パンを貪りしカップル   作:ああああ

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アンケートの二つ目、女体化遥斗です。まあ、テンプレしか書けないんですけどね?


変わり果てし我が体~TS狩凪遥斗~

 

さて、みんなに質問だ。

 

Q . 朝起きたら髪が異常に伸びた経験はあるか?

 

Q . 寝て起きたら身長があからさまに縮んだことはあるか?

 

Q . 一晩寝ただけで相棒兼ムスコが跡形もなく消えてたことはあるか?

 

勿論意味も無く突然質問した訳では無い。水溜まりよりも深く、家賃激安アパートの部屋よりも広い事情があるのだ。

 

まず初めに断言しよう。以上三つの質問全てにYESと答えたそこの君は、今回のお話で遥斗に起きた症状と同様の症状が起きているのだろう。

 

「...はぁ、何でだよ...」

 

遥斗の部屋にあるベッドの上には少女が居た。ため息をつき、疑問に頭を悩ませる少女が。

 

――その正体は元男の遥斗だ。

 

明るめの茶髪は腰近くまで伸び、逆にモカ以上薫さん以下だった身長はあこ以上千聖さん以下まで縮む。股の間にあったハズのムスコは跡形もなく消え失せた。この現象を通称女体化と称すのだろうか?と、遥斗は寝起きの頭で楽観視してた。半分現実逃避でもある。

 

「...さて、落ち着こう」

 

普段よりも高い声に違和感を感じながらも鏡の前に移動して容姿の確認をする。

 

変化は上記の通りだが、もう一つ付け足すとしたら顔だろう。元々中性的だった顔は女性寄りになってた。女装中のお化粧マジックのような変化だった。因みに、胸はほんのりとオマケ程度にあった。Aカップ程度には。

 

「...いや、本当に何でだよ。流石の遥斗さんでも寝起き早々の女体化経験は皆無だぞ。...困った......あれ、困るか?特に困る要素無くね?」

 

改めて考えてみると、別に困ったりはしなかった。学校に関しては弦巻家の力を借りれば何とかなるし、女体化したとはいえ自分の体だから、見ても発情なんてしない。だから風呂やトイレ等で慌てる必要も無いのだ。

 

遥斗は極めて冷静だった。

 

「さてさて、今日の予定は何かあったっけ?」

 

学校は休みだし、アルバイトも客が来ないから休むと言えばほぼ確実に許可されるだろう。

 

「あ、今日ってモカが来る日だっけ?やっべ、どうしよう」

 

言葉では慌ててる風だが、内心はそこまで焦ってもない。本当のことを話したら着せ替え人形にされそうで怖いから、適当に従姉妹とか言っておけば信じるだろう。妹という案も考えたが、自分が一人っ子だとモカには言ってある。無駄に記憶力の良いモカは確実に覚えてるだろう。

 

取り敢えず何時もの服に着替えてから気がつく。

 

「あっ、服でかい...」

 

十センチ以上は縮んだ身長。何なら肩幅も縮んだ。今の遥斗の体格に合う服は無い...と思っていたが、意外とあった。黒のパーカーだ。

 

「...モカの服か。まあ、モカがネットで買ったからサイズが合わなくて小さいって言ってた服だけど。...今の俺にピッタリだな」

 

ダボダボなTシャツの上に黒のパーカーを着て、線ファスナーは一番上まで閉める。生憎と...というか、当たり前だが上半身用の下着は無かった。先が擦れて気になるが、許容範囲だ。それが透けないようにパーカーのファスナーを上まで閉めたのだ。下はタンスを漁ってたら昔履いていたジーパンが残っていたので、それを履いた。

 

ボーイッシュなファッションになったが、意外と似合っていると自分自身で思った。今の容姿だと、フリフリ系の服装よりもさっぱりとした服装の方が似合うだろう。

 

 

――ピンポーン

 

