ドラゴンボールZ──宇宙の危機!極悪人統一決定戦── 作:SHV(元MHV)
スカウターなどが無くとも、その強さは遥か銀河の遠くまで響き渡るだろう。それだけの存在感を、目の前のサイヤ人の集合体は放っていた。
フリーザはそんなサイヤ人の集合体を目の前にして、全身を戦慄かせ激怒していた。
「どこまでも……! どこまでも人をコケにしやがって……!!」
手を尽くしてようやく詰んだかと思えば、相手はその都度盤面をひっくり返してくる。フリーザにとって、もはやサイヤ人とはそういった存在だった。到底許される存在ではない。
満を持したかのように降臨したサイヤ人の集合体だが、現時点で力の差がそれほど大きいわけではない。精々3割増しがいいところだろう。だが、サイヤ人にとって3割という数字は相手に一方的な攻勢を可能にするだけの数値でもある。それをフリーザが知っていたわけではないが、漠然とこのままでは勝てないことだけは確信していた。
しかしフリーザは負けを認めたわけでは無かった。事実、三重の魂を得たフリーザの力は跳ね上がり続けている。だが、それは無数のサイヤ人らの集合体である彼も同じであり、さらにはその中心がブロリーとなったことで彼の無限にパワーを引き出す性質そのものをも引き継いでいた。
このままではどれだけのパワーを得たところでじり貧だろう。せめてあと一つ、何かきっかけがなくては。だがそのきっかけが単なる変身ではあってはならない。それはさらなる力を得る機会を自ら投げ捨てるようなものだと、フリーザは確信していた。
この期に及んで中途半端な変身によるパワーアップは焼け石に水であろうし、それを言うならば相手もまだ超サイヤ人への変身をしていないという揺るぎない事実がある。怒りに飲まれながらも、それを己への矜持で堪え続けるフリーザは、全力で目の前の相手を警戒しつつ、あと一つのきっかけを探し続けていた。
……しかし、そんなフリーザの内心とは裏腹にサイヤ人の集合体は動かない──否、動けなかった。融合したことで生まれた彼の心中は、未だ千々に乱れていたからだ。フリーザを倒すという目的によって生まれたとはいえ、融合したサイヤ人には男だけでなく女もいる。合一されることで生まれたその精神をかつて束ねてのけたバーダックが如何に規格外であり、またその怒りがどれだけ強かったかの証左でもあるだろう。
そもそも、何故このような事態、すなわちサイヤ人同士の融合が起きたのか。そのきっかけは、やはりバーダックにあった。
自らを幽体と化してブロリーの体内へと侵入したバーダック。言ってみればそれが自分自身へのとどめにもなったわけだが、彼が大きな光の中へと突入した瞬間、この時点でもはやブロリーとの決着は付いていた。何故ならば、バーダックが自身が持つ全エネルギーと共に彼の魂へとぶつかったことで、すでにブロリーの魂は半ば打ち砕かれてしまっていたからだ。
結果として、バーダックはその時点で力尽きてしまった。その後に起きた現象は、瞬きほどの時間に起きた魂同士による交流に過ぎない。あれこそは崩壊しつつあるバーダックの器が再び幽体化を起こしたことで、ブロリーの魂にある記憶を直接見たことによるものだった。
そうでもなければ、赤ん坊の頃の彼の姿など見れるはずもないのだ。さらに言うのであれば、あの時点でバーダックはベジータ王からブロリーの名前すら聞かされていなかったのだから。
だが結果として、ブロリーの魂の中でバーダックが死んだことで、それまで魂の共有を受け入れていたサイヤ人らの魂は行き場を求めた。そんな彼らが外で待ち構えるフリーザを避け、死にかけていたブロリーを求めたのは必然とも言えよう。彼もまたサイヤ人なのだから。
そうして砕けた魂を他のサイヤ人らが埋め合わせることで、また大猿への変身を強制的に解除されたことで、魂と肉体は凝縮され、ひとつの新たな魂が生まれた。
多くのサイヤ人に寄り添われたことで初めて孤独を癒されたブロリーもまたその状況を受け入れ、再構築された魂はブロリーの肉体を改変し、新たな超戦士がその場に生まれたのである。
