ドラゴンボールZ──宇宙の危機!極悪人統一決定戦──   作:SHV(元MHV)

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お待たせしましたウヘヘヘヘ(;´∀`)

さすがに連続投稿できなかったよの巻でした。でもでも書いてたらどんどん書くこと増えていって、気づいたら普段の倍どころじゃない量になったのでボリューミーな内容をお楽しみください('ω')

これにて終わりになります。


その⑮ 憧憬と翻意。そして……

圧倒的速度、無限のエネルギー、さらには全身を包むエネルギーの奔流による防護壁。それに加え無数のサイヤ人らの戦闘経験値をも有する存在。それがサイヤ人の集合体であった。

 

だがそんな闘神のような存在に対し、アルティメットフリーザは互角の戦いを繰り広げていた。

 

「どうしました! あなたの力はそんなものではないでしょう……!」

 

さらなる激戦を求めるように、アルティメットフリーザはデスビームを親指を除いた両8本の指から連続で放つ。サイヤ人の集合体はフリーザへと突き進みながらそれらを拳で弾き、あるいは躱す。弾かれたデスビームは岩盤を突き抜け、火星の反対側から空へ目掛けて叩きつけられる。

 

『でりゃあ!!』

 

高速機動で一気に接近して繰り出された回し蹴り。だがすでに何度も見たことで驚くことにこの速度に慣れたアルティメットフリーザはそれを受け止めると、その勢いを利用して彼自身もまた回転。尻尾による強烈なカウンターをサイヤ人の集合体へ食らわせる。

 

『っ……! だああっ!』

 

顔面を強かに叩かれ跳ね返されたサイヤ人の集合体は、お返しとばかりに吹き飛びながら片手でエネルギー波を放つ。

 

アルティメットフリーザは不安定な姿勢だったこともありそれをまともに食らうも、全身を焼け焦げさせながらエネルギーの渦から脱出、即座に傷を再生して見せる。

 

「ククク……仮初の肉体とは便利なものですね。慣れればこの程度の傷、即座に回復できる」

 

これまで多くの者がそうだったように、フリーザもまた再生能力を獲得していた。だがそれは生前あった能力を発露させたものではなく、これまでの戦いで観察を続けた結果自身にも可能だと結論づけたもの。すなわち、彼が彼自身のセンスによってこの仮初の肉体の扱いを身につけていることへの証左であった。

 

「さあ!!」

 

アルティメットフリーザの放った一撃が、砕け宙に浮かびだした岩盤を切り裂く。サイヤ人の集合体はそれを避けるが、切り裂いた一撃はそのままエネルギーの壁となり彼の逃げ道を塞ぐ。

 

「さあ!さあ!さあぁ!!」

 

連続して放たれたエネルギーの斬撃。それによって形作られた六角形の通路。サイヤ人の集合体が前を見ると、そこには全身をエネルギー波で包んだフリーザがいた。

 

「ばあーーーーーっ!!」

 

『ぐあああああああ!!』

 

左右上下への回避を塞いだ上で放たれたフリーザの全身全霊の一撃が衝突し、全身を包むエネルギーの奔流も殆ど役に立たず、抉るようにして突き進み続けるフリーザの勢いに勝てず、サイヤ人の集合体は星を貫いていく。

 

『がぁっ!! ぐぐぐっ……! ふん!!』

 

岩盤に全身をぶつけられながらどうにか人差し指と中指を上へと向けると、彼はその身に纏ったエネルギーの奔流を全方位に向けて解放する。

 

「なにっ!?」

 

これまで防御一辺倒に使われてきたエネルギーの奔流が突如として解放されたことでアルティメットフリーザはその勢いに押され、サイヤ人の集合体から強制的に離される。

 

しかしフリーザは迫りくるエネルギーの奔流が同一方向へ流れていることを見切ると、自身を包むエネルギー波を同じように同一方向へと放出することでエネルギーの奔流を受け流す。

 

「これで──ぐはぁ!」

 

エネルギーの奔流を解放したことで圧倒的に無防備となったサイヤ人の集合体ではあったが、再びその身にエネルギーの奔流を纏うのを待つのではなく、むしろこの際に出来た隙を狙って反撃へと躍り出た。

 

『らあああああ!!!』

 

激しい乱打がフリーザを捉え、一撃一撃に強烈なエネルギーが上乗せされる。

 

魂と魂の戦いであるこの舞台において、如何なる肉体の特性をも無視して絶対のダメージを与えることが可能な攻撃。魂そのものへと直接大エネルギーを叩きこむサイヤ人の集合体の一撃がアルティメットフリーザを捉え、彼の全身に罅が入る。

 

「おお……おおおおおおオォォォ!!」

 

だがアルティメットフリーザも負けてはいない。気を失いかねないほどのダメージを受けながらも、たった今受けた攻撃を学習。

 

エネルギーの殆どを拳へと集中させたサイヤ人の集合体に向かって、自身もまた大エネルギーを乗せた一撃を見舞う。

 

『ぐぅぅ……!』

 

その一撃を受けたアルティメットフリーザと同じように全身へと罅が入り、さらには明滅するサイヤ人の集合体。フリーザはそんな彼を見て、狂気すら感じるほど深い笑みを浮かべた。

 

「なるほど……なるほどなるほど……!! あなた、その体にまだ馴染んでいませんね!」

 

『……!!』

 

フリーザの指摘は事実だった。一度砕けかけた魂をブロリーをベースに他のサイヤ人らの魂で補っているサイヤ人の集合体は、その実常に不安定さを孕んだ存在でもある。

 