インターホンが鳴った。モカが来た合図だろう。普段なら部屋で待ってたら勝手に上がってくるが、今は狩凪遥斗であって狩凪遥斗じゃないのだ。その事のアピールのために、態々迎えに行った。

 

「いらっしゃいませー」

 

「...あれあれ、どなた様かな〜?」

 

「どうも、遥斗の従姉妹のハルカです。遥斗はちょっと用事があって出掛けてるので留守番をしてます」

 

「ふむふむ、いとこね〜。言われてみれば...顔とかそっくりだね。まるで女の子版のハーくんだね〜♪写真撮っても良いかな?良いよね?」

 

勝手にスマホのカメラ機能で写真を撮るモカは置いといて、遥斗はモカの的確な発言に内心ギクリとする。

 

ちなみに、自分がハーくんこと遥斗だとバレたくないのには理由がある。実を言うと、モカはこう見えて人の着せ替えをするのが好きだったりする。

 

――そして、今の自分はか弱い女子なのだ。

 

そんな自分が遥斗だとバレて、着せ替え人形にさせられそうになっても逃げきれないだろう。

 

逆に言えば、モカは見知らぬ相手ならば多少の遠慮を心得てる。つまり、ハルカを無理やり着せ替え人形にすることはまず有り得ないだろう。

 

「ねぇねぇ、ハルカちゃん。ハーくんはいつ頃戻りそう?」

 

「さあ?私も遥斗が遅くなるってしか聞いてないので...」

 

これが薫さんお墨付きの演技力だ。密かにドヤ顔をしつつ遥斗は架空の人物ハルカを演じる。

 

「ふぅん、そーなんだね。それじゃあハルカちゃん、あたしと遊ばない?ハーくんが居ないなら、モカちゃんは通称暇人になっちゃうんだよね」

 

(...断わるか。いや、でも...)

 

遥斗は考える。

 

――果たして、断るのは得策と言えるのだろうか?

 

普通に考えたら、バレる確率を少しでも減らすために断るのがセオリーというやつだ。だが、果たして自分には...いや、ハルカには断わる権利があるのだろうか?モカは合鍵を持ってるし、俺から許可されてるから自由に出入りする権利があると言っても過言ではない。対して今の俺はハルカだ。

 

つまり、今の自分は何年もモカと遥斗が一緒にいて一度たりとも話題に出たことの無い従姉妹なのだ。

 

(遠慮してもらうのが一番なんだけど......なんだけどなぁ...ボロも出したくないし。......俺が...遥斗が断ったら疑われるけど、ハルカが断ったらどうだ?生憎とハルカとモカは初対面なわけだし、人柄とかも分からないから疑いようが無いよな?)

 

自分の中に出た二つの意見をぶつけ合い、それぞれのメリットデメリットも考えて答えを出す。

 

「ごめん...留守を預かる身だし、あまり家に人を入れたくないんだよね。モカちゃん...で良いのかな?うん、決してモカちゃんを疑うわけじゃないけどさ、何かあってからじゃ遅いの。...何とかご理解頂けないかな?」

 

「...まあ、そう思うのも仕方が無いよね〜。初対面の人をお留守番中の家に入れるなんて正気の沙汰じゃ無いしね〜。残念だけど、今日の所は帰ろうかな」

 

(...悪いな、モカ。今度一メートルフランスパン買ってやるからな。...はぁ、今日はモカとゆっっっくり過ごすつもりだったのになぁ...)

 

流石の遥斗もこれには罪悪感を感じる。

 

玄関に鍵をかけ、パン二十個とペットボトルのお茶を持って部屋に戻る。次からは居留守を使おう。本当に大事な用事があるならスマホを通して連絡する筈だ。現代人御用達の万能機械、スマートフォンで。

 

 

 

―――異変を感じた。

 

今日目覚めてから全てが異様だったが、コレだけは特別異様なのだ。

 

「は...?い、いや...おかしいだろ?...こんなこと、有り得ていい訳が無い...!」

 