魂の大部分がブロリーであることによって無限のエネルギーを引き出す特性を、バーダックら無数のサイヤ人を取り込んだことで彼らが持つ数多の戦闘経験値を受け継いだ超戦士。それこそが彼であった。
さらにフリーザはそれほど気に留めていなかったが、変化はそれだけに留まっていなかった。今の彼の肉体は、大猿の力との融合も果たしていたからだ。その上半身は
すなわちフリーザは力を奪うつもりで最悪のタイミングで彼の変身を解除してしまっていたのだ。赤みを帯びた髪の毛は天に逆らうと言わんばかりに逆立ち、サイヤ人においても特に長身なブロリーの肉体がベースとなったせいかその体躯はやや長身痩躯に見えなくもない。
だがその身に宿った筋肉は見事な肉の鎧として形成され、生半可な攻撃を通さないであろう強靭さを見る者に感じさせた。
またフリーザは彼の髪色から超サイヤ人への変身を警戒していたが、事実上今の彼は超サイヤ人への変身をも踏まえた進化を経ている。しかしそんなことを知る由もないフリーザは、目の前の存在が持つ更なる力の発露を警戒し続けていた。
『……』
そうしてフリーザが警戒する間にようやく記憶の洪水から脱すると、サイヤ人の集合体は静かに何度か自身の掌を握り、フリーザを睨み──動いた。
「──がはぁっ!!」
念のため先ほどからひたすら維持しておいたバリアーが薄ガラスのように割れ砕けるのを目の当たりにして、フリーザは自分が殴られたことに気付いた。それも殴打は彼の上半身から下半身の至る所に及んでおり、全身のあちこちを拳の形にめり込ませながらフリーザは上空へと吹っ飛んでいく。
これこそは大猿の力を受け継いだ証明。エネルギーの奔流を推進力とした高速機動である。しかもその出力は大魔猿であったブロリーの肉体であったが為に、単純な直線機動においてはフリーザの目に捉えることすら許さなかった。
「……ぎぃ!! ばっ!!」
だがフリーザとてただ者ではない。吹き飛びながら即座に体勢を立て直すと、再び拳撃を繰り出そうとするサイヤ人へ向かって、念動力による衝撃波で迎撃を試みる。
『む……!』
狙い通りと言うべきか、不可視の衝撃波を正面から受けたことで僅かに速度が緩んだサイヤ人の集合体に向かい、フリーザは先ほども放った複数のデスボールを今度は十の指全てから放つ。
「きえっ!!」
複雑な軌道を描いて迫るそれをサイヤ人はするりと躱すが、その様子を見たフリーザはニヤリと笑う。
「かかったねえ!」
サイヤ人の集合体が気が付いた時には既に遅く、フリーザの手掌に応じて後方から急旋回したデスボールが連続して着弾、数発が爆発を伴うと、残りは爆発するのではなく急激に膨らみ、デスボールによって形成されたバリアー状の球体へと転じてサイヤ人の体を飲み込んだ。
『くっ!』
デスボールのサイズをギリギリまで圧縮して強度を高めたフリーザは、そのまま念動力によって砕けた岩だらけとなった大地へと最大級の速度で持って叩きつける。
「でぇあああああああ!!」
さらにそれだけに留まらず、兄の技であるデスフラッシャーを連続で下方へと放ち追い打ちとする。
ブロリーが暴れたことでズタボロだった地盤はさらに崩壊し、舞台を築く大地そのものの一部が崩壊していった。
「ちっ……!」
しかしそれだけの攻撃を加えてなお、大したダメージになっていないことをフリーザは気を感知することで察していた。サイヤ人の集合体をを包むエネルギーの奔流。これがさながら全身を覆うバリアとなっていることを、フリーザは知っている。
だからこそやはりもう一押し。せめて、もう一押し自分の魂を底上げするだけの
そう思っていたフリーザの目線に、あるものが止まる。
──それは、ブロリーとバーダックの戦いで散々に四散させられ、弱々しくも再び集合しようとしているスラッグの成れの果てだった。
「これだ!!」
叫ぶや否や、フリーザはサイヤ人が再びこちらへ向かってくる前にと高速移動し、人間大程度にまで縮んだスラッグのゲル状の肉体へとその腕を突っ込む。
「ホッホッホ! 上手く隠したつもりでしょうけども、私にはまるで無駄ですよ!!」
スラッグは無意識に自らの魂を薄く広げることで、例えバラバラになっても復活できるだけの再生能力を獲得していた。それと引き換えに知性を失ってしまっていたが、それでもほぼ完全にバラバラになっても再生できるという意味では、その再生能力はかつての魔人ブウに近いものがあった。
