パンを貪りしカップル   作:ああああ

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アンケートで一位だった『パン好きカップルのイチャイチャ』を書きました!!

ご協力ありがとうございました♪


モカの気持ち

――狩凪遥斗は恋人を愛している。

 

 

世界一愛する少女の頭を撫でると、嬉しそうに『もっと』と言いたげに頭部を胸板に擦り寄せて来る。その行動に小動物に対する様な保護欲が湧き、何分も愛撫してしまう。

 

 

 

愛しくて堪らない彼女と手を繋ぐと、身も心も温かくなる。小さくて暖かい彼女の手を包み込み、たまに目を合わせて微笑み合うだけで幸福が溢れる。

 

 

 

誰よりも好きで可愛いあの娘を抱き枕にすると、どんな高級枕よりも熟睡できる。自分に背を向けて寝る彼女を後ろから抱きしめ、全身で彼女を感じる。安心して寝れるからだ。

 

 

 

 

――ここまで語ったのは狩凪遥斗の気持ちだ。

 

では、彼の恋人――青葉モカは遥斗と触れ合うことで何を想い、何を感じるのだろうか?

 

 

 

さあ、今回語るのは少女に視点を当てて語る話だ。題名を付けるならば、シンプルに『モカの気持ち』だ。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

少女――青葉モカには交際している相手がいる、

 

名は狩凪遥斗、中性的な容姿をした同い年の少年だ。マイペースでパン好きな部分が自分と似ていて、実は自分以上に怠惰且つ面倒臭がり屋の少年なのだ。

 

モカはそんな彼が大好きだ。

 

 

――彼は突然頭を撫でることがある。

 

「ん、どうしたの〜?」

 

「目の前に撫でやすそうな頭があったから。嫌だったら止めるけど?」

 

「ううん、全然嫌じゃないよ〜。寧ろもっと撫でたって良いんだぜ〜?」

 

彼の手は決して大きくないのに、撫でられた部分が優しく包まれている様に感じる。恋愛漫画の『頭を撫でられて気持ちいい』というのはよく分からないが、心が温かくなるのは確かだ。

 

言葉にはしずらいが、敢えて表現するならば、 "ぽわぽわ" すると言おう。其れが癖になってしまい、彼の胸に頭を擦り付けて『もっと撫でて』と表現する。我ながら動物のような表現方法だとは思うが、これが心地いいのだ。

 

 

――彼と歩いていると、手を握ってくる。

 

「手、温かいね〜」

 

「そうだな。まあ、俺よりもモカの方が何故か温かいんだけどな。体内温度とか違うのかな?」

 

「ふふっ、それもだけど...温かいのは手だけじゃないんだよね〜」

 

顔を見なくても彼と繋がっていることが分かり、嬉しくなる。女の子の自分とは明らかに違う手ではあるが、自分の手を包み込んでくれる。

 

異性と手を繋ぐことで緊張などもあるが、それ以上に近くに居ることが再確認できて安心できる。だが、同時に周りの人から見られてると思うと少しだけ恥ずかしくて、ほんのりと頬が熱を持つ。きっと、すこしだけ赤くなっているのだろう。

 

彼の反応も見たくて、たまに横目でチラリ見ると、彼と目が合ってしまう。その事が面白くて、同時に嬉しくもあってつい笑みが溢れてしまう。

 

 

――稀に彼の家に泊まり、同じベッドで寝ると彼が自分を抱き枕にする。

 

「モカの体、柔らかくて温かいから良い。これぞ理想の抱き枕ってやつだな」

 

「世界に一つだけのモカちゃん枕ですから〜♪こんなことしても許すのは、全世界を探してもハーくんだけなんだからね〜?」

 

「はいはい、モカ様に感謝致しますよって」

 

彼は知らないが、抱き枕にされている時の自分は赤面している。其れを隠すために外側を向き、悟られまいとしているのだ。

 

背中一面に彼の熱を感じる。耳元で囁かれたら擽ったく、それでいて嬉しい。最初は戸惑ったが、今では割と慣れたものだ。だが、心に溢れる優しい気持ちだけは未だに色褪せることが無いのだ。

 

彼は毎回、自分よりも早く寝てしまう。だから、寝た後は彼の方に向き直し、愛しい寝顔を見ながら眠りにつくのが癖になった。寝ている彼の頬にキスをし、おやすみと呟いてから眠りにつく。