遥斗は狼狽する。目の前の現実を受け入れなれない人がなるテンプレ的な反応だ。

 

「...パンが......パンが十個しか食べられない?俺が?...世界一のパン好きな俺がか?」

 

遥斗は本日初めて取り乱した。

 

大好物のパン。何時もならば二十個食べても満足することの無いパン。

 

其れが――――十個食べた時点で満腹を感じたのだ。

 

 

「なんでだよ......おかしいだろ!意味わかんねぇよ!体が縮んだから胃袋も縮んだってか?だから何だよ!!知ったこちゃねーよ!!モカだって俺と同じくらいパンを食べるだろ!?だったら今の俺だって二十個くらいは軽く食べれるハズなんだ!!なのに...なのにぃぃぃ!!何で手が動かないんだ!どうして胃が受け付けないんだ!どうして...どうして満腹を感じてるんだよォォォォ!!」

 

地団駄を踏み、声を荒らげる。小さくなった体全体で怒りと悲しみ、絶望を表していた。

 

女体化でも揺らがない精神は今、パンを十個以上食べられない事実によって完膚無きまで叩きのめされた。遥斗は涙目どころか滝涙だった。

 

尚、その光景は傍から見たら可愛い女の子が小さい体で怒りを表すだけの可愛らしいものだったのだろう。勿論この場には誰も居ないので、その姿を心に収める人間は後にも先にも存在しないのだが。

 

 

――三十分後

 

「...もう...全てがどうでもいい...」

 

少年――現少女は真っ白な灰になっていた。

 

悩んだ。嘆いた。顧みた。――無駄だった。胃袋はこれ以上のパンを受け入れないし、食欲も湧かない。

 

「はぁ...男に戻りたい...」

 

女体化から数時間後、通常の女体化男子が一番最初に願うであろうことを今更ながらに願った。勿論願ったから叶う...なんてご都合主義的展開にはならずに、虚無感が心を支配した。

 

「......寝よ」

 

起きたら全て夢だった。そんな可能性にすら縋りたくなる現状。パジャマに着替えるのも億劫だと感じ、パーカーとジーパンでベッドに入った。

 

目を瞑った瞬間寝る、という風な漫画的特技は持ち合わせていないが、目を閉じて布団の温かみを感じてたら意識がゆっくりと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ...!ゆ、夢か?」

 

目が覚めて、喉から出た声は聞き慣れた自分の声だ。髪を触っても長過ぎず短過ぎずのヘアースタイル。身長も戻ったらしい。

 

「全部夢かよ...良かった...ん、今何時だ?」

 

スマホの画面をつけると、丁度昼頃だった。随分と長時間眠っていたらしい。これぞ怠惰の為せる技だと、後に遥斗は語ったとか語ってないとか。

 

「あれ、モカからメッセージと写真が届いてる?」

 

某トークアプリの通知が画面に表示させる。相手は恋人のモカだった。

 

モカ〈ハーくんの従姉妹だよ〜♪可愛いね〜〉

 

メッセージと共に送られてきた写真は――――

 

 

 

夢の中で見た自分そのものだった(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆

 

『TS遥斗 : 通称ハルカちゃん』

・遥斗の女体化姿。身長は縮み、明るい茶髪は腰近くまで伸びてた。中性的な顔は女の子寄りの顔になったらしい。尚、眠そうな目はそのままだった模様。この変化に対し、遥斗は意外と冷静だった。女装時の慌てようとは大違いだ。薫さんにすら褒められた演技力をフル活用して遥斗本人バレないようにした。因みに、男にも女にも聞こえる中性的な口調で話すようにしてる。さすがに女性口調は男としての精神が傷つくらしい。女体化でも動じない精神はパンを十個以上食べられなくなった事実によって打ちのめされた。それは遥斗さんブチ切れ案件だった。

 

 

 





二名の方から評価をいただきました!

『RAIRI』さん、『GTP』さん

ありがとうございました!!


次回、『その感情の名は~山吹沙綾の純愛記~』
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