パンを貪りしカップル 作:ああああ
『あくてん』さん、『ジオンショッカー』さん、『steelwool』さん、『タクスケ』さん、『basasi』さん、『SL20』さん
評価ありがとうございます♪
突然だが、狩凪遥斗は家事が得意だ。
怠惰主義者代表の遥斗の性格では家事どころか料理すら出来なそうだが、意外と得意なのだ。理由は簡単、一人暮らしだからだ。彼が不器用だったら家事や料理になんて手を出しては居ないだろうが、幸運なことに彼は才能があった。料理、掃除、裁縫――全方面に才能を発揮した。
だから、敢えて言おう。
――彼は出来ないのではなく、やらないのだ。勿論ニートのいい訳では無い。だが、どれだけ多才でも面倒くさがり屋な性格は不変だ。やればできるのにやろうとしない。きっと神様は才能を与える人物を間違えたのだろう。遥斗は世界で最も才能を無駄にしている人物だと自他ともに感じていた。
「まあ、才能はいくらあっても困らないですからね。日菜さんもそう思いませんか?」
「思う思うー!勉強とかも楽だからね〜!でも、ちょっとだけ物足りないって感じることはあるよ?」
「贅沢な悩みですね。俺はそもそもやれることを増やそうとは思ってませんし、その悩みは理解できませんけど」
「ハルっちのそんな所がるんっ♪て来るんだよね〜。あたしと同じタイプなのに方向性は全然違うし。話してて飽きないよ!」
遥斗も日菜も同類であり、世間一般では天才と称される程までに才能に恵まれている。日菜はその才能を満遍なく発揮しているが、遥斗はそもそも発揮するつもりがない。理由は単純で、面倒臭いから。可能不可能では無い。実行するかしないかだ。因みに、遥斗は娯楽系には何故か才能を発揮している。
「あーあ、モカちゃんが居なかったらあたしが恋人に立候補してたのになぁ。ハルっちって面白いし、女装させたら似合いそうじゃん!!」
「おいコラ、最後のはおかしいでしょう。俺は女装だけは絶対にしませんからね!怠惰主義者な俺にも男としてのプライドがあるんですから!!」
「ふふふっ、何時までそう言ってられるのかな?」
――十数分後
「おぉ〜!これは完全に女子だよ!ゆるふわ系の守ってあげたくなる女の子なんだよ!!るんってきたァァ!!」
「しくしく...日菜さんに無理やり...もうお婿に行けない......」
涙を流し悲しむ。そこに居たのは銀髪ロングでスレンダーな可愛らしい少女...に見える遥斗だった。下は言うまでもなくスカートだ。彼の全身からは『ゆるふわ系』が醸し出されている。雰囲気にプラスして銀髪のカツラを被っているので、モカと並んだら姉妹に見えていただろう。これには流石の日菜もビックリだ。
「ハルっち!やっぱりあたしのお嫁さんになりなよ!!一生養うし、誰よりも大切にするから!!」
「お婿さんですよね!?性別まで勝手に変えないで!!」
「ううん、お嫁さんだよ?だって...こんなに可愛い人が男の子のはずないじゃん!女装がこんなに似合うなんて...これはもう女の子だよ!!いいねいいね!!二人でウエディングドレス着ようよ!!」
「テンション高!?」
日菜は超絶ハイテンションだった。普段からテンションが高いイメージのある彼女だが、今は通常の数倍はテンションが高いのだ。遥斗は滅茶苦茶引いた。それはもう、クラスのクール系イケメンが二次元美少女を眺めてブヒブヒ言っている場面に出くわしたと同等に引いていた。
「あ、あの...日菜さん?俺もう帰りまs」
「これはもうお持ち帰りするしかないね!!さあ、あたし達のお家に帰ろうよ!部屋は一緒でも良いよね?本当ならあたしがハルっちを抱き枕にしたいけど...残念ながらハルっちの方が大きいし、ハルっちがあたしを抱き枕にしても良いよ!いや、寧ろ抱き枕にして!!でも、ノーメイクでこんなに可愛いんだよね?だったらさ、あたしがメイクしたらもっともっと可愛くなるよ!きっとあたしの全才能はハルっちにお化粧するためにあったんだよ!お肌は元々綺麗でニキビどころか肌荒れすらないし、素顔も中性的で整ってる!これは女装するために生まれたと言っても過言ではないよ!!ウチには女の子用の服も沢山あるし、きっとハルっちが気に入るのがあるよ! 」
「ヒィッ!?」
その感情に名前を付けるとしたら、それは『恐怖』だ。自身が女子にお持ち帰りされるという魅惑的な状況なのに、震えが止まらない。遥斗の第六感が叫ぶのだ、『今すぐ逃げろ』と。連れ帰られたら最後、一生を日菜の着せ替え人形として暮らす未来が見えてしまった。
「か、帰ります!!」
「あっ!待ってよ〜!!」
その後、男女の体力の違いをフルで活用し、何とか逃げ帰ることが出来た。尚、日菜はまだまだ諦めてない模様。
◆◆◆◆◆◆◆
青葉モカは遥斗の家に居た。家主は不在だが、合鍵を貰って自由に使うことも許可されている。その為、遥斗が出掛けていてもモカが遥斗の部屋に居ることは珍しくは無かった。
バタンっ!