彼が誕生直後即座に戦闘に移行できなかったのも、その不安定さが記憶の錯綜を生んでしまったことが大きい。

 

そして今フリーザは、そんな彼へと有効な攻撃を皮肉にも彼自身の攻撃によって学習してしまった。

 

さらに悪いことに、今の一撃によって彼の肉体は再び崩壊を始めている。このままでは、あと5分と経たずにその肉体は消滅してしまうだろう。

 

『フリーザ……! フリイイイザアアアアア!!!』

 

しかし、それで諦める()()ではない。今の彼を支えているのは、バーダックの、そして無数のサイヤ人達の想いである。

 

目の前にいる不俱戴天の仇を倒すまでは、例え死んでも死にきれない。そんな思いから誕生したのが彼であるならば、なぜこんなところで倒されてしまえようか。

 

「砕けなさい!!!」

 

フリーザが両手を掲げると、兄を、そして大魔猿となったブロリーの肉体をも穿ったデスニードルを上回るアルティメットデスニードルがずらりと現れる。

 

千を超えるさらなる威力を秘めた死の針は、その全てがフリーザの念動力によって支配されている。彼は叫ぶサイヤ人の集合体へとその矛先を向けると、自身もまた叫びをあげてそれらを一斉に発射した。

 

「きぃぃええええええ!!!」

 

帝王の号令に従い、次々と発射されていくアルティメットデスニードル。

 

サイヤ人の集合体は浮かぶ岩盤に両手両足を付き全身に力を入れて構えると、明滅する肉体を抱えて──跳んだ。

 

『フリィザアアアアア!!』

 

向かってくるデスニードルの大半を高速機動の勢いで防ぎながらも、一つが刺されば二つ目が、三つ目、四つ目と刺さる数は増えていく。刺さった数が十を超えたのを確認すると、フリーザはその目を怪しく輝かせ、これと同期したデスニードルを爆発させた。

 

『ぐ……ああ……がはっ……!』

 

「魂の欠片一つ残さんぞ!」

 

爆煙から零れるように落ちていくサイヤ人の集合体へ残ったアルティメットデスニードルが殺到し、ボロボロになった彼の身を埋めていく。

 

「くたばれええええ!!」

 

いつの間にか、フリーザの肉体はアルティメット化し成長した状態から元へと戻っていた。死の針の正体は、スラッグから得た無数の魂を材料とした武器だったのだ。

 

魂から得られるエネルギーそのものを爆発させる攻撃は、サイヤ人の集合体の腕をもぎ、足を爆ぜさせ、彼の体をバラバラに崩壊させていく。

 

「やった!! 遂にやったぞ!! ハーハッハッハッハッハッハ!!!」

 

弱ったとはいえ勝利を確信し、崩壊を始めた火星で一人高笑いするフリーザ。

 

──そんな彼の後ろで、一人の男が具現化する。

 

「があっ……!!」

 

自身が放ち、確実に爆破を命じた筈のデスニードル。それを握ったバーダックが、揺ら揺らとその身を虚ろに揺らがせながらフリーザを背後から刺していた。

 

「ばぁ……ばかな……!?」

 

フリーザが混乱するのも仕方がなかった。バーダックはブロリーとの戦いで死んだ筈だと。

 

彼が再び現れることが出来たのは、サイヤ人の集合体が不安定になったことが影響していた。幽体となるかと思われたその身はフリーザへの怒りでどうにか纏まっていたが、その中にいたバーダックは逆にその怒りで目覚めていた。

 

彼は一人、幽体となってバラバラになっていくサイヤ人の集合体から脱出すると、なぜかフリーザの命令に従わないアルティメットデスニードルを発見し、これを武器として用いることでフリーザへの不意打ちとしたのだった。

 

アルティメットデスニードルの材料は、彼によって魂を加工された亡者の魂であり、その意思はフリーザによって塗りつぶされた筈である。

 

しかし、フリーザはある勘違いをしていた。この舞台において、倒されること=死ではない。仮初の肉体を失ったことで魂へと戻り、その魂もろともエネルギーとして吸収されてしまうというシステムの上で動いているに過ぎなかった。

 

たしかに、生半可な存在ならば魂となった時点で自我が消滅してしまってもおかしくはないだろう。だがバーダックがそうであったように、例えこの舞台においても魂となったことで自我を消滅させない存在はいるのである。

 

フリーザは自身に刺さった針から、殺した筈の兄の気配を感じて総毛立った。そんな筈はないと。現に今のフリーザの戦闘力の要である三重の魂はフリーザの内に存在していた。

 

だがこれもフリーザは知らないことであったが、クウラはかつてビッグゲテスターによって己の複製を無数に作ることを可能としていた。彼はフリーザに殺されて尚、彼に意趣返しをする為だけに彼の内部において自身の魂を割いていたのだ。

 

その材料となったのは、フリーザが取り込んだスラッグ経由の無数の魂達である。

 

「こんな……こんなことが認められるかあああ!!」

 

クウラの魂をコピーされたことで自爆を拒んだアルティメットニードルが、いつの間にかフリーザを取り囲んでいる。

 

そんな光景をフリーザの後ろでにやけて眺めていたバーダックは、気合で握りしめたアルティメットニードルをさらに深く突き刺し、フリーザが逃げられないよう彼を羽交い絞めにして捕らえた。

 

彼がこうして自らを具現化できているのも、サイヤ人の集合体から得たエネルギーをひたすら使い潰しているだけであり、もはやその時間も残り僅かとなっている。

 

