ARIA The PIACERE 1 その輝かしい船出を祝して   作:neo venetiatti

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第12話

灯里はパソコンに向かって困った表情をしていた。

「やっぱりおかしい」

久し振りに、デッキにテーブルと椅子を出して、少し出来た時間を海からの風に当たりながら過ごそうとしていた。

だが、長く続けているマンホームのアイちゃんとのメールの交信が、最近滞っていることが気になっていた。

これまでは、たまたまの不具合か、アイちゃんの方の都合なのかと考えていた。だが、こうも頻繁に起こると、他に問題が起こっているんじゃないかと、灯里は釈然としない思いにかられていた。

「アイちゃん、どうしてるかなぁ」

これまで当たり前のようにメールでお互いの近況報告をしてきただけに、それが少し途絶えただけで、心配と不安にかられていた。

電話が鳴った。

灯里はカウンターから中へ身を乗り出して、受話器を取った。

「はい、ARIAカンパニーです」

「もしもし灯里、元気?」

「藍華ちゃん」

藍華の元気ないつもの声が聞こえてきた。

「あのさぁ、ちょっと気になることを耳にしたんだけど。あんたんとこ、なんか異常は起きてない?」

「異常?」

「なんかね、電波障害っていうのが起きてるらしいの」

「はぁ・・・」

「ちょっと聞いてるの、灯里?」

「聞いてるよ、藍華ちゃん。その電波なんとかって、なに?」

「わたしも詳しくわかってるわけじゃないけど、要はテレビとかラジオとかの通信機器に問題を起こしてるらしいの」

灯里ははっとして目を見開いた。

「藍華ちゃん、それってもしかして、メールとかにも影響が出るの?」

「そうなんじゃない?」

「マンホームとの間でも?」

「そのマンホームとの間っていうのが問題らしいのよ」

「どういうこと?」

「なんかね、太陽との関係で、電磁波がどうのこうのっていう、大変なトラブルらしいのね。それで今日は朝から本店の方でもバタバタしてるらしいのよ」

「そうだったんだ・・・」

「やっぱりなんかあった?」

「実はマンホームのアイちゃんと、ここ最近メールができてなくて」

「あぁ、あのただ乗りの子ね」

「まだそんな感じなんだ・・・」

「うちの本店の方でも問題になってて、マンホームの仕事相手と大事な打ち合わせが出来なくて困ってるって」

電磁波の影響による問題は、アクア全体のトラブルになっているようだった。そして、その主な問題はマンホームとの間に関係することに集中していた。

「でも気がかりな噂を耳にしたのよねぇ」

「何かあったの?」

「まだはっきりしているわけじゃないんだけど、マンホームの賓客一行のスケジュールにも影響が出そうなのよ」

「どういうこと?」

「このままだと、しばらくマンホームに帰れないかもっていうこと」

「えぇ~、それは大変なことになったねぇ~」

「なったねぇ~って、あんたのとこは大丈夫なの?なにか問題はないの?」

「う~ん、今のところないと思う」

「相変わらずよねぇ、灯里って」

「そうだねぇ・・・あっ、そういえば」

「何?」

「午後からのお客様がお越しにならなかったので、ちょっと時間ができたから、デッキにテーブルと椅子を出して久し振りに・・・」

「灯里!あんたそれ、立派に起こってるじゃない!」

「キャンセルだと思うんだけど・・・」

「それって、マンホームからのお客様じゃないの?」

「え~と、そうだね。あっ、そういうことか・・・」

「あんたねぇ」

灯里は、ばつの悪そうな苦笑いを浮かべた。

「とにかく、今日はうちの支店の方もこれに振り回されそうなのよね。灯里も気をつけるのよ」

藍華はそう言って一旦電話を切ろうとしたが、そのまま話をつづけた。

「そういえば、あのパーティーの件なんだけど」

「藍華ちゃんの支店の?」

「そうそう。ちょっとアイデアを思い付いたんだよね」

「えぇ~、どんなアイデアなの?」

「こないだ、後輩ちゃんが遊覧観光はどうだろうって話してたじゃない?」

「うん、してた」

「でもそれだとプリマの数を揃えるのが大変ということで、却下になったでしょ?」

「そうだね」

「それならシングルに絞ったら、ある程度は確保できるんじゃないかと思ったの」

「でも藍華ちゃん、それだとお客様を乗せて遊覧観光はできないんじゃないの?」

「もちろんそれはわかってる。だから遊覧観光はやらないの」

「どういうこと?」

「カンナレージョ支店は、いわばこれからのお店でしょ?だから、これからプリマを目指すシングルがおもてなしをすることが、この支店には合ってるんじゃないかって思ったんだけど・・・」

「藍華ちゃん」

「ダメ、かなぁ?」

「ううん、とっても素敵なアイデアだと思う」

「ありがとう。灯里にそう言ってもらえるとうれしいわ」

「それはまるで、プリマを目指そうと頑張っているシングルたちと、これから新たな門出を迎えたカンナレージョ支店に、このネオ・ヴェネチアがその新たな船出をお祝いしてるかのようだね」

「もう、恥ずかしいセリフ、禁止!」

「ええ~」

「ちょっと長かったし・・・」

「それでさぁ藍華ちゃん」

「何?まだ続きがあるの?」

「そうじゃなくて。この前話したマンホームから来られたご婦人の話」

「灯里が教会まで連れていった人でしょ?」

「そう。その婦人からカンナレージョ支店のイベントが決まったら、教えてほしいって言われてたの。何か協力したいって」

「言ってたわね。ありがたい話ではあるけれど、協力っていっても・・・」

「とにかく伝えておく?」

「そうね。今のところ、ご招待することぐらいかなぁ。できることと言ったら」

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