パンを貪りしカップル   作:ああああ

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バンドリのデータが消えた...


確かなクソゲー

 

ここに、一つのゲームがある。

 

ジャンルはRPG――つまりはプレイヤーが各自に割り当てられたキャラクターを操作し、架空の状況下にて与えられる試練を乗り越えて目的の達成を目指すゲームである。例を出せばDQやFF等が当てはまるだろう。

 

ストーリーは単純で、必然的にゲームにおけるラスボスと戦う運命を背負った主人公が様々な困難を超えて成長する、というものだ。ちなみに、困難とはボスキャラやNPCからのクエストを指すのだろう。

 

キャラメイクは無く、元から立ち絵やアイコンは固定。キャラごとのボイスも無い。ゲーム中は淡々とBGMだけが流れる仕様だ。

 

――さて、ここまでは有り触れたゲームだ。

 

面白い点と言えば、ボスとの白熱したバトルと広大なフィールド。ダンジョンに潜ってレベルを上げて、装備品を集めて強くなる仕様等だ。

 

ただ、どんなゲームにも欠点が存在する。

 

それは仕方が無い仕様であり、人間が制作したのだから完璧を求め過ぎるのは酷だと言えよう。バトル、ストーリー、BGM、キャラ設定、探索――その全てが万人受けするゲームなど、もしかしたら存在しないのかもしれない。結局はその人の趣味嗜好に左右される。

 

――さて、それではこのゲームの欠点はなんなのだろうか?

 

序盤から理不尽な強さのボス。逆に弱すぎるラスボスと裏ボス。集めた伝説の装備よりも村に売ってる武器防具の方が格段に強い。仲間NPCの行動が邪魔。ストーリーが進むごとにヒロインが誘拐されてストレスが溜まる。そもそもメタ○スライム的な存在が無い。なのにレベルは全然上がらない。ストーリーが支離滅裂。

 

 

 

 

つまり――

 

「クソゲーじゃねぇか!!」

 

遥人は手に持ったゲーム機をベッドに叩きつけた。

 

「なんだこのクソゲー!序盤で超滅茶苦茶高難易度だと思わせといて後半からはクッッソ簡単じゃねーか!!製作者は何考えてるんだ!?」

 

最初のボスが高威力な全体攻撃を連発してくる。だからレベルを上げて挑んだら、レベルを上げた仲間のNPCが味方ごと巻き込む自爆技をする始末。ここで一度ゲーム機を投げかかったが、何とか抑えた。むしろ難しいゲームだから仕方がないと自分に言い聞かせた。最終的には味方が自爆をしないようにと祈りながら、運に任せてクリアした。

 

次の問題はヒロインという立場にいるクソ女だ。

 

新しい町や村に着くたびに攫われたり、行方不明になったりする。起承転結の『起』とも言える問題を起こすのも、決まってこのクソ女だった。だが、これもまだ我慢できた。某桃姫だって同じようなものだし。腹立たしいのが、その複数回にわたる誘拐又は行方不明イベントが無ければ十五分でクリアできるほどストーリーがペラペラだという点だ。勿論序盤のボスを運良く倒して、ラスボスと裏ボスも倒した場合の話だが。

 

「...しかも、なんで序盤の村で売ってる武器の方が伝説の武器よりも強いんだよ...!」

 

製作者はゲームバランスを考えれないのか?レベル自体も上がらな過ぎて完全に武器ゲー化してるのに、その最強武器が序盤に手に入るのだ。これによってラスボスと裏ボスが簡単お手軽に散っていった。

 

「主要キャラ達も支離滅裂なことばかり言いやがるし!何で『俺の両親はアイツに殺されたんだ!』って言った後に平然と次の町で『これが俺の父さんと母さんだぜ!』って紹介するんだよ!?生きてるじゃん!復讐の設定どこで忘れてきたんだよ!!」

 

矛盾しすぎて一種のイベントだと思ってた。実はそのキャラが操られていた、みたいな。だが違った。実際はただの設定ミスだった。

 

裏ボスを倒し、エンドロールが流れ始めた瞬間、遥人はゲーム機を投げた。男子高校生の持つ力をフル活用して、一切の妥協もなく投げたのだった。

 

「はぁ、燐子さんに騙された...」

 

