ドラゴンボールZ──宇宙の危機!極悪人統一決定戦── 作:SHV(元MHV)
「だだだだだだだだだっ!!!」
両手にエネルギーを集中し、全身にかかる負荷を無視した強烈な打撃を繰り出すバーダック。
1つ1つの攻撃はそれほど大したものではない。だがブロリーはそれらの攻撃を鬱陶し気に振り払い、バーダックを叩き落そうとする。
「下手な攻撃よりは効いてるみたいだな!」
バーダックとブロリーの圧倒的なサイズ差は健在であったが、バーダックは彼の持つ欠点をこの短い間で見抜いていた。
それは、大猿化しているにも拘わらず遅いという点。以前バーダックが変身した際に用いた高速機動。これをブロリーは扱うことが出来ていなかったのだ。仮に用いていれば、恐らくスラッグやクウラとの戦闘は遥かに早く終わっていただろう。
だがブロリーは、理性が消失したか、それともその生涯において大猿化に頼らぬ戦闘を繰り返した結果によるものか、大猿となった肉体におけるエネルギーの奔流を操作する術を知らなかった。すなわち、ブロリーはこと大猿化した状態において、力を持っているだけの幼子と変わらないということでもある。
さらにはブロリーにとっては高速機動を用いずとも、そもそも圧倒的な巨体を身じろぎしただけで、エネルギーの奔流に触れた対象には大ダメージが入るという点も大きかった。それだけ、ブロリーの肉体から溢れるエネルギーの奔流の勢いは凄まじかったのだ。
普通のサイヤ人であれば、これだけのエネルギーを無制限に使っていれば変身の解除ないしスタミナ切れで動けなくなってしまう。だが、そこは無限のエネルギーを取り出し続けるブロリーだけあって、疲れるどころか動けば動くほどにその勢いは増しつつある。
とはいえ、それでもバーダックの方が圧倒的に速いというほどの差ではなかった。むしろ、ブロリーの肉体は下手に触れればダメージになりかねない。打撃戦を挑もうにも、全身のどこを殴るか悩んでしまうほどである。
だからこそバーダックは、ブロリーの関節を狙った。手首、肘、肩、首、背骨、腰、膝、足首といった各部位。バーダックが自身の両手にエネルギーを集中させているのは、こういった部位にダメージを帯びさせる為であるのと、半端な威力では表面に存在するエネルギーの奔流を突き破れないことによるものだった。
この戦法はバーダックが考え付いたものではない。百戦錬磨のサイヤ人ら数百人が考えを共有し、最も効率的な攻撃をバーダックに伝えることで可能となっているのだ。
さらに、用いるのは戦術的な手段のみではない。
「はあっ!!」
火山の噴火を思わせる勢いで迫りくるブロリーのアッパーカットを、
本来バーダックのモノではないこれらの技を用いることが出来るのは、この技の使い手の父親であるベジータ王、さらにはその部下であったナッパから技の存在及び大体の使い方を伝えられたがゆえにである。これがドクターウィローであれば情報を吸収することで可能とするのだろうが、それが伝え聞きの技ではさすがに不可能である。だがその不可能を、魂の共有を行うバーダックは技をイメージとして受け取ることで再現して見せていた。とはいえイメージを受け取っただけで再現できる辺り、バーダックが持つさすがの戦闘センスであるとも言えたが。
「ウアラァ!!」
高速で回転することによる遠心力を加えながら、すれすれで回避したブロリーの肘へ強烈な回し蹴りを叩きこむ。
「だあーーーーっ!!」
腕が浮いたままになっている隙を突き、がら空きとなった脇へ向かって再びのギャリック砲をお見舞いする。
通常撃たれることのない場所へ、幾度となく攻撃を受け、さしものブロリーも苛立ちから攻撃そのものが荒くなる。
そして攻撃が荒くなれば荒くなるほど、バーダックの攻撃はさらに的確に、激しさを増していくのであった。
──だが、それでも戦闘力が向上し続けるブロリーを相手するには限度がある。
「ルオオオオオオオオ!!!」
叫ぶブロリーの咆哮と同時に、全方位へと放たれた衝撃波がバーダックを襲う。回避不能なダメージをやり過ごすことは出来ず、バーダックはそれを全身を固めることで耐え凌ぐが、大きな隙を晒してしまったそのタイミングを見逃さず、数歩で追いついたバーダックへと強烈なハンマースレッジが叩きつけられた。
「がっ……はっ……!!」
防御に全身を固めていたとはいえ大ダメージは避けられず、バーダックは地中深くへと全身を埋め、意思とは裏腹に動けなくなる。
そして、動けないからといって容赦するブロリーではない。
「ゴオオオアアアアアアア!!!!!!」
口腔から放たれた強烈なエネルギー波がバーダックによって作られた穴へと叩きこまれ、地中を走った強烈なエネルギーがあちこちから溢れるようにして逆流し、地盤が崩壊する。
土煙が去った後、崩れた大地にはブロリーだけが佇んでいた。
……しかし、生き埋めになりながらもバーダックは辛うじて生きていた。右腕と左足が半ばから吹き飛び、全身は火傷を負っている。おまけに残った左腕も感覚がなく、どうにか繋がっているだけという有様である。
「へへっ……さすがに、勝てねえ……か」
それは諦めを意味するものではなく、純粋に事実を現した言葉だった。
どれだけバーダックが、その内に存在する多くのサイヤ人らが魂の力を共鳴させようとも、そもそもブロリーは最初から引き出せる魂の力の桁が違う。違うのは、その運用方法のみであるからだ。
恐らく、バーダックが超サイヤ人のさらなる変身を駆使したところで、結果は同じだろう。変身によるパワーアップが千日手しか生まないことは、皮肉にも彼の前に戦っていたクウラが証明している。
では、それで諦めるのか。このまま生き埋めとなり、魂の力が尽きるまで意識を失い、やがてブロリーに吸収されることを良しとするのか。
(──違う……!!)
