ドラゴンボールZ──宇宙の危機!極悪人統一決定戦── 作:SHV(元MHV)
ややこしや('ω')
「動き出したな」
浮かべた無数の石くれに映した映像を見つめながら、ヂギリは感情の籠らない涼やかな声で言い放つ。
そこに映し出されているのは舞台のみではない。他の宇宙、あるいは地球やガーリックJr.が知らない星も映されている。
ガーリックJr.は背後に控えその中の一つを見つめながら、師の言葉が果たしてどれを指しているのか咄嗟にわからなかった。
なので、特に大きな戦いであるブロリー、クウラ、スラッグの戦いを注視する。
先ほどまではそこにセルも参戦していたのだが、何かしら不利を感じたのか、今は再びの瞬間移動でその場から姿を消している。
確かに、この戦場における事態は動いたと言ってもよかった。すでにスラッグ配下の魔族は大半がブロリーにやられるかスラッグに食われるかをして消滅し、クウラもまた彼の供をしていた機甲戦隊を失っている。だがどうやったのか機甲戦隊の魂を吸収したクウラは、それをきっかけとしてさらなる変身を遂げ、今ではブロリー本体に攻撃が届くようになっていた。
変身による戦闘力の向上。自らも肉体を一時的に筋骨隆々とした大男へと変身させたことがあるガーリックJr.は、ふと単なる肉体変異によってそれほどの戦闘力向上が可能なのか聞いてみることにした。
「師よ、なぜヤツはただ変身しただけであれほどの力を得たのでしょうか」
それは、ガーリックJr.が抱いた当然の疑問だった。本来この舞台における肉体とはあくまで仮初のもの。であれば、そこにおける肉体的な強度はほとんど意味を持たない。だが現に、巨大化したスラッグや変身したクウラの戦闘力、魂の力は跳ね上がっている。それも恐らくは、かつてを遥かに上回るほどに。
ヂギリはしばしの沈黙の後、ポツポツと答え始めた。
「……そもそも、彼らに与えた仮初の肉体というものは、魂の器である肉の体と比して遥かに劣るものだ。しかし、そんな仮初の器だからこそ、本来肉体に馴染ませることに時間がかかる魂の力の影響をダイレクトに受けやすい。お前は知らないだろうが、閻魔大王があの程度の力で地獄へとやってきた亡者どもを管理できているのも、この仮初の肉体や魂そのものへの干渉力が影響している部分が大きい。悪の気が大きいものほどスピリッツロンダリング装置では濾しきれないからな。ゆえに、あえて仮初の肉体を与えることで肉体と魂の力を分断し、地獄や天国といった特殊な場所でその力を搾り取るのだ」
ただし、この舞台において与えられた仮初の肉体は、肉の器に劣るとはいえヂギリ自身によって与えられた特別製である。閻魔らが与えるそれが魂の力との分断を目的であるものに対し、ヂギリが与えたこれは魂の力と共鳴するように作られていた。
「師よ、そもそも天国や地獄とは何なのでしょうか。その存在こそ知ってはいましたが、師の口ぶりではそれらの場所もまた誰かに管理されているように思えるのですが」
石くれに映る映像の中で、スラッグがさらなる巨大化を行おうとして失敗する。肉体のバランスが崩れ、大きくなるはずだった体は歪に膨らむ。手足が無数に生えた状態となり、スラッグの首は縮んで胸元へと収まった。もはや理性もないのか、ブロリーだけでなくクウラへも触手のごとき手足が伸びる。
「地獄や天国は芯人……お前にわかりやすく言えば界王を名乗る者達が作り出した亜空間だ。元来死した存在の魂に行き場などなく、時と共に薄れ、宇宙に溶け消えていくものだった。そうして時間をかけて集まったエネルギーが魂の素となり、すでにある命に宿りそれを増やすのだ。それを……! 連中は魂がもたらすエネルギーに目を付けた! この世とあの世という空間に宇宙を分け、そのエネルギーの大半を自身らの為に再利用しだしたんだからな!」
ヂギリの突然の激高。だが言葉とは裏腹に、その身から溢れる力は一切ない。まるで波風ひとつ立たない凪いだ湖面のように。
その間にも膨れたスラッグは僅かに残った魔族を全て食いつくす。既に肌は融け、巨大なスライム状になったスラッグはそのままブロリーをも覆いつくそうとするが、それはクウラが許さなかった。彼の放ったデスフラッシャーによって大きく弾かれるも、散らばった元スラッグは崩壊と再生を繰り返し続ける。
緑のスライム状から再び巨大な腕が生え、何度も掴みかかっては千切れ、焼かれ、潰されていく。地獄よりも地獄らしい光景は、もはや既知の光景とは程遠かった。
息を呑み、一度冷静になったガーリックは質問を変えることにする。これ以上の刺激が得策とは思えなかった。
「では、存在の圧力とは何なのですか。貴方は仰った。ここは我々がいることによる圧力で保たれていると」
「その通りだ。そもそもこの宇宙は、その世界に存在する魂の圧力によって保たれている。それは天国や地獄といった世界も同じことだ。恐らく、今あの世は大混乱となっているだろう。なにせ、突然中の空気の大半が抜けた風船みたいなものだからな。とはいえ、それでもしばらくは持つだろうさ。あの世からの達人や界王、あるいはこの世にいる協力者らを一時的にあの世へ送ることで、時間稼ぎは出来るだろう」
「万が一、あの世が消滅したらどうなるのですか……?」
ガーリックJr.は最悪の想像に冷や汗を垂らす。だがヂギリの回答は意外なものだった。
「どうにもならん。死んだモノが生き返るわけでもなければ、あの世が消滅した余波でこの世の宇宙が破壊されつくすわけでもない。……ただし、あの世が消滅したことによる影響は無数に起きるだろうな。例えば、消滅の際に中にいた物は一つの例外を除いて死ぬだろう。肉体は消滅し、魂も次元の狭間に隔離される。だが、たったそれだけだ。その気になれば、願い玉で即座に戻る程度のダメージに過ぎん」
(スケールが、違う……!)