フリーザはそんなゲル状スラッグの肉体を自らのエネルギーで包み、魂そのものを抽出し始める。限りなく急ぎつつも、決して焦ってはいけない作業。それを、フリーザはサイヤ人の集合体が再び現れるまでに──成し遂げた。
『はあっ!!』
超ギャリック砲とでも呼ぶべき光の弾丸が地面の下からフリーザを襲う。
フリーザは尻尾で地面を叩いて体を跳ね上げ直撃を避けると、再び自らの周囲をバリアーで囲み、バリアーの外にすかさず設置したデスボールを炸裂させる。
「がああッッ!」
大爆発による勢いを利用し、フリーザは衝撃で自分自身にまでダメージが及びながらも距離を取ることに成功する。しかしフリーザの警戒心とは裏腹に、サイヤ人の集合体がフリーザを追撃することはなかった。
それは、サイヤ人という種族が持つある種本能のような欲求。
すなわち“より強い相手と戦いたい”という闘争本能。
フリーザの必死の行動がより強くなろうとしてるがゆえだと気づいた彼は、その本能ゆえにこのタイミングでの追撃を止めていた。
その判断が状況の更なる悪化を生むかもしれない。だが、そもそもこの闘争本能がなければ、サイヤ人が持つ飽くなき強さへの欲求も芽生えることはないのだ。彼は無言で、フリーザがパワーアップするのを待ち受けていた。
『……』
「高みの見物ですか……! いいでしょう、しかとご覧になりなさい! このフリーザこそが宇宙の帝王であることの証明を!!」
こちらを見つめるサイヤ人の様子を余裕から来るものだと断じて激高しながらも、抵抗するスラッグの搾りかすを握り潰しフリーザは自身のパワーアップを開始する。
「カアァァァァァァ!!」
かつて通常形態へと姿を戻した時のように、フリーザの体が激しい輝きに包まれる。
先ほどサイヤ人とは対照的に、フリーザの変身は実に静かなものだった。
あっさりとスラッグの魂に残っていたエネルギーの吸収を終えると、光の中から
「──なるほど、強制的に加齢した姿になったわけですか」
まるで忽然と現れたかのようにそこに立っていたフリーザの姿は、先ほどまでののっぺりとした姿とほぼ変わりはなかった。ただしその身長はコルド大王に準じるほどに伸び、さらにはやや筋骨隆々とした姿へと転じている。
フリーザ自身が言ったように、それはフリーザが生きていた場合さらに数百年ほどを経て到達する
そもそもフリーザ一族の寿命はけた違いに長い。ナメック星人も宇宙の平均からすれば相当な長さを誇るが、彼らの寿命はそれと比類するほどの長さを誇る。
これは彼が持つ今の体が、ヂギリによって与えられた仮初の肉体だからこそ起きた現象だと言えた。
『はぁっ!』
「ばっ!」
準備が終わるのを待っていたとでも言うように、サイヤ人の集合体から放たれた拳による衝撃波とフリーザの念動力による無形無色の衝撃波がぶつかり合う。
激突によって空間が振るえ、一度凝縮するように空気が内側へと吸い込まれると、次の瞬間さらに大きな衝撃波が全方位へと広がり、無数の岩山が転がった大地を再び更地へと押し戻していく。
『でりゃぁ!』
「かぁ!!」
今のフリーザが発揮しているパワーは、老界王神による力を限界以上に引き上げる儀式によるパワーアップと等しい結果を生んでいた。頑なに変身を拒み、元の状態のまま強くなることを選んだフリーザ。その選択が決して間違ってはいなかったことが、ここに証明されたのだ。
「オオオアアアアアア!!」
肉体的なリーチの差が殆どなくなったことによって、フリーザの打撃はさらなる威力を発揮する。一撃一撃が炸裂弾のごとき音を立てながら、更地と化した舞台をさらに砕き、そして再び更地へと塗り替えていく。
互角となった二人の激戦は、いつ終わるとも知れぬ千日手へと変貌しようとしていた。
「待たせたかな?」
「いいや、そうでもない」
瞬間移動によって現れたセル。待ち構えていた青年のヂギリは、相変わらずの鉄面皮で彼を出迎えた。
「おや? あの小さい男がいないようだが」
「ああ、彼は別の場所に行ってもらった。お前の目的を考えれば、巻き添えにされて破壊されかねんからな」
