ドラゴンボールZ──宇宙の危機!極悪人統一決定戦── 作:SHV(元MHV)
苦悶の声を上げ続けるセルを一瞥すると、本来の姿へと戻ったヂギリは空間を転移──待ち構える天使達の前へと現れる。
「お久しぶりですね、時空神ヂギリ」
「こっちはあんたのガキ臭い顔なんて見たくもなかったけどね」
天使らを統べる大神官の丁寧な口調に反して、端正な顔立ちでありながらヂギリの口調は荒い。老女であった時と変わらないその様子は、むしろあの姿こそが彼女の素であったことを証明している。
天使とは、総じて青白い肌、白い髪、白い瞳を有した芯人の中でも最上級の集団。戦闘力だけのみならず、特殊な能力においてもその実力は破壊神を凌駕する。
彼らの存在は宇宙において中立であり、本気で戦うことがあってはならないことを掟とする。そんな彼らが攻めてきた事実はヂギリにとって予定通りでもあり、それだけあちらを追い詰めていることを証明している。そして彼らの来訪に先んじて、この舞台で散った破壊神の役割をヂギリは察していた。
「破壊神を捨て駒にしたのは、予め彼らとの契約を切っておく為か」
侮蔑するようなその言葉に、幾人かの天使らが表情を歪める。全員があのわかりきっていた結果に賛成していたわけではないようだ。そしてヂギリが言う通り、本来であれば破壊神とその付き人たる天使は表裏一体。破壊神が死ねば、天使はそのまま眠りへと就いてしまう。ゆえにここへと破壊神が差し向けられた時点で、その契約は一方的に破棄されていたのだろう。
片道切符の破壊の力とはその力は本来の力と殆ど変わりはなかったが、絶対的な出力の低下を彼女は見逃していなかった。
「それはそうです。貴女ほどの存在が再び敵に回ったとあっては、本来あの十倍ほどの戦力を初手から送ってもよかったほどですから」
「そうしなったかのは、わたしが怖かったからとでも?」
「その通りです」
揶揄し笑いを含んだヂギリの物言いにも、一切物怖じせずに答える大神官。
彼は一見子供のような外見をしているが、その実力は居並ぶ天使らの中では群を抜いて高く、またその過ごしてきた年月も他の天使達とは比べ物にならない。
「それで、今度はお前たちがわたしを倒しに来たとでも? それが天使の掟に従った行動かどうかはともかく、こちらが出向く手間を省いてくれたことに感謝したいぐらいだよ」
「残念ながら、貴女に殺されてさしあげることは出来ません。貴女の目論見が全王様を
「それが叶うとでも?」
「いいえ、これはただの確定事項です」
大神官が最後まで告げると、周囲の天使らが一斉に構えを取る。
「懲りない連中だね。お前たちが今さら向かってきたところで、何も変わりはしないというのに!」
「──やってみないとわからない、ですますよ!」
構えを取るヂギリとは明後日の方向へ。ツインテールをした少女のような天使マルカリータが、何もない空間へ向けて自らの持つ杖を突きだす。
──パキリ──
陶器を踏み割ったような音が鳴ると、その空間へと罅が生じて砕け散る。だが砕けたにも拘わらず、その後には同じ赤黒い空が広がっていた。
「これが貴女の仕組んだ仕掛けですますね。どれだけの長い時間をかけて仕込んだかはわかりませんが、罠があるとわかっていれば先にそれを全部壊すまでですますこと!」
愉快気に杖を振るい、マルカリータが次々とあちこちの空間を破壊していく。ヂギリは忌々し気にそれを見ながらも微動だにしない。目の前へと接近してきた大神官へ全神経を集中しているからだ。
「貴方たちは先に全ての空間トラップを破壊してしまいまなさい。一つでも残すと、如何に私たちでも何をされるかわかりませんよ」