実を言うと、このゲームは白金燐子から勧められたのだ。確かに買ったのは遥人自身なのだが、それは中古で安かったからと、燐子に強く勧められたからだった。

 

ゲーム好きな彼女が強く勧めるから、どんなに面白いゲームかと思ってプレイしてみたら――

 

「まだアンパ○マンを見てる方が有用な時間の使い方だったんじゃないか...?」

 

流石に高校生にもなって子供番組は観ないが、その方が有意義な時間だと断言出来る程度にはクソゲーだった。時間を無駄にし、脳の容量も無駄にし、期待も無駄になった。

 

しかも、こんなクソゲーの感想を燐子さんから求められてるのだ。相手がモカや沙綾だったら建前無しの本音で話せるが、白金燐子さんは他校の先輩だ。つまりは何でも無遠慮に話せるような仲とは言い難いのだ。

 

「...今日の昼頃だったよな。燐子さんから感想を聞かせてくれって言われてるの。確か家に来るって言ってたし...」

 

現時刻が既に昼なので、燐子がいつ来てもおかしくは無いのだ。速急にクソゲーの褒めるべき点を探さなければいけない。

 

正直に言えば、遥人はこのゲームの褒めるべき点が分からない。まだ素人が作ったバカゲーの方が絶賛できる。このゲームはシンプルにクソでゴミなのだ。ゲームバランスを崩壊させて、キャラの設定も矛盾していて、ストーリーも同じことの繰り返しでペラペラだ。

 

製作者が面白いと思って入れているパロネタもクソゲーの中においては寒いだけだ。むしろストレスが溜まったくらいだ。

 

「...せめて言うならば...バグが少ないことか?」

 

思い返してみれば、クソゲーの代名詞とも言えるバグが見当たらなかった。何十時間に渡ってやり込めば一つや二つくらいバグが見つかることもあるだろうが、クソゲーだから一度プレイしたら二度とやりたくはない。つまり、通常プレイで見つからないバグは無いも同然なのだ。

 

ちなみに、ネットで評価を調べたら『今年のクソゲーNo.1』、『ストレス量産機』、『製作者は間違いなくキチガイ』と言われる始末だった。評価が5段階中で1なのは初めて見た。

 

――ピンポーン

 

玄関からチャイム音が聞こえる。

 

燐子さんが到着したのだろう。玄関に移動してからドアを開けた。

 

「燐子さん、いらっしゃい」

 

「お、お邪魔...します...」

 

燐子さんがゆっくりと玄関を通った。動きが鈍いのはマイペースだからではなく、身体能力が低いからだろう。

 

「あ、俺の部屋でも大丈夫ですか?」

 

「うん、大丈夫だよ...?」

 

「なら良かったです。あ、先に向かっててもいいですよ?俺はお菓子とジュースを持ってから向かうので」

 

「う、うん。...わかった」

 

今でこそタメ口で話してくれるが、出会った当初は完全に敬語で話されていた。異性だから警戒されていた、ということもあるだろうけど、彼女は同じバンドメンバーにもあこ以外には敬語で話している。タメ口になったということは、多少なりとも信用されている証なのだろうか?

 

適当なスナック菓子とオレンジジュースを持ち、遥人は部屋に向かった。

 

「お待たせしました」

 

「...ううん、そんなに...待ってないよ...?」

 

「そうですか?ああ、そういえば。燐子さんに勧められたゲームなんですけど...」

 

「あ、どうだった...?」

 

「...なんて言うか、バグが少ないゲームでしたね」

 

それ以外に言うことがない。ゲームに対する罵倒や不満ならば溢れるように出るのだが、その逆は全然全く思い付かない。

 

「...最初のボス、倒せた...?」

 

「あー...まあ、一応」

 

もう思い出したくない程の苦行だった。異常なまでに強いからレベルを上げたら、味方の自爆攻撃の範囲と威力も上がるから脳死でレベル上げも出来ない。それなのにボスのHPは最初のボスだとは思えないくらい多い。味方は完全にAI行動なので、自爆攻撃をしないように願い続ける運ゲーだった。その為、倒すのに軽く五時間はかかった。

 

「ハルトくん、凄いね...!最初の...ボス、倒せなくて...辞める人、結構多いんだよ...?最初の壁で、一番...高い...高すぎる壁だから...」

 