「お前の運命も……これで終わりだあああああああ!!!!」

 

「ふ、ふざけるなあああ!!」

 

渾身の力を込めて脱出しようとするフリーザだが、彼の内部へと突き刺さったアルティメットニードルはいつかを再現するように枝分かれを繰り返しフリーザの魂の核すら傷つけている。

 

そしてフリーザは全身を穿たれ、自爆したアルティメットニードルによってバーダック諸共粉微塵に吹き飛んだ。

 

 


 

 

真っ白な空間。龍を模した人形が収められたこの部屋には、かつてこの人形を管理していた少女としてのヂギリの姿はない。

 

代わりに、もはや何も映さなくなった石くれを見つめ続けるガーリックJr.の姿がそこにあった。

 

彼は自分がここへと連れてこられた真意を疾うに見抜いていたが、その上で今の自分がやるべきことは何かを考え続けていた。

 

かつて彼は神を目指し、神へ反逆し、さらなる魔となって地球を支配しようと目論見失敗した。

 

そんな中でかつて戦った者達が今どうしているのか。彼らの顔を思い浮かべる内に、彼はふと気づく。今まで、格上の存在へと挑んだのはかつてヂギリへと反旗を翻した時だけだったことに。

 

いつの間にか、見下ろすことが前提となっていた。無窮の牢獄へと閉じ込められながら、そんなことにも気づけなかったのかと、彼は自嘲するような笑みをこぼす。

 

そんな彼の背後へ、音もなくヂギリが現れた。その手には、魂だけとなったバーダックが持たれている。

 

「……終わりましたか」

 

「ああ、これで後は()()を起こすだけだ」

 

師が訪れたことを気配から察知し、ガーリックJr.は告げる。

 

彼は振り向きながら、その身をピッコロにも似た八頭身の体へと変身させる。

 

「──そして勝利者へ与えられる転生の為の器、それが私の役割というわけですな、師よ」

 

その目に強い戦意を携えて、ガーリックは師の前に立ちはだかった。

 

「その通りだ。お前をあの亜空間から出したのは他でもない、この舞台において勝ち残った者へ、仮初ではない肉の器を与える為。不老不死となったお前の魂は、それが与えらえれた存在に一度限り完全な肉体を与える。安心しろ……お前の魂もまた、私の作る神龍──邪悪龍を動かす崇高な贄となる。なんなら、意識程度は残しておいてもいいぞ?」

 

予想はしていたが、師からもたらされたその答えに、ガーリックはショックを隠せず僅かに沈黙する。しかしここに取り残され、一人考え続けた彼のやるべきことは決まっていた。

 

「それは御免被らせてもらうぞ、我が師よ。貴方は地球も宇宙も滅ぼさないと言ったが……その邪悪龍が生まれ、界王神や天使を滅ぼす過程で犠牲になる者達のことまで考えているのか?」

 

ガーリックは師が嘘を吐くとは思っていなかった。だが同時に、大事なことを敢えて言ってない可能性は疑っていた。

 

「もちろんだ。犠牲は最小限で済むようになっている。──ただし、地球やナメック星にあるドラゴンボールが使えないよう、今の神であるナメック星人も含めて、不確定要素となる者達には一度肉体を失ってもらう。なに、全てが終われば転生のシステム自体今とは違ったものになるのだ。蘇った際には少々違った存在になるだろうが、きちんと復活もさせよう」

 

単純な戦闘力であればこそ、対策の立てようもあるというもの。願いの叶え方によってはどんな邪魔をされるとも限らないドラゴンボールは不確定要素にもほどがある。既に超ドラゴンボールは使えないよう、ヂギリはセルに与えたのとは別の破壊の力でそのひとつを完全に砕いてある。そして今地獄に行っている地球の戦士らがこのまま消滅してしまえば、万が一にも邪魔されることはない。

 

邪悪龍が完全体となり目覚めれば、常時使用可能な願いを叶える力でどんな超戦士も強制的に肉体を奪って魂だけの存在としてしまうことすら出来る。最初の願い玉、超ドラゴンボールをも凌駕する邪悪龍の力を持ってすれば、もはや宇宙の狭間に閉じ込めた天使達でさえどうすることも出来なかった。

 

「貴女がどれだけの恨みを持ち、どれだけの時間をかけて準備をかけてきたのか……私のような矮小な者が考えたところで到底理解すら及ばないでしょう。ですが、矮小だからこそ見えてくるものがあるッッ!!」

 

「……お前も芯人らに与すると?」

 

構えを取ったガーリックを睨みつけるヂギリの視線は、それだけで魂までもが凍てつきそうな冷たい圧力が籠っている。だが、だからこそ、ガーリックはそんな理由で地球の者をヂギリが巻き込んでしまうことが許せなかった。

 

「いいや、それも違う! 私がかつて目指した貴女()が、そんな理由で何も知らない者達を巻き込むことが許せない! ただ、それだけだ!!」

 

言い終えるや否や、ガーリックJr.はその背後に彼の切り札──デッドゾーンを開く。一条の光すら届かない無窮の暗黒空間。数十年に渡って閉じ込められていたこの亜空間の正体に、ガーリックは気づいていた。

 

「今更そんなものでどうしようと……」

 

呆れたように、だが探るように言い募るヂギリは、デッドゾーンを展開したまま突進してきたガーリックJr.に違和感を抱く。

 