大神官が告げているのは、先だって破壊神らを殲滅した恐るべき空間攻撃の数々のことだった。ヂギリは予め用意した空間操作による無数のトラップを従えることで、戦闘力において圧倒的な差がある破壊神を一方的に殲滅していたのだ。
「人がどれだけの時間をかけてあれらを用意したと……」
景気よく破壊されていく空間トラップの数々を見てヂギリは悔しそうに口にするが、大神官はそんな彼女の言葉を聞いてもどこ吹く風である。
「さて、数百万年か、あるいは貴女のことですからここの時間を操作して数億年ほどもかけたのでしょうか。ですが、そもそもの貴女自身の実力は以前破壊された時と大して変化がない様子。であれば、犠牲となった破壊神達もその役割を十全に果たしたということ。そして貴女は、ここで終わりです」
大神官が指を差し出すと、ヂギリは咄嗟に砂時計めいた杖で前方を塞ぐ。すぐ後に爆音と衝撃が響き、ヂギリの前の空間にいくつもの罅が入る。
「ぐっぐく……!」
「耐えましたか。では次はさらに増やすとしましょう」
今度は指を二本。大神官が意を込めると、そこから空間ごと全てを破壊する衝撃波が走る。けた違いの速度で迫っている筈のそれには一切の気配がない。だが
「がふっ……!」
大ダメージを受けたヂギリはそれでも何とか体勢を立て直す。直撃を防ぐため、ヂギリは前方に固定化した空間による積層防壁を築いていたが、それでも余波によるダメージで彼女は早くも満身創痍である。
そんな彼女の様子を見て、大神官は違和感を覚え始めていた。あまりにも、彼女の様子がかつてと変わらなさすぎるのだ。
「……舐めるなっ!!」
だがそんな考えをしている間に、今度はヂギリが攻撃を仕掛ける。指を複雑に動かし、まだ残っていた空間トラップを大神官の周りへと転移させ、それらを一斉に発動させる。結果完成したのは、数億重の閉鎖空間、そしてその内部で発動した空間の断裂である。
並の破壊神であれば数十回は死ぬであろう攻勢に、思わずその光景を目にしたヴァドスとウイスが焦った様子を見せる。しかし大神官は然して慌てることすらなく、全身から放った不可視の圧力によって、空間の断裂のみならず閉鎖空間すら吹き飛ばした。
「なっっ……!」
とっておきの多重トラップがあっさり無力化されたことに、ヂギリは愕然とした表情を見せる。しかし追い詰めている筈の大神官はやはり違和感が拭えない。今の結界にしても、あの程度の攻撃が通用しないことは誰よりも彼女が知っている筈なのだ。
「この程度のトラップで私が殺せないことはご存じのはず。何を温存しているか知りませんが、時空の管理も今となっては私の仕事の一つでもあります」
「お、おのれええええ!!」
激高したヂギリが大神官へ向けて空間の連続爆破を行う。ヘレスの内臓を砕いた衝撃波の上位版であり、爆風一つに巻き込まれただけで内臓どころか全身の骨格が捻じ曲げられ瀕死のダメージは免れない。
「無駄です」
──が、当然のように大神官はそれを防いで見せる。眼前にどこからともなく召喚した盾を差し向けると、空間の爆破を拡散させ、むしろそれによって飛来した爆風を天使らが避ける始末であった。
「こ、こんな……! こんなところでぇ……!!」
忸怩たる思いを隠さず、空中で頭を抱え俯くヂギリ。大神官はそんな彼女へとため息を一つ漏らし、先ほど漸く気づいた事実を告げた。
「……もう演技は止めたらどうですかヂギリよ。我々の負けです」
「な!? どういうことですますの!?」
マルカリータが驚きのあまり作業を中断し声を上げる。
そんな彼女がヂギリを見ると、彼女は整った顔を実に邪悪に歪め、下品な声で笑い声をあげだした。
──ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ‼──
