パンを貪りしカップル   作:ああああ

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羽沢珈琲店の新メニュー?

 

「こんにちはー」

 

遥斗は友人の家にお邪魔する時のような挨拶をする。だが、場所は友人の家ではなく喫茶店。正式名称は『羽沢珈琲店』だ。モカの幼馴染、羽沢つぐみの親が経営する店なのだ。

 

「あ、遥斗君。いらっしゃいませ!」

 

「いらっしゃったよ、つぐみ。ひまりから羽沢珈琲店で新メニューのスイーツが増えたって聞いたんだけど」

 

「増えたって言うか、お試し中。......折角なんだけど、私はあまりオススメしないよ?数は三つなんだけど...まあ、メニューを見れば分かるよ。いや、メニューを見ても分からないのが問題点なのかな...?」

 

「?...まあ、要するにメニューを見ろってことか」

 

新メニューが出たという知らせを受け、怠惰主義者の遥斗が珍しく自分から行動したのだが...つぐみの反応が変だ。この店で提供するスイーツなのだから不味くは無いだろう。なので、彼女は味では無い別の部分を問題児しているのだろうと遥斗は推測する。思考を巡らせても答えは出ないので、取り敢えずカウンター席に座り、メニューに目を通す。

 

《新メニュー》

・千夜月

・煌く三宝珠

・雪原の赤宝石

 

以上三つが羽沢珈琲店にお試しで追加されたスイーツだ。つぐみはメニュー名で呆れた反応をとる。カッコ良さとは反面、分かりずらい名称だと一般では言われる部類のものだ。それに対して遥斗は――

 

「...なる程ね。上から順に栗羊羹と三色団子、苺大福だな」

 

「っ!?な、なんで分かったの!?普通は意味不明だって思うところなのに!!」

 

「ふむ、天才少年の遥斗くんが説明してしんぜよう。最初の『千夜月』は羊羹の暗い色を夜に、中身に入っている栗は月に例えたんだな。次は『煌く三宝珠』だけど...まあ、これは簡単だな。宝珠は要するに宝の玉ってことだし、それが三つ。つまりは三色あるって考えれば良い。よって、三色の宝玉、三色団子ってことになる。最後の『雪原の赤宝石』は、雪原と表現しているので白に何か。赤宝石も色をそのまま考える。雪原 "の" ということは赤い何かは白の中にあるか、又は隠れている。その条件で考え付くのは苺大福だった」

 

「そ、それをこの一瞬で考えたの...?地頭のレベルが違い過ぎる...。私だったらその答えに辿り着くまでに数時間は要する自信があるよ...」

 

「いや、そんなに凄いことでもないよ。他にも解読できる人なんて幾らでもいるから」

 

遥斗が一から考えて答えを出したのは紛れもない事実なのだが、これは天才の日菜や現役厨二病のあこを影で支える燐子にも可能な芸当だった。恐らくだが、厨二病本人には解読不可能だろう。よって、遥斗は大して誇らないし自慢もしない。謙虚ではなく事実なのだから。

 

「それで、これって誰が考えたの?つぐみでは無いってのは分かるけどさ。つぐみならもっと無難な名称にするだろうし」

 

「メニュー名を考えたのは日菜先輩だよ?本人もちょっぴり巫山戯て言ったと思うんだけど...お父さんが気に入っちゃったの。これじゃあお客さんが分からないのにね」

 

「...また日菜さんか...何時も問題ばかり起こす。この前無理やり女装させたことなんか未だに悪夢として寝ている俺を苦しめるんだからな...!」

 

「だ、大丈夫だよ!ちゃんと可愛かったから!!」

 

「そんなの慰めになら...な......えっ?何でつぐみが知ってるんだ?いや、話題を出したのは俺だけどさ...ま、まさか!あの人...写真撮っていやがったな!!」

 

事態は遥斗の想像通りだ。日菜は女装遥斗の写真を色々な人に見せていた。それは遥斗の黒歴史をばら撒くも同義、古傷に塩をかけながら抉るような残酷で非道な行いだ。そして、遥斗は未だに知る由もない。あれだけ慰めてくれた恋人のモカも共犯者だという事実を。

 

「え、えーっと...大丈夫?」

 

「これが大丈夫に見てるならこころ並のバカだよ...こちとら人生最大の汚点が現在進行形で広まってるんだ。くっ...相手が彩さんや香澄だったら対処の仕様があるのに!日菜さんは無理ゲーだろ!!」

 

「..,似合ってるのに...勿体ないなぁ。あ、私の服貸してあげるから着てくれないかな?遥斗君って小柄だし、服のサイズも大丈夫だと思うよ?」

 

「つ、つぐみさん?普通は男子に自分の服着られるとか、嫌悪感すら湧くと思うんだけど?あと、人を小柄って言うな。モカ以上薫さん未満って表現して」

 

「う〜ん...遥斗君なら着られても大丈夫だよ?変なことには使わないだろうし」

 

少年は思う。変なことをしないのは大前提なのでは?と。これでも恋人を持つ身なのだ。友人である女子の服を――具体的には表現しないが、変なことに使うのは恋人と友人両方への裏切りになる。その常識は言葉にするまでもなく遥斗の心に存在した。

 

「そ、それよりも!注文してもいいか?今日は客として来てるんだし、何時までも雑談してる訳にもいかないだろ」

 

「遥斗君だったらお父さんも気にしないと思うけどなぁ。たまにひまりちゃんと一緒に新メニュー候補の試食してくれるし。二人の意見ってとっても役に立つんだよ?ひまりちゃんの言葉足らずな部分を遥斗君が補ってくれるし」

 

「それはひまりの語彙力が足りないからだよ。あ、『雪原の赤宝石』くださいな」

 

