スマブラルールでワンピース無双   作:はじめのウッホ

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ゴリラ対サルの紛い物

 突然だが俺はゴリラになっていた。と言っても人の言葉を話せるゴリラだ。両親はゴリラではなく、ライオンとトラだった。しかし人の言葉を話せるライオンとトラだ。だからライガーでもタイオンでもなくゴリラが生まれたのだろうか。わけが分からない。

 だが、両親の話を聞いているうちに、ここがワンピースの世界だということが分かってきた。東の海、5年前のゴールドロジャーの処刑、海軍、大海賊時代、なんて名詞が聞こえてきたからな。両親は、自覚のないミンク族だったようだ。多少毛深い親から隔世遺伝のように生まれてしまったミンク族。そんな2人が奇跡のようにこの東の海で出会った。ならば恋に落ちるのは不思議ではないだろう。何せ2人は共に迫害されてきた身。今では海賊。と言っても自分達から人を襲ったわけではなく、その見た目から勝手に恐れられ、攻撃され、海軍と戦っているうちに海賊にされてしまったようだ。もっともミンク族らしく闘争心は強いし戦闘能力も高い。鋭い爪、牙、そして電撃を使って戦う。電撃の威力は原作のミンク族に比べるとまだまだかもしれない。スタンガン程度であり、相手を無傷で無力化したい時や変則的な戦いの手段として使っているらしい。スーロン化について、多少はするが純ミンク族に比べると酒に酔って暴れる程度だ。赤子の俺にとってそれは十分に死の恐怖を感じたがな。満月の日はさっさと寝て欲しい。

 

 俺はミンク方式なのか、雑にあやされ、雑に船旅の手伝いをやらされ、また戦闘訓練を受けさせられた。ガープばり、いやそれ以上にバカな両親は幼児に無茶をさせまくった。両親が海王類と戦っている時の、船の操舵。両親が海軍と戦っている時の、砲撃で壊れた船の修復。両親が海賊と戦っている時の、打ちもらした雑魚敵との戦闘。

 俺に前世の記憶があったから、またゴリラの握力が人の10倍あるから操舵ができ、船の修繕ができた。ただのゴリラのフリをして雑魚海賊を騙まし討ちすることもできた。が、前世の記憶がなければとっくに死んでいただろう。船は沈み、両親も海で死んでいただろう。いや、ミンク族の超パワーであっさり陸まで泳ぎきったかもしれないが。

 

 無茶な毎日のおかげで俺の精神は日本人であった頃とは比べ物にならないほどタフになった。もはや多少のことでは動揺しない。多くの死を前にしてもだ。そもそも俺のミンク脳が人の物よりずっとタフなのもあるかもしれないが。

 

 ところで、獣であり海賊である両親は毎日セックスしまくりだった。当然弟妹もポンポン生まれた。だが、弟妹は俺と違って完全に人の姿をしていたり、ちょっと猫耳がついている程度だった。だから両親は、彼等を海賊船には乗せなかった。悲しいが、海賊船にいると両親と同じく化け物扱いされ、殺されてしまう可能性が高い。また彼等は人の姿をしており、両親や俺のように人並み外れた力を持っている可能性が低かった。それだったら、人のよさそうな人間に拾われた方がマシだろうと考えたのだ。人の良さそうな人間の多い町を探し、自分達がつけた名前と拾ってあげてくださいと書いた紙だけ置いて、捨てた。バカだから人のよさそうな人間が拾ってくれると期待してしまうのだ。奴隷商人が拾ったらどうしようとか考えないのだ。

 

 俺はできるだけ弟妹を捨てた場所は覚えるようにしていた。特にかわいい女の子は、奴隷として高く売れる。ものめずらしい猫耳がついていたら尚更だ。いつか自分が強くなり、奴隷になった彼等を見つけたら、贖罪で助けるつもりだった。

 

 とまあそんなこんなのゴリラ生活13年。俺は海軍との戦闘中にある部屋で不意に悪魔の実を見つけた。多少食べるかどうか悩んだ気もするが、バナナ型だったので本能のままにかじりついた。そして悪魔の身の能力者になった。これがまた不思議な能力で、戦闘中に自分と相手が怪我しないままダメージが蓄積し、吹っ飛ぶ割合だけ変わっていくというものだった。まるでスマブラのようなルールだった。俺が転生したから世界がバグってしまったのだろうか。

 

 しかし、悪くない能力だった。これで殺しを気にせず本能のままに暴れられる。自分が不意打ちの銃撃で死ぬこともなくなる。もっとも、吹っ飛んだ結果海に落ちたら能力が劣化するし窒息でたぶん死んでしまうが。なお、スマブラのゲームと同じく休んだり食事をすれば吹っ飛び率は下がった。

