パンを貪りしカップル 作:ああああ
評価、頂きました!
『春はる』さん、『敬称楽』さん
評価ありがとうございます!!
人生なんて何が起こるか分からない。
白い猫と兎を足したような謎生物が『僕と契約して魔法少女になって!』と言うこともあれば、コンビニ帰りに異世界転移して死に戻りを繰り返すことだってある。そんな非日常に溢れたこの世界には、様々な可能性が存在する。
この物語の主旨は何気ない日常だ。だが、この先物語が日常系からバトル系や鬱系に変化するのだって『可能性のひとつ』だ。某少年週刊誌に連載してたとある作者だってギャグからバトルへと変更したのだ。不変などの逆もまた然り。
猫好きが犬好きに変化することもある。大金持ちがホームレスになったりもする。全て全てがテンプレート通りではないのがこの世の中だ。フラグは回収されない、最愛の人との約束を両者共に忘れる。それがなんの問題もなく有り得てしまう。
――ならば、この物語にも様々な『可能性』が眠っているのでは?
答えは肯定だ。ここまで可能性を語ったのだ、今回はそれについて...正確には『ifのルート』を語ろう。
そして、先に有り触れ過ぎたこの言葉を使わせて貰おう。
『このストーリーは本編には関係ございません』と。
これは勇気を振り絞れなかった少女の物語だ。
◆◆◆◆◆◆◆
『もしも』...自分があの時勇気を振り絞っていたら、こんな気持ちは抱かなかったのだろうか?幸せを掴み取れていたのだろうか?銀髪の少女は存在しない未来を思い浮かべる。
想像するのは自分の恋した少年と自分自身が手を繋いで歩く姿。お互いに積極的に相手を求めはしないだろうけど、その想像内の自分達には確かな "愛" を感じ取れた。だが、所詮想像は想像でしか無い。それ以上でもそれ以下でも無い。
現実には自分じゃない少女と手を繋ぎ、お互いに幸せそうな笑顔で語り合う彼。そこには紛れも無い『幸せ』が生まれている。
銀髪の少女は想像する。
(...あたしが...告白できてたら、あの娘の居る場所はあたしだったのかな?)
もう存在すら不可能な " if " を考えてみるが、直ぐに中止する。どれだけ妄想を膨らませたところで、残るのは虚しさだけだ。妄想が膨らめば後の虚しさも大きくなる。感情の比例式だ。
代わりに頭へ浮かぶのは人生で一番臆病であったであろう『あの時』。数ヶ月経った今でも鮮明に思い出せる忌々しい記憶であり、今後の人生において間違いなく上位に上がるであろう後悔。
銀髪の少女は思い浮かべる。
――青葉モカは恋を自覚した。
知り合いから始まり、友達、親友となった男の子に対し、自分は確かに恋心を抱いていた。年頃の女の子が男の子と親しくなっているのだし、自分と相手の
彼の前では至って普通を演じるが、内心では緊張と羞恥心、彼と話せたことの幸福感が混ざり合い、自分自身でも理解できない感情を呼び起こす。
「モカ、顔赤いけど?」
「...この鈍感男」
「珍しくモカの当たりが強くて泣きそうな今日この頃...えっ、俺何かした?......あ、もしかしてパン奢らせたの怒ってるのか?でもさ、最初にジャンケンで決めようって言ったのはモカなんだぞ?」
「...はぁ」
「ため息だけなのが地味に傷つく...」
彼はモカの好意に全く気が付かない。人の感情を読むのは無駄に上手いくせに、本当に発揮して欲しい場面ではポンコツになる。ままならないものだ。
そんな日々が何ヶ月も続いた。このやり取りを幸せだとは感じるが、ある日唐突に感じてしまった。『足りない』と。
軽口を叩き合う日々は確かに楽しい。でも、それは飽くまでも『親友の青葉モカ』としての幸せだ。いつの日からか、自分が求めるのは『恋人の青葉モカ』としての幸せになっていた。
――そして、運命の日を迎えた。
彼を公園に呼び出した。目的は愛の告白だった。自分に正直になるために――彼にとっての青葉モカの存在を変えるために勇気を振り絞ろう。そんな決意を胸に約束の時間を待ってた。
「待った?」
「ううん、あたしも来たばかりだよ〜?まだ約束してた時間前だしね〜」
「それで、話したいことってのは?」
それは彼を呼んだ口実だった。直接会って話したいことがある、ただそのメッセージを送っただけだ。彼の性格を考えたら、それだけで来てくれると分かっていた。逆に、ややこしい方法で呼び出したら彼が面倒臭がるだろう。それも理解してた。
大きく息を吸い込んで、一言目を発する。
「あ、あのね...」
告白する大事な瞬間だというのに、心臓がうるさい。頭が緊張と羞恥心で真っ白に染め上げられる。考えがまとまらなくて、更に焦ってパニックになりかける。そんな自分を押さえ込んで、言葉を続けた。
「あ、あたしは......!」
勇気を振り絞る――ハズだった。成功しても失敗しても、後悔のない結果にするハズだった。でも、彼女は恐れてしまった。全てを受け入れる覚悟だったのに、臆病者の面が出てしまう。
「......う、ううん。何でもない...」
それは紛れも無い『悪手』だった。今後の人生に大きく関わるであろう選択肢で、少女が最も選ぶべきでは無い答えだった。
夕暮れを一人歩き、先程の失敗を思い出す。いや、そもそも失敗にすら届いていないだろう。告白における失敗は、端的に言えばフラれること。その告白にすら辿り着けてないのだから、今回のは失敗以下である。
(......明日...明日こそ...!)