彼女は咄嗟に彼の全身を空間の断裂で切り裂くが、攻撃するならば空間による結界か炸裂にするべきだった。しかしガーリックは彼女が自身を攻撃するならば、龍を模した人形にダメージが及ぶような手段は避けるだろうことを予測していた。

 

「……ぐぅっ! しぇえあああ!!」

 

空間ごと割く攻撃において、肉体的強度や気による防護はまるで当てにならない。ならばと最初から切り裂かれることを覚悟していたガーリックは、激痛を無視して肉体を瞬時に繋げ合わせると、押し倒すようにして彼女の肢体を強く抱きしめた。

 

「……それで、どうするつもりだ」

 

「こうするつもりだ! 魔封波!!!!」

 

ガーリックが宣言すると同時、彼とヂギリの体は歪められ、デッドゾーンへと向かいだした。

 

「なるほど」

 

ヂギリは全身を歪められながらも、ガーリックの企みを見抜いて感心する。この距離では魔封波返しすら出来ないからだ。

 

「こうなったからにはもはや回避は出来んぞ! 私と共に、暗黒空間へ落ちてもらう!!」

 

ガーリックが魔封波の対象としてデッドゾーンを選んだのには、理由があった。時空神ヂギリを相手に、生半可な技など通用はしない。無論、まともに戦ったところで彼では勝つどころか指一本触れることすら出来ないだろう。

 

ゆえに魔封波はこの場において、彼だからこそ可能な切り札だった。かつてヂギリが武泰斗へと伝授させた技。その基礎はガーリックもまた身に着けていたからだ。だからこそガーリックはセルとの戦いにおいて師が使ったその技を、見ただけで即座に己のものとして使うことが出来たのだ。

 

しかし如何に魔封波が格上に対して通用する技とはいえ、ただ単にデッドゾーンへ閉じ込めるだけでは意味がない。

 

──だからこそ、ガーリックは自らの意思でデッドゾーンを消滅させるつもりだった。何故ならばデッドゾーンの正体とはガーリック自身の一部。不老不死である彼が無意識にその消滅を拒んでいた、彼の唯一にして最大の弱点であるからだ。

 

ヂギリは言った。地獄が消滅すれば、その内部の空間にいた者は一部の例外を除いて死ぬと断言した。そしてガーリックはその例外こそ、宇宙意思に肉体を与えた存在、全王であることを看破していた。

 

すなわち、時空神と言えど空間の消滅からは逃れることが出来ないのだと。そして無論、それは不老不死であるガーリックとて同じである。彼は、命を懸けた最初で最後の賭けに出たのだ。

 

「があああああ!!」

 

「……」

 

諸共に死する。そんなガーリックの内心を読んだヂギリは、湧き上がる下卑た衝動を必死で抑え込む。彼女もまた、分裂する自分自身と戦っていた。

 

かつて彼女が自らを分けたのは他でもない。かつてピッコロと神が分かたれたのと同じように、自分自身にある悪の心を制御できなかったからだ。だが分裂したとはいえ、その目的は同じ。彼女は悪の心を三人の己それぞれで共有し、それぞれが悪の心を制御することで対処してきた。湧き上がる恨みや憎しみといった心は長い時において腐る彼女の心に絶えず活力を与え続けていた。

 

だが天使らへの対処を前にして再び融合した彼女は、予想以上に悪の心が成長していたことに動揺する。彼女自身がその衝動に抗うことが出来ず、天使らを前にして下卑た笑いを漏らしたのも、彼女が自らの心を制御できなくなっている証明だったのだから。

 

そしてそんな彼女の中にある悪の心は、今彼女の為に自らの命を懸けて戦っているガーリックを無惨に殺せと命じている。彼女はその衝動が、どうしても正しいとは思えなかった。

 

だからこそ、戦闘力においてですら足元にも及ばないガーリックは辛うじてヂギリにしがみつくことが出来ていた。彼は必死だった。ここで失敗すれば、二度と同じ仕掛けは通用しないのだから。

 

「ううおおああああああ!!!」

 

かつて憧れ、慕った相手。神として目指した相手が、自分の都合の為に何も知らない存在までをも犠牲にしようとしている外道を認めたくなかった。ガーリックは今、生まれて初めて自分以外の為に己の全てを賭していたのだ。

 

「ふっ!!」

 

……しかしガーリックの願いも空しく、彼の羽交い絞めはあっさりと解かれ、即座に放たれたヂギリの攻撃によってデッドゾーンは消滅する。

 

ガーリックと繋がったデッドゾーンが消滅したことで、ガーリックの魂そのものへとダメージは及んだ。彼はその場に倒れ伏しながらも、ヂギリへとしがみついた際に仕掛けたもう一つの行動が成功したことにほくそ笑む。

 

「凄まじいことを考えたものだ……」

 

ヂギリは俯くガーリックを見つめながら、彼を振りほどくことはいつでも出来たにも拘わらず、それをしなかった自分へと自問自答する。悔恨や憎悪を理由とした行動をヂギリは誰よりも知っている。だからこそ、相手を慕うからこそ命を懸けるという行動が、弟子の想いが、今になってヂギリの心を揺らしていた。

 

それゆえに、彼女は考えてはいけないことを思いついてしまった。

 

果たして、自分は正しいのかと。

 

そうして彼女が自問自答している間にも、ガーリックのダメージは広がりつつあった。如何に不老不死とはいえ、それを構築する魂に回復不能なダメージが及んでしまえばそれまでである。

 

