ARIA The PIACERE 1 その輝かしい船出を祝して 作:neo venetiatti
「お疲れ様、灯里ちゃん」
「お疲れ様です、アリシアさん」
レストランでの久しぶりの再会に灯里はうれしくてたまらなかった。
マンホームからの賓客への歓迎行事やその後のレセプションがあったことで、ふたりで会う機会を作っていこうという約束もとびとびになっていた。
しかし、それも一段落したこともあり、あとはその一行を無事送り出すだけとなっていた。
「まだ終わったわけではないけど、ようやくこうやって灯里ちゃんとも食事ができるようになったわね」
アリシアのますます磨きのかかった美貌に、灯里は思わず見とれてしまっていた。
「ねえ、灯里ちゃん?」
「はひっ、そうですね。やっとお時間を作っていただけて恐縮です」
「あらあら。そんな他人行儀な言い方、止めにしない?」
アリシアはにっこりほほえんだ。
「灯里ちゃんも、もう立派なプリマ・ウンディーネよ。ひとりでARIAカンパニーを切り盛りしているわけだし、頼もしい後輩と食事ができてうれしいわ」
「そこまで言っていただけると、なんだか・・・」
「照れる?」
「はい」
「あらあら」
ふたりは食事が進むにつれて、以前のように話がはずんでいった。その様子は、まるで仲のいい姉妹のような光景だった。
「そういえば、先日の歓迎レセプションの時、大変だったようね」
「いえ、大変だなんてことは何もなかったんですよ。それどころか、とてもいいお話しを聞けてよかったくらいです」
灯里は、マンホームからやってきた婦人とのことをアリシアに話した。
「そんなことがあったの。不思議なご縁ねぇ」
「私その話を聞いたとき、すぐにアリシアさんのことが思い浮かんだんですよ。何か覚えてませんか?」
「そうねぇ。もしかしたら、あの時のことかしら」
「覚えてるんですか?」
灯里は大きく目を見開いた。
「多分なんだけど、少し陽が傾き始めたころだったかしら。その日の予定が終わって、あと片付けをしていたら、女の子がやって来て・・・」
アリシアは記憶をたどるように思い返してみた。
「そうね。確かに観光案内をしたと思うわ」
「やっぱりアリシアさんだったんですね」
灯里は納得したようにアリシアの顔をみつめた。
「その女の子の積極さに驚いた記憶がある。まるでそうするのが当たり前だって言いたげな感じだった」
アリシアはその時のことを思い出し、くすっと笑った。
「私がお客様の願いを承諾すると、ほっとしたように、ありがとうって言ったの。多分そのお客様の手前、断られたらどうしようって、内心不安だったんじゃないかしら」
「へぇ~、かわいい!」
ふたりは顔を見合わせて、にっこりほほえんだ。
「でもアリシアさん、スケジュールとしては大変だったんじゃないですか?」
「そうね。でもそんなとき、灯里ちゃんならどうする?」
「たぶん私も・・・」
「そうすると思う、でしょ?だってそのご婦人との出会いがそうだったわけじゃない?」
「確かに」
「奇しくも私たちは、同じご夫婦をおもてなしすることができた。しかも時を越えてね」
「アリシアさん、すごいです。こんなことって」
「そうね。私も灯里ちゃんの話を聞いて、ドキッとしたわ。こんなことってあるんだなって」
灯里は、まさにこのネオ・ヴェネチアで起きた奇跡に感動していた。
「でもこれは、やっぱりアリシアさんがきっかけだったんですよね。アリシアさんがそのお客様のご要望に応えていなければ起きなかった奇跡じゃないですか?」
「いえ、それは違うと思うわ」
アリシアの返答に灯里は戸惑った。
「わたしがキッカケではなく、ARIAカンパニーへそのお客様を連れてきた、あの女の子がいたからだと思うの」
アリシアは穏やかにほほえむとそう言った。
「どうしてその女の子がARIAカンパニーを選んだのかはわからないけど、そのお客様がお困りの姿に、女の子は助けたいと思ったんだと思う。それが本当のキッカケじゃないかしら」
アリシアのいう通りだと灯里は思った。
「だとすると、その女の子って誰だったんだろう・・・」