「ですよねー。前半はボスの高威力範囲攻撃が連発されて負けるし、後半は味方が全員巻き込む系の自爆攻撃を覚えるから、それが発動されないように願うしかありませんからね」

 

「うん、そうだね...攻略法はね...レベル上げをする前に、自爆攻撃を覚える味方を...死なせてから、それ以外のキャラの...レベル上げをすればいいんだよ...?初見だと、全然思い付かないよね...?」

 

「そんな方法が...!俺の五時間は無駄だった...」

 

クソゲーすぎて攻略本は存在しないし、ネットにも攻略法は載っていない。つまり、彼女は自分でこの方法を思い付いたことになる。

 

全方面に才能を持つ遥人でも、ゲームでは燐子に敵わない。そう思い知らされた気分だ。

 

「正直...クソゲー...だったでしょう...?」

 

「い、いえ。そんなことは...」

 

「私は、これまでの...ゲームの中で一番の、クソゲーだったと思ってる...」

 

「じゃあなんで勧めたんですか!?」

 

わざわざ気を使っていたのが馬鹿らしくなる。クソゲーだとは三日三晩連呼し続けれる程思っているのだが、勧めた本人が確かに『クソゲー』と呼称した。

 

「このゲームね...やってる人、極端に少ないの」

 

「そりゃあ、俺だってこんなクソゲーだと知っていたらプレイしませんよ!」

 

「...だから、感想を共感できる人も...周りには居ないから...」

 

「...えーと、つまり?燐子さんは俺とクソゲーの話がしたくて、わざわざ勧めたんですか?」

 

燐子はこくりと頷いた。何となく気持ちは分かるが、それならそうと最初から言っていれば――

 

「それに...私、最初に言ったよ?『面白いかは分からない』って...」

 

「いや、確かに言ってましたけど...」

 

一種の謙遜だと思っていた。お土産を渡す時に『つまらないものですけど』と言うのと同じで。実際には、謙遜ではなく本音だってらしいが。

 

別に相手が嘘をついたワケではなく、結局は自分の勘違いだった。そうと知ると、少しだけ恥ずかしくなった。

 

「クリアしても、達成感よりもストレスが大きいんですけど...燐子さん、よくクリア出来ましたね」

 

「...最初のボスさえ倒せば...後は簡単だったから...」

 

「まあ、ですよね。三つ目の村で買う装備は伝説の装備よりも格段に強いし、防具で味方の自爆攻撃に対する耐性も上がる。一気に難しい系のクソゲーから超簡単系のクソゲーになりましたよね?」

 

「そうなんですよ...!初見で超高難易度のゲームだと持ったけれども、レベルも装備も中盤に差し掛かる前に揃うし、最初以外のボスは通常攻撃の連続だけで倒れる...少しだけ...好感を持てたキャラは、無駄に危険に突っ込むヒロインを庇って死ぬし...バグが少ないのは良いことなんですけど...逆に言えば、バグが無いのに最初から最後までクソゲーなんです...!私、自信を持って言えます...!これは、紛うことなき "クソゲー" なんです...!!」

 

(...饒舌だなぁ)

 

普段のオドオドとした態度と話し方は何処に忘れてきたのだろうか?彼女がネットで話す時の高テンションを思い出せるような話し方だった。

 

「...ちなみに、このクソゲーはあこに勧めないんですか?」

 

「うん...あこちゃん、こういうの苦手だから...」

 

宇田川あこは基本的に、クソゲーやバカゲー等はプレイしない。 "カッコいい" を追求する性格が趣味嗜好にも影響しているのか、良くも悪くもそれなりの評価を受けたゲームしかプレイしないのだ。燐子はゲーム全般をプレイするのだが、あこは前記の通り。ちなみに、遥人は勧められたゲームしかやらない。

 

 

「クソゲーって...定期的に、やりたくなるの...」

 

遥人には理解し難い価値観だった。

 

 

――その日以降、燐子は定期的にクソゲーを紹介するようになった。そして、遥人はその全てをクリアしてプロクソゲーハンターになったとか、なってないとか...

 

 





ネタが...思い付かない...

ということで、これやって欲しいっていう話があれば感想とかでお願いします!割と切実に...!!
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