ガーリックは己の死が避けられないことを悟ると、未だ残る不老不死の力が消えない内に、自身の胸へと手を突き入れ、心臓ごと魂の核を取りだした。

 

ヂギリはそんなガーリックの行動が不可解であり、同時に彼女は気づく。彼女が読めていたのは、彼の心理の表層でしかないことに。破壊神の内心すら見通した精神感応を逆手に取り、ガーリックは彼女に自らの企みを読ませない方法を確立していた。

 

砂のように崩れ始めた足元を見つめながら、ガーリックは()()()()()()()()()を噛み砕いて叫ぶ。

 

「私の魂をくれてやる! あとは任せたぞ!」

 

砕けた瓶に貼られた“破壊神封印”の札が剥がれ、封印が解除されたことでセルが復活する。その身にはガーリックから与えられた魂が宿り、仮初ではない肉体が与えられていた。

 

「彼が、希望……?」

 

なぜガーリックがそう思ったのか。彼女は問いただしたかったが、それは叶わなかった。すでに完全消滅したガーリックの残滓は、セルが復活したことで起きた爆風で吹き飛ばされてしまっている。

 

そしてセル自身は、ひどく奇妙な気分に陥っていた。あとは任せるなどと言われたことは当然初めてである。それも殆ど知らない相手から何を任されたというのか。自分の命を与えてまでも、セルに何を期待したというのか。

 

確かに彼は生身の肉体を得た。とはいえ、それで彼の強さが劇的に変わるわけではない。破壊神の力を得てパワーアップした時と比べれば、精々やれることが少し増えた程度だ。

 

セルは動揺するヂギリへと対峙しながら、どこか今の状況を皮肉るような口調で話し始める。

 

「どうやら、まだ出番は終わっていないようだな」

 

挑発も込めた言葉だったが、それに対するヂギリの回答は冷然たるものだった。

 

「……いいや、終わりだ。既に亡者達の戦いは終わっている。本来であればこの男──最後まで魂を残したバーダックが勝利者となる筈だったが……順序が変わったとはいえ、勝ち残ったのは結果的にお前となった」

 

ヂギリはその手にしたバーダックの魂をセルへと渡す。セルはどこか灼熱を思わせるほど熱いその魂を恭しく受け取るも、取り込むかどうかは迷っていた。

 

「まずは礼を言う。お前達のおかげで、わたしの念願は成就した」

 

これまで繰り広げられてきた数々の戦い。特にアルティメットフリーザとサイヤ人の集合体の戦いは、その際に起きたダメージや余波のエネルギーも含め、全て邪悪龍へと送り込まれていた。

 

ウィロー、クウラ、スラッグ、フリーザ、ブロリー。特に強い魂の力を持つ者達は、今やヂギリのドラゴンボールを輝かせる為の材料となり、さらに戦いによって起きた余剰エネルギーで七つのドラゴンボールはその六つまでが光り輝いている。本来であればここにバーダックかセルの魂を加えることで完全な覚醒が果たせるのだが、今のヂギリにそのつもりはなかった。

 

「なるほど、それは重畳だ。だが、悪いが邪魔させてもらうぞ。別に界王やらに肩入れするつもりなどないが、負けっぱなしというのは性に合わんのでな」

 

「彼の名はガーリックだ。正確には、その転生体であるガーリックJr.と名乗っていたが……」

 

ヂギリは構えるセルに構わず、ガーリックと同じように自身の胸を貫くと、己の魂を引きずり出す。

 

「貴様……!! 勝ち逃げする気かッッ!!」

 

激高するセルだが、彼の言葉はもはや彼女に届かない。ヂギリは己の魂を邪悪龍に捧げ、その是非を自身の無意識に問いかけてみることにした。

 

「……わたしの中にある悪の部分か。目的は変わらなかった筈だが、確かにかつてのわたしとは変わっていたのかもしれんな。だがそうであるなら、最後の邪悪龍の材料はわたしとさせてもらおう。これで邪悪龍は完成する。予定とは違う分少々時間は掛かるが……精々その間に抵抗してみるといい」

 

ヂギリは最後にそう一言だけ言い残すと、邪悪龍へと魂を捧げて砂のように崩れ落ちた。

 

──途端に、龍と人を混ぜ合わせたような姿をした人形がびくりと震える。やがてその瞳が開くと、真っ白い空間のどこに果てがあるともしれない空間が鳴動し始めた。邪悪龍の無機質だった全身が蠢き、真っ白い全身は龍とも人とも言えない姿へと変わっていく。

 

白い肌は躍動感に溢れた筋肉に覆われ、全身からは黒い角が生え、赤い雷がその身に纏われる。邪悪龍の肉体が構成されていくのと対照的に、真っ白い空間は振るえ崩れだした。

 

「な、なんという力だ……!!」

 

完全な力のコントロールを是とする神とは真逆の在り方。無秩序に力を外へと漏らし、壊し続ける存在。破壊神のそれとは違う、ただいるだけで全てを壊していく魔の化身。このような存在が完全に起きれば、それだけで宇宙が壊されてしまうのではないかとセルが思わず思ってしまうほどである。

 

ヂギリとはまた別の、どうしようもないほどに巨大な存在感。あらゆる抵抗が徒労に終わるのではないかと、見た者全てに感じさせる龍神が、今まさに顕現しようとしていた。

 

しかし白い邪悪龍はそんなセルの動揺などつゆ知らず、羽を広げ崩れていく空間から脱出する。

 

「くっ……!」

 