 

 

 

自分達の人生には恋愛漫画のような甘ったるい展開なんて要らないと思う。似合わないというのもあるが、自分と彼は態々言葉にして愛を確認せずとも伝わる。

 

――時には友達のようにパンの奢りを賭けて下らない勝負をしたり。

 

――時には悪友のように友人達にイタズラを仕掛けたり。

 

――時には兄妹(姉弟)のように心底どうでも良いことで喧嘩したり。

 

――そして、時には夫婦のようにお互いを助け合い、支え合い。お互いの短所を知りながら受け入れて、言葉にするまでもない愛を気まぐれで囁いてみたり。

 

其れが自分と彼――青葉モカと狩凪遥斗の関係なのだ。何時の間にか心に芽生えた恋心は、気付けば唯一無二の無くてはならないモノへと変化していた。

 

 

 

彼と愛を育もう。

 

甘くなくても良い。過激でなくても良い。自分達には自分達の『愛のカタチ』があるのだ。

 

彼と共に歩もう。

 

これから何十年も共に生きたいと願った相手なのだ。焦る必要は無い。ゆっくり、確実に一歩ずつ進めば良い。

 

 

 

少女は一人の男の子を愛した。少しだけ変わり者で、所々自分と似ている彼を好いた。

 

 

 

――これは少年少女の恋の物語ではない。恋人同士の日常の物語だ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「うぅ〜、寒いよ〜。寒さに滅法弱いモカちゃんは凍死しちゃうよ〜」

 

「し、仕方が無いだろ。何故か暖房が壊れたんだし。ほら、布団にでも包まっておけ」

 

現在、狩凪家は寒かった。タイミングが悪いことに暖房が壊れ、業者に修理を頼むが明日まで直らないと言われた。そのため、モカと遥斗は二人して布団に包まり、温め合っていた。

 

「ハルラッシュ、あたしはもう疲れたよ...」

 

「誰がハルラッシュだ。人をフランダースの犬のパチモンみたいに呼ぶな。家の暖房がつかないだけで人間は死なないから」

 

「だって寒いもん...ハーくん、温めてよ〜」

 

「はぁ、しょうがないな。ほら、こっち来て」

 

胡座を組んで座り、そこにモカを乗せる。上からは布団二枚のコーティング付きだ。お互いの体温で温まり、寒さを凌ぐ遥斗とモカ。

 

「ハーくん、あたしの家に来る?少なくともここよりは温かいよ〜?」

 

「...家の中ですらこんなに寒いのに、まさか外に出ろと?断固拒否させてもらう。それに、モカの家に行ったらモカの母親が部屋をチラチラ覗くじゃん。嫌って訳じゃ無いけどさ、なんか気が散るから」

 

「あはは...この前、ハーくんが家に来て以来ずっとお母さんがね、早く孫の顔見たいな〜って呟くんだ〜。あからさま過ぎてドン引きだよ〜」

 

「高校二年生に孫求めるなっての。まあ、そんなわけでモカの家は却下。...どうする?沙綾の家にでもお邪魔するか?理由を話せば入れてくれると思うけど」

 

山吹沙綾は遥斗の幼馴染にあたる。幼い頃からやまぶきベーカリーに通い続けた結果でしたないのだが。そんな彼女だからこそ、助けてくれると信じている。

 

「...ハーくん、今日は二人っきりで過ごしたいって言ったら我儘かな?」

 

「...全然。モカが望むなら、俺は何時だってモカと一緒に居るよ。でも、何でいきなり?」

 

「理由なんて無いよ?モカちゃんだって可愛い女の子なんですし、衝動的に甘えたくなることだってあるんですよ〜?」

 

モカは悪戯に笑いながら、でもほんの少しだけ赤面させて言う。彼女が甘えてくるのは珍しいことでは無い。寧ろ定期的にある。

 

「ふっ、モカは本当に可愛いなぁ。そんな可愛いモカちゃんにはコレをあげよう」

 

「ん?...あ、ホッカイロだ。しかも温まった後の最高な状態じゃないか〜!流石ハーくんだね〜。あたしの好みを分かっていらっしゃる」

 