端正な顔立ちの美女から出たとは思えない下卑た大笑い。それを聞いて、この場にいた全員に戦慄が走る。まさか、そんなはずはないと。
「……ああ、オカシイ。時空の管理が仕事だなどと、よくも言えたものだよ! アンタらはそもそも! ここに入った時点で負けてるんだよぉ!」
狂気に歪んだ美貌を向けるヂギリへと、ウイスが光弾を放つ。ヂギリはそれを防ぐことすらなく片手で受け止め──その全身をドロリと崩れさせた。
彼女はわざと攻撃を受け入れることで自ら体を崩したのだ。なぜか。それは彼女の能力である回帰能力が、自身を元に戻す場所を事前に指定しておけることが出来る能力であるからだ。この機能があったからこそ、かつて破壊神によって破壊されてなお長い時を経て回帰することが出来たのだから。
「……なるほど、全ては我々をここへ閉じ込める為に」
真相にたどり着いた大神官が、周囲を見渡しながら呟いた。慌てて他の天使らが空間を破壊して脱出しようとするが、どんな能力を用いても空間は波打つように揺らぐだけでダメージを受けた様子すらない。
そもそもこの空間が破壊神らを始末した場所であることは間違いないだろう。彼らは破壊神が死んだ残滓を辿ってこの場へとやってきたのだなら。
──しかし、実はこの空間自体が彼らを捕らえる為に作られた囮の世界。セルが一度この空間へとやって来れたのも、ヂギリの気を追いかけてやってきたに過ぎないのだ。彼が脱出できた理由はひとつ。ヂギリがそれを許し、牢獄としての機能を発動していなかったからに過ぎない。
その証拠に、破壊神らは戦う亡者達を直接確認はしていなかった。彼らは亡者達が戦う光景を目にしていたが、それらは全て空間に映しだされた映像だったのだから。そしてヂギリは、破壊神や天使らがわざわざ亡者そのものの確認などしないことを確信していた。自分達よりも遥かに力の小さい存在など目の端に捉えておけば十分だと、彼らは間違いなく判断する確信がヂギリにはあったのだから。
さらに言うのであれば、天使らがこここそをヂギリの舞台だと勘違いしたのも無理はなかった。この小宇宙は複数ある宇宙の狭間に創られた異空間であり、ヂギリが天使や破壊神らによる干渉を避ける為ならば、彼らの宇宙に舞台を創る筈もないだろうと彼らは考えていたからだ。そして事実、巨大な力を秘めた異空間が宇宙の間に生じていれば、そこが本拠地であると考えるのも無理はない。だが彼らが感知していた莫大なエネルギーは、亡者達のエネルギーがここを経由してヂギリの創った龍の人形へと流れ込む経由地であるからに過ぎなかった。
そしてそんな彼らが予想だにしなかった、亡者を閉じ込めた舞台がある本当の場所。そこは第7宇宙の地球より2億3000万キロ離れた位置にある惑星──火星であった。
彼女の企みはそもそもが億年以上昔より始まっていた。ならば、自身が力を見せれば彼らがどう動くかなど、わかっていないわけがなかった。なにせ彼女はただ耐えるのではなく、その悠久の時の殆どにおいて彼らを観察することに費やしたのだから。
破壊神の世代交代、壊されていく星々の理由、彼らが何を好み、何を嫌うのか。そして天使の掟には何が該当するのか。
復活を遂げ、数百万年を観察に費やしたヂギリにとって、彼らが自分を討伐する為に総力を挙げる瞬間。その瞬間をこそ、ヂギリは待っており、作り出す為に時と策を費やしたのだ。
ヂギリが本気になれば、彼らと正面から対決したところで勝てないまでも負けることはない。ただそれでも、光の気を集約し続け次元違いの強さを誇る天使らを討伐するには気の遠くなるような時間がかかってしまうだろう。であれば、ヂギリはそもそも正面から戦うのではなく、彼らが一堂に会して自分と対峙する瞬間をこそ作ってしまえばよかった。
