パンを貪りしカップル 作:ああああ
また評価貰ったです!
『ニャブリ×3』さん、『外道in』さん、『カエル帽子』さん、『405soh405』さん、『accel0510』さん、『Sama L』さん
ありがとうございました♪
――狩凪遥斗はとてつもなく暇だ。
モカはアルバイトだし、自分のバイトも休みだ。パンを買おうにもやまぶきベーカリーは定休日。最近まとめ買いした漫画も読み終わっており、学校からの宿題なども無い。つまり、遥斗は超絶暇人なのだ。
――花園たえはとてつもなく暇だ。
今日はバンドの練習も休みで、学校の宿題も記憶の彼方へ飛んで行った。花園ランド建設プランもほぼ完成しており、やること事が無い。つまり、たえは超絶暇人なのだ。
「――つまり、こんな暇な日はー」
「有咲の家に来るに限るー」
本人無許可のアポ無しで市ヶ谷家に遊びに来たのは怠惰人間の狩凪遥斗と、超が付くほど天然な少女の花園たえだ。特に根拠は無いけど有咲なら面白いツッコミをしてくれるだろう。そんな淡い想いを胸に少年少女は有咲の元へと向かった。
「忙しいから帰れ」
期待を裏切るように発せられた声は有咲のものだった。
「いや、どう見ても暇だろ。少なくとも俺の目にはアイス片手に炬燵でインターネットを操作してる有咲が映ってるんだけど」
「私の目にも、言葉とは裏腹に普段の遥斗と同等の怠惰を満喫してる有咲が映ってる」
二人の目には怠惰中の有咲――通称『暇人』が映るのだが、どうやら市ヶ谷有咲は既に怠惰すら『忙しい』と称せるレベルに到達してるらしい。怠惰主義者自称代表の遥斗は尊敬し、超天然なたえは意味不明と言いたげに首を傾げた。
「さすが有咲!俺でも到達できない怠惰レベルに平然と辿り着いてのけるッ!!そこにシビれる!あこがれるゥ!!」
「お前は何処の取り巻きだよ!?」
「おおー、凄いツッコミだね。遥斗のボケに対して元ネタを完全に把握してからツッコミを入れるまで時間が短すぎる。...これを一切の打ち合わせも無く成功させるなんて..,流石有咲だね」
「態々解説するな!そんなこと意識してやってないから!!」
二人は思う――意識せずにこれ程の絶技をやってのけるのだ。これは生まれながらの才能とも呼べるのではないか...と。
――結論から言うと、有咲は暇人だった。
暇すぎるが故にネットサーフィンで時間を潰す有咲。そこに大層な理由なんて隠されても無く、紛れもなく有咲も暇人二人と同類だった。
「さて、改めて有咲が俺達の同類だと再確認出来たから.........何する?割とマジでやることないですけど」
「有咲、何かない?...あ、ごめん。愚問だったね」
「おいコラ、人を『元々友達いなかったからぼっち専用のゲームしか持ち合わせてない奴』みたいな目で憐れむな」
「「えっ、違うの?」」
「ぐっ...!も、黙秘権を行使する!」
その反応は肯定と同義だった。このツンデレ、今となっては信頼できる親友達がいる。だが、其れは飽くまでも高校生になってからだ。高校一年時に香澄と出会い、そこから波紋のように友人関係が広まった。逆に言えば高校入学前までは所謂ボッチだったのだ。原因は明確だ。――普通に引きこもりで不登校だったから友人関係を築く時間が無かった。つまり、自業自得だ。
たえが提案する。
「外出とかする?」
「「嫌だ」」
勿論遥斗と有咲は拒否する。怠惰人間と元引きこもりが意味もなく外出なんてしてたまるかと言わんばかりの拒否だった。
「こんな寒いのに外出なんて有り得ないだろ。俺が外出するのは登校かパンを買いに行く時だけだ」
