パンを貪りしカップル 作:ああああ
また評価頂きました!
『ブリザード』さん、『皐月ニシ』さん
ありがとうございます♪︎これで五十人になりました!!
――それは幼き日の記憶。
とある少年はパンが苦手だった。小学二年生の彼にとってパンは口の中が乾燥するだけの物あり、それ以外の感想は何も浮かばない。味が嫌いな訳では無い。ただ、無くてもなんの不自由もしないだろう。幼いながらに頭の回る彼はそのような考えを持っていた。
(......食べたくない。まあ、手を付けなければ誰かが食べるよね?)
少年の通う小学校は、給食の時間では一週間の内、火曜日と木曜日にパンが出る。だが、少年はパンに手を付けずに放っておく。小学二年生は食べ盛りなのだし、自分が食べなくともクラスの誰かが代わりに食べる。それは小学校生活を送る中で給食時のルールとなっていた。
「また残すの?じゃあ、お友達に食べて貰おうか。残すのは勿体ないからね」
「じゃあオレが貰うね!給食って足りないからさー」
誰もパンのみを残す彼を責めたりはしなかった。担任にとって大事なのは、残飯を少なくすることのみ。他の教師ならば注意するだろうが、少年の担任は決して注意しなかった。間違った優しさなのか、それとも単に面倒臭いだけなのか。人の心の内なんて知る由もない。友人は他の人よりもパンを1つ多く食べれると喜び、リスのように頬張る。大して仲の良い友ではなかったが、給食時はよく話す。確実にパンが目当てだった。
(はぁ...これから卒業するまで給食時にパンが出続けるのか。これが『ゆううつ』なのかな?まあ、漢字なんてまだ分からないけど)
給食後は昼休み、五時間目を挟んで放課後となった。友人達からは校庭で遊んでから帰ろうと誘われたが、気分じゃないと断る。影でノリが悪い奴だとか言われそうだが、別に構わない。どうせ学校生活を平和に送るための友人(仮)なのだし、成人してからは会うことも無いだろうと、自分に言い聞かせる。その少年は幼く在りながら社会の現実を理解している。なので、本当の意味では友達は居ないのかもしれない。
(...公園に寄っていこ)
大した理由なんて無い。ブランコに座り、ボーとして時間を無駄に使う。ただそれだけで友人関係や学校の授業等、少年にとって面倒臭い事を考えずに済んだ。
「ねぇねぇ、パン半分どうかな〜?」
「......」
「ふむふむ、これはいわゆる『好きな子に意地悪したくなる』系の反応だね〜」
「......えっ、なに?オレに話し掛けてたの?」
何も無い平和な時間――だったのだが、一人の少女が邪魔者として話しかけて来た。少年はその少女に対して思ったことは、『誰?』だった。外見は幼いので自分と歳が近いのだろうが、やはり見た事が無い。特筆すべく特徴は銀髪であり、おっとりとしたオーラを発しているところだろう。
「パン要らない?半分だけども」
「いや、そもそも誰なの?」
「あ、全部はダメだよ〜?あたしだってパン食べたいし。でもさ、お母さんが晩御飯前にパン丸々一個は食べちゃダメだって言うんだよ?お友達と半分こにしようと思ったけどね、ひーちゃんもつぐも、みーんな忙しいんだって〜」
「お前、よく話聞かない奴って言われるでしょ?」
名も知らぬ少女は延々と聞いてもない事情を話す。そんな彼女を少年は『面倒臭い奴』と心の中で確定させた。世の中には自己中心的だったり超ネガティブ思考だったりと、『面倒臭い奴』と称すには十分過ぎる性格の人が多く、少女もまたその一人だと少年は判断した。
「――だからね、パンを半分こしようよ」
「...ごめん、パン苦手なんだ。口の中がパサパサするし、全然おいしいって思えない」
「ふっふっふ〜、そんなこともろうかと用意してるのだ〜!その名も『お〜いお茶』!さあ、これでもーまんたい?だよね〜」
「......半分だけ」
押しに負けて妥協する。苦手ではあるが、どうせ半分なのだ。飲み物と一緒に喉に流せば口の中に留まる時間も少ないだろう。
「はい、どーぞ」
渡されたのはメロンパン。子どもの小さな手で半分にしたので多少歪にはなっているが、それでもメロンパンだと分かる程度には収まっていた。
「いただきま〜す」
「い、いただきます...」
メロンパンを口の中に入れると、甘さが広がる。クッキー生地はサクサクしていて、中身はモチモチ。自分の想像とは全く違うのだ。そして、いつの間にかパンが苦手なはずの少年は何故かそのメロンパンを『美味しい』と感じていた。間違いなく少年が嫌うパンなのに、自然と二口目に突入する。
「っ...!」
(...なんで...美味しいの?オレはパン全般が嫌いなはずなのに...このメロンパンが特別なのか?)
「美味しいでしょ〜?」
「このメロンパン、特別なの?」
「ううん、コンビニパンだよ?ふふ、これはあたしの計算通りだね〜。ずばり、君は『食わず嫌い』だよ!」
銀髪の少女は指をビシッと指しながら言う。少女の予想通り、少年は食わず嫌いだった。パンを食べた回数なんて片手に収まる程度だろう。なんとなくのイメージで苦手だと判断していた、それを否定できないのが最もな理由だ。少年は久方ぶりのパンを無言で食べ続けた。少女が用意した飲み物も飲まずに。
「良い食べっぷりだね〜。あ、もう夕方だ。早く帰らないと晩御飯に間に合わないよ〜!じゃあね〜!