この考えが後悔の始まりだった。モカは無意識の内に "次" という名の逃げ道を作っていた。それからは二回、三回、四回と告白未遂を重ねるが、全てにおいて最後まで辿り着けずに逃げてしまう。そして、最初の『逃げ』から数週間後、モカは見てしまった。
彼が――狩凪遥斗が自分では無い少女と手を繋いで歩く姿を。
(は...はは...最初っから成功なんて不可能だったのかな?...ううん、違う。もしかしたら、あの時告白してたら間に合ってたのかも...)
手を繋いはいるが、遥斗の方が若干足が早く、少女はそれを追いかけるようにたまに駆け足になる。お互いの歩幅を把握出来ていない証拠だ。つまり、彼らは付き合い始めてから差程月日は経っていないのだろう。勿論それだけでは断言できないが、可能性は大きい。
「っ...!」
後悔の念に背を押され走り出す。逃げはし続けたが、彼を想う気持ちは本物だった。彼となら何十年後も共に歩き続けられると確信していた。だが、其れを成し遂げれなかったのは他の誰でもない自分自身。あの時、なけなしの勇気を振るうことが出来たなら、今とはまた違う未来が待っていただろう。
(もう手遅れ...!何度もチャンスはあったのに、其れを無駄にしたのはあたし自身だ。後悔したって...もう、遅いのに...)
目から涙が溢れた。悔しいのに、その気持ちは何処にもぶつけられず己の中で暴れ回る。存在しない "if" を想像して喪失感をがこみ上げてくる。
その日は家に帰って泣いた。彼を心の中で責めたりもしたが、結局は自分のせいだと自覚する。日が経つにつれて気持ちは落ち着いたが、まだ彼と顔を合わせたくはない。自分にとっての彼は失恋相手なのだが、彼にとっての自分は親友だ。自分がどれだけ気まずいと感じても彼には伝わらない。それがまた悲しいのだ。
数日後、パンを買いに行くと彼が居た。
「あ、モカ。なんか久しぶりだな。まあ、久しぶりだって言っても数日ぶりだけどな」
「う、うん。久しぶり〜」
「...?何かあったのか?」
「っ!?じ、実はね...チョココロネが売り切れなんだよ〜。うぅ〜、今日はチョココロネの気分だったのに。モカちゃん落胆なのだ...」
失恋を悟られたくなくて嘘をつく。受け入れたハズなのに、こうして心配されるとまたその気になってしまう。諦めきれず、また彼を好きになってしまいそうな醜い自分が大嫌いだ。だから嘘を重ねて笑顔の仮面を被ろう。仮面の下の表情を、彼が知ることは無い。
「さて、パンも買ったし帰るかな〜。じゃあね、ハーく...いや、
「じゃあな...って、呼び方...」
彼には恋人がいるのだ。他の女の子と親しくしてるのは彼女に悪い。その別れの言葉は『親友の青葉モカ』としての最後の言葉だった。
『初恋は叶わない』
叶わなかった理由を『初恋だから』だなんて思わない。存在した可能性をドブに捨てたのは他でもない自分自身、青葉モカなのだ。
願うだけでは叶わない。行動に移せばほぼ確実に実っていたであろう恋。
これが青葉モカと狩凪遥斗に存在した『可能性のひとつ』だ。
決断一つで大きく変わる結末。まさにButterfly effectだ。
これから先、ifルートを生きる彼女、彼はどのような人生を送るのか、それは本人達しか知らない。ここで言えるのは、遥斗が存在する本編とは違う未来が待っているだろう。ただ其れだけは確実だ。
◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆
――本編ルートの告白
「あ、あのね...」
これからするのは愛の告白。自分が恋した少年へ気持ちを伝えるため、拳を強く握って勇気を振り絞る。
「あ、あたしは...」
あと一言。その一言が口から出てこない。きっと、自分は失敗を恐れているのだろう。挫けそうだ。...だからこそ、なけなしの勇気を全て絞る。ここで実行しなかったら確実に後悔する。そんな予感がしていた。溜め込んでた胸の内を深呼吸の後に紡ぐ。
「ハーくんのことが...狩凪遥斗くんのことが好きです。あ、あたしと付き合ってください///」
「.........お、俺で良ければ...宜しくお願いします///」
「...え、えへへ〜。これから宜しくね、ハーくん♪︎」
こうしてパン好きカップルが誕生した。少女は後悔しないために勇気を振り絞り、成功させた。これから始まるのは青葉モカと狩凪遥斗の『恋人』としての日常だ。
寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い...そんな日常です。
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パン好きカップルのイチャイチャ
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混沌と書いてカオスと読む系の夢落ち
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幼き日の記憶(遥斗)
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意味もなく思い付いただけのバトル展開
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それとも――ぜ・ん・ぶ♡