嘘である。この男、実は割と頻繁に外出している。勿論大半はパン購入のためなのだが、アルバイトだったり暇つぶしだったりと、外出回数は決して少なくはない。今現在、有咲の家に来ているのが良い証拠だ。
「私は普通に意味の無いことをしたくないだけだ。明確な目標も目的地も無いのに外出なんてしてたまるか」
この少女、他にも言ってない理由がある。其れは魔の炬燵だ。有咲は今、炬燵で温まっている。もうそれだけで説明も不要で理由になるのだが、敢えて説明しよう。この寒い時期には暖房器具は必要不可欠。その暖房器具の中でも一際中毒性があるのが炬燵なのだ。その魔の領域に手を伸ばし、抜け出せなくなったのが市ヶ谷有咲という少女だった。
「う〜ん、暇すぎる。...有咲、なんかモノマネとかやってよ」
「なんで私が遥斗の要求に答えなくちゃいけないんだよ。そういうのは私じゃなくておたえに言え。少なくとも私よりは応じてくれるハズだから」
「ん、モノマネか...人参を食べ終わったあとのオッちゃんが寝るまでのモノマネで良い?」
「細すぎて俺じゃあ理解できないから却下。なんかこう...香澄とかモカのモノマネ出来ないの?主に人物系で」
「有咲がする香澄のモノマネ、似てるって言うか...普段とのテンションのキャップ?が凄い。遥斗にも見せたかったな〜」
過去に何度か有咲は香澄のモノマネをしている。似ているか似てないかはそれぞれの判断に任せるとして、注目すべきはテンションだ。普段の彼女からは想像もできない明るくハイテンションな声。少なくとも聞いて損するレベルでは無い。
「い、嫌だっての!注目させるとやりにくいんだよ!!てか、そんなに言うんなら遥斗が香澄のモノマネやれよ!」
「うん、良いよ」
「......えっ、マジで?性別すら違うのにできるのか?」
遥斗は珍しくも引き受けた。有咲は彼が『できない』と言い、じゃあ自分もやらない...と言う予定だったのだが、予想とは大きく外れた。流石の有咲もこれは予想外としか言いようがなかったのだ。
「遥斗が引き受けるって珍しいね。大半は『面倒臭い』って言うのに」
「考えてもみろよ。俺が香澄のモノマネをやるだけで、次は超ハイテンション有咲が見れるんだぜ?羞恥心なんかドブにでも捨てておけっての」
「おぉー、これまた珍しく漢らしい。女子が羞恥心を押し殺して出した声を聞きたいっていう理由が無ければカッコよかったね」
「さらっと人聞き悪いこと言わないでくれる?」
たえと軽口を叩き合いながら、遥斗は喉の調整に取り掛かる。やるからには本気で。それが遥斗の小さなプライドだった。
「んじゃ、いっきまーす」
―――突然だが、遥斗には特技が多数存在する。口笛、フィンガースナップ、ペン回しetc...数えればキリがないが、主に遊び方面に才能を発揮した結果だった。そして、今回披露する特技は所謂『声真似』だ。声帯模写とも呼ばれる技術だ。 遥斗は男女関係なく声を真似することができるのだ。そのクオリティは瀬田薫が絶賛するレベルであり、対象は人間だけでなく動物も含まれる。つまり、戸山香澄の声真似など容易いのだ。
肺に空気を入れて、喉を締める。
『やっほー、有咲ー!』
「「...えっ?」」
目の前の少年から発せられる声は聞き覚えのある少女の声だった。元気でパワフル、行動的でポジティブな性格の少女――戸山香澄の声だったのだ。
「ち、ちょっと待て!今の声どこから出した!?香澄か?何処かに香澄でも隠れているのか!?」
「いや、こんなの練習すれば誰でもできるだろ。そんな事よりも有咲のモノマネが見たいなあー」
「いやいやいやいや!あの声真似の次にやるのは精神的に厳しいから!!なあ、おたえもそう思うだろ?」
「今回は流石に同意せざるを得ないね。あのレベルは予想外って言うか...あ、オッちゃんとかドロちゃんのモノマネもできる?」
