ドラゴンボールZ──宇宙の危機!極悪人統一決定戦──   作:SHV(元MHV)

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若いっていいですねほんと(´・ω・`)




その④ 怨嗟と悔恨

「くだらん催しだ」

 

むやみやたらと亡者を倒すことはせず、フリーザ一族孤高の強者たる男──クウラは、部下であるクウラ機甲戦隊が敢えて打ち漏らした猛者のみを相手することでひたすらに感覚を取り戻すことに従事していた。

 

殆どの相手は指先から発射するデスビームの応用であるフィンガーブリッツのみで事足りる。だが、かつてビッグゲデスターで無数の分体を手にした時の強さにはまだまだ及ばない。クウラの望みはただひとつ。自身を死に追いやった忌々しいサイヤ人共を絶滅させること。

 

「足りん……!! この程度ではまるで足りん……!!」

 

苛つきを込めて、迫りくる亡者どもをスーパーノヴァで薙ぎ払うクウラ。その鬼気迫る様子に、付き従う機甲戦隊の面々は言葉もなく戦々恐々とし続けていた。

 

既に、彼の力はかつての強化形態に匹敵するほどである。メタルクウラにこそ今一歩及ばないものの、凡百の戦士では文字通り鎧袖一触とばかりに触れることすら許されず倒されてしまう。

 

だが、それでも彼の記憶に、魂に染み付いたサイヤ人のエネルギーへの恐怖は消えることがなかった。

 

かつて彼は孤高だった。その強さのあまり、フリーザ一族において父であるコルド大王から軍の指揮権を委譲されこそしたが、その管理が及ぶ範囲はあくまでフリーザとは被ることない領域においてのもの。

 

弟と自分で何が違うのか。冷たく、文字通り氷のような精神でそれを考え続けたが、どれだけ考えようとも弟であるフリーザと比して自分が劣っているとは思えなかった。

 

さらには、父や弟ですら成しえなかった自らの力を強化する方向での変身すら身につけてみせた。

 

ゆえにクウラはこう思った。“父と弟は自分を恐れているのだ”と。

 

挫折を知らぬほどの天才であるフリーザの力は、なるほど確かに銀河を支配するに足る力の持ち主だろう。だがクウラからすれば、所詮は今の力で満足している程度の井の中の蛙に過ぎない。

 

破壊神から破壊の委託を安易に請け負っているのがその証拠だろう。宇宙の帝王を名乗る者が仮にも()()()の指示を仰ぐなどと、薄っぺらい誇りにもほどがある。

 

だからこそ二人は負けたのだと思っていた。どうしようもないほどに濁った“自分自身への甘さ”。それこそが栄光あるフリーザ一族の名に泥を塗ったのだと。

 

……だが、結果を見れば自分とて同じであった。圧倒的力を持ち、なおかつ切り札である変身をも披露しながら、クウラは低俗な猿と蔑んだ相手に敗北した。

 

それでも偶然から得た二度目のチャンスを活かし、かつて以上の強さを得て一度は勝っておきながら、またもや敗北した。

 

しかも、かつての自分自身の甘さを自覚しておきながらである。

 

ゆえに、クウラは地獄の責め苦を何ら問題としていなかった。フリーザなどは敢えて天国へと移送されたが、クウラは甘んじてその痛苦に耐えた。誰よりも、自分自身が許せなかったからである。

 

格下と見ていた相手に二度に渡って敗北を被るなど、間抜けにも程がある。

 

痛みに耐えながら、クウラは魂から抜け出ていく力を必死に繋ぎ留めた。痛みに屈することがあれば、それだけ力が奪われたからだ。

 

仮初の肉体を焼かれ、射貫かれ、沈められ。ありとあらゆる痛苦に耐えながら、クウラは魂の奥深く、何物も手出ししようがない場所へと自らの力を固持し続けた。

 

この魂の牢獄ともいえる奇妙な空間において、クウラが圧倒的な力をもって君臨できているのは、そういった理由でもあった。

 

だが今の彼にあるのはそれだけではない。

 

無限の痛苦を上回る屈辱。これに勝るものなどないと断じることができるほどの憎悪。

 

今一度現世へと蘇り、今度こそはサイヤ人を全宇宙から絶滅させる。

 

それを成し遂げてこそ、彼は胸を張って自らの強さを誇ることが出来るだろう。それが達成できるまでは、例え見知らぬ声の思惑に従う形になろうとも、今はただ耐え戦うのみである。

 

無数の配線で構築されたのではない、生身の肉体へと戻った彼の目には、野心を上回る憤怒が宿っていた。

 

 

 


 

 

 

かつて、宇宙を二分し覇権を争う二人の梟雄がいた。

 

ひとりは、後にコルド大王を名乗る初代フリーザ。

 

そしてもうひとりが、龍族の遺児スラッグである。

 

幸か不幸か、スラッグはまだ幼いころ、死にかけた星よりどうにか生き延びることに成功した。神となれるほどの大きな素養を持ちながら、しかし彼は悪を是とし、龍族としての力を振るい自らを魔族へと転生させた。

 

銀河の覇者たらんとする野望を掲げて。

 

コルド大王ことフリーザは、そんな彼にとって最大の障害だった。すでに宇宙の大半を支配し独自の軍組織まで率いる彼の軍は、スラッグの力を受けて生まれた少数精鋭の魔族だけでは対処するのに限界があった。

 

ならば総大将同士で決着をと戦いを仕掛ければ、皮肉にも互いの力は互角。幾つもの星を争いの犠牲へとしながらも、スラッグとコルド大王は飽くことなき戦いを繰り返し続けた。

