パンを貪りしカップル 作:ああああ
アンケートの結果、全部書くことにしました!ご協力頂きまして、ありがとうございました♪
あ、ifルートに近いものだと考えてくだされば。本編には関係ございません系のお話しです。
――■■■■■
その言葉が呪いのように耳を通して精神を蝕む。繰り返し繰り返し囁かれるこの言葉は、最早苦痛でしか無い。
「ねぇ、どうして他の女の子ばかり見るのかなぁ〜?こんなに好いてるのに...こんなに我慢し続けたのに...!君が謙虚な女の子が好きだと思って、ぜーんぶ我慢してきたんだよ〜?蘭と相棒みたいに話してても、二人の時間だと思って触れないでおいた。ひーちゃんの胸を見てても、思春期だからと自分に言い聞かせた。トモちんと軽口を言い合ってても、最後は自分の元に戻ってくると信じ続けた。つぐで癒されてても、その感情は恋じゃないと理解してきた。......でもさぁ、あたしね...もう限界なんだよ?疲れちゃったの。ぜーんぶ、ハーくんが悪いんだからねぇ?」
ねっとりと絡みつくように沈んだ声。口調とは裏腹に変化の少ない声の高揚が不気味に感じる。言葉を一つ一つ紡ぐ彼女の目は虚ろだ。何時からか、もう覚えていない。いつの間にか歪んでいて、自分は彼女の表面上しか見えていなかったのだろうか?
遥斗は後悔する。
何を後悔したらいいのかも分からない。そう、自分はわからないのだ。だから、敢えて後悔しよう。後悔することしか出来ない自分自身を嫌い、無知な自分を後悔の念で埋める。
――■■■テ■
モカは思う。
彼をこんなに憎いのに...自分に対してこんなに辛い思いをさせているのに...変わらずに彼を好きな自分がそこには居た。何故なんだ?どうしてなんだ?と己に問い掛けても答えは返ってこない。
「どうして?どうしてなの?...ねぇ、どうしてなのかなぁ〜?...............あ、そっかァ〜」
少女は悩み、果てには嗤う。
「ぜーんぶ、ハーくんが悪いんじゃなかった。周りに蔓延る奴らが悪いんだね〜。あはははっ!!そうだ、そうだったんだ〜!アイツらが...アイツらがあたしとハーくんの仲を引き裂こうとしてるんだよね」
違う。其れは自分が作った虚言だ。分かってる。...分かってるハズなのに、止まらない。もう、自分では止めることが出来ない。
嘘から始まる偽った価値観。それは留まり所を知らずに膨張し続ける。友達を、親友を、相棒を信じたいのに、其れを否定するのは他でもない自分自身。
「アハハハハァァァ!!」
狂ったように嗤う。
もう分からない。何一つ理解できない。
――だから、もう全部どうでもいい。
――ア■■テ■
遥斗が目を覚ますと、耳元でまた呪いの言葉が囁かれる。幸せな夢から過酷な現実に戻される合図だ。
縛られた手足。
何度も逃げ出そうとした証の縄の痣。
窓に四六時中かかってるカーテン。
自分と彼女の体液が混ざりあった異臭。
隣でスヤスヤと穏やかに眠る少女。
それは遥斗が対象の監禁生活だった。常に耳元で愛を囁かれ、彼女が寝ている間も体液の匂いが鼻を犯す。意識がある内は彼女しか感じれないし、他を感じることは許されない。
(...何時から...だ?......今日で...何日なんだ?)
体内時計などとうの昔に狂ってる。助けを求めようにも手元にはスマホどころか、連絡手段すらない。ベッドに縛り付けられてるので外に逃げ出すことも不可能だ。
彼女が起きれば性行為を強要され、寝れば逃げられない現実を叩き付けられる。そんな日が、もう何日続いただろうか?