彼らを閉じ込めた宇宙の狭間。その外で崩壊した肉体を回帰させたヂギリは、だめ押しとばかりに宇宙の狭間を包む遅延空間の時間を一秒に一年ほどが経つように調整し、再びセルがいる場所まで戻っていった。
セルはもはや叫んでいるのが自分なのか、それともどこかの誰かが叫んでいるのか区別がつかなかった。
地獄での責め苦においてもこれほどまでの苦痛はありえず、痛みから逃れたいばかりにセルは取り込んだ破壊神らの魂を吐き出そうとすらしていた。
だがヂギリによって投じられた魂らはセルの魂へと完全に溶け込んでおり、もはや離すことも削ることも出来なくなっていた。今彼を責め苛んでいるのは、彼の全身へと流れ込んだけた違いの破壊エネルギーそのものであった。
セル自身、なにもしなかったわけではない。可能不可能はひとまずとして、痛覚そのものを遮断する回路を構築して対策としようとしていた。だがそれは激しい火炎に涼風を吹かせる程度の効果しか生まず、セルの魂を蝕む激痛を軽減させるには足りなかった。
一度克服したとは思えないほどの苦痛は、セルの肉体を崩壊寸前にまで追い詰めており、今の魂が本体と言えるセルはもはや限界寸前だった。
彼は一秒が数日にも感じられる痛みの中で、そもそもなぜ自分は強くなりたいのかと考えた。何度でも言うが、彼には歴史がない。彼が強くなる理由とて、そもそもは与えられた目的でしかなかったからだ。
ではそれを成し遂げて尚、なぜ強くあろうとするのか。
より強い相手と戦いたいという本能か?
破壊の権化として畏れられたいという欲求か?
誰よりも強い筈だという矜持か?
だがそれら全て、ドクターゲロによって移植された他者の細胞からもたらされた衝動だった。
ならばセルにとってのオリジンとはどこにあるのか。
かつて目的として設定された孫悟空を殺す使命は、彼を自爆へと巻き込んだことで一応は成し遂げた。その後敗北こそしたが、逆に肉体を失ったことでセルはその拘りからも解放されている。
ではなぜ強くなるのか。
それだけを考え続けるセルは、あることに気がつく。
──強くなることに、理由など必要ない。
比べることすら意味のない行為なのだ。何故ならば、その強さに満足するかしないか。それを決めるのは、他ならぬ自分自身だからだ。
圧倒的な力による支配?──くだらん。
絶対的な強さによる賞賛?──くだらん。
孤高の存在として畏れ敬われる?──くだらん。
どんな理由も全ては下の下。セルが強くなろうと思ったのは、そもそも彼にとってそれ以外に生きる目的がなかったからだ。
そして死んだ今となっても強さに拘り続けるのは、それが自分自身の存在を証明する為だからだ。
「ぶるあああああああああああ!!!!」
雄たけびを上げ、セルは立ち上がる。邪魔だと念じたことによるものか、いつの間にか魂を蝕む激痛は消えていた。
そんな彼の前で、ヂギリが優しく微笑みながら見守っている。
「どうやら、破壊神の力を全て受け入れたようだね」
「……礼を言わせてもらう。おかげで、自分自身が何者か気づくことが出来た」
どこかスッキリした表情のセル。変化は内面のみではなかった。
全身にあった斑の模様は消え、緑が基調だった皮膚の色は深紅へと染まっている。全身を破壊の稲光が走り、紫だった目の色は光り輝く白銀へと姿を変えていた。
「私はセル! ドクターゲロによって創造された究極の人造人間だ! 私が存在したことを証明する為に! ヂギリよ! 貴様を倒させてもらうッッ!!」
「おいで……!」
宣言するセルへ歓喜も露に、ヂギリは両の手を開いて彼を導く。そんな彼女に向かってセルは──跳んだ。