「破壊……破壊か。素晴らしい力ではあるが、如何せん奇妙な力だな。まるで借り物の力のようだ」
全身に破壊のエネルギーを稲妻のごとく纏ったセルは、自身の掌から破壊のエネルギーによる球体を出して弄ぶ。
「まあ、おかげで私もさらなるパワーアップを遂げることが出来た。他の人造人間を吸収することも考えていたのだが、どうやらここには私以外の人造人間はいないらしいな?」
彼自身、ドクターゲロやかつての助手は見つけていたが、人造人間ですらない彼らにはもはや興味すら持たず、あっさりと殺していた。
「その通りだ。ドクターゲロや19号、13号から15号などのベースとなった人間はいたが、有機的な改造を受けたのは17号と18号、そしてお前だけだ。だからこそかつてのお前は、彼らを吸収することで次の形態へと変身、もとい進化することが出来た」
「13号辺りを吸収すれば或いはとも考えたが……なるほど、そういうことか。それにしてもその口ぶり、かつての地球で起きた出来事を把握していたようだな。元地球の神というのはどうやら本当らしい」
「私が神であった時間など、これまでを思えば実に短い時間でしかない。……だがまあ、あの頃は私の長い生涯において最も安らいだ時間であったことは事実だろうな」
「意外だな。謀略と私怨に満ちているように感じていたが……」
なぜ二人がこれほどの会話を繰り広げているのか。それは、ひとえにガーリックJr.に仕掛けられた“虫”をヂギリが放置したことにあった。
このためガーリックJr.に語られた内容は同時にセルもまた知るところとなり、彼の企みもまた同時に、ある程度知るところとなったのである。
「さて、私は以前言ったな。お前の企みを聞かせてもらうと。これだけのことをしでかして、お前は一体何が望みだ」
「ある程度の話はお前も聞いていたな。ならば、せめてその答えの一端を見せてやろう」
ヂギリが手を翳すと空間に穴が開き、真っ白い空間が露になる。
「ここは魂と次元の部屋。私がかつて作った精神と時の部屋をモデルに作ったその上位版のようなものだ。この小宇宙の舞台を構成する基幹部分でもある」
「そこに飾られた人形が、お前の企みだとでも?」
セルは口ではそう語りつつも、人形の胸元に配置された宝玉に気を取られていた。
「そうだ。そして、あれこそ私がここ数百年の間に造り上げた力の集大成でもある。あれはな、私が創ったドラゴンボールだ」
小さな赤黒い宝玉は、今やその四つまでもが光を放っていた。
「知識には一応あるが、万能の願望器だったか。だがその母体となる力を上回るものには大きな影響を与えることは出来ないとも聞いて──まさか、その為のあの人形か」
驚いた様子のセルは龍を模した人形が神龍の素体であることに気付く。
「あの宝玉の全てが光り輝いた時、私の作った
この舞台に集まった者達の魂を磨かせ、力を集めたことで生まれるエネルギーは既に天地開闢を凌駕するほどの質量を有している。
それだけのエネルギーの殆どを材料に作られた神龍とは、果たしてどこまでの願いを可能とするというのか。
「さらにそれだけではないぞ。あの人形の材料は、これまで地球で使われた願い玉の反動を利用している。景気よく使ってくれてこちらとしては助かっているが、本来願い玉……ドラゴンボールを使えばその後百年ほどは内部に溜まった邪気を浄化する必要があるのだ。私はその部分に関する記憶や知識をカタッツの子を始めとした新しい世代のナメック人から除外した。因果を改変した反動によって集まった、悪の気など遥かに凌駕するエネルギーを利用しない手はないからな」
ゆるく微笑むヂギリ。セルは、その笑顔に初めて寒気を感じた。
「……協力してもいいと言ったが、その場合私もあれの材料となるわけか」
「その通りだ。そもそも、勝ち残った者一人を除いて誰一人ここから返すつもりなど無かったからな。勝ち残った者に与える程度の力など、目的が達成できれば然したる障害にすらなりえん」
「ここで貴様を殺せば、その企みとやらも止まるか?」
思いもよらないセルからの問いかけ。しばし唖然とした表情を浮かべた後、殆ど崩れなかったヂギリの鉄面皮は破顔する。