愛しかった彼女は、もはや恐怖の対象でしかない。
(...縄抜けか...映画とか漫画なら、手の関節を外したりしてたけど...やり方、知らないんだよなぁ)
敢えて楽観的に考えて現実逃避をする。逃げ道の無い現状では現実逃避をしてないと気が狂いそうだった。
「んっん〜、おはよー。ハーくん♪」
――再び心が冷え切るのを感じた。
――ア■シテ■
彼を守るために、同居することにした。
彼の不注意で危険が及ばないように、ベッドに縛り付けた。睡眠薬をパンに入れたのはちょっとだけやり過ぎかな?って思ったけど、守るためだから仕方が無い。
監視されないように窓には四六時中カーテンをして、彼と自分だけの空間を作り出した。
「...モカ、何のつもりだ?」
「これはね、ハーくんを守るためなんだよ〜?外にはハーくんを狙う奴らが多過ぎるから、こうするしか無かったんだよ?ふふふ、これが二人のランデブーってやつなのかな〜?ちょっとだけ恥ずかしいね〜。でもね、モカちゃんは幸せだよ〜?勿論ハーくんもだよね?あはは、聞くまでもないね〜。だって、あたしだけがハーくんを守れるもん。あたしだけがハーくんの理解者なんだもんね。安心して、ハーくん。ぜっっったいに、ハーくんを守るから♪」
「っ...!」
彼は押し黙ったが、自分には理解出来た。きっと彼は嬉しすぎて言葉にできないのだろう。そんなシャイな一面も可愛いし、保護欲を湧かせる。
「俺は...モカに守ってもらう必要はない...」
「...遠慮しなくても良いんだよ〜。男の子だから守られるのがカッコ悪いって思うのも分かるよ?」
「そうじゃない。蘭たちは危険じゃないし、俺を狙ってもない。モカなら分かるだろ?こんな事しても意味が無いってことくら」
「うるさいなぁ」
「んぐっ!?」
モカは遥斗の言葉を遮り、口で口を塞ぐ。
「あたしがハーくんを守りたいの。それとも...ハーくんはあたしを拒絶するの?」
「...違う。こんなの間違ってる...!」
「ううん、何も間違ってないよ。あたしがハーくんを求めて、ハーくんを手に入れるだけ。それ以上でもそれ以下でも無いんだよ〜?」
全然論理的じゃない。そんなのは自分が一番理解してる。でも、人間の感情全てを論理的に説明なんて出来ない。
――だから、いつか伝わるのを待つ。待ち続ける。
今は無理矢理拘束した悪女に見えるだろう。でも、いつかこの愛情が伝わる筈だ。だって、こんなに好いているのだから、報われないハズがないじゃないか。
彼は何時だって自分を理解してくれた。今回はちょっとだけ鈍くなってるだけなんだ。熱心に体を重ね続けたら、きっと伝わるだろう。例え何日何週間何ヶ月何年掛かろうとも、愛し続ける。
「...もう、やめてくれ...」
「だいじょーぶだよ。ハーくんが理解できるまで、あたしは諦めないから」
――それが、遥斗に対する地獄の始まりだった。
――ア■シテル
怖い。愛しかった彼女が怖い。
遥斗を支配するのは無償の愛ではなく、単純で純粋な恐怖のみ。愛の囁きが呪いの言葉にしか聞こえない。もしも手足が自由ならば、喉を掻きむしって死にたくなる。
限界だ。
恐怖心は膨張し続ける。恐怖の対象は
何も聞きたくない。何も見たくない。何も食べたくない。何も感じたくない。何も触れたくない。
――もう、生きたくない。
生きることが苦痛だ。彼女が存在するこの世の中が恐怖に塗れて見えるからだ。
かつては愛しかった彼女を、今では悪意無しで嫌いだと言える。
「ハーくん、大好きだよ♪ずっと一緒にいようね」
「モカ...大嫌いだ。お前と生きるくらいなら死んだ方がマシだよ」
お互いに言葉は通じない。
暴言を受け入れずに耳を塞ぐ。それが今の青葉モカだ。そんな彼女が――
――怖くて嫌いだ
――アイシテル
伝え続ける――
――アイシテル
囁きかける――
――アイシテル
信じ続ける――
――アイシテル
曝け出し続ける――
――アイシテル
願い続ける――
――アイシテル
愛を込める――
アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル――――
何度目かも分からずに、モカは囁き続ける。決して伝わらないし、遥斗は受け入れない。それでも、紡ぎ続ける。
「ハーくん、アイシテル♡」
今も、明日も、これからも――
◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆
『ヤンデレモカちゃん』
・病んだモカ。遥斗が女の子と話す姿で傷つき、我慢の限界を迎えた姿でもある。目は虚ろで、精神が歪みに歪んでたりしてる。勿論本編では病む予定は無い。ヤンデレモカちゃんは愛しい彼を監禁して体を重ね、愛という名の呪いを囁き続ける。何日も何週間も。努力家......なのかな?
『今回のハーくん』
・全ルート初のモカちゃん大嫌い系の遥斗。愛が重すぎた模様。恐怖心と諦めからか、目が曇ってる。薄い半透明な膜が貼ってるみたいにも見える。所謂レ○プ目。尚、本編の遥斗は眠そうな半目で、一話前のifルート遥斗は心做しか目が死んでいるらしい。ルートごとに目が違うのは作者も予定外というか...予想外?だった。
次回、『変わり果てし我が体~TS狩凪遥斗~』