「──波ぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
真正面から行くと見せかけ、瞬間移動でヂギリの真後ろに現れたセルはかめはめ波でヂギリの上半身を消し飛ばす。しかしヂギリの周辺の空間が歪むと、即座にその姿は元へに戻る。
「まだだ! だだだだだだだだだっ!!」
圧縮した連続のかめはめ波でヂギリを撃ち続けながら、セルは彼女を殺すための手段の準備を始めていた。
何を企もうと思考が読まれることはセルも知っている。ゆえに彼は考えることを止め、肉体が赴くに任せるまま戦闘を継続する。皮肉にも、それは神の戦闘方法である身勝手の極みの入り口であるとも言えた。
「ビッグバンアタック!」
超至近距離まで接近してからのビッグバンアタックを、ヂギリは片腕を犠牲にしつつ空間を引き延ばし、寸前でねじ曲げ弾道を無理矢理逸らす。
「魔貫! 光殺砲!!」
束ねられた両腕の人差し指と中指から、それぞれ放った螺旋を伴う光線がヂギリへと迫る。しかし光線は彼女に当たる直前慣性の法則を無視したような直角機動を取り、その身を取り囲んだ。
「まだまだぁ!!」
さらに先ほどの連続かめはめ波の際に展開しておいたエネルギー弾でヂギリの周囲を取り囲み、彼女への包囲網を完成させる。
「くぅたばれぇ!!」
魔空包囲弾が着弾すると同時、魔貫光殺砲がそれぞれ直撃して彼女の体を削りつくす。無論、それがダメージになることはない。
だがそれでセルが諦めることもなかった。
「かぁ!」
爆煙が晴れるより早く瞬間移動で接近し、すでに半ばほど復元した彼女の豊満な胸を殴りつける。
「めぇ!」
回帰した頭を殴り潰し、受け止めようとする細い腕をその手に展開した気円斬によって切り落とす。
「はぁ!」
両膝を砕き、姿勢が崩れるのと同時に強烈な膝蹴りを再構築された顎へと叩き付け、下あごを口中へとめり込ませる。
「めぇぇ!!」
両腕を掴み、瞬間移動を繰り返して彼女の肉体を空中高く移動させ、自身は彼女の下腹部の辺りで構えた両腕を組み合わせる。
「波あああああああああ!!」
先ほど不意打ちで放ったかめはめ波を上回る超かめはめ波が、ヂギリの全身を捉え完全に消滅させた。
するとセルは細胞ひとつ残さず彼女が消滅したのを見届けると、全神経を集中させてその肉体が再構築されるタイミングを見極める。
「中々に激しい男だね。ここまで遠慮なく壊されたのはさすがに初めてだよ」
どこか艶然と呟くヂギリ。何度となく折っている筈の杖は変わらずその手に握られており、彼女が有する余裕が一切変わっていないことをセルは把握する。
「魔人ブウとやら程度ならば既に完全消滅しているだけのダメージは幾度となく与えているつもりだが、やはり無駄か。まずはその厄介な能力から対処させてもらうぞ」
言うなりセルは、今度はその拳に渾身の破壊の力を籠めだした。ヂギリはそれを見て焦るでもなく、むしろようやく待望のものが来たとばかりに待ち構える。
「やってみるといい」
「壊れろぉ!!」
セルの拳が狙ったのは、ヂギリが持つ杖。だが命中する寸前時間停止によって回避したヂギリは、時間停止の解除と共にセルの周囲へ空間の断裂を仕掛け、彼の体を賽の目状に切り裂こうとする。
「がっ……!!」
だが、ヂギリの予想とは裏腹にセルの全身はサイコロステーキのように転がることはなく、表面を切り裂かれたセルはその身を再生させることで即座に回復して見せた。
「なるほど、破壊のエネルギーを全身の血管に流しているのか。発想自体は破壊神のそれと変わらないけど、破壊のエネルギーの殆んどをそこと攻撃部位に集中してるのね……。寿命、縮むわよ?」
「はっはっは、寿命などと。ここで貴様を倒さねば、そもそも私に先など無いだろうに」
