パンを貪りしカップル   作:ああああ

6 / 35

評価だぁ...!(歓喜)

『so13011111』さん、『aurora夜明け』さん、『すき焼き風おにぎり』さん

ありがとうございました!!


つまり、『働く=パン』だった

 

少年は考える。

 

――楽して生きたい。

 

それなりに働いて、愛する人と結婚して、好きな時にパンを貪れる人生を謳歌したい。その暮らしを手に入れる為ならば多少は苦労と努力を重ねても構わないとすら考えている。

 

だが、働かないニートやパラサイト上等なヒモには成りたくない。そこそこ働き、その達成感をスパイスにパンを食べたいのだ。基本的怠惰主義者の思考には似合わないが、人生にはそれなりの労働等があるからこそその人の人生が輝いているのだと思う。こんな世の中で働かないのは楽だが、軈ては劣等感を感じてしまうだろう。『働かない自分は他人よりも劣ってるのでは?』と何時しか考えてしまう。

 

だからこそ狩凪遥斗は――

 

「専業主夫がいい」

 

「いやいや、専業主婦はあたしがやるよ?だからハーくんは汗水流して働いてモカちゃんを養って欲しいんだよね〜。ほら、夫の帰りを待つ妻って健気でょ〜?」

 

「モカ、『男は働き女は家事』なんて時代は終わったんだよ。俺の予想が正しければ、この先は『女が働き男は家事』って時代が訪れるはず。勿論根拠もなく言っているわけではない。昔は『男は働き女は家事』だったけど、今は『両働き』の家庭が増えてきた。つまり、女性の労働者が増えてきているんだよ。このまま進めば俺が予想した『女が働き男は家事』ってなる可能性が極めて高いとは決して言えないけど俺はそう思いたい!狩凪遥斗に優しい世界になると!!」

 

この愚者、愛する人に働かせようとしている。その愛する人本人も遥斗だけを働かせようとしているので何方も同価値の思考だが。どうせ最終的には遥斗が負ける。そんな未来、遥斗の頭の中では完全に予想済みだ。だからこそ、怠惰主義者を働かせる残酷な未来に抗う。

 

「ハーくん、考え方を変えようよ。ハーくんがするのは労働じゃ無くて、パンを買うための努力だと。考え方一つで『仕事』に対する意気込みなんていくらでも変わるんだよね〜」

 

「パンを...買う努力......」

 

「うん、そうだよ。ハーくんはお金の為に働くんじゃない。全ての労働はパンの為にあるんだよ。ああ、きっと汗水流して働いてから食べるパンは格別なんだろーなー。仕事前に、仕事の合間に、仕事の帰り道にパンを――つまり、『働く=パン』なんだよ!!」

 

「仕事が...パン...!」

 

モカは恋人を洗脳する。言葉巧みに騙し、会話の内容に彼の好きなパンを織り交ぜながら話すだけ。それだけで狩凪遥斗は騙せるのだ。彼と付き合ってから約一年、その成果がこの話術だ。第三者から見たら実に無駄な一年だったと思うだろう。約一年共に過ごして得たのが彼氏の洗脳方法だなんて、残念にも程がある。

 

「さて、ハーくん。それでも働くのは嫌なのかな?」

 

「オレ、ハタラク。パンヲカウタメニ、ハタラク...!!」

 

「わー、本当に?」

 

白々しいにもほどがある。モカは恰も『自分は何もしてないけど遥斗がいきなり働くと言い出した』と言いたげな反応をする。

 

 

――さて、将来の妻を働かせようとする少年と、将来の夫を洗脳して働かせる少女。君はどっちが好きかな?何方も総じて変人、又は愚者と称せるだろう。

 

 

この後、洗脳は数時間後に解けた。何故か記憶は残ったままだったとか。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

遥斗は癒しの場所、やまぶきベーカリーに逃げ込む。原因は先の洗脳事件だ。

 

「沙綾ー!モカに洗脳されたーー!!」

 

「えっ...?洗脳?」

 

「ああ、純粋無垢で人助けとボランティアが趣味である優しい青少年の俺をモカが洗脳したんだ!!」

 

「...そんな人何処に居るの?あ、もしかして店の前に待たせてる?大丈夫だよ、今は一応仕事中だけどお客さんも殆ど来てないし、入ってもらっても構わないよ?私でも相談になら乗れるから」

 

「貴女の目の前に居るんですけど!?」

 

沙綾は店の前に居るであろう純粋無垢で人助けとボランティアが趣味である優しい青少年を待つ。この少女、本気で遥斗のことでは無いと思っている。この面倒くさがり屋が人助けとボランティアなんてやる訳が無い。寧ろ、普段から人に助けられる側の人間だ。

 

「......えっ、遥斗のことなの?あははっ、ナイスジョーク♪今の冗談は面白かったよ!」

 

「あ...はい。お気に召したのであれは幸いです..,」

 

半分は冗談として言ったのだが、笑いながら全否定され、挙句の果てには別人のことだと勘違いされた。そして遥斗は地味に傷ついた。だが、決して表情と態度には出さない。傷ついた心の底に眠るプライドを守るために。

 

「それで、モカに洗脳させられたってのは?また二人で変な遊びでも始めたの?パンの宗教づくり、楽するためのセグウェイモドキの作成って続いて次は洗脳ごっこ?」

 

「いや、今回は本気だった。モカは本気で洗脳しにきたんだ...!青葉モカ...なんて恐ろしい奴だ!」

 

「その恐ろしい奴を恋人にしたのは遥斗なんだけどね。...と言っても洗脳か...どんな洗脳されたの?やっぱり定番の『アナタは今から○○になります』的な催眠術?ほら、テレビでよくやってるやつだよ」