「はい、注文承りました。苺大ふ...『雪原の赤宝石』一つですね」

 

「...今、苺大福って普通に言いかけなかった?」

 

どうやらこの店ではお客様だけに厨二病じみた名称を読まるらしい。場合によっては中年男性に厨二言葉を強要する訳だ。この日、遥斗は初めてメニュー名を変更した方が良いと感じた。

 

 

 

メニュー名は兎も角、味は絶品の一言に尽きる。それがこの後の遥斗の感想だった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

『バーナム効果』という現象がある。

 

占いなど個人の性格を診断するかのような準備行動が伴うことで、誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述を自分、もしくは自分が属する特定の特徴をもつ集団だけに当てはまる性格だと捉えてしまう心理学の現象。

 

端的に言えば、誰にでも当てはまる占いを信じる。それを『バーナム効果』と呼ばれるのだ。

 

「ふむ...多分俺にもできるよな。よし、こころとかで試すかな。モカもやるか?」

 

「いえーす。こんなに面白そうなこと、放っておけないよね〜。特にひーちゃんなんか騙しやすそうだからね」

 

「いやいや、騙すんじゃないって。当たり前なことを恰も今現在調べました風に言い切るんだよ」

 

「...違いが分からないよ。まあ、最初はハーくんがお手本を見せてくれるんだよね?」

 

「モチのロンだよ。ターゲットは弦巻こころ、単純だし何でも信じそうじゃん」

 

二人の悪巧みは進む。最後にはパーナム効果を試したかったからと打ち明けるつもりだが、騙されている最中は楽しむつもりだ。自分達が悪いのでは無い、騙される方が悪いのだ。そんなクズ思考を元にパン好きカップルはターゲットを目指して歩き出す。

 

 

「あ、こころちゃん見っけ」

 

モカの呟きだった。指さす方向を見ると、これからパーナム効果の実験に使われる事を知る由もない弦巻こころが悠々と歩いていた。...何故か笑顔で。一人で居るのに笑顔なのは狂気的な何かを感じるが、そこについて触れないのは世界規模で暗黙の了解だった。

 

「やっほ〜、こころちゃん」

 

「うっす、こころ」

 

「あら、モカに遥斗じゃない!こんな所で奇遇ね!二人でお散歩中かしら?」

 

「まあ、そんなところだ。ところでこころ、占いに興味無いか?俺の占い、当たるって評判なんだよ」

 

「興味あるわ!占い...なんて面白そうな響きなのかしら!!」

 

さりげなく嘘をつく。実際は占いなんてやった事ないし、興味を持ったのも今回が初めてだ。勿論バカで単純と酷な評価を遥斗から受けているこころは信じる。人を疑うことを知らない哀れな少女は一切の遠慮もなく遥斗に選ばれたのだった。

 

「...こころ、君は飢えているね。食料についてではなく、もっと精神的なナニカに飢えている。飽くなき欲望と言い換えてもいい」

 

「っ...!ええ、その通りよ!確かにあたしは飢えているのかもしれないわ!そう、笑顔に!!世界をもっともっと笑顔にしたいの!!」

 

「ふふっ、これが占いだよ」

 

「ええ、本当に凄いわ!これなら世界中を笑顔にできるはずだわ!」

 

「......ハーくん、この流れはちょっと不味いかもだよ?こころちゃんが何かを思い付いた時って大体――」

 

「遥斗!各国を巡って世界中の人の悩みを解決するべきだわ!遥斗は謙虚だけれども、あたしが保証するわ!遥斗にはその能力が備わってるもの!あたし自身が身をもって知ったことだもの!!」

 

モカの勘は的中する。そもそも、弦巻こころを対象にしたのが間違いだったのだろう。良いことがあれば世界中にお裾分けするような少女なのだ。それでも、遥斗の占いを百発的中と勘違いして世界中に広めよとするのは流石の二人も予想外だった。花咲川の異次元と称させる由縁でもある。

 

「こ、こころ?ちょっと落ち着いて話そう」

 

「さあ、今すぐ出発よ!世界を笑顔にするのが楽しみだわ!!」

 

「ちょっ!話を聞け!!服を引っ張るな!!」

 

「......それを最後にあたしとハーくん――青葉モカと狩凪遥斗が会うことは二度と無かったのだった...」

 

「一生の別れみたいにナレーションするな!こころも止まれ!あーもう!美咲に電話しないと!こころを止められるのはアイツしかいない!!」

 

 

その後、遥斗は美咲に貸一つで助けてもらった。その貸しで後日、ハロハピのライブでミッシェルの妹役をやらされたのはまた別の話だ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆

 

――とある常識人と怠惰主義者の会話。

 

「ねえ、遥斗。ミッシェルに妹がいるって設定があるんだよね」

 

「へぇ...んで?なんで俺にその話題を振ったんだ?」

 

「......この前さ、こころから助けたよね?確か、貸一つってことになってたはずだけど」

 

「み、美咲...!お前まさか!!俺にミッシェルの妹役をやれって言うのか!?無理言うな!着ぐるみであんな動き出来るわけないだろ!?」

 

「大丈夫、あたしは出来てるから。男の遥斗に出来ないなんて道理は無いって」

 

「嫌だ...絶対に嫌だからな!」

 

 

その後、ハロハピのライブには稀にミッシェルの妹が出てるらしい。

 

 





ストーブと布団は世界を救う。異論は認めない所存であります。

何を読みたいですか?

  • パン好きカップルのイチャイチャ
  • 混沌と書いてカオスと読む系の夢落ち
  • 幼き日の記憶(遥斗)
  • 意味もなく思い付いただけのバトル展開
  • それとも――ぜ・ん・ぶ♡
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