玄関のドアを強く閉める音だ。人間がドアを強く閉めるのは意図的にか、又は感情に任せた時だけ。遥斗が帰宅したとすると、前者はまず有り得ない。自身と同じくローペースで生きている男だし、無駄に力なんて使おうとすらしないはず。つまり、後者だ。
「ハーくん、おかえ......どなた?」
玄関に座り込んで息を切らしているのは少年ではなく少女だった。長い銀髪を持つその少女は、自分と似た何かを感じさせた。
「あ...モカ。居たんだな...」
「っ!?...その声、ハーくん?」
「......こんなに格好だけど、狩凪遥斗だよ。とある天才型の変態に女装させられたんだ...恐ろしいヤツだった...まさか拉致監禁までしようとするとは...!」
「は、ハーくん?震えてるけど...何かあったの?まあ、何も無く恋人が女装して帰宅してたら別の意味で心配するけど。兎も角、話なら聞くよ?」
目の前には女装して震える恋人。心做しか普段よりも全体的に小さく感じれる。モカはその姿に『萌え』なるものを感じたとか。だが口には出さない。それが青葉モカが彼氏に向ける優しさでもあった。
「モカ...聞いてくれ――」
その口から語られたのは体が竦むような恐ろしい話――ではなく、他校の先輩から女装を強要されお持ち帰りされそうになったというお話。後半だけなら同年代の男子が狂喜乱舞しそうだが、彼の語り方からして意味は全く違うのだろう。
「うぅ...モカ、助けて」
「おーよしよし、怖かったね〜」
「モカぁ...モカぁぁぁ!!」
「大丈夫大丈夫、ハーくんの彼女兼美少女のモカちゃんがちゃんと守ってあげるからね〜」
遥斗は完全に泣き出した。先程までは彼女の前でみっともない姿は見せまいと我慢してたようだが、限界を迎えたのだろう。一度溢れた感情は簡単には止まらない。かっこ悪いと分かっていてもモカに抱きつき、少しでも安心しようとする。
(なんか...きっと他の人が見たら妹に泣いて抱きつく姉に見えるんだろうな〜。髪色とか同じだし、何よりもハーくんが女の子にしか見えないからね)
この少女、心の中では普通に失礼なことを思ってた。可哀想だとは思うが、可愛らしい外見なのは変わらない。それに、心の中ならば何を思おうと自由なのだ。女装彼氏を可愛いと感じてもバチは当たらないだろう。
「ハーくん、日菜先輩に電話してくるね」
「う、売るのか!?」
「そんな事しないよ。少しは恋人を信用してよね〜」
「...分かった。信じる」
珍しく素直な反応をする。先程まで泣いていたので、幼児退行とまではいかないが、多少は一時的にでも精神年齢が下がっているのだろう。
――モカは電話を掛ける。
『もしもしー、モカちゃん?珍しいね』
「家にハーくん...遥斗くんが女装して帰ってきたので日菜先輩には一言言いたくて」
『あれ、怒ってる?』
「いえいえ、逆ですよ〜。感謝を伝えるために電話したんですから。あんな可愛いハーくんなんて見たことないですからね〜。ありがとうございます」
『でしょでしょ!!最初は黒髪のカツラにしようと思ったんだけどね、ハルっちの雰囲気ってモカちゃんに似てるじゃん!だから思い切ってコスプレイヤーの如く銀髪にしてみたんだけど、大当たりだったよ!!るんってくるね♪』
「ナイスです。あ、定期的にお願いしますね〜。慰めるのはあたしがやっておくので」
『ふふふっ、モカちゃん。お主も悪よのう〜』
「いえいえ、お代官様程ではありませんよ〜」
本人不在で定期的に強制女装が決まった瞬間だった。可哀想だとは思うが、この可愛さは一度で終わらせて良いものでは無い。それはモカと日菜の暗黙の了解だった。
会話が終わったモカは遥斗の元へと戻る。
「ど、どうだった?」
「まあ、多分お持ち帰りはされないと思うよ......多分」
「最初と最後両方に『多分』って着いているんですけど?多分か一つでも十分不安になるのに、二つも付けるなよ!怖くてトイレに行けなくなるぞ!!」
「後半がホラー映画を見た小学生みたいな反応だよ?そもそも、確定できないことには『多分』を付けるしかないよね。『話と違う!』なんて言われたくないしね〜」
「ぐぬぬ...正論をぶつけてくるとは...!」
この後、遥斗は暫くの間は逃げやすいように運動靴を履いて外出するようになった。日菜も追いかけやすいように運動靴を履いているらしいが。
◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆
――とある姉妹の会話。
「おねーちゃん!ハルっちの女装がとっても可愛いの!!ほらほら、写真だよ!!」
「日菜、少しは静かにしてちょうだい。...あ、可愛い。ほ、本当に遥斗さんなんですか?...まあ、確かに面影は感じますけど」
「お持ち帰りしようとしたら逃げられたよ。不思議だね〜!でも、そんなところもるんってするよ♪」
「また遥斗さんに迷惑かけたの?...はぁ、また謝らないといけないわ...」
地味に写真を撮られてる遥斗だった。
ねえねえ、『僕らの記念日』って曲をYouTubeで見たことありますか?べ、別に被害者を増やそうだなんて考えてないよ?
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