「知り合ってから何年経つと思ってんだ?この程度は把握済みだっての。...まあ、冷えてる状態のホッカイロが好きってヤツはいないと思うけどな」

 

遥斗はポケットからホッカイロを取り出し、モカに渡した。普段は外出時にしか使用しないが、暖房の壊れた部屋の中は寒すぎる。ホッカイロを使用するには十分だった。

 

「それじゃあ、あたしからはコレをあげよ〜。ジャンジャ〜ン、コンビニメロンパン〜!超ご都合主義の如く二つあるよ〜。まあ、ここに来る前にコンビニで買ったんだけどね」

 

「お、サンキュー。ちょうど腹減ってたんだよ。...ノーマルメロンパンとホイップメロンパンか...悩ましいな。モカはどっちが良いんだ?」

 

モカの手にはノーマルのメロンパンと、中にクリームが入ってるホイップメロンパンの二つ。ホイップメロンパンを邪道と称する人も少なくは無いが、遥斗はそう思わない。遥斗はパン全てを愛する。パンの全てを受け入れる。邪道も王道も、総じてパンなのだ。その事実だけで受け入れるには十分すぎる理由だ。

 

「う〜ん、あたしはホイップメロンパンにしようかな。何となくそんな気分だし」

 

「じゃあ俺はノーマルメロンパンだな。残り物には福があるって言うし」

 

二人で『いただきます』と食前の挨拶をして食べ始める。メロンパンを端から齧り、砕けて落ちるクッキー生地を元から入っていた袋で受け止める。最後に袋の底に溜まったクッキー生地をまとめて食べるのが遥斗の食べ方だ。

 

「モカ、一口ちょーだい」

 

「良いよ〜。あ、ハーくんのもあたしに頂戴ね〜」

 

お互いの手に持つパンを食べ合う。甘いメロンパンよりも甘いクリームが多少くどいとは思うが、其れも含めてホイップメロンパンなのだ。甘党には堪らない一品だろう。遥斗の好みでもあり、後でやまぶきベーカリーにも作ってもらえるように頼んでみようかと思った。

 

「「ご馳走様でした」」

 

食後の挨拶も忘れずにして、メロンパンを完食する。普段から二桁単位でパンを食べている二人からしたら多少足りなくはあったが、我慢することにした。こんな寒い日なのだし、せめて行動は必要最低限にしたいと思うのは自然の摂理なのでは、と怠惰主義者自称代表は自己完結した。

 

「ふあぁ〜、食べたら眠くなった...」

 

「ん、ハーくんも?実はモカちゃんもなんだよね〜。寒いんだし、温め合って寝ようよ」

 

「そうだな」

 

二人でベッドに横になり、抱きしめ合って眠りにつく。普段は恥ずかしいから外側を向くモカも、今回ばかりは正面から抱き合っていた。そう、今日は寒いからしょうがないのだ...と、自分に言い訳し、布団に潜って彼の胸板に顔をうずめて、熱を持つ顔を彼には見せまいと隠す。

 

「おやすみ、モカ」

 

「うん...おやすみ、ハーくん」

 

願わくば、何十年先も彼と共に生きたい。そんな想いを馳せながら眠りにつくモカだった。

 

 

 

 

 

 

 

「...本当に可愛いな、俺の彼女は」

 

少年が寝静まった少女の頬に軽く唇を添えたのは内緒だ。赤面する彼女を見てみたいという気持ちも無きにしも非ずだが、それよりも自分が恥ずかしい。

 

――どれだけ共に過ごしてもこればかりは慣れないと感じる少年だった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆

 

――とあるパン好き少年の帰り道。

 

「にゃー」

 

「ん...?ああ、猫か。悪いけど、俺は犬派なんだ...餌は要求するなよ?」

 

「んにゃ?」

 

「ぐっ...!なんてつぶなら瞳なんだ...!う、腕が勝手に!?ダメだ...パンを与えずには居られない!!」

 

「にゃん♪」

 

「...少しだけだからな?パン...という、炭水化物の与えすぎは糖尿病になる恐れがあるから」

 

 

実は後ろで超絶猫好き少女が羨ましそうに見ていることを少年は知らない。尚、この日以降この猫が遥斗に懐いたのはまた別の話。

 

 




評価、貰っちゃいました!

『Ericを』さん

ありがとうございました♪

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