正直にガーリックJr.はそう思った。かつて、地球の神となり全てを我が物にしようとした己がどれだけ矮小であったかを、遅まきながらに自覚する。彼は未だに師がなそうとしていることに理解が及ばなかった。願い玉とはすなわちドラゴンボールのことだろう。それによって確かに彼は不老不死を得たが、それ以上の使い道が思いつかなかったからでもある。
果たしてあれを用いることで何をなそうと、否、
「……ガーリックよ。お前だからこそ明かそう。私が作ろうとしているもの、成し遂げようとしていることは、この宇宙に本来存在するハズだった反作用の再創造だ。かつてわたしはそれに二度挑み、またそのどちらも失敗した」
────遥か昔。
まだこの宇宙が安定しきっていない頃。
ヂギリは龍神ザラマと協力し、芯人による宇宙の管理を覆そうと"願い玉"を創造した。
直径にして37,196.2204km。地球のおよそ三倍にも及ぶ万能の願望器だったが、これの完全なる行使はその当時の破壊神によって妨げられた。だがこれによって、芯人にとって不必要とされた星や種族を次々と破壊していた破壊神に休眠期を設けることに成功した。
しかし結果としてこの時ザラマは封印され、ヂギリは一度
その秘術とは、用意した器にかき集めた"悪の気"を気が遠くなるほどの年月をかけて集約し、それによって生み出される魔人を造る秘術である。
これによって生まれた存在こそ、全宇宙を震撼させた存在──魔人ブウ。
そしてなるほど、確かに魔人ブウはとんでもない存在だった。だがビビティはこれをコントロールしようと企むあまり、彼を“無垢な存在”として生み出してしまった。結果として魔人ブウは敵を吸収する能力に目覚め、果てには本来の目的である『界王神の完全抹殺』に失敗してしまった。
これを遥か遠く、地球から眺めていたヂギリは悔やみながらも及第点とした。なにせ、力を持つ界王神は全て殺すことに成功したからである。彼ら界王神は普通の芯人とは違い、ある種宇宙の要である。特に力を持つ界王神はそう簡単には作れない。
これで次なる策を思いついたヂギリは、念の為改良した秘術を今度は別の魔導士一族などに伝えたが、やはりと言っていいのか、その頃には界王神の上の存在である天使らによって派遣されたあの世からの達人や、あるいは破壊神によって魔人や魔神は対処され、予想通りヂギリの目的を満たすことはなかった。
ちなみに、数十年前この内の一体である幻魔神ヒルデガーンが地球で暴れたことがあった。
これは地球にいたイレギュラー達によって辛くも対処されたが、ヂギリからすればその強さをどちらにも改めて認めることになっただけである。
そしてそれらイレギュラーの強さを改めて確認したことこそが、この舞台を、一つの小宇宙に匹敵するほどの異空間を作り出し、そこへ地獄の亡者どもを閉じ込めた理由である。
中途半端な力を持った魔人や魔神などではない。今度は宇宙意思の力を有した破壊神ですらどうしようもないほどの力を持った最強の魔の神を創造する。天使を滅ぼし、全王を元の単なるエネルギーへと戻すために。
さらに言うのであれば、ヂギリはこの宇宙を破壊しようとしているのではない。消滅させようともしているのでもない。ただ元に戻したいのだ。そして宇宙を管理できているなどと思いあがる芯人共に、身の程を思い知らせたいのである。
「……ガーリックよ。お前は魔族だが、そもそも魔族とは何だと思う?」
「魔凶星で生まれた者、というわけではないことはわかりますが……有体に言うのであれば、魂を"悪の気"によって染め上げた存在でしょうか」
「正解だ。だが同時に間違いでもある。便宜上悪の気と私も呼んでいるが、そもそも気、すなわち魂の力に善悪など無い。そして先ほど私は言ったな。そもそも死んだ者はあの世になどいかなかったと。さて、魔族に殺された者はどうなる?」
「──!! ま、まさか!!」
クウラによる砲撃が始まった。デスフラッシャーをさらに圧縮したエネルギー波がスラッグを、ブロリーを襲い、大地を炎と閃光に染め上げていく。