「あ、ちょっ!...帰ったし...」
突然現れて突然帰る。嵐のような少女だった。口の中に残るメロンパンの甘みを感じながら少年も帰路に着く。表情は公園に来た時よりも遥かに明るいものへと変わっていただろう。唯一の心残りは少女の名を知らない事だった。
――数日後
今日は木曜日であり、給食にはパンが出される日だ。いつもは憂鬱な時間だったが、今日だけは少しだけ楽しみだ。給食の配膳が終わり、牛乳やパン、おかずが乗せられたお盆を持って席に着く。すると、普段から給食時以外は話さない同級生が近寄ってきた。目的はどうせパンなのだろうと少年は推測する。別に卑しいなんて思わない。言い方は変だが、餌付けしたのは他でもない自分自身なのだから。
「なあ、パン貰ってもいい?どうせ今日も食べないんでしょ?代わりに食べてやるよ!」
数日前なら喜んで渡している。だが、今日からは――
「ううん、食べるよ?オレ、パンが好きになったんだよね」
あの日以降、少年はパンを食べるようになった。メロンパンから始まりカレーパン、クロワッサン、チョココロネと食べてきたが、全部美味しいのだ。カレーやオムライスよりも圧倒的に美味しいのだ。食べなかったこれまでの自分を殴りたくなる。
――この先、少年はずっとパンを好きであり続けた。そして、名も知らない少女との約束、『またいつか一緒にメロンパン食べよう』を果たせる日を願うのだった。
遥斗は目が覚める。懐かしい夢を見た。自分が小学校低学年だった頃の、パンが嫌いだった頃の夢だ。今の自分からは想像も出来ないが、確かにあった過去だ。
「...結局、あの時の少女の名前...知らなかったな」
「ハーくん、どうしたの?」
「なんで俺が寝てるベッドに居るんだよ。まあ、合鍵を渡したのは俺だし、勝手に出入りしていいって言ったのも俺だけどさ」
懐かしい思い出に浸りながらポツリと独り言を漏らすと、恋人のモカが反応した。寒い季節になったから抱き締めると暖かいけど、独り言を聞かれるのは流石に恥ずかしい年頃なのだ。
(...そういえば、モカに似てたな...いや、勘違いだよな?)
他人の空似だろう。何故なら、あのモカが他人にパンを分け与えるはずがない。小学校低学年だったとはいえ、男の遥斗にも負けない食欲を持ち主だ。晩御飯前でもパンの一つや二つ、ペロリと食べるだろう。
(落ち込んでる俺を慰める為に半分あげた......てのは都合の良すぎる解釈だよな。それに、そんな前の事なんてその少女も覚えてないだろうし)
「ん、どうしたの?そんなに見つめたってパン奢ってあげないよ〜?」
「うん、やっぱり別人だな。そんなことよりもお腹空いたな...」
ベッドから出て台所に向かうと、コンビニのメロンパンが一袋残ってた。逆に言えば、それ以外は何も残っていなかった。
「モカ、メロンパン半分いるか?」
「モチのロンだよ〜」
遥斗はパン全般が好きだが、中でもメロンパンが一番好きだ。自分がパン好きになる切っ掛けの一つだからだ。このコンビニメロンパンはあの日、少女が分けてくれたメロンパンと同じだ。月日が経ったので多少パッケージに変化はあるが、商品名とメーカーは変わってない。思い出のメロンパンだ。
「...懐かしいなぁ〜」
「モカ、何か言ったか?」
「ううん、何でもないよ。ちょっと思い出に浸ってただけだよ。さあ、そんなことよりもメロンパン食べようよ〜!」
「急かすなよ!」
メロンパンを半分にし、モカに渡す。そして、遥斗は知らず知らずのうちに少女との約束を果たすのだった。
◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆
・募集してた詠唱(パンバージョン!)
〔BLEACHより、黒棺〕
―滲み出す暴食の紋章、不飽なる狂気の器、湧き上がり・肯定・憧れ・喰い・空腹を妨げる―
――膨張するイースト菌の女王、絶えず鳴り響くする腹の鳴声、結合せよ、反発せよ、腹に満ちぬ 己の空腹を知れ パン道の九十・
〘Fate/Zeroより、王の軍勢(アイオニオンヘタイロイ)〙
「――見よ我が欲望のパン勢を!
―小麦粉は焼かれ、そのイースト菌はパンとして『店』に売り上げられて、それでもなお余に忠義する伝説のパンたち―
―時空を超えて我が食欲に応じる永遠
――彼らとの絆こそ我が暴食!我が食道!イートブレッドたる余が誇る最強宝具──
寒さに負けて、暑さにも負けて――温度変化に対応しきれない。
何を読みたいですか?
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パン好きカップルのイチャイチャ
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混沌と書いてカオスと読む系の夢落ち
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幼き日の記憶(遥斗)
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意味もなく思い付いただけのバトル展開
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それとも――ぜ・ん・ぶ♡