「アッハッハッハッハッハッハ! ……残念だが、そうはならん。すでに計画は大詰めだ。貴様に語っている時点で、私一人をどうこうしたところで止まらないところまで計画は進んでいるのだから。だがお前の反逆の姿勢、私は嫌いではない。そもそも私が成そうとしていること自体、宇宙の管理者を自称する者達への反逆だからな。──だから、もし私を殺せるつもりなら、挑んでみるのも一興だぞ。ひょっとしたら私の計画を台無しに出来るかもしれない」
腹を抱えて笑ったヂギリはそう言って顔を上げると、手招きをして破壊神らを全滅させた老女としての己を召喚して見せた。
「なんだい、今度はこの跳ねっ返りを始末すればいいのかい」
青年としてのヂギリとは対照的な、激情の中に冷たさを感じる老女。その実力を一度垣間見ただけに、セルの緊張は否が応にも高まる。
「いや、それではすぐ終わってしまう。どうだいセル。ここに、これまで始末した残りの破壊神達の魂がある。あの器には使えなくて扱いに困っていたんだが、よかったら使ってみるかい?」
「……酔狂だねえ。ま、そんなことしたところであたしゃ負けるつもりはないけど」
笑んだまま色とりどりの魂を取り出し愉快気に提案する青年のヂギリと、それに呆れる老女としてのヂギリ。
二人を前に断る選択肢を今更選ぶわけにもいかず、一度は完全制御した力の提供をセルは受け入れる。
「いいだろう。残る11個の破壊神の力の結晶、我が身に受け入れて見せようではないか」
「よろしい」
両腕を拡げたセルへ向けて、青年のヂギリは破壊神らの魂を投げ込む。胸元からそれらが入るのを見届けると、すぐさまセルの全身に変化が起き始めた。
「がッッッッ……~~~~~!!!」
全身の細胞全てが一瞬で破壊神のエネルギーで満たされ、セルはその場で爆散しそうになるのを必死で堪える。
「ほう、大したもんだ」
老女としてのヂギリがその様子を褒め称えるが、セルの耳には届いていない。
ありとあらゆる場所から走る苦痛。さながらその様子は超神水を飲んだ時の悟空のように、セルは身を縮こまらせて悲鳴すら上げられずに激痛に耐える。
「それで、このボウヤが出来上がるまでじっくり待つのかい?」
どこからか取り出した葉巻を口にする老女としてのヂギリは、石くれに映されたサイヤ人の集合体とアルティメット化したフリーザの戦いを眺める。
僅かに生き残っていた亡者達は二人の戦いの余波によって消し飛ばされ、龍の器には凄まじい勢いでエネルギーが集まりつつあった。
「ああ、そうするつもりだ。もう終わりが近い……我々も元の一人に戻るとしよう」
「そいつはいいね。このババアの体も悪かないが、節々が痛くて仕方がなかったんだ」
冗談めかして告げる老女としてのヂギリは、セルを見届けながら青年としてのヂギリの前に立つ。その横には、いつの間にか現れたさらにもう一人のヂギリ──少女としてのヂギリがいた。
「……終わるのか」
「ああ、そうだ。わたし達の念願がようやく叶うか、それとも打ち砕かれるか。もうすぐわかる」
老女としてのヂギリ、少女としてのヂギリ、そして青年としてのヂギリ。
それぞれが手を重ねると、数瞬景色がブレるように歪み、僅かな風と共に一人になったヂギリがそこに立っていた。
腰まで届くほどの銀髪。法衣のような白を基調としたローブ。さらにその手には砂時計を模した杖が握られた、豊満な肢体を持つ妙齢の美女としてのヂギリがそこに立っていた。
彼女はセルを、フリーザを、サイヤ人の集合体を見ながら告げる。
「戦いなさい、子供たちよ。その果てに何が待ち受けていようとも、わたしが祝福しましょう」
億年の時を超えて、ここに時空神ヂギリがその本来の姿を取り戻した。
さらに同時刻。天使の軍勢が空を引き裂き侵入を開始する。
終焉の宴が、始まろうとしていた。
地味にもう一人のヂギリ、ちゃん付けすることでネタバレしてたつもり(笑)
さていよいよ終わりが見えてきました。
これまでの連載と比べるとどこか短い戦いですが、そもそも七十巻とか四十巻超えた漫画の二次創作書いてるんだからそりゃ短くも感じるわなという('ω')
どうぞ、残り数話だと思いますがお付き合いくださいませ