どうするべきか迷っていたセルもまた、それを追いかけるように瞬間移動した。これだけの気配を出している相手ならば、その後を追うのは容易い。だが意外にも、彼らが移動したのはなぜか崩壊間もない火星だった。

 

ヂギリによる補強が行われていたとはいえ、アルティメットフリーザによる星をたびたび貫く攻撃は星の核を傷つけ、惑星としての寿命を終わらせようとしていた。

 

セルはもはや崩れ荒れ狂うだけの赤い大地を見つめながら、思わず手にしたままの魂を見つめ、悩んでいた。託されたとはいえ、果たして自分はどうするべきなのかと。

 

「……あとは任せたなどと、言ってくれる」

 

冷や汗を流しつつ独りごちるが、それに応える相手はいない。

 

当然だが、仮に彼がここで戦線離脱したところで誰から責められる謂れもないだろう。宇宙の法則は変わったところで、それが彼へ累を及ぼすかと問われればそれも否だと言える。その過程で多くの存在が巻き込まれ死ぬかもしれないだろうが、それこそ知ったことではない。

 

──が、ここで事態を中途半端に放り投げてしまうのは、どうにも後味が悪い。それは雨の日に痛む古傷のように、今後も終生までセルを内側から苛み続けるだろう。

 

「……ふん、今更逃げまどうことを恥などとは思わんが」

 

かつて成長する過程で、セルは多くの人間をその糧とし、戦士たちから逃亡を繰り返した。それを恥などとは思わないが、手にした魂から伝わる熱がサイヤ人としての細胞を刺激しているのも事実だった。

 

──お前には出来ることがまだあるだろう──

 

バーダックの魂から伝わるそんな意味を込めた熱が、セルの心を煽り続ける。

 

そんな中、邪悪龍はただ無目的に火星を飛んでいるだけだった。というのも、火星の上空はヂギリによって積層空間が築かれており、これが彼女の消滅後も残り続け邪悪龍の脱出を拒んでいたからだ。そんな場所へと邪悪龍を誘導したのは、彼女が最後に残した理性なのか、はたまた後悔からか。

 

「あれを倒せば、私の強さは問答無用で証明される、か。……ククッ」

 

自分自身への言い訳に笑いながら、セルは手にした魂と共に両腕を掲げ、高らかに宣言することにした。バーダックなどに言われずとも、逆転する為の手段はもはや一つしかない。

 

「ありとあらゆる宇宙の存在よ!! 悪いが、無理にでも元気をわけてもらうぞ!!」

 

無力な人間が落ちてくる星を前に抵抗するようなものだと、セルは内心で思っていた。だが何もしないのは強さを存在理由とするセルとしての矜持に関わる。実際今でさえ邪悪龍とセルとの間ではそれだけの戦力差があったし、さらに彼が覚醒して願いを叶える力を扱えるようになれば、それこそセルごときではどうにもならないだろう。

 

そもそも、相手は全王を滅ぼす為に生み出された存在である。ありとあらゆる存在を消滅させる宇宙意思の具現化。そんな存在に対抗する為に創られた兵器相手に、セルが用いるのはよりによって他の存在の力を借りた一撃である。

 

彼からすればそれは不安にもほどがある方法だったが、対抗手段としては間違っていない筈だった。それはヂギリが口にした破壊神への対抗手段と同じ。すなわち、相手が完全に力を発揮する前にそれを凌駕する力で叩き潰すこと。

 

だからこその元気玉である。

 

そしてセルの号令に従い、まずは太陽系のあちこちから元気が集まってきた。無理にでもと宣言した通り、地球を始めとした星々から集まるエネルギーはけた違いに大きいが、それとてまだフリーザを倒せる程度のエネルギーでしかない。

 

ヂギリが言い残した“少々の時間”がどの程度かはわからないが、ゆっくりと元気を集めている時間などないだろう。セルは全身全霊をかけて急ぎつつ、さらに同時進行でセルジュニアを生み出し彼らを瞬間移動させた。

 

今が、邪悪龍を倒す最初で最後のチャンスなのだから。

 

「まだだ! もっともっと元気を寄越せえええ!!」

 

瞬間移動したセルジュニアらはセルのアンテナとなり、赴いた銀河で両腕を掲げると、その周囲の星々やそこで暮らす者達から元気を少しずつ取り上げ、セルに送り込んでいく。

 

セルは悟空と違い、相手への同意など求めるつもりはなかった。そもそも現状を説明したところで、無防備に力を貸す相手がいるとは思えない。本来なら可能な限り搾り取りたかったが、それはセルには不可能だった。しかしあまりにも広大な範囲から集めた元気はセル自身にも反動として現れ、破壊神の力を吸収した経験がなければ、その反動でセル自身が潰れかねないほどだった。

 

そんなセルを見かねてか、バーダックの魂が元気玉へと自ら飛び込んでいく。すると彼に惹かれるように、火星表面に残っていた亡者らの魂が元気玉へと集まりだした。むき出しの魂からもたらされた力が元気玉に活力を与え、その大きさを遥かに肥大させていく。

 

「まだだ……!! もっとだ……!!」

 

しかしそれでもまだ足りない。大きくなり続ける元気玉はヂギリの設置した火星表面の積層結界を突き破り成長し続けるが、邪悪龍を倒すにはまだ小さすぎた。

 

そして結界が無くなったことで邪悪龍の興味もまた外へと移り始めている。間に合わなくなっては意味がないと、セルはその身に吸収した破壊神の力すら元気玉に捧げていった。

 