頬に指を当てて指摘するヂギリへと軽い口調で返すセル。どこか親し気な空気ですらあるが、セルの目的はあくまでも彼女の完全消滅である。僅かな会話で彼女を攻略する時間が稼げるのなら、むしろ願ったり叶ったりではあったが。
「ええ、その通り。どう、わたしを殺す手立ては出来たかしら?」
「細工は流々と言いたいところだが、残念ながらそれはこれからを楽しみにしてくれたまえっ!!」
再びセルが瞬間移動で跳ぶも、ヂギリは彼が転移する位置の空間を炸裂させる。最初からその程度のことは出来たが、彼女はセルがどこまで出来るのか見届けるつもりだったのだ。
「ごあっ!?」
内臓と骨格をシェイクされ、血反吐を吐き出しながら吹き飛ぶセルの足をヂギリが掴む。
「そぉらあ!!」
瞬時に固定した空間へと叩きつけられ、内臓へ及んだダメージがまだ回復してないセルは数瞬意識が飛ぶ。
その間にヂギリは閉鎖空間を展開し、セルを閉じ込める。ちなみに天使らはヂギリが用いた技をそれぞれの空間において予め用意したトラップだと判断していたが、その判断はある意味で間違っている。大半のトラップは、彼女の胎内に保存されているからだ。ゆえにあの場においてどれだけのトラップを破壊されたところで、ヂギリの武器となる無数の空間トラップが尽きることはない。
これもまた、ヂギリが自身を監視する天使らの目を欺くために取った戦略のひとつであった。
「おおおああああああ!!!!」
セルは破壊のエネルギーで構成したファイナルフラッシュを極限まで絞って放ち、閉鎖空間の一部に穴を開ける。そうして僅かに出来た隙間に生まれた空間の連続性。これを利用し瞬間移動で脱出するが……。
無論、そうして出てくることもヂギリは既に予想済みだった。だが何よりも、彼女はこうして自分に立ち向かってくるセルの存在を楽しんでいた。
「長生きしただけの破壊神よりもよほど出来るよ。しかし惜しい……それだけの力を持っていても、お前では全王は疎か天使達を倒すことすら出来ん」
悲し気に眉を顰めるヂギリの言葉は純然たる事実であった。セルの力は、今となっては舞台で戦い続けるフリーザやサイヤ人の集合体をすら圧倒するだろう。
だがその程度だ。その程度の力では、彼女の望みを叶える駒にすらなりえない。
しかし、この場でセルを倒すつもりだった彼女は方針を変えることにした。
「気が変わった。思った以上に魂の力が集まったこともあるが、お前を生かしてやろう」
彼女はそう言うと、どこからともなく取り出した陶器の瓶を胸の前で浮かせる。
セルは本能的にそれを破壊すべきだと理解したが、いつの間にか彼の全身は無色の圧縮した固定空間で覆われていた。
「くっ……!!」
「全てが終わったならまた出してやろう。その時は、この続きを存分に楽しむといい──魔封波」
ヂギリの声が響くと同時、空間が捻れセルの姿そのものが歪みだした。セルは瞬間移動や破壊の力でどうにか脱出を試みるが、どうやら周囲の空間ごと吸い込まれているようでどうすることも出来ない。
「オオオ……!! オオオオオオオオ!!!」
最後まで目を閉じず、セルはヂギリの放ったその技を見続けていた。次は負けぬと。そう言わんばかりに。
セルを閉じ込めた瓶へとどこからか取り出した“破壊神封じ”と書かれた札を貼ったヂギリは、いよいよ終わりが見えた戦いの終焉を見届ける為──火星へと跳んだ。
「もうセルが主人公でいいんじゃない?」
そんなかつてRにおけるラディッツ大活躍の時に言われたような言葉が我ながら脳内に響く響く(´・ω・`)(笑)
すっかり正統派ムーヴしてるセルですが、別に善人じゃないです。ただ結果的に彼が一番宇宙の平和を守ろうとしてるだけで(笑)