ARIA The PIACERE 1 その輝かしい船出を祝して   作:neo venetiatti

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第17話

ゴンドラ協会からの帰り道、藍華はぼんやりと運河の様子をながめていた。

たくさんの観光客や行き交うボート、そしてゴンドラたち。

観光客を乗せたゴンドラの上でオールをこぐウンディーネ達の姿が、藍華にはとても眩しかった。

憧れていたプリマ・ウンディーネとしての日々は、描いていたものからは、どんどん離れてゆくようだった。

プリマに昇格し、そしてカンナレージョ支店の若き支店長として就任。すんなり辿ってきた道のりとは言えなくとも、順風満帆といえる船出だった。

しかし、実際にゴンドラに乗る機会は減ってゆき、観光案内をする現場からは遠ざかり、雑用に追われる日々が続き、それでもやっと一年という記念すべき時を迎えようとしていた。

藍華は、ゴンドラ協会でこれまでの事情を説明した。

対応に当たった職員たちは、藍華の話に真剣に耳を傾け、何度も頷きながら聞いてくれた。

その上、マンホーム一行の中から、支店のパーティー開催に協力する申し出があったこともあり、ゴンドラ協会としてもできることがあれば、協力するとまで言ってくれていた。

だが、トラゲットのゴンドラの使用については難色を示した。

晃からの指摘があったように、実際に使用しているゴンドラは日々の営業に使用するものだけに、これについては藍華も十分に理解していた。

あとは、ゴンドラ協会が保有しているものを、特別に借りれるかどうかだった。

だが、少し冷静になってみたら、自分が何を言っているのか、藍華自身も気付き始めていた。

実際のところ、トラゲットのゴンドラが用意できていたとしても、シングルのウンディーネを使っておもてなしをするというアイデア自体に、許可が下りていたかどうかは不明だった。

なのにゴンドラまで貸してくれというのは、なんて図々しい話をしているのか。

時間が経つにつれ、藍華は自分でも呆れるくらいの話をしていると思った。

〈私って、何してんだろう・・・〉

 

「お嬢、どうしたんですか?」

聞きなれた、ざっくばらんな物言いで藍華の背中に声がかけられた。

振り返った藍華の前には、いつもの見慣れた顔が、ちょっと不思議そうな表情で立っていた。

「あゆみ、お疲れ様」

「はい、お疲れ様・・・って、元気ないですねぇ。なんかあったんすか?」

「うん、まぁ、そうね。あるようなないような・・・」

「なんすか、それ?」

「あゆみ、あんたは今日もトラゲットなの?」

「よくわかりますねぇ」

「だってあんた、こないだ自分で言ってたじゃない?」

「そうでした?ウチからトラゲットを取ったらなんにも残らないすからね」

「それでどうなの?トラゲットは」

「そりゃあ忙しいですよ。みんな早く来ないかと待ってくれてる状態です。今はちょっと落ち着いたところなんで、昼休憩をとってるところです」

「そうなんだ。トラゲットって楽しい?」

「ウチは楽しいですよ。地元密着でやってますから。他のシングルたちは知らないすけども」

「どういうこと?」

「プリマの手前で足踏みしてるシングルが多いっしょ?そういうウンディーネたちにとっては複雑な部分もあるみたいすよ」

「みたいすよって。あんた、ほんとにプリマになる気はないの?」

「ウチはこのままでいいです。というか、性に合ってると言った方がいいかもしれません」

「そうなんだぁ」

「ところで、お嬢の方は大丈夫なんですか?なんか運河なんか見ちゃって黄昏てましたけど」

「そうね。黄昏ることもあるわよね」

「藍華お嬢!」

「な、なに?いきなりでっかい声だして」

「ウチはお嬢のためなら協力は惜しみません。なんでも言ってください!ウチとお嬢の仲じゃないですか!」

「どんな仲なの?あんたと私って」

「水臭いこと言わないでくださいよ。お嬢がウチを拾ってくれたから、まだこの姫屋の制服を着れてるんですから。そうじゃなかったら、ウチは今頃どうなってるかわからなかったっすから」

「なんか話が、だんだん大袈裟になってるような・・・」

でも今の藍華にとっては、あゆみの気持ちがとてもうれしかった。

「わかったわ。それじゃあ早速お願いしてもいいかしら?」

「どうぞ、なんでも言ってください」

「それじゃあ、トラゲットに使うゴンドラを10隻ほど貸してくれる?」

「えっ?なんすか、それ!」

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