それはセル自身の魂をも削る行為であり、事実深紅の体表は元の緑と黒の斑模様へと戻っていく。元気玉の反動もさらに増したが、手足から紫の血を流しつつも、セルは死ぬつもりなど微塵もなかった。

 

漸くして、セルジュニアを介して集めた全銀河の元気が足される。すでに木星を上回るサイズとなった元気玉だが、それでもまだ目の前の邪悪龍を倒すには足りなかった。

 

手詰まり。そんな予感が脳裏によぎるが、ならば無理にでも他の宇宙へとセルジュニアを跳ばそうとして──突如、元気玉がさらに膨れ上がった。その元気が他の宇宙から送られてきたエネルギーであることにセルは気づくと、周囲を見上げてその理由に納得した。

 

「あれは、界王……!? いや、界王神共か!!」

 

太陽と並ぶほどのサイズとなった元気玉をどうにか制御しながら、セルはこの場に現れた界王神らの助力にようやく元気玉が完成しつつあることを確信する。

 

だがそれとほぼ同時に、邪悪龍の瞳に光が宿りつつあった。

 

セルはあまりにも巨大な元気玉を、残りの力全てを振り絞って圧縮すると、それでも崩壊しつつある火星と等しい大きさのそれを、目覚めたばかりの邪悪龍目掛けて投げつけた。

 

「落ちろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

もはや今を逃せば、邪悪龍を倒すことは叶わないだろう。セルは元気玉を作った反動で両腕が崩壊し、再生する余力すら残っていない。

 

元気玉は傍目にはゆっくりと、だが実際には凄まじい速度で火星へと落下していくが、邪悪龍を飲み込む寸前で彼は覚醒してしまう。自身を食らいつつあった元気玉に気付くと、当然邪悪龍はそれを回避しようとする。瞬間移動でもされてしまえば、それでセルの努力は無駄となる。

 

しかしそんな邪悪龍を食い止めんと、集まった全宇宙の界王神らが一斉に金縛りをかけた。願いを叶える力によってそれらは即座に解除され、稼げた時間は数秒に過ぎない。だが、元気玉が直撃するにはその数秒で十分だった。

 

無言で、元気玉へと邪悪龍が飲み込まれていった。数人の界王神がそれに巻き込まれ消滅するが、それでも彼らは繰り返し邪悪龍へと金縛りをかける。彼らもわかっていたのだ。天使らが幽閉され、破壊神もいない今、彼らの宇宙を守る為には彼ら自身が命を懸ける他にないことを。

 

──お……の……れ……!!──

 

やがて元気玉に飲まれた邪悪龍が消滅する寸前、この場にいる全員がどこからともなくヂギリの断末魔の声を聞いた。それは彼女の中で、あまりにも長い年月蓄えられた深い恨みによって生まれた彼女の悪の部分でもあったが、そんな彼女の魂さえも、彼女が自らの消滅を受け入れたことで、元気玉に飲み込まれ消えていった。

 

そしてそれを見届け、全ての力を解き放ったセルは勝利を確信し──笑みを浮かべて消滅した。

 

 


 

 

邪悪龍が倒れたことで、その材料となっていた魂らは全て解放された。地獄はどうにか崩壊することなく、今回の戦いで連れ去られた悪人の魂も大半が元の宇宙へと戻すことが出来た。

 

無論、犠牲は大きかった。ヂギリによって殺された各宇宙の破壊神はドラゴンボールで復活させることは叶わず、それぞれの宇宙は今破壊神の後継者を大急ぎで育てている真っ最中だ。とはいえ次世代の破壊神が居並ぶには、どんなに短くてもあと数百年はかかるだろう。

 

それ以外の火星やセルが元気玉を用いたことで起こったダメージは、地球やナメック星のドラゴンボールによって回復させることが出来た。ヂギリがいなくなったことでドラゴンボールには再び悪素が溜まるようになってしまったが、同時にそれに気付いた第七宇宙の老界王神が諫言したことによって、よほどの事態が起きない限りドラゴンボールを使わないこととなった。

 

他の宇宙においては地獄に甚大なダメージが及んだ場所もあったのだが、それらに関しては天使らが超ドラゴンボールの使用を認めたことによって解決した。

 

──そういった事後報告をしながら、今回地獄の維持に活躍してもらった悟空ら地球の戦士達のパーティーへと、第七宇宙の界王神らは招かれていた。

 

今回も悟空やベジータは最後まで戦いに参戦したがったが、それは息子や孫たちによって止められた。理由は単純明快。彼らが既に全盛期を過ぎた老齢であり、孫どころかひ孫まで生まれていたからである。

 

なにより新世代の戦士として悟空の弟子であるウーブがいたし、その他彼らの子孫にもとんでもない力の持ち主はいる。悟空達の出番はそもそもなかったのだが、それと彼らが戦いたがる衝動はまた別の話である。

 

百人を超える大人数でのパーティーということもあり、相変わらず騒がしい彼らを眺めながら、界王神──シンは今回の事件で活躍したかつての死者達に思いを馳せていた。

 

「わからないものですね……」

 

「何がですか?」

 

突然呟いたシンの言葉に、真っ白な髭を蓄えた悟飯が答える。彼も悟空より若いとはいえすでに七十歳を超えており、今では地球の権威として知らない者はいないほどとなっていた。

 

「いいえ……今回宇宙を救ったのが、かつて悪とされていた存在だということに少々思うところがありまして」

 

「ああ、そういうことですか」

 