バーダックの、もはや動かなくなった筈の左腕がピクリと動く。そう、彼にとっての敗北とは諦めること。そして彼には何としてでも為さねばならない目的があった。
(まだだ、まだフリーザの野郎は生きてやがる……!)
その思いに、魂の奥底から湧き上がる怒りに、バーダックの目が強く開かれる。
バーダックは、この舞台で戦い始めてからの戦闘を全て振り返っていた。その中でも特に強く思い出させられるのは、フリーザとの戦闘である。口の端から血を流すほどに強く歯を噛みしめながら、バーダックはひとつのヒントを拾った。
それはともすれば、勝ったところで自分自身の消滅を招きかねない博打でもある。否、勝算があるだけまだ博打の方がましだとも言えた。
トーマが、セリパが、トッポが、パンブーキンが、ラディッツが、そして多くのサイヤ人が止める中、バーダックは思いついたその最後の手段に賭けることにした。
「どうせこのまま放っとけば死ぬしかねえんだ……! だったら、最後にイチかバチかってのも、悪かねえだろっ……!!」
その言葉に納得したわけではない。だが彼らとて、ここまでバーダックという男を、サイヤ人の可能性を信じて自らの魂を託してきたのも事実である。
ならばその賭けが少しでも成功するよう、彼らは自身らの魂が持つ力を最大限バーダックへと分け与えるのであった。
伝説の
その存在はかつて宇宙で猛威を振るい、紆余曲折を経て滅びた。
ブロリーはその再来だと謳われる超越種である。サイヤ人でありながらサイヤ人の限界に縛られない、突然変異。
生まれながらにして戦闘力は10000を超え、そのあまりの強さから彼を脅威に感じたサイヤ人の王は彼を殺そうとしていた。
バーダックが戦う中で、ベジータ王は目の前の大魔猿がかつて己が殺そうとした赤ん坊であることに気が付いた。同時に、彼が成長していればこれだけの強さと暴虐を生んだのだと、かつての判断に納得はすれど後悔はしていなかった。
だが、それはベジータ王の話である。生まれてすぐに殺されそうになった赤子のブロリーには関係ない話だ。
彼は孤独だった。唯一自身の味方であった筈の父親でさえ、彼の力を恐れ、その恐怖から彼を完全なる制御下に置こうと企んだ。
そしてそれが失敗に終わったことを理解すると、父親は彼を滅びゆく星へと残して消えようとした。
父親を手にかけながら、ブロリーは理解した。自分は孤独ではない、孤高なのだと。全銀河において、自分と並ぶ者など存在せず、生涯そのことを証明し続けることこそが生きた証なのだと。
そう覚悟してすぐのことであったにも拘わらず、ブロリーは敗北した。それも、かつて生まれてすぐに泣かされたあの時隣で寝ていた赤ん坊が成長した男に。
理解できなかった。己は孤高ではなかったのかと。よりによって、虫けら共が合わせた程度の力に勝てない存在でしかなかったのかと。
さらに数年後、再び目覚めたブロリーはかつて己を二度に渡って敗北させた相手とまたもや対峙した。
死にかけたことでさらに増したパワーは今度こそあのカカロットを倒せると踏んだのだが、それでも彼は敗れた。それも、彼を倒したのはカカロットではない。カカロットの息子である。
死んで地獄に落ちて尚、彼は理解できなかった。
孤高である存在は自分だけではなかったのかと。違うのなら、何故自分は孤独であり続けたのかと。
許せなかった。
自分だけが孤独であることが。孤独ではなく、孤高ですら無いにも拘わらず、自分と並ぶほどの力を持つ者の存在が。
妬ましかった。
何よりも、カカロットが孤独でないことが。
──大魔猿となりながら、その魂の中で膝を抱えて座り続けるブロリーは、今再び暴威を振るいながら、かつてのカカロットを思わせる相手を倒してなお、その心の渇きが癒されていなかった。
また、一人なのだと。このよくわからない場所においてでさえ、自分は孤独であり続けるのだと。
いっそこの舞台そのものを破壊してしまおうか。ブロリーがそう考えた時だった。
「──ハアアアアアアアアアアア!!!!」
崩れた地盤を隆起させ、岩盤を吹き飛ばしながらバーダックが現れた。