 また、スマブラのゴリラのように俺はバリアやグルグルパンチやガード不可の投げ技が使えるようになった。二段ジャンプもできた。理屈はよく分からないがなんとなくできるようになったのだ。おそらくバリアは覇気でのバリア。グルグルパンチはサンジがやっていたような回転してエネルギーが溜まって脚が黒く燃えるみたいなそんな感じ。投げ技も拘束の瞬間だけ覇気が出てる感じ。そういうのが悪魔の実の力で表に出て、技として使えるようになったのだと思われる。条件反射的に覇気を使わせるというおでんが使っていた妖刀閻魔の悪魔の実バージョン的な。変な能力が多いパラミシアの中でも異質な能力である。はっきり言って滅茶苦茶強い。芸術系の能力やペローナのゴーストはやる気と一緒に覇気も吸い取っている感じがするから、ああいうのに比べるとそこまで無敵ではないかもしれないが。

 両親はバカなのでこういうことはよく分からないし考えるのも嫌いなのだが、とにかく俺が強くなったらしいという理由で喜んでいた。

 

 さて、俺が強くなってすぐ、母は女2人男2人の4つ子を産んだ。妹2人は猫耳、犬の顔、弟はサルの尻尾、カバの顔。俺以外では初めて、人間社会に馴染めないレベルの顔が生まれてしまった。しかも一気に2人だ。残り2人は人間っぽいが。ここで、両親は海賊家業の引退を選んだ。無人島で家族揃ってひっそり暮らすことにしたらしい。俺にどうするかと聞いてきた。俺は、海賊を続けることを選んだ。理由は、そろそろ原作が始まるからだ。

 

 どうせこの世界に来たのなら、俺が英雄になってやりたいと思っていた。それが自分に正直に精一杯に生きるということである。ルフィに遠慮する気もない。むしろ活躍の場を全て俺が奪いたい。この俺こそが主人公だ。それが海賊の生き方ってもんだ。手加減なんてしたらあいつにも失礼。だがな、モンキー・D・ルフィ? 人間風情がサルの名前を語るなよ。ゴリラこそがパワーなんだ。せめてもの礼節として、直接引導は渡してやるがな。一対一による決闘。待ったなし。それで主人公交代の儀式としようや。

 俺はドーン島に向けて船を動かした。

 

here, here, here, here, I go

So I am finally here, performing for me

If you know who's me

You can join in too

Put your hands together If you want to cheer me

As you take through, this monkey battle.

DK, Daniel Kong

 

「な、なんだあいつ?」

「ば、化けモンだあああ! ゴリラの化けモンが歌ってるううう!」

「衛兵を呼べ! あの気味悪いゴリラを仕留めろ!」

 

 ゴア王国、港の住人は俺が近づいただけで恐れおののき、衛兵を呼んだ。こういう反応は初めてではないが、やはり多少傷つく。

 少しして、港の衛兵からの銃撃と砲撃。銃撃はできるだけ俺がガードで受け、砲撃は、空中で持って投げ返す。

 

「は? 投げ返した?」

「ぎゃあああああ!」

「オフフー?」

 

 砲撃が衛兵の近くで爆発し、人間が吹き飛んでいく。俺はそれを一瞥し、煽るようにアピールのポーズ。

 人間達はダメージが溜まっていないので大して飛ばない。しかし衛兵の中でも弱い人間はふつうの砲撃並に飛んでいる。

 

「あ、あれ? 死んでない」

「火傷もない。どうして?」

 

 爆発で吹っ飛んでも平気なことに不思議がる人間達。俺にも理屈は不明である。

 

「ホッホッホッホッホッ」

「う、うわあああああ!」

 

 俺は上機嫌に港に降り立つ。とりあえず海賊だし、食糧盗むか。

 

 市場に出ている食糧を掻っ攫い、樽に詰め込んでいく。それを縄で縛り、上手い具合に背中に担ぐ。使えそうな斧やハンマーや包丁も樽に入れ、担いでいく。スマブラルールでは道具はとても強い。あればあるほど強い。俺は用意周到なゴリラなのだ。グルグルパンチは、両腕に溜めておく。スマブラを再現するなら片腕しか溜められないが、ここはゲーム世界ではないのでそこまでは再現できなかったのかな。

 

「さて、ちょっとそこのお嬢さん?」

「ひぃっ!?」

 

 俺は草むらに隠れている女に話しかける。ゴリラになってから鼻もよくなったから人間のメスが近くにいれば匂いで分かる。

 

「風車村まで案内してくれよ」

「ぎゃあああああ! 誰かああああああ! 助けえええええええ!」

 

 俺は娘を肩に担ぎ、風車村を目指す。

 

 娘の案内に従い、港に沿って歩いていると、大きな風車が見えてきた。あれがフーシャ村か。娘をさらう必要なかったな。まあゴリラと言えば娘を攫うものだから問題ないんだが。