 

「そんなチンケなものじゃない!ヤツは...」

 

「モカは?」

 

「洗脳して働かせようとしたんだ!!俺はただ、専業主夫として生きたいと言っただけなのに...!『男が働き女は家事』なんて時代は終わったのに...!!」

 

呆れる。勿論この感情は山吹沙綾のものだ。この男は働かずに家で家事をして妻を待つつもりなのか?洗脳はやり過ぎだとしても、モカの気持ちは理解出来てしまう。――と思ったが、どうせ彼女も遥斗と同じ思考なのだと思い直し、やはりくだらないとしか感じなかった。

 

怒る遥斗、呆れる沙綾。そんな二人とは関係なく店内にベルの音が鳴り響く。つまり、お客様来店の知らせだ。

 

「さーやー!パンちょーだい!!」

 

「あ、香澄。店内で大声は出さないでね?」

 

「あー!遥斗くんも居る!!」

 

「香澄、沙綾がお怒りだけど?大声出すなって言われた瞬間に大声出すからだよ。沙綾が怒ればその猫耳モドキもがれるよ?あ、もう怒ってたね。まあ、流石の沙綾でもその猫耳モドキに別れを言う時間くらいはくれるんじゃないか?」

 

「ご、ごめんなさい!どうか...どうか髪だけは...!」

 

「そこまで怒ってないからね!?香澄も遥斗の虚言なんて信じないの!!」

 

遥斗は親しみを込めて優しい冗談を言う。香澄はなんでも真に受けるから揶揄いがいがある。震えながら沙綾に謝り、猫耳モドキに最期の別れを伝える香澄を見ながら笑いを堪える。性格の悪さが滲み出ている現状だ。

 

「香澄、冗談だよ?流石に猫耳モドキはもがれないって。沙綾は優しいから小指詰めるだけで許してくれるよ?」

 

「ゆ、指が...!?」

 

「人をヤ○ザに見たいに言わないで!静かにさえしてくれれば許すから!!」

 

「...て言いつつ、隙を見せた瞬間...!」

 

「何もしないから!香澄も逃げる準備を進めないで!!」

 

香澄は会話の隙を見て逃げる準備をする。自身の髪か、それとも小指か...両方ともこれまで人生を共にしてきた相棒だ。失うくらいなら一か八かで逃走を試みる。そんな少女の決意と覚悟だった。当然ながら無駄に終わるけど。

 

「もー!遥斗くん毎回揶揄ってくる!!」

 

「揶揄れる方が悪い。普通に考えれば沙綾が小指詰めさせるわけないじゃん。香澄は自分からアホさを露見させてるだけだよ?」

 

「遥斗の戯言は置いといて、普通に信じないでよ」

 

「そ、それよりもパン欲しいなー!あ、今日はクリームパンにしよう!沙綾、クリームパン二つちょうだい!!」

 

露骨な話題転換。このままでは自分が不利だと察したのだろう。それに対して遥斗は『滑稽だ』と笑い、沙綾は『またか...』と憐れむ。香澄は基本的にはアホなので、遥斗との言い合いには確実に勝てない。ならば、負ける前に撤収するのがセオリー。その結果が話題転換だったのだ。

 

「それよりも...香澄、聞いてくれよ」

 

「ふん!私、怒ってるもん!遥斗くんの話なんて聞いてあげないんだからね!!」

 

「モカに洗脳されたんだ」

 

「せ、洗脳!?何それ!!」

 

「香澄...話なんて聞かないんじゃないの?三日坊主どころか三秒も持たなかった」

 

「だって沙綾...洗脳ってとっても気になるワードじゃん!私の好奇心が絶え間なく訴えかけてくるよ!!」

 

どうやらこのアホ少女は洗脳を勘違いしているらしい。モカが実行したのはテレビのバラエティー番組でやっている催眠術的な洗脳では無く、正真正銘の害にしかならない洗脳だ。

 

――香澄に全部伝えた。

 

「...それってさ、遥斗くんが単純だからじゃないの?普通の人はパンを話に織り交ぜたくらいじゃ洗脳されないと思うけど...」

 

「あ、確かに。パンで洗脳されるのは遥斗くらいだよね。はぁ、真面目に考えた私が馬鹿だったよ」

 

 

結局、『遥斗は単純だ』という結果に落ち着いたのだった。

 

「ぐぬぬ...慰められつつ、モカの極悪非道な行いが戒められると思ってたのに...!」

 

「「どっちもどっちだよね?」」

 

働きたくない少年と働かせたい少女。一体どちらを戒めるべきなのか、その答えは出なかった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆

 

――とある星好き少女とツンデレ金髪ツインテの少女の会話。

 

「――有咲、つまりは『働く=パン』なんだよ!」

 

「...とうとう狂ったか?どんな思考回路してたら『働く=パン』になるんだよ」

 

「えー!遥斗くんはこれでモカちゃんに洗脳されたって言ってたよ?有咲にも通じると思ったのに」

 

「そんなので洗脳させるのは遥斗くらいだろ!てか、あのパンを狂いと私を一概にするな!!」

 

 

香澄の洗脳挑戦は失敗に終わったのだった。

 

 





寝る前に時間の流れをゆっくりにして沢山寝たい。寝る前の定番の悩みだよ。

何を読みたいですか?

  • パン好きカップルのイチャイチャ
  • 混沌と書いてカオスと読む系の夢落ち
  • 幼き日の記憶(遥斗)
  • 意味もなく思い付いただけのバトル展開
  • それとも――ぜ・ん・ぶ♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。