ブロリーは思わず歓喜した。まだ抵抗する気力があったことに。この止めどなく溢れる力を受け止めてくれる存在がまだ生きていてくれることに。
「カカロットォォォォォ!」
叫びながら、ブロリーの全身からこれまで以上のエネルギーの奔流が放たれる。その勢いは凄まじく、離れた場所で準備していたフリーザが思わず吹き飛ばされそうになるほどである。
さらにはようやく再集結しつつあったスラッグまでもが再び千々に吹き飛ばされていった。
ろくに動かない手足をぶら下げながら、バーダックは全身から燐光を放ちつつ覚悟を決める。
──彼がやろうとしていること。それは、フリーザのデスボールをすり抜けた際に起きた現象を意図的に起こすことだった。
それが自身への深刻なダメージに繋がることは理解しつつも、正面からブロリーのエネルギー奔流を突破するにはもはやそれしかないことがわかっていた。
しかも、今回はそれを途中で解除しなければならない。バーダックは、ブロリーを中から破壊しようとしていた。
勿論練習している時間など無い。
「カカロットォォォォ!!」
叫びながら、あまりの勢いに地盤を砕きつつブロリーは駆け寄ってくる。
そのおかげで出来た僅かな時間に感謝しつつ、バーダックは内側で束ねていたサイヤ人の力をあるがままに解放した。
「がっ……! ぐぅう!」
途端に、体内から凄まじいほどのエネルギーが外へと向かって溢れそうになる。
同時に、不安定に揺らぎだす肉体。どうやって前へと進めばいいのかも一瞬わからなくなるが、それでも溢れだそうとするエネルギーを後ろへと意図的に放り出すことで推進力とする。
「オオオオオオオオォォォォ!!」
拳を構えるすら叶わない、不格好極まる体当たりの特攻に似た行為。
だが、突き出されたブロリーの全力の拳が到達する直前、バーダックは再び幽体に近い肉体と化した。
「いよっしゃああああああああ!!!」
即座に肉体を元へと戻すバーダック。その時には、バーダックの肉体はブロリーの拳から体内へと侵入している。
「ゴオオアアアアアアア!?」
腕が中から断裂させられていく激痛に、初めてブロリーが悲鳴を上げる。
「ウアアアアアアアアア!!」
叫びながら、バーダックは先へ先へと突き進む。狙うは心臓。すなわち、魂の核がある部分。
とはいえブロリーもそのままにはさせない。なんとか腕の中のバーダックへ対処しようと、彼のいる方の腕を滅茶苦茶に地面へと叩きつけ始めた。
「ガアアッ! グハッ!!」
伝わってきた衝撃と幽体化の反動で血反吐を吐くバーダック。止まってしまった勢いを、残った足からエネルギー波を出すことで推進力として再び突き進む。
「グゴオオオオオオ!!」
ブロリーの悲鳴は周囲に限りない破壊の渦をもたらしていた。フリーザはそれを見ながら、いよいよ漁夫の利を得ようと準備を始める。
「ダアアアアア!!」
肩を抜け、肉と血管を抉りながら進むバーダック。もはや自分の血かブロリーの血なのかもわからない最中、彼はひときわ巨大な光の中へと突っ込んだ──。
「──なんだ、ここは」
先ほどまでの血と肉にまみれた不快感はない。むしろ、この空間においてはどこか温かみすら感じた。
青白い光がそこかしこから差し込む空間の中で、一人の赤ん坊が泣いている。その姿に、バーダックは見覚えがあった。
「ブロリー……」
バーダックが名前を呼ぶと、赤ん坊の姿が変わる。さらにその姿は幼年を経て、青年へと変化し、筋骨隆々とした姿へ変わる前のブロリーとなった。
「俺を、殺しに来たのか……」
ポツリと漏らしたその言葉に、バーダックは違和感を持つ。その通りといえばその通りなのだが、精々あのまま魂の核を打ち砕くつもりだっただけに、この場において目の前の弱々しいサイヤ人を殺すつもりにはなれなかった。
さらに言うのであれば、もはやバーダックにそんな力は無かった。
「そのつもりだったんだがな……どうやら、時間切れみてえだ……」
それはある意味当然の末路だった。
魂そのものを割き、自身へのダメージを省みず戦い続けてきたバーダック。その限界は、皮肉にもブロリーの魂へと突入した時点で迎えてしまっていた。
「おい……! 待ってくれ! そんなのは……! そんなのはないだろう……!?」