 村に近づくと、例によって村人はゴリラの怪物が出たと泣き叫ぶ。中には銃を持って「それ以上近づくと撃つ!」「娘を放せ!」などと言ってくる男連中もいたが、結局撃ってはこなかった。俺は村の中心あたりに行き、娘と樽を降ろす。

 そして、豪快にドラミング。これで町中に響いただろう。俺の存在が。

 

「ウホホホホオオオオイ! モンキー・D・ルフィ! 出てこいや!」

 

 しばらく待つ。そいつは、土煙を上げながら走ってきた。

 

「うっせーぞゴリラ! おれは今肉を食う所だったんだ! 邪魔すんな!」

 

 ルフィは珍しく本気で怒っていた。もっとも食のこととなると怒るのは珍しくないかもしれないが。

 怒りのままに振るわれる拳。ふつうは届かないが、ここで伸びる。

 

「えっ」

 

 知っていれば問題ない。俺のガードがルフィの拳を止める。そして腕を掴む。

 

「お前、モンキーだって? ふざけんなよ! 俺はゴリラだぞ!」

「うっせーぞ! 放せゴリラ!」

「ほっ」

「うっ」

 

 俺は腕をつかんだままルフィを下に投げる。ルフィは地面にぶつかり、反動で戻ってくる。だからまた掴んでやる。

 

「ほい」

「ぐっ」

「ほっ」

「うっ」

 

 また俺が下にぶつけ、反動で戻ってくるからまた掴む。

 

「ほいっ」

「おいっ」

「ほい」

「ちょっ」

「ほい」

「ぐぐっ」

「ほい」

「まっ」

「ほい」

「待てっ」

「ほい」

「ぐあっ」

「ほい」

「待てって」

「ほい」

「まっ」

 

 掴んでは投げ掴んでは投げの連続。ルフィはゴムの身体を動かしてなんとか拘束から逃げようとするが、この悪魔の実の力には覇気が宿っており、強制的に拘束させるのだ。現状のルフィのレベルではこの無限コンボから逃れることはできない。

 しかし、さすがはゴム人間。投げても投げても中々ふっとびが上がらない。だが、ほんの少しだけ飛びやすくなっていっているのは分かる。あれだな。地面にぶつける分のダメージはないが拘束の瞬間にダメージがある感じだ。そこに覇気が入っているからな。そしてゴリラの握力は500kg、鍛えている俺の握力は5000kgをゆうに超えると思われる。人間に耐えられる強度ではない。というかゴムでも無理。

 だが、俺の覇気もほんのわずかずつ減っている。どちらが先に倒れるか、持久戦になるかもしれないな。俺がふつうのバカなゴリラなら、だが。

 

 ところで、日本のタレントに百獣の王を自称する男がいるのだが、そいつのヒグマの倒し方を知っているだろうか? 簡単に言うなら、直接戦わずに距離をとり続け、持久戦をし、しかし自分だけは持久戦の最中に食事を取ることで差をつけ、やがてヒグマがガリッガリに痩せた所でぶん殴るというものだ。

 これはただの笑いのネタだが、俺の中にアイデアとしては入っている。だから、こういうことも思いつく。

 

「ほい」

「ぐあっ」

 

 ルフィを投げ。

 

「パクッ」

「ずるいぞ!」

 

 バナナを食べ。

 

「ほい」

「ぐあっ!」

 

 ルフィを投げる。

 ルフィは投げられダメージが溜まるだけ。俺は食べて覇気を回復。勝負あったな。

 

 投げ続けること30分。ようやくルフィの吹っ飛びが溜まってきた。町から衛兵も駆けつけてきたが、俺にビビッてルフィを助けるところまでは行かない。遠くから銃で撃ってきたりするが、ほぼ当たらないし当たっても大してダメージはない。俺がルフィにトドメを刺すほうが、早い!

 

 さて、グルグルパンチの封印を解く時がきたな。

 

「グルウウウ!」

「うわっ!」

 

 俺は初めてルフィを後ろに投げる。ルフィは斜め後ろに飛んでいく。そこには大きな風車。ルフィは風車に当たりこちらに跳ね上がる。高いが、俺はミンクのジャンプ力と月歩的な二段ジャンプで高さを合わせ、パンチを振りかぶる。

 

「んにゃろおおお!」

 

 怒りの形相のルフィは、避けようともせずに俺に向かって拳を突き出した。

 

「ゴムゴムのおおおお、ピストル!!!」

「ウホオウ!」

 

 空中でぶつかるゴムゴムのピストルとグルグルパンチ。勝者は、圧倒的なパワーを秘めたグルグルパンチ。強パンチやスマッシュでは溜めた必殺技には勝てないのだ。

 

「うわああああああああああああああ」

 

 ルフィは絶叫しながら遠くの空へと飛んで行った。

 完璧なる勝利だ。そして俺が主役へ。

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