白髪となった悟飯は、百歳近い高齢でありながら未だ衰えぬ食欲の父親の姿を遠目に見ながら、今回の事件でセルが大きな働きをしたことを聞いていた。

 

「……僕なりに思うんですが、きっと善悪って単純に決めつけることが出来ないことだと思うんですよ。誰かの善は誰かにとっては悪かもしれませんし、その逆もまた然りです。セルだって、まさか自分が宇宙を救うつもりなんてなかったんじゃないかな。お父さんだって、地球を守ってはいましたけど、その理由の大半は“強いヤツと戦いたいから”でしたからね」

 

「ハハッ、それもそうでしたね。考えてみれば、あの魔人ブウだってこうして私たちの味方になってくれているわけですからね」

 

殺されていった他の界王神のことを思えば忍びないが、今の魔人ブウ、さらには分裂したもう一人のブウが生まれ変わった姿であるウーブは、今やシンにとってもかけがえない友人となっている。今回ウーブは実戦の場に出られなかったことを残念がらなかったわけでもないが、それでも自分の出番がないことに誰よりも安心しているのは彼自身でもあった。

 

「私たち界王神らは、どうしても寿命が長い関係上、単純な善悪をこれだ、と決めつけてしまいがちです。ですが、悟飯さんや悟空さん、皆さんと出会ってそれが浅慮であることを発見できたのは、長い人生において最も大切な気づきだったと思えてなりません」

 

しみじみとそうこぼす悟飯は何か答えようとして、その場に現れた気配に立ち上がり構えを取った。

 

「──それはいいことを聞いたな。私も、命がけで頑張った甲斐があったというものだ」

 

「お前は、セル!!」

 

瞬間移動でその場に現れた相手を見て、悟飯以外にもその出現に気付いた戦士たちが身構える。ピッコロなどは完全に臨戦態勢だった。

 

「おいおい、今回私はお前たちを救ってやったんだぞ」

 

笑いながらどうどうと両手を上げるセルだが、どこかおどけたその様子からは単に彼らをからかいに来たようにも感じる。

 

「死んだ筈じゃなかったのか!?」

 

驚く悟飯だが、それも無理はない。共に邪悪龍へと挑んだ界王神らは、戦いの最後、砂のように崩れていくセルを目撃していたからだ。

 

「無事とはいえんよ。なにせあれだけ得た力の大半を使い切ってしまったわけだからな。それに、死なないように私も少々保険をかけておいたのさ」

 

セルは元気玉を投擲する前、自身の核をセルジュニアへと移しておいた。どうしてか復活に際して、元気玉と共に邪悪龍へ特攻した筈のバーダックの魂が微量ながら混ざっていたが、そればかりはセルも知る由もなかった。

 

「おかげで単なるセルとして復活とはならなかったが、こうして諸君らにお目通り願えたわけだ」

 

「それで、ここには何しに来た」

 

子供たちを庇うようにして前へ出るピッコロが戦意も露に威嚇する。かつてはセルに勝てない程度の力しか持たなかったピッコロだが、あれからも修行を続けた彼の戦闘力は今やこの中でもウーブに次ぐほどのものとなっている。

 

しかしそんな緊迫するピッコロをよそに、食事を止めない悟空はパスタを口にしながら横から口出しした。

 

「飯食いに来たんじゃねえか?」

 

「なわけあるか!!」

 

思わずツッコミを入れたピッコロに怒られる形で悟空は首をすくめるが、彼は彼で静かにセルを観察していた。

 

彼が内包する力に、どこか見覚えがあったからだ。

 

「なあセル、オメエ破壊神になったのか?」

 

「なんですって!?」

 

悟空の言葉に驚いた様子を見せたのはシンであった。確かに次世代の破壊神はすぐにも求められている部分があったが、だからといってセルが破壊神などというのはシンからすれば晴天の霹靂にもほどがある。

 

「いいや、それは違う。だが、破壊神の力は一度吸収させてもらったからな。自分なりにあの力を再現できないか試しているところだ」

 

「万が一その力を地球に向けてみやがれ。一瞬でもう一度あの世に送ってやる」

 

悟空と同じく白髪となりながら、それでも筋骨隆々とした肉体を衰えさせていないベジータが戦意も露にセルへと宣戦布告する。

 

「おお、それは怖い怖い。ご老体を怒らせないうちに、私は退散させてもらうとするよ」

 

一通りの面々を眺めることが出来たセルは、再び瞬間移動によってその場から消える。緊迫した雰囲気が去ったことでホッと胸を撫で下した一同だが、今後も事あるごとにセルによってちょっかいが出されることにまだ気づいていなかった。

 

────こうして、宇宙の平和は悟空達のあずかり知らぬところで守られた。

 

果てしない時間の中でかつてを羨み目指そうとしたヂギリの野望は間違っていたのか。

 

それが正しいか、それとも間違っていたのか。

 

1つだけ言えるのは、最後の最後で邪悪龍を止めたのもまた、彼女の意思であったということ。

 

今日も地球は、平和に回り続けている。

 

 





結局セルが主役みたいになっちゃったよハッハッハ('ω')(笑)

まあ元気玉使わせる展開は何となく考えていたんですが、まさか最後の最後で使う羽目になるとはさっすがわたしの脳内ドラゴンボール(違)

ということでほぼちょうど一か月の集中連載となりましたがいかがでしたでしょうか。
かなりオリジナル設定も交えての本作でしたが、この物語にお付き合いいただいた皆様を少しでも楽しませることが出来たなら何よりです。

それではまたいつかお会いしましょう☆
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