネルギー体が貫いている。しかもそれは心臓部分にある魂の核を的確に貫いており、クウラは構築していたプラネットソーサーを霧散させてしまう。
今まさに自分自身がやろうとしていたことをされ、それを成し遂げた相手の姿を見る為に振り返り、クウラは衝撃に固まった。
「フリー……ザ……!!」
止めどなく血を吐き出しながら、魂そのものが傷つけられたことで急激に戦闘力を落としたクウラはその場で落下しそうになる。しかし、胸に刺さった針がそれを許さない。むしろ、体内へと侵入した針は更なる針を棘のごとく次々と生やし、クウラを体内からズタズタに引き裂いていった。
「やはり兄弟ですねえ。兄さんも背中から撃つことを考えていたとは」
「……コッ……ココッ……!!」
何やら言おうとするクウラへ、追加で頭にも高密度のエネルギーで構築された針──デスニードルを刺してとどめとしながら、フリーザは痙攣する兄の胸を抉り、光り輝く魂の核を取り出す。
「色々と観察していて気づいたんですが、どうやら同族の魂を加工した方がより効率よく強くなれるようですよ。おっと、もう聞こえていませんでしたね」
痙攣が止み、既に息絶えたクウラの死体を足元へと放り投げると、フリーザは取り出した魂を恭しく自らの胸へと取り込ませた。
「これで三つ目。どうにか、他の方々を殺せるだけの力は得られましたかね」
兄を殺した後悔など微塵も感じさせないフリーザは、先ほどクウラへと近づいたように自らの気配を再び消す。そうして十分に離れた場所から、今度は如何にして漁夫の利を得ようかと再びの観察を始めた。
……バーダックを退けてからしばらく。彼は、ここに至るまで何もしてこなかったわけではなかった。だがその様は他の亡者と比べて異様とも言えた。何故ならフリーザは無暗に戦うことをせず、むしろ与えられた仮初の肉体の性能を試すことに終始していたからだ。
特に、新たに得た能力である気の感知。これによってバーダックが持つ奇妙な特性を確認したフリーザは、この肉体と魂の力がどこまで発展性のあるものかを可能な限り試していた。
これが、ただ単に生き返ったというならば事情は違っていただろう。どんな理由であれ、復活した肉体が自らの物であるならばそこに思惑はあれど、自由に操れることは大前提だ。
しかし、今の体はその名の通り仮初の物である。どれだけ他の有象無象を蹂躙できたところで、最悪自分自身が知らない爆弾を抱えているかもしれない。そんな危ない賭けに乗るフリーザではなかった。
彼は静かに、ゆっくりと己の体を試した。雑魚を始末しながら魂の吸収速度を確認し、気の感知能力をさらに磨くことで魂そのものを視認することすら可能としていた。
そうして彼は、バーダックとドクターウィローの戦いを全て目撃していた。ウィローによる魂の占領。バーダックによる魂の共有。それらの現象を離れた場所で確認しながら、ならば自身もあれらと同じ手段を用いるかと悩み──否と断じた。
己は宇宙の帝王フリーザである。何人たりとも自身を共有することは許さず、また同位体の必要もない。
だが、その結果得られる力は魅力的だった。そこでフリーザは考える。ならば、別の形で得られる力の形を探ればいいと。
そこでフリーザが考えたのは、まず己の同胞であるコルド大王の魂の所在であった。バーダックとウィローの戦いを目撃できたのも、彼がコルド大王を探していたことが大きい。これにクウラを選ばなかったのは、この時点でクウラの戦闘力はフリーザを遠く引き離していたからである。
だがフリーザは慌てなかった。まずはウィローが敗北したのを見届けると、バーダックがその特性ゆえにサイヤ人以外の魂を拒絶するのを確信。彼が離れるのを見計らい、宙に漂う無数の魂を全て自身のものとするべくその場に降臨した。
彼は、コルド大王の魂を加工することを思いついていた。フリーザの父であるコルド大王は、地球で死んだ際にはその真価を発揮することすらなかった。それはひとえにコルド大王が通常形態をコントロールしきれないがゆえだったが、今のフリーザからすれば荒ぶるほどの力は好都合だった。
フリーザは自らのエネルギーでコルド大王の魂を包み、他の魂を材料とすることで加工した。魂を侵して乗っ取るのではなく、自らの魂そのものを増やす。それがフリーザの選択であり、結論だった。魂を割いたり分けたりすることは多大なダメージを伴うが、その分は周囲に漂う魂を取り込むことで補った。