「うさぎの違いすら分からない俺ができるとでも?」
「...なんで誇らしげに言ってるんだよ」
流石の遥斗でもうさぎの真似はできなかった。香澄やモカ等のある程度理解出来る相手ならまだしも、遥斗にとって兎は兎でしかない。つまり、オッちゃんとかドロちゃんを分けてモノマネするだなんて不可能なのだ。
「有咲〜、まだか〜?」
「嫌だって!態々恥かきたくないっての!!」
「大丈夫だって。俺が見たいのは香澄のモノマネじゃなくて、超ハイテンションな有咲だから。ほら、早く羞恥心を捨てて奇行なり奇声なりあげてよ。そして俺を楽しませてよ」
「余計やる気無くすわ!!」
奇行奇声を実行した暁には、今なら『ヤベー奴』という汚名又は称号が着いてくるオマケ付きだ。もちろん有咲がやる訳もなく、遥斗は無駄な労働だったと嘆いた。
「はぁ......有咲のせいで無駄なことした...遥斗君は美味しいパンを要求する。勿論やまぶきベーカリーのパンな」
「いや、私のせいじゃ無いだろ。ここまでの会話を思い出してみろよ。私は一度もモノマネするとか言ってないからな?」
飽くまでも遥斗が勝手にやった、其れが有咲の主張だった。だが同時に事実でもあり、遥斗も反論に困ることでもあった。
「結局暇に戻っただけだね。いっそのことみんなで寝る?有咲の家って広いから探せば人数分の布団とか見つかるんじゃないかな?川の字になって寝ようよ」
「たえ...俺が言うのも難だけどさ、男子と同じ部屋で寝れるのか?まあ、たえとかモカなら気にしないだろうけど、今回は有咲が居るんだぞ?こう見えて誰よりも純粋で、キスするだけで子供ができるとかの妄言虚言を簡単に信じそうな有咲が。流石にオススメはしない」
「貶してるのか?本当に『キスするだけで子供ができる』って信じるのはキチガイだけだろ。生憎と私はそこまで馬鹿じゃないし、必要最低限の知識も持ち合わせてるからな。後、他人の家で寝んな」
いくら有咲でも漫画やアニメの超純粋キャラのように無知では無い。現実では保健体育の授業で方法は教わるだろうし、自分で保健体育の自主学習をするお年頃でもあるだろう。勿論スマホの履歴は消すオマケ付きだ。其れは努力を隠す天才と言わんばかりに。
「てか、やること無いなら帰れよ。私の家は暇人の集まり場じゃ無いんだ」
「「はははっ」」
「おい止めろ。その『流石有咲!冗談も言えるんだね!!』みたいな反応は止めろ。おたえは兎も角、遥斗は嘘か誠か考えれば分かるだろ?」
「あれ?私、遠回しにアホって言われてる?」
「アホって言うよりは天然だから話の解釈に違いがありそうだって言われてるんだと思う」
「やっぱり伝わってるし...」
その後、市ヶ谷家で晩御飯をご馳走になるまでは暇人達の会話は続いた。
◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆
――とある声真似が得意な少年と苦労人兼常識人の会話。
「ねえ、遥斗。声真似が出来るってホント?」
「まあ、嘘では無い。これでも多少は自信あるからな」
「......あたしの...いや、ミッシェルの声真似も?」
「先に断っておくけど、入れ替わりとかやらないからな?ミッシェルの運動量とか...怠惰主義者の俺がやるわけないだろ」
「チッ...」
「舌打ちした?ねぇ、今舌打ちしたよね?」
ほんの少しだけ傷付いた遥斗だった。尚、ミッシェルの中身の人は反省の意を見せなかったとのこと。
―――寒くて眠い。でも犬が温かいのだ。
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