 

だが、彼らの目的は一見同じようで明確に異なっていた。魔族による宇宙支配を掲げ、星々を侵略するスラッグ一味に対し、星の地上げ屋としてめぼしい星々を侵略し、これを改造して銀河に点在する富裕層へと販売し利益を得るフリーザ軍では、巻き込まれる側からすればどちらを支持するかなど目に見えている。

 

惑星を改造する技術にはスラッグも目を付けたが、それは所詮攫ってきた技術者による付け焼刃の技術であり、専門的な科学者を多く抱えるフリーザ軍には敵わず、やがてはそれら地力の違いからスラッグ一味は徐々に衰退していった。

 

なにせ、フリーザ軍の顧客には少ないとはいえ芯人までいたのだから。

 

さらにスラッグが決定的に読み誤ったのは、コルド大王に後継者がいたことだ。

 

冷酷無比にして情け容赦ない、フリーザとクウラ二人の兄弟。しかもそのどちらもがスラッグを上回るほどの実力者である。

 

さらに対応を求められ手をこまねいている間に、スラッグはその領土の大半をクウラによって焦土とされた。フリーザは父から譲り受けた軍を盤石なものとするべく、反乱の兆しがあったとして最も強力な部下であった筈のサイヤ人を種族ごと滅ぼした。

 

恐怖による絶対支配。かつてスラッグも用いた手法の株を奪う形で、フリーザ軍は圧倒的力を持つフリーザの下に纏まりを見せ、もはやスラッグの率いる魔族では対応することすら困難なほど強大となっていった。

 

だが、それら以上にスラッグにとって予想外の事態が起きた。

 

“老い”である。

 

それに気づいた時、全てが手遅れだった。

 

かつてコルド大王とも互角に渡り合った肉体は、分身でもある魔族の大半を一度に殺された反動から急激に衰え、みずみずしかった筈の肌は枯れ、自力で立っていることも困難なほどのダメージを受けた。

 

魔族へと転生したがゆえのリスク。強すぎたがゆえに知ることのなかった反動が、スラッグの肉体を蝕んでいた。

 

しかし、追い詰められてこそ彼の運命は輝きを見せた。奇跡の宝玉、ドラゴンボールである。

 

宇宙の辺境である地球を自らのクルーザーへと改造せんと降り立ったスラッグだったが、そこで偶然にもかつて故郷で目にした宝玉を目撃した。今となっては滅んでしまったナメック星にのみ存在した因果の改変をも可能とする万能具を欲したスラッグは部下に命じてそれらを集めさせ、若さを取り戻し、かつての栄光を取り戻した──かに思われた。

 

だが、やはり全てが遅かった。フリーザによって殺され絶滅した筈のサイヤ人の生き残り──孫悟空によって野望は絶たれ、さらには皮肉にも他の生き残りのナメック星人の力を得て自らを打ち破ったのだ。

 

情けない。あまりにも情けない結末。結局は、力に酔いしれていたばかりに老いてなお現実が見えていなかったのだ。

 

この仮初の肉体を与えられてからもそうだと、スラッグは内心で呟いた。

 

地獄で責め抜かれ、力を奪われ、かつてスラッグと呼ばれた存在であることすら忘れようという時に、またもや機会が与えられた。

 

幸か不幸か、この機会も偶然によって与えられた悪戯に過ぎないのかもしれない。そうとまで思っていても、スラッグは希望から逃れることは出来ない。若さを、力を、野望を取り戻せるのならばと。

 

そして、ここに至ってスラッグはまだ動いていなかったが、それには理由があった。

 

ドロダボ、メダマッチャ、ゼエウン、アンギラ。居並ぶ四人の部下は、魔族の力を用いてスラッグ自身が産み落とした我が子であり、彼の分身でもある。そして彼がかつて力を大きく失った理由とは、彼らに分けた力が一度に失われた反動に他ならない。

 

ならば、その逆に彼らの力そのものを自らに再度戻すことも可能なのではないかと。

 

スラッグが微笑み指を一本曲げると、まずはゼエウンの姿が煙のように掻き消える。他の三人はそれを眺めるも、特に動揺することない。既に、その自由意志はスラッグによって奪われていたからだ。

 

次々と、スラッグの部下である魔族らはその姿を消していく。さらに、姿を消していったのは彼らだけではない。他の亡者と争い合う、かつてスラッグの部下であった多くの魔族らもまた、その身を消されていく。

 

四人の幹部とは対照的に、煙となって消えていく彼らの様子は苦しげである。それには理由があった。彼らはあくまでスラッグの力で魔族となったに過ぎない存在だからだ。スラッグからすれば極僅かに過ぎない力も、元は名もない無法者であった彼らからすれば莫大な力。スラッグは、それに利子をつけて返してもらっているだけである。

 

「……ハーハッハッハッハ!!! 戻った! 再び戻ったぞ!! もはや木端な部下など必要ない! ワシが! ワシこそが最強の存在であることを知らしめてくれるわ!!」

 

一瞬にしてかつてを上回る力を手にしたスラッグは、すぐさまその身を巨体へと変化させる。口から吐き出す熱線じみた気功波によって、突然目の前から相手が掻き消えたことに混乱していた亡者達は焼けるその身を抱えて倒れていく。スラッグは浮かぶ魂を吸い込むようにして食らいつくすと、新たな獲物を求め巨体を進軍させるのであった。




あと二回ほど紹介なお話が続いたら、いよいよバトルロイヤル本番です。
トーナメントではなくバトルロイヤルなので、すんなり誰が勝つとはいかないのが面白いところを見ていただけたなら何よりです。
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