ポロポロと光になって崩れ始めたバーダックを見て、ブロリーは焦った。どこか無意識に、彼ならば自分の孤独を埋めてくれることを願った結果、またしてもそれが失われようとしている。
ブロリーはそれが受け入れられなかった。
「けっ……テメエが赤ん坊の姿なんぞ見せるから……萎えちまった……」
最後にそう一言だけ残して、バーダックの姿が掻き消える。
「おお……!! おおおおおおおおおお……!!」
かつてバーダックだった光の粒を握るようにかき集めながらブロリーは涙を流し哭き叫ぶ。それは悔しさによるものか、失望によるものか。
かつてバーダックだった魂の光からサイヤ人達の魂が溢れだし、行き場を無くした彼らは必然的にブロリーへと取り込まれていった。
──すっかり大人しくなってしまったブロリーの様子を訝しみながらも、フリーザは準備を費やしたデスニードルの群れを無数に浮かべながら構える。
「……殺しても死なないように思っていましたが、あの男は死にましたか。では、彼が正気を取り戻す前にさっさと処理してしまうとしましょう」
完全に消えたバーダックの気配に、どうせなら自分の手で今一度葬ってやりたかったと考えるフリーザは、ブロリーへと無数のデスニードルを差し向ける。
本来一度形成したエネルギーの固体は、それ自体が浮遊能力を有していない限り飛行することはない。だが、フリーザには単純な戦闘力を後押しする能力として超能力がある。
これによる念動力で浮遊するデスニードルの群れの一部は、まずは蹲り動かなくなっていた大魔猿の尻尾へと集中砲火のごとく殺到した。
「念には念を。まずはその不細工なでくの坊から猿の体に戻っていただきますよ」
浮遊するデスニードルとは別に右手の指それぞれに超小型のデスボールを構築しながら、フリーザは油断なくブロリーの様子を眺める。
やや歪な形ではあったが、尻尾を千切り取られたことでブロリーの姿が輝き縮み始める。この時ちょうど、ブロリーの中でサイヤ人達の魂が完全に彼の魂と重なった。
「これでおしまいです」
残りのデスニードル及び追加のデスボールが、縮む最中のブロリーへと殺到する。
無数の針が刺さる手応え、さらにそこへ追加するように激突したデスボールによって大爆発が起こる。
油断なく自身の周囲へとバリアーを展開したフリーザは爆発を眺めながら、後は魂の力を取り込み力の底上げを行うのみと考えて──想定外の怖気に全力でデスビームの連射を行った。
連続フィンガーブリッツを思わせる高速連射が爆発の中心へと吸い込まれていくが、一向にフリーザの怖気は収まらない。それどころか、彼を襲う寒気の気配は急激にその圧力を増し、爆炎を吹き飛ばしてその姿を現した。
「まさか……! 生きていたのか……!?」
フリーザが驚いたのは、爆炎から現れた男の姿がバーダックを思わせる細身だったからだ。変身する前のブロリーの姿も観察していたフリーザは、筋骨隆々とした巨体のブロリーではないその姿から、まさかバーダックが生き延びたのかと最大限の警戒をする。
だが、そこにいたのはフリーザの知らないサイヤ人の戦士だった。
長身痩躯のその姿は一見変身前のブロリーに見えなくもない。だがその目つきは鋭く離れた場所のフリーザを睨み、頭髪はやや赤みを帯びてバーダックのように逆立っている。
「貴様は一体、何者だ……!!」
“ここから逃げるべき”だという本能を帝王としてのプライドで無理やり抑えつつ、フリーザは目の前に現れた恐らくはサイヤ人の戦士に向かって叫ぶ。
『俺達はブロリーでもバーダックでもない。お前を倒すものだ……!!』
そこにいたのは、バーダックを始めとしたサイヤ人連合の戦士たち全員が融合した姿。等しい強さを持つ戦士二人が融合するフュージョンの技ですらない。魂と魂達が融け合ったことで生まれた超戦士。
敢えて彼を表すのなら、それは“
「こ、こんなバカな……!!」
有り得ない出来事を前にして、フリーザは思わず硬直する。
跳ね上がり続ける戦闘力とは裏腹に、帝王の心胆寒からしめる目の前の存在は、彼に終ぞ訪れることのなかった全身の戦慄きをもたらしていた。
ちかれたびー