同質の魂と共鳴させるで魂を乗算する力。これを父親の魂を加工して自身の魂を複製することで、フリーザはバーダック以上の効率的パワーアップを成し遂げた。無論、次に狙う相手はクウラである。だが、当のクウラはよりによって伝説の超サイヤ人と交戦真っただ中だった。ブロリーの圧倒的な暴威は、最悪こちらに向けば今のフリーザとてあっさり殺されかねないほどである。
そこでフリーザは自身の気を消し、存在感を限りなく抹消しながらエネルギーを外に漏らさない為の技を考え、その場で作り上げて見せた。
そうして生まれた技が、先ほどクウラを殺害した技──デスニードルである。高密度高濃度に圧縮されたエネルギーそのものであるデスニードルは外部に魂の力、すなわち気を漏らすことがなかった為、いざ貫かれるまでクウラをして気づくことがなかったのだ。
先ほどと同じく、周囲を漂う魂を用いてクウラの魂を己と等しくする為の加工を施したフリーザは、取り込んだ魂が増えたことによって、その気になれば兄がしたようなメタル化などの肉体的変質や、あるいはこれまで不可能だったさらなるパワーアップ形態への変身も可能となったことに気が付いた。
──しかし、彼はそれを否とした。
そもそも、フリーザ一族における変身とは他の種族とは違う特別なものである。その存在自体が珍しい変身能力であるが、変身する目的は大半の種族が自身の強化に終始する。だが、フリーザ一族の変身はその真逆、自身の弱体化の為の変身であった。
彼らフリーザ一族が宇宙の覇者として名を馳せるようになったのは、今から遥か昔が始まりである。当時のコルド大王はその圧倒的な戦闘力を振るいあっという間に支配領域を拡げたが、同時にあまりに強すぎる力が支配にあたって実に不向きなものであることを実感していた。なにせ、自身の一挙手一同に気を使わねば、ほんの戯れで星を破壊しかねないのだから。
当時コルド大王は奪った星を転売する地上げ屋を始めたばかりであり、せっかく占領した星を消しかねない己の力を持て余しているとも言えた。ゆえに、コルド大王は長い年月をかけて手加減する為の変身を習得したのである。こうして、コルド大王──当時のフリーザは宇宙の帝王としての支配を盤石なものとしていったのである。
そして、変身による弱体化が求められたのは息子であるクウラやフリーザもまた同じであった。さらに言うのであれば、変身の回数が多いほど本来の力が大きいことを意味する。フリーザやクウラの変身は、コルド大王のそれよりもさらに一段階多く存在していた。
しかし、ある時期からフリーザの兄であるクウラは、周囲に気を使うことを恥と考えるようになった。帝王として、変身してまで弱体化することを情けなく思えるようになったのだ。無論それを続けるには絶え間ない戦闘力のコントロールが必要だが、クウラはそれと引き換えに通常形態の姿で細やかな力のコントロールをする能力を得ていた。さらには本来弱体化に伴う変身を応用することで、フルパワーが及ぼすデメリットを解消したさらなる強化形態へと変身する芸当を可能としていた。
今のフリーザであれば、かつての兄と同じ強化形態への変身は可能だろう。だが、付け焼刃の変身など邪道だと、今のフリーザは断じていた。
なるほど、確かに変身することで得られる爆発的な力は魅力的だろう。だがそれは、同時に細やかな力の采配を投げ捨てるような真似に他ならないとも言えた。表面的な強さに終始すれば、それこそかつて屈辱を舐めた二度に渡る敗北を繰り返すことになりかねない。
例えばこれが、生身の肉体を得て再び生を得たのであれば、柄にもないトレーニングという選択肢もありえたかもしれないだろう。
……だが、それが帝王と言えるだろうか。格下と見た相手に勝つために、必死で特訓し力を得る帝王は帝王足りえるだろうか。
断じて否である。フリーザとは一族最強の称号。そもそも、彼は最初から強いのである。
であればこそ、この舞台における五分の条件を利用すればよい。フリーザはそう考えていた。
何よりも、厄介な連中が勝手に潰しあうのならばそうしてもらえばよいのだ。帝王は最後に上前を撥ねればいい。
「さあ、精々頑張って戦ってください。勝った方を私のディナーにしてさしあげますよ。ホーッホッホッホッホ!」
既に頂点じみた強さを得ているバーダックとブロリー。その二人が戦えば、どちらもただでは済まないだろう。自身の出番はそれからだとほくそ笑みながら、フリーザは全周囲を警戒しつつ、高みの見物へと興じるのだった。
フリーザ様登場!!
別にゴールデンフリーザ否定するとかでなく、アルティメットルート選んだフリーザ様とかよくない?となった次第。
また今回斬撃系エネルギー波における考察をご提供いただいたhisao氏に感謝を表します。