「そうだ。魔族に殺された者、すなわち魔によって肉の器を破壊された存在は、芯人どもが敷いたルールに縛られない。魔族とは
「で、では何故魔族は破壊を! 支配を求めるのですか!?」
「それは気の性質によって意思が誘導されたことによるものでもあるが……別段それらの行動は魔族に限らないだろう。いい例がフリーザ一族だ。彼らは魔族ではない。そしてその配下となった多くの種族もな。悪の気と呼ばれる黒い気は主に淀み、集り、より濃くなる性質を持つ。逆に、善の気と呼ばれる白い気は、澄み、拡がり、より薄くなる性質を持つ。私が悪の気を魔人の材料に選んだのはな、あくまで集めるのが容易だからに過ぎん。それに、上澄みともいえる善の気は天使どもによって管理されているからな。集めるのには時間が掛かる」
「ならば、神になるのに悪の気が否定される必要はなかったのですか?」
爆炎から現れたブロリーがクウラを掴まえ、岩山へと投げ飛ばし、捉えられた右腕が肩から千切れる。
「本来であれば関係ない。だが、そもそも星々における神という存在は芯人らによって任命される一種のシステムだ。そしてシステムだからこそ、穴がある。私が神となれたのもそこを突いたからだ。ガーリックよ、お前が考える以上に魂の力とは強大なものだ。何故ならこの世界に、いやこの宇宙に生きとし生けるありとあらゆる存在は、この宇宙そのものと繋がっている。魂の力は、その力を引き出す門をどれだけ開くことが出来るかという概念に近い。ブロリーを見るがいい。彼は生まれながらに門との繋がりが強く、本来であれば存在する門を開く過程にある枷も存在しない。彼はそこにいるだけで無限に宇宙の力を引きだし、際限なく強くなり続ける。打倒する方法は一つ。彼がより強くなるより前に、その力を出力している器を砕くこと。そしてそれはすなわち、破壊神や全王を攻略する為に必要な方法でもある……」
全身を包む装甲じみたパーツを砕かれたクウラが立ち上がると、剥がれたパーツからやや緑がかったプラチナの装甲が現れる。
「あれは……」
「仮初の肉体がかつての肉体のルールに従うのは、それが彼ら自身の持つ魂の力と繋がっているからだ。彼があの姿を無意識に選んだのも、自身がより強くなった力だと認識しているからだろう」
さらにクウラは千切れた腕へ根元から配線のようなものを伸ばすと、太さの異なるそれらを無数に絡め合わせ腕を再生する。
「再生能力もそうだ。この世界において、仮初の肉体の扱いに習熟すれば、イメージ次第で手足程度の復元はいつでも可能だよ。とはいえ、核を破壊されればそれも不可能だが……」
どれだけ強化されたところで、圧倒的サイズ差は覆っていない。だがスラッグが暴れまわる影響もあってか、メタルクウラとなったクウラはその動きを解析し、ブロリーを翻弄しつつも本命であった尻尾の切断を今度こそ成し遂げんと挑んでいた。
「師よ、仮にあの者達の誰かが勝ち残ったとして……本当に生き返らせるのですか?」
「ああ、問題ない。肉体を与える準備も既にしてある」
「で、ですがそれでは最悪地球が……!!」
「……クク、お前が地球の心配とはな」
「茶化さないでいただきたい!」
思わぬ指摘にガーリックJr.は唾を飛ばすが、言われてみて我ながら奇妙なことだと考える。かつて支配と暴力を与えんことこそ望んだ星を、よりによって救おうと考えているのだから。
「なに、そうはならんよ。それに、仮にフリーザやクウラが生き返ったところで、即座にそれをするほどの余裕はないだろうからな」
「それは一体どういう……?」
だがヂギリはそれ以上の質問には答えず、顔をしかめて石くれのひとつを手元へと寄せ、何やら動き始めた。
「来たか……」
赤黒い空がガラスのように割れ、望まぬ来客が侵入してきた。
破壊神達の襲来である。
タグを見ていただければわかるようにこれらはオリジナル設定です。大事なことだから何回も言います(笑)
ということで今回、ほんとは登場させるか悩んだんですが破壊神ズの襲来で幕を閉じました。次回はドクターウィローやバーダックのその後、さらにブロリー戦